2016年10月21日金曜日

(黒い雨・河井克行)第180回国会 厚生労働委員会 第9号(平成24年4月13日)

○池田委員長 次に、河井克行君。
○河井委員 おはようございます。自由民主党、河井克行です。
きょうは、黒い雨について質疑を行います。
昨年の福島第一原子力発電所の事故以来、六十七年前に広島、長崎に降った黒い雨が再び注目されるようになっております。
この福島原発事故の及ぼす影響と広島、長崎黒い雨の関連は、大臣、何でしょうか。特に人体に及ぼす影響についてお答えをいただきたい。簡潔にお願いをいたします。
○小宮山国務大臣 関連とおっしゃいますのがどういうことを意味しているのか、ちょっと難しいかと思いますけれども、放射能による人体への影響が、どのように影響があるかということかというふうに思います。
○河井委員 ですから、その放射能の人体に及ぼす影響について、特に、広島、長崎に六十七年前に降った黒い雨の何が最も問題かということをお尋ねしている。お答えください。
○小宮山国務大臣 私も野党の議員のときからこの広島、長崎のことは取り組んでまいりましたが、今委員がおっしゃっている意味がちょっとよくわからないのですが、もう少し詳しくお尋ねいただけるでしょうか。
○河井委員 わからないという答弁がわからない、私は。通告していますよ、これはちゃんと。黒い雨についてきょうは質疑に立つとちゃんと言っている。
大臣、黒い雨が人体に及ぼす影響、放射能の影響と今自分でおっしゃった、それと昨年起こった福島第一原発事故、この関連について聞いているわけですよ。
住民が何を一番不安に感じているか。野党時代から取り組んでこられたのならわかると思うけれども、黒い雨を浴びたという広島、長崎の方々は何を一番心配に思っているのか。お答えください。
○小宮山国務大臣 それは、放射能によります健康へのさまざまな被害ということかと思いますが。
○河井委員 放射能は放射能でも、大臣、直接被爆じゃなくて間接被爆、その深刻さを、広島、長崎の黒い雨に遭った方々は、直接の被爆は経験はないけれども、黒い雨を浴びたことによって、あるいは、それがつかった水を飲んだり、川の水を飲んだり、土壌から生えていた野菜や果物、稲を食べて、お米を食べて、それが健康被害になっているんじゃないかということを心配している。まさに福島と同じ状況だということを、こんな、大臣、入り口の話で時間を使ってほしくない。
そういう認識はありますね。どうぞお答えください。
○小宮山国務大臣 質問の意味がよくわからなかったのは申しわけないと思いますが、ただ、福島の方に伺うと、広島、長崎と同じようにという表現をかえって心配なさるという向きもございますので、そのあたりの物の言い方は慎重にしたいかと思います。
○河井委員 間接的な被曝ということについて、では、福島の方々は、住民は今心配していないという意味の答弁ですか、今。お答えください。
○小宮山国務大臣 私が言っている真意を私がうまくお伝えしていなかったのだったら申しわけありませんが、そんなことを全く言っているわけではありません。
ただ、原爆が落ちて、その後の黒い雨とか、どの範囲までとか、いろいろございますけれども、そのことと、今ずっと低線量の被曝のことが心配されているかと思いますけれども、原子力発電所の事故の場合とはケースが違うということを福島の方などはおっしゃっているということを申し上げているので、福島についてしっかりと、お子さんを含めて、ずっとウオッチをしなければいけないということ、なるべくその皆様方の心配を取り除くためにどうするか、どうしたらいいかということは、地元の自治体とも協議をしながら、政府としても全力を挙げて今やっているところでございます。
○河井委員 認識が違う。
実際に、私の地元の広島の上安・相田地区の黒い雨の多くの被害者の会の皆さん方が一番心配しているし、私は、大臣、これで民主党政権なって厚生労働省の政務三役にこの件で質疑を行うのは五回目であります。繰り返し、私は、その黒い雨に実際六十七年前に遭った方々が今一番心配していることは、福島の地で自分たちと同じような間接的な被曝ということが行われていないかということを一番心配していらっしゃる、そういう土台があるから、きょうはこの質疑をさせていただいているわけであります。
前回、私がこの件について行った最後の質疑が、去年の八月九日の科学技術特別委員会。きょうは、その後の動きを大臣にお尋ねしたいんです。
放影研というのは御存じですね。広島市南区にある放射線影響研究所。昨年の十一月二十二日に、前身である原爆傷害調査委員会、いわゆるABCC、ここが一九五〇年から五六年の間におよそ十二万人を対象に行った面接調査の中で、約一万三千人が原爆投下直後に降った黒い雨を浴びたと回答していたことを明らかにいたしました。これはずっと、なぜかはわかりませんが、放影研の中に眠り続けていた。五十年以上にわたってずっと眠り続けていた大変貴重な一線級の資料、データが発見されたということであります。
大臣、この放影研、運営経費は日米両国政府どちらが多く負担しているか、そして、日本政府においてはどの役所が予算措置をしているか、お答えをください。
○小宮山国務大臣 放射線影響研究所、これは、御指摘のように日米政府の共同出資ですが、日本の方が多く出資をしておりまして、厚生労働省が所管をしております。
○河井委員 平成二十二年度の放影研の決算書によると、支出総額が三十四億九千万、うち、日本国政府が厚労省から二十一億四千万、米国は、エネルギー省、DOEから十三億二千万。
もう一つ、この放影研、常勤役員あるいは非常勤役員のうち、厚生労働省からのいわゆる天下り、その人数についてはつかんでいらっしゃいますか、お答えください。
○小宮山国務大臣 済みません、詳細な通告をいただいておりませんので、厚労省の方から元厚労省の職員が行っているということは承知をしておりますが、人数は把握をしていません。
○河井委員 私の調べによると、常勤役員四名中一人、非常勤役員六人中二名が厚労省からのいわゆる天下りになっている。
大臣、つまり、運営費の半分以上を厚生労働省が予算措置をし、人をも送り込んでいる大変密接なかかわりのあるのがこの放射線影響研究所、放影研。今回、そこから大変貴重な資料、データが数十年ぶりに発掘をされた。当然、厚生労働省として、これまでの間、公共の利益になるためのデータの活用に向けて、研究所に対して働きかけることができる立場にあるわけですが、どういった働きかけを行ってきたか、あるいは働きかけをしていなかったのかもしれませんが、それらを含めてお答えください。
○小宮山国務大臣 働きかけというのは、ちょっと具体的に今なかなか申し上げられるところがございませんが、今委員が御指摘ありました、データが発表されたということについては、これは非常に貴重なデータだということで、細川大臣のときからずっとやってまいりました「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会、この検討会をつくりまして、七回検討会を行いまして、今、次回の検討会で取りまとめ案をまとめるというふうに聞いていますが、その第六回のときに、この放射線影響研究所の理事長からこの検討会で今の結果を御報告をいただきましたので、次回取りまとめるときには、この報告も踏まえた上での報告が出るというふうに考えているところです。
○河井委員 今の答弁をもう一度確認します。
次回の取りまとめの際に、この放影研が持っていた一万三千人分のデータも踏まえた報告書をこれから取りまとめていくということですね。もう一度お願いします。
○小宮山国務大臣 この検討会で、放射線影響研究所からの報告も踏まえて、科学的な検討を行った上で報告を取りまとめる。ですから、報告の中にこれを踏まえたものも入るというふうに考えています。
○河井委員 私が何でこんなことを大臣に聞いているかといいますと、公開されていないんですよ、放影研が。全てを公開するように、さまざまな団体あるいは長崎市長などから文書で要請が放影研に行っているんですけれども、公開を全てしていない。そのことは御存じだったでしょうか。
○小宮山国務大臣 この報告書は公開しているというふうに聞いていますが、今全体の公開状況がどうなっているかというのは、チェックをさせていただきたいと思います。
○河井委員 大至急確認をとっていただきたいと存じます。
きょう、お手元に理事会のお許しをいただいて配った資料、これは、大臣、実は、地図上にこのデータを落としたもの、出典は地元の新聞社の記事でありますけれども、これが放影研の中で眠っていた。
一番真ん中の実線が、大雨地域だとこれまで国が認定していたところであります。その外側の点線部分がいわゆる小雨地域。
しかしながら、広島市が二〇〇八年六月から十一月までアンケート調査をおよそ三万七千人を対象に行った結果、従来言われていた範囲よりも数倍あるいは十数倍の広さで雨が降ったことが推定されております。それが一番外の実線であります。
今回の発掘されたデータ、これを一つ一つドットで落としたものが、その真ん中あたりに、少し色がかかっているところなんですね。つまり、国が大雨地域あるいは小雨地域とすら認定していなかったところで、ABCCが行った具体的な設問はこういうことでした、原爆直後の雨に遭いましたか、そういう設問。それに対して、はいと答えた人を地図上に落とすと、こういう状態になっている。
ですから、大臣、もっとこのデータが研究者の間で公開されるべきだと私は思うんです。現状では、放影研の中だけでさまざまな検討が積み重ねられているようでありますけれども、やはり、私は、放影研だけでなくて、例えば地元でいえば、広島大学の原爆放射線医科学研究所などのいわゆる副次的な意見というものも聞く必要があるし、これはもう絶対、被爆直後の住民の実態をあらわしている貴重な資料でありますから、これを一放影研の中だけでとどめておくべきではない、公開をするべきだと、重ねてそのように申し上げます。
重ねて、大臣の認識を伺いたいと存じます。
○小宮山国務大臣 昨年十二月にその放射線影響研究所が発表したところでは、今委員が御紹介いただいたように、黒い雨に、雨に遭ったという答えが、十二万人のうち、およそ一万三千人あったというふうに聞いています。
今、この結果は公開をしていると聞いていますが、全てを公開しているのかどうかを含めてチェックをさせていただきたいと思いますが、おっしゃるように、いろいろなところのその貴重なデータは、今回まとめる報告書に、しっかりと科学的に検討をした上で、ちゃんと必要なものは盛り込まれるべきだと思っておりますので、そこは委員のおっしゃるとおりだと思います。
○河井委員 この一万三千人の質問事項の中で、放射線による急性症状である発熱や嘔吐の有無も尋ねてあるんです。つまり、大臣、はいと、黒い雨に遭いましたと言っている人とその急性症状との一人一人の関連性も、これは統計学的な手法を用いて積み重ねることができるし、同じ被曝線量でも、黒い雨を浴びたと答えた人のその後のお亡くなりになった原因ですとか寿命と、浴びていないと答えた人のそれらを比べることによって、この雨の影響の手がかりをつかめる可能性がある。
繰り返しますが、これは貴重なデータでありまして、ぜひ、一日も早く私は全面的な公開をしていただきたい。
先ほど大臣がおっしゃった次回の有識者検討会、これは大体いつぐらいで、最終報告書をもうお取りまとめになる時期が近づいていると考えますが、そのめどなどもお聞かせをください。
○小宮山国務大臣 次回の検討会は五月中にというふうに思っています。
○河井委員 ですから、そろそろ最終報告をまとめる時期ではないかと考えますが、その見通しなどもお示しをいただきたいと思います。
○小宮山国務大臣 その次回の検討会で報告書を取りまとめる予定でございますので、それが、ですから、五月中には取りまとめる予定というふうに考えているところです。
○河井委員 大臣、問題は、大事なことは、その報告書の中身なんです、当たり前のことですけれども。
全国でこれまで提起をされてきました原爆症認定集団訴訟で国が敗訴を重ねた中で、さまざまな判決が指摘してきたのは、内部被曝や低線量被曝の影響を国も学者も考慮してこなかったということなんです。国が司法判断を受け入れる形で原爆症認定基準を見直したからには、この低線量被曝や内部被曝の代表的な要因である黒い雨の指定区域も拡大しないことには論理的な整合性がとれないんです。
大雨地域を設定した、もう四十年前、一九七六年当時の科学的知見をいまだに適用し続けている。私は、この、国が依拠する科学的知見こそが問われているというふうにこれまでもさまざまな委員会で指摘をしてまいりました。今の点につき、大臣の御見解をお聞かせください。
○小宮山国務大臣 私も、被爆者の方々ともお会いをしておりますし、皆様方、大変御高齢になられていて、そしてやはり、司法との乖離を何とかしなければいけないという強い思いは持っております。
ただ、今回のこの放影研の発表の中で、原爆直後に雨に遭った場合と、それから、あと、一カ月後に遭った場合とかいろいろ時間差があるということですとか、いろいろなことがやはり科学的にちゃんとチェックをしなければいけない点もあるというふうに聞いておりますので、こうしたデータの中でしっかりと活用できるものは活用しながら、私も、少しでも早くその司法との乖離を埋めたいという思いは持っておりますので、そういう意味ではしっかりと取り組ませていただきたいと思っています。
○河井委員 大臣、今大変大事なことをおっしゃいました、司法との乖離を埋めたいと。まさにそのとおりでありまして、その司法の判断を受け入れたということは、要するに、低線量被曝や内部被曝について国や学者がこれまで考慮していなかったという考え方を改めたからこそ受け入れたわけでありまして、今度、その具体的な適用が、この広島の黒い雨の地域の拡大ということとこれは一緒な話ですから、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと存じます。
私が地元でいろいろな当時の経験者の方と話をしていますと、この報告書の中身に大変大きな不安、心配を抱えていらっしゃる。つまり、六十七年前に起こったことを証明するというのはなかなか難しいことなんです。でも、その人たちの多くが、このような、さまざまな聞き取り調査などで、雨に遭ったという答えをしている。降ったか降らなかったかわからないということと降っていないということは違うんですね、大臣。わからないということと降っていないということは違う。
私は、この失われた六十七年という月日を今から取り戻すことはできませんので、次の最終報告書におきまして、放影研でずっと眠っていたデータも含めた形で、しっかりとした方向性を示してもらいたい。それは雨の地域の拡大しかない。大臣のお考えを伺いたいと存じます。
○小宮山国務大臣 繰り返しになりますけれども、そうした貴重なデータは、しっかりと今回の報告書の中にも取り込みたい。
ただ、そのときに、科学的にそれが妥当であるかというチェックも当然必要になってまいりますので、そうした経緯を経た上で、必要なものを取り込み、さっき申し上げた、司法との乖離を何とか埋めたいという思いは、本当にそういう形で思っておりますので、可能な限りの対応をさせていただきたいと思っています。
○河井委員 その可能な限りの対応の中に、科学的な知見のチェックとおっしゃいました。この放影研のずっと眠っていたデータが、なぜ眠り続けていたかということも謎でありますけれども、やはり、日本のさまざまな研究機関、十分に科学的な知見を調べることができるところにも公開をして、そして、この貴重なデータをぜひとも有効活用してもらうためにも、大臣、繰り返し、これからチェックする、チェックするとおっしゃっていますけれども、チェックしてみて公開しなかったということではなくて、まず、私は、公開という方向性を、大臣、おっしゃっていただきたいんです。いかがでしょうか。
○小宮山国務大臣 公開できるものは公開をしたいというふうに思います。
○河井委員 もう一つ。
大臣、内部被曝の影響について、ずっと有識者検討会の中で、精神的な影響というものの文言がたくさん使われているんです。当たり前のことですけれども、内部被曝そのものが引き起こすのはあくまでもがんとか心臓病などの疾患であって、黒い雨を浴びたということによる精神的な影響に限定するのはおかしいと、これも実際に、上安・相田地区黒い雨の会の方々、異口同音に言っておりますし、現に、自費で、交通費を自分で払って、宿泊費を払って、今までの有識者検討会も傍聴してきている人たちが、そのような発言をしている。
大臣、精神に内部被曝の影響は限定できないはずだと思うんですが、お考えを伺いたいと存じます。
○小宮山国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、精神的な健康状態ということも一つのポイントにしていますが、それに限らないということは、おっしゃるとおりだと思います。
○河井委員 質疑の持ち時間が終わりましたので、終わらせていただきます。
どうか大臣、しっかりと指導性を発揮していただいて、最終報告書、必ずや住民の方々の思いが通じる中身に、また、その後の厚生労働省としての行政判断も、その方向でつくっていただきたい。心から期待をさせていただきます。
終わります。