2018年2月12日月曜日

原爆症認定制度の問題点と在り方(伊藤直子)



社団法人 日本被団協原爆被爆者中央相談所
理事 伊藤 直子

自己紹介
私は1970年から日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)で働き、1978年に社団法人 日本被団協原爆被爆者中央相談所(被爆者中央相談所)設立後は、全国的な被爆者の相談事業に携わってまいりました
中央相談所では、「被爆者相談110番」事業に寄せられた10万件を越える電話、手紙、来訪など相談に対応してきました。また、毎年全国8ヶ所で開催された相談事業講習会では、医師や関係者と被爆者施策の活用などについて啓蒙・普及をはかってきました。
その結果全国的に被爆者対策の活用がすすみ、相談に対応できる被爆者相談員が養成されています。


原爆症認定と被爆者の思い
40年にわたる被爆者相談活動の中で、つらかったことのひとつは、原爆症の認定を求める被爆者の相談に十分に応えられないことでした。
原爆症認定を求める被爆者は、時代の流れの中で変化はありましたが、「国に被爆してからの苦しみは原爆のせいだ認めてほしい」という一貫した思いがあります。
身体が悪くて思うように働けない、怠け者と思われてつらいなどの原因が、自分の責任ではなく、遡れば被爆したことにあることを国に認めてほしいということです。
被爆者健康手帳や各種の手当は都道府県知事が交付または支給の認定をしています。被爆者対策で、唯一(厚生労働大臣)が認定する原爆症認定制度に被爆者は強い思いを寄せることになるのです。
しかし、入市や直爆でも2㌔をこえた被爆者の申請は却下され続けました。
被爆者や関係者の中に、原爆症認定は厳しくて、申請しても無駄あきらめがあったことも確かです。
私も認定を希望する被爆者に「原爆症の認定申請は誰でもできますが、この被爆距離では多分却下されますよ」とこたえていました。
私自身がまるで認定申請を自己規制するための先導役をしていたのではないか、という反省があります。
認定申請の却下処分に対して異議申立てを援助し、これも棄却され、裁判を提訴するかを検討したとき、「裁判をしたい気持はあるが、プライバシーが明らかになるから困る、「国を相手に裁判なんてできない」などとあきらめざるをえなかった多くの例があります
その中の一人に、4歳の時広島で被爆し、足ケロイドに皮膚がんが発症したために、認定申請をした女性がいます。
皮膚がんのほかに体がだるい、疲れやすいなど主婦として十分な事ができないと苦しんでいました。そんなこともあったのか夫は家に帰らなくなり、皮膚がんの手術で入院している時に離婚届けが出されていました。子供2人は彼女が引き取りました。
2.4㌔で被爆した彼女には、「皮膚がんになったのは自分の責任ではない、絶対原爆によるもの」という確信があります。せめてそれを国に認めて欲しいと願ったのですが、被爆距離の壁の前にあきらめざるを得ませんでした。
これは一つの例に過ぎませんが、こうして被爆者は原爆症認定申請を自己規制することになっていったのだと思います


認定制度の経過
原爆症認定制度は、1957年の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(原爆医療法)」制定によって、原爆症と認定された疾病に対しの負担で医療を給付する制度としてスタートしました。
この当時は、がんのほか、現在では全く認定されない熱傷瘢痕いわゆるケロイドやガラス片などの体内異物混入による「負傷」や慢性肝機能障害が多く認定されていました。
1960年に「一般被爆者」、「特別被爆者」という制度が設けられ、「特別被爆者」に一般疾病医療費が支給されることになり、健康保険による自己負担が被爆者健康手帳によって負担されることになりました。同時に入通院する認定被爆者に医療手当が支給されることになります。
1968年に「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(原爆特別措置法)」が制定され、認定被爆者に月額1万円の特別手当が支給され疾病や所得などの制限はありましたがそのほかの被爆者に3千円の健康管理手当支給れることになりました
当時生計の中心でありながら、病気がちで働けないといった被爆者にとって特別手当、医療手当は大きな救いであり、原爆症認定申請増加しました。
1965年、66年、67年と100人未満であった申請者が、1968年には399人となっています。
1974年に一般被爆者、特別被爆者の区分が廃止され、被爆者健康手帳所持者全員に一般疾病医療費が支給されることになりました。そして、原爆症認定制度が医療給付という目的から経済的救済の側面を強くしていくことになります
1981年に所得制限のない医療特別手当が創設された時、日本被団協との交渉で、せめて高卒初任給程度にとの要求に、当時の厚生省の局長は努力したいと答弁しました。
医療給付から始まった原爆症認定制度、認定被爆者の経済的な救済へと性格を変えていきました。
お配りしてます表を見ていただきたいのですが、認定申請が増えても年度末の認定被爆者数はほとんど変化がありませんでしたまた、被爆者健康手帳所持者の中での原爆症認定被爆者は1パーセント未満でした。
被爆者は、この数字を見て厚生労働省は、最新の科学的知見に基づいて放射線起因性を判断していると言うが、実際の認定は予算の範囲行われているのではないかと原爆症の認定審査に疑問を持ち始めます。そうでなければこんなにそろった数字が出るわけがありません。
20007月に長崎の松谷訴訟最高裁判決が確定しました。
松谷英子さんの認定疾病は「右半身不全片麻痺及び頭部外傷」です。
多くの被爆者が、今後原爆症認定松谷さんの被爆距離である2.45㌔までは拡大されるだろうと期待しました。
20015月に原爆症認定基準としては始めて「原爆症認定に関する審査の方針」が公表されました。それまでは「認定基準は委員の頭の中にある」といわれていました。しかし、公表された「審査の方針」は、松谷さんさえも認定されない厳しいものでした。
そこで、原爆症認定申請を自己規制することはやめよう「自分の病気は原爆のせいと思う人は原爆症認定申請をしよう」として取り組まれたのが2003年から始まった原爆症認定集団訴訟でした。
集団訴訟の結果明らかになったことの一つが原爆被害についてまだまだ未解明なことが多い、ということです。放射線影響研究所の大久保利晃理事長、中国新聞のインタビューに「原爆放射線による晩発影響で、わかっているのは5パーセント程度かもしれない」と答えていることとも一致します


積み木細工のような被爆者対策
原爆被爆後12年後に始まった国の被爆者援護ですが、今年で54年になります。
原爆医療法、原爆特別措置法の制定、それを一本化した現行の原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の制定までの経過を見ると、被爆者の長年にわたる要求によって改正を重ねたことは明らかです。被爆者は原爆被害に対する国家補償被爆者援護法を求めて日本被団協結成以来粘りつよく運動を続けてきました。法律の制定・改正の経過をみると被爆者の国家補償要求から逃れるためのものだったといえます。
その結果、現行の被爆者対策は、積み木細工のような継ぎ接ぎだらけの施策になっており、多くの矛盾と問題を含むことになってます
今回の原爆症認定制度のあり方を検討するに当たっては、さらにその矛盾と問題を広げるべきではありません。
その矛盾の一つが、原爆症の認定疾病と健康管理手当の対象疾病の多くが重なっていることです。同じ悪性腫瘍であっても3.6㌔では原爆症と認定されず健康管理手当となり、3.5㌔以内であれば原爆症と認定され医療特別手当が支給されことになります
認定と不認定を分けるのは、放射線起因性と要医療性とされていますが、それを被爆距離、入市日だけで判断するのはあまりにも機械的で、被爆者は納得できないのです。
未解明なことの多い原爆被害だからこそ、その実態を総合的に判断すべきです。
また、現在原爆症認定疾病が治癒した場合、医療特別手当から特別手当に切り替えることになっていますが、これはあくまでも一度原爆症と認定を受けた場合に限られます。
現在の「新しい審査の方針」によると、3.5㌔以内で被爆した場合、現に要医療性のある悪性腫瘍であれば認定されて医療特別手当が支給されます。そして将来治癒した場合は特別手当に切り替えられます
しかし、旧「審査の方針」時代には、例え2㌔の悪性腫瘍でも認定されませんでした。多くの被爆者が、却下されたままあきらめてしまいました。そして現在疾病がすでに治癒していれば認定申請をしても原爆症とは認定されず、特別手当は支給されません。
不公平だとの声が上がっています。
さらに、原爆症認定に当たって、国は一貫して放射性降下物からの残留放射線による人体への影響を考慮していません原爆症認定集団訴訟は残留放射線による被害を含めて原爆被害を総合的に判断するべきであるとして、原告の27連勝につながっているのです


長年の被爆者の相談の経験から、私個人の意見ですが、
あるべき「認定」制度について申し上げたいと思います。

被爆から65が経過して、原爆症認定に当たって原爆被害がいまだ未解明なことに加え、時間の経過による放射線起因性立証する困難さがあります。
平均年齢が76歳を越え高齢化した被爆者の公平な援護を図るという立場から、被爆者の疾病には何らかの形で放射線が関与していると見るべきです。そこで
       医療特別手当、特別手当、保健手当は廃止する。
       健康管理手当の疾病制限を廃止してすべての被爆者に支給する。
(手当名は、健康管理手当にこだわらない)
       政令で認定疾病・障害を定め全員に支給される手当に重篤度に応じた加算を行う
(加算される手当の上限は現行の医療特別手当額とする)
という制度に改正するのが、実態に即し、公平な援護制度になると思います。
ぜひご検討ください
むろん原爆症認定制度の在り方を検討するに当たっては、現行法10条、11条に関わっての改正も検討されるべきであることは当然のことと思います。

最後に私は原爆症だと訴える被爆者を紹介します。
愛媛県松山市に住む廣田閲子さんは、37ヶ月のとき、広島の爆心地から600メートルの鷹匠町で被爆しました。背中、腹部、両手両足にヤケドを負いましたまさに奇跡的に助かったと言っても過言ではありません。
被爆後は身体中から膿みが出て、そこにうじ虫が入り込み、高熱と下痢、下血がつづき、食べ物もほとんどとれませんでした。髪の毛がパラパラと抜け落ちて丸坊主になりました。
1945年暮れに松山に戻って寝込んでいる廣田さんを見た親戚縁者全員が、「この子はもたない」と思ったそうです。後年には「あんたが生き延びると思ったものは誰もいなかった」といわれたようです。
小学校に入学する頃には赤い毛がポチポチはえてきましたが、机に向かってしっかり坐ることができないほどつらさをおぼえ、何時も机にうつぶせて授業を受けていたといいます。
9歳の時にリウマチ、17歳の時狭心症と肝臓病との診断を受けました。
49歳で網膜剥離、59歳で甲状腺に水泡があるといわれます。この間にもさまざまな症状で入院回数は数え切れないといいます。
廣田さんは今も全身多発性関節リウマチ、甲状腺腫、副甲状腺水泡、狭心症、慢性胃炎、逆流性食道炎、うつ病、肝障害などの治療のため6ヶ所の医療機関に通院しています。
廣田さんは200711月に副甲状腺機能亢進症と甲状腺腫瘍で原爆症認定申請を行いました。しかし20102月に却下処分を受けます。
副甲状腺機能亢進症は申請されたデーターでは、疾病の有無を判断できない、甲状腺腫瘍については放射射線起因性がないというのが却下理由です。
彼女は普通の人がいう健康ということを知らない人生だったといいます。今彼女を苦しめているのは主にリウマチです。しかし認定の対象疾病ではありません。
廣田さんは被爆してからさまざまな病気と戦いながら懸命に生きてきました。
「私は誰も恨まないように生きてきました。しかしどうして私が原爆症と認定されないのですか。国を恨みたくなります」と廣田さんは言います。
廣田さんのような人救済される制度が求められているのです




2017年11月2日木曜日

ルーズベルト夫人、ABCCに「憤慨」 治療棟新設の経緯判明



2017/8/4(中国新聞)
【ロサンゼルス共同】


広島への原爆投下から約8年後の1953年6月、米国が広島に設けた原爆傷害調査委員会(ABCC)を視察したエレノア・ルーズベルト元大統領夫人が、被爆者が研究対象にされるだけで治療されていないことを批判、それを受けてABCCに治療棟が新設された経緯が分かった。

 米作家ジェシカ・レンショーさん(73)が、父親でABCCの研究員だった人類学者アール・レイノルズ博士(故人)の証言として、3日までに明らかにした。「研究すれども治療せず」と批判されたABCCの治療棟設置に、元大統領夫人が大きな役割を果たしたことをうかがわせている。

 夫人の視察に同行したレイノルズ博士によると、被爆者が治療も受けられないまま研究対象にされている実態を目にした夫人は「非常に憤慨」し「被爆者はモルモットのように感じているのに、拒否するすべも知らない」と語った。夫人の批判を受けてABCC内で話し合いが持たれ、半年後に治療棟が設けられることになったという。

 ABCCを前身とし、被爆者の健康調査に日米共同で取り組む放射線影響研究所(放影研)によると、治療棟は53年12月~72年5月に設置、最大で13床だった。

 放影研に残る日本人医師や看護師の証言記録によると、日本の医師免許がなかった米国人医師は法的には治療ができなかったが、日本人医師と相談しながら治療方針を決めた。日本では手に入らなかった医薬品を使い、24時間体制で治療に当たることもあったという。







2017年11月1日水曜日

米、日本への核配備狙う 50年代、公文書に明記

 
2011年8月4日(共同通信)

米政府が、日本への原子力技術協力に乗り出した1950年代半ば、原子力の平和利用促進によって日本国民の反核感情を和らげた上で最終的には日本本土への核兵器配備にこぎ着ける政策を立案していたことが4日、米公文書から分かった。

 米公文書は、当面は核兵器配備に触れずに「平和利用」を強調することで、米核戦略に対する被爆国の「心理的な障壁」を打破できると指摘。米国の原子力協力は54年3月の第五福竜丸事件を機に本格化したが、米側に「日本への核配備」という隠れた思惑があった実態が浮かび上がった。

 日米史研究家の新原昭治氏が米国立公文書館で関連文書を入手した。

 フーバー国務長官代行は55年11月18日付のロバートソン国防副長官宛て極秘書簡で、米統合参謀本部が核兵器を日本に配備する必要があると判断した経緯を記載。

 「平和利用」への理解が深まれば「軍事的な原子力計画」への理解も進み、日本人の「心理的な障壁」を弱められるとの国防副長官の指摘を受け、米核政策への「好意的な理解」を日本の指導層に広めるため国務省と国防総省が「共同研究」を進めることに賛同した。

 またスミス国務長官特別補佐官は、56年12月3日付のグレイ国防次官補への極秘書簡で「日本での核兵器貯蔵に対する政治的障害を減らす方策」が、アリソン駐日大使とレムニッツアー極東軍司令官の間で議論される見通しを説明。この問題で対日交渉を急ぐのは「危険」とした上で、当面は日米間の原子力協力に専念することで「米国にとって最善の結果」が得られるとの見方を示した。

 他の公文書によると、米軍内では54年から日本への核配備を求める声が強まるが、国務省が第五福竜丸事件後の日本の対米感情悪化を踏まえ反対。米軍部は核分裂物質を含む核兵器の中核部分「核コンポーネント」の配備を目指すが、核分裂物質を含まない「非核コンポーネント」が54年末ごろに日本に搬入された。軍部は以降も日本への核配備を模索したが、最終的に実現しなかった。



2017年10月22日日曜日

畑元司令官らA級戦犯の色紙


中国新聞(2010年4月24日)

戦犯10人から広島の被爆者へ色紙 巣鴨慰問後に贈られる 


原爆投下から7年後の1952年、広島で被爆した女性9人が巣鴨プリズン(東京)を慰問した後、A級戦犯10人から寄せ書きの色紙を贈られ、うち1枚が笹森恵子さん(77)=米国在住=の広島市内の実家に残されていたことが24日、分かった。

笹森さんは戦犯について「組織の中で行動した人たちで、わたしたちと同じ戦争の犠牲者。恨むつもりはない。戦争さえなかったら、と思う。ただ戦争が起こらない方法をもっと考えてほしかった」と話している。


色紙は上に「容敬(ようけい)」、両脇に「巣鴨御来訪記念」「新本(にいもと)(笹森さんの旧姓)恵子様」と書かれ、下に「木戸幸一」「賀屋興宣」「荒木貞夫」など10人の氏名が並ぶ。


広島大の富永一登教授(中国文学)によると「容敬」は「態度をうやうやしくする」「身を慎む」という意味。


広島市の原爆資料館に保存されている、慰問の半年後に発行された記念誌によると、笹森さんらはケロイドなどの治療のため東京を訪れていた52年6月11日、巣鴨プリズンに行き約2時間面会。寄せ書きは後日、手紙と共に届いた。


A級戦犯との面会で、広島市出身の賀屋元蔵相は「皆さんに心からお許しを願います」と話し、陸軍第2総軍(広島市)の司令官だった畑俊六元大将も「当時最高指揮官として広島におりましたが、そのためにこんな迷惑を掛けてすみません」と語り掛けた。


被爆者側は「わたしたちは、そんなに謝っていただくためにうかがったのではないのです。今後、戦争の起こらないよう平和に向かって努めましょう」と答えた。


当時、巣鴨へは演劇、歌手、スポーツなど各界の関係者が頻繁に慰問に訪れていた。
笹森さんは55年、ケロイド治療のため訪米。帰国後、看護師になるため再び米国に渡り、現在はロサンゼルス近郊に在住。このほど一時帰国し、額に入っていた色紙を持ち帰った。





中国新聞夕刊(3面) 2010年4月24日 

被爆女性戦犯慰問 
「なぜ計画」疑問の声 演奏・花束で迎えられる

顔や手にケロイドが残る被爆者の女性たちが巣鴨プリズンを訪れたのは、サンフランシスコ条約発効(1952年4月)で、日本が独立を回復してから1カ月半後。国民の間には同情感もあり、戦犯の釈放を求める声が高まっていた時期だった。

戦犯側は慰問を歓迎したが、「どんな意図で計画されたのか」と疑問の声も出ていた。(1面関連)

慰問の半年後に発行された記念誌によると、面会は楠瀬常猪元広島県知事が提案。笹森恵子(しげこ)さんらは、楽団の演奏や花束、手作りの記念品で迎えられた。BC級戦犯も含め約40人が手記を寄せ「この日の感激を一生の思い出として、平和日本建設にまい進する」などの言葉が並ぶ。


一方、被爆の悲惨さを訴えるため、「原爆1号」と名乗ったことで知られ、慰問にも同行した吉川清氏は著書に「どこかで、戦争と国民とを和解させ、原爆と被爆者とを仲直りさせようという工作がひそかに行われているように感じた」と記した。


上京に協力した小説家芹沢光治良氏も、直後の月刊誌への寄稿で「乙女の純情をこんな風に利用していいものか、怖ろしい気がした」「治療に必要でない場所に引張りまわすのは、残酷で無神経」と指摘した。





2017年10月2日月曜日

(答申書)原爆被爆者対策基本問題懇談会議事録の一部開示決定に関する件

諮問庁:厚生労働大臣
諮問日:平成24年 9月 6日(平成24年(行情)諮問第359号)
答申日:平成25年10月 3日(平成25年度(行情)答申第211号)
事件名:原爆被爆者対策基本問題懇談会議事録の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1審査会の結論
原爆被爆者対策基本問題懇談会議事録(第1回ないし第10回,第12回及び第13回)(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分のうち,別紙2,別紙3及び別紙4に掲げる部分を開示すべきである。

第2異議申立人の主張の要旨
1異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件開示請求に対し,平成23年10月26日付け厚生労働省発健1026第3号により厚生労働大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った本件対象文書の一部開示決定(以下「原処分」という。)について,取消しを求めるというものである。

2異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由の要旨は,以下のとおりである。
(1)異議申立書の記載
原処分は,次の理由により違法である。
政府は,平成17年8月3日,各府省の担当者で構成された情報公開に関する連絡会議において,「懇談会等行政運営上の会合における発言者の氏名について」と題する申し合わせを行い,これらの会合の議事録等における発言者の氏名は,特段の理由がない限り,公務員か否かを問わず公開することとされた。
実際に,例えば財務省所管の国有財産中央審議会議事録(第1回ないし第67回)においては,発言者氏名も含めて開示されている。
本件において処分庁が述べる不開示理由は,抽象的一般論にすぎず,特段の理由には当たらない。

(2)意見書の記載
諮問までの経過について
諮問庁が,諮問まで9か月近くを要したことは異常である。理由説明の内容に照らして,長期間の検討が必要であったとは到底思われない。故意に日時を費やした可能性さえ疑われる。

諮問庁の理由説明の不当性について
(ア)現在の施策への影響等について
諮問庁の理由説明は,結局,懇談会がいかに問題のある審議内容であったかを,当の諮問庁が,るる指摘することに終始している。
諮問庁は,発言者氏名が明らかになった場合,現在の被爆者援護施策への誤解や不信感を招く可能性がある,その審議内容が問題視される可能性が大きい,氏名の開示を機に更なる追及が考えられるといった事態が懸念されるとする。
しかし,これは,本末転倒の懸念と言うべきである。そうしたことは,国民がその内容を逐一吟味した後であり得るかもしれないことであって,発言者と発言内容を唯一知っている諮問庁が,そうした可能性にわざわざ言及するということは,問題視され,追及され,誤解や不信感を招いてもやむを得ない内容であることを,自ら告白しているに等しい。
仮に諮問庁が説明するとおり,相当の問題がある審議内容であったとすれば,現在も被爆者対策の基本と諮問庁が位置付ける重要な懇談会報告書が,瑕疵ある審議を積み重ねて作られたこととなり,そういうことが放置されている現状は,著しく公益に反する事態であると言わなければならない。
また,当時,そうした誤った審議を,諮問庁は,事務方として少なくとも補佐又は主導したのかもしれず,発言者氏名を含む本件対象文書を精査することは,行政が適正に執行されていたかを検証するため必要であり,公益にかなうものである。

(イ)懇談会委員のプライバシーについて
結局,諮問庁は,氏名等の開示によるプライバシーの侵害に比べて,開示で得られる利益が上回るとは考え難いと主張しているようである。
言うまでもなく,委員は重い責任を負っている。当時,7人の委員は,原爆被爆者への援護策をどうするか,被爆者の健康,生活,ひいては喫緊の生死に直接関わってくる意見の取りまとめを求められていた。結果,その意見を取りまとめた報告書が,その後の原爆被爆者対策の基本として取り扱われてきた。
したがって,その重要性に鑑みれば,上記(ア)で指摘したとおり,諮問庁が言うところの審議内容に問題があったのだとすれば,発言者氏名を含む発言内容と審議経過を逐一検証することが,公益にかなうと言うべきである。むしろ,発言者氏名が明らかになることで,事実誤認や無用な誤解や不信感が減じると言うべきである。
また,諮問庁が,発言者が不明でも検討内容を検証できるとする説明は空論である。
当該発言を誰がしたかは,極めて重要な情報である。7人の委員の各発言は,それぞれの学識にとどまらず,人生体験はもとより,人生観,価値観といった全人格を背景にして発せられている。各発言内容は,委員個人の人格と密接不可分なのであるから,発言者が明示されることで,はじめて各発言がなされた背景,思想,真意も理解できるのである。
したがって,発言内容に対応する発言者氏名が明示されて,はじめて懇談会の検討内容を検証することが可能となる。そして,無用な誤解や事実誤認も避けられるのである。
以上のとおり,本件対象文書の不開示部分についての諮問庁の理由説明は失当であり,開示すべきである。

第3諮問庁の説明の要旨
1諮問庁の考え方
本件対象文書について,原処分においては,法5条1号及び5号に該当する情報を含むとして一部開示としたが,諮問庁としては,原処分の一部を変更し,不開示とした部分のうち,会議の冒頭及び終了時における発言者の氏名で,個人的見解や議論の内容に関連しない部分については開示することとし,その余の部分については,不開示を維持すべきと考える。

2理由
(1)原爆被爆者対策基本問題懇談会について
原爆被爆者対策基本問題懇談会(以下「懇談会」という。)は,昭和54年1月29日付けの社会保障制度審議会の答申の趣旨に則り,原爆被爆に関する問題についての基本理念を明らかにするとともに,被爆者対策における制度の基本的なあり方について検討することを目的とした厚生大臣の私的諮問機関である。

(2)本件対象文書について
懇談会議事録は,懇談会が,昭和54年6月に厚生大臣の依嘱を受け,昭和54年6月以降14回にわたり,非公開で慎重に審議を重ねた議論の経過が記載されているものである。

(3)不開示情報該当性について
原処分において不開示とした部分は,個人の氏名及び職歴,著者名並びに発言者の氏名である。
個人の氏名及び職歴並びに著者名については,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報であり,法5条1号に該当し,同号ただし書イないしハのいずれにも該当しない。
氏名等の取扱について,まず,懇談会の議事が非公開であることを前提に,懇談会委員が個人的な見解を率直に発言した内容となっているところ,これは,原爆被爆者対策が政治的,社会的に大きな関心を呼んでおり,戦後処理を巡る様々な動向にも大きな影響を及ぼすことから,非公開としたものである。
特に,懇談会では,「国家補償」,「被爆地域拡大」など原爆被爆者対策における基本的政策に関わる内容を取り扱っており,影響が非常に大きいことから,そのような状況の中で,出来るだけ外部からの様々な影響(政治的も含む)を排除して,委員による自由闊達な議論を行い,国の政策判断を遂行する基礎として,適正な報告を出してもらうよう依頼した。その後,懇談会報告書の趣旨を元に被爆者援護施策の拡充を行い,原爆被爆者対策の基本として取り扱ってきたところであるが,現在においても原爆症の認定制度の見直しが求められるなど,被爆者援護施策に対する厳しい要望が続いており,30年を経過した現在においても,懇談会報告書の重要性が増している状況である。
特に,被爆地域拡大要望については,広島,長崎とも活発であるが,国側の対応の拠り所が懇談会報告書であり(「科学的・合理的な根拠のある地域に限定して行うべき」),今後とも一貫した対応を行う上で大変重要な内容となっている。
一方,被爆者団体などからは,国の審議会委員などが「被爆者対策の専門家」でないことをもって,被爆者の現状を反映していないとして,その内容を批判することがある。懇談会委員も,法律などの専門家で構成していたが,被爆者の現状については全ての委員が必ずしも熟知しておらず,懇談会の議論部分での氏名が公開されることで,発言者個人への批判を含めた具体的な指摘を通して,その審議内容が問題視される可能性が大きい。
また,政治的な内容を含む発言もあるため,発言者が明らかになることで,基本的施策の在り方に関する誤解や不信感が増幅する可能性がある(平成22年8月1日付け東京新聞朝刊では,懇談会での委員の発言内容が批判的に引用されており,氏名の開示を機に更なる追及が考えられる)。
さらに,発言者の意図した内容と異なる取り上げられ方をすることで,懇談会の審議や報告の内容が問題視される可能性があり,結果的に,現在の被爆者援護施策への誤解や不信感を招く可能性がある。
また,懇談会における各委員の発言には,誤解,偏見,差別等を含む内容が含まれており,開示することで委員(故人)及び遺族等への誹謗中傷につながり,弁明の機会もないことから,結果的にその名誉が傷つけられる可能性がある。
さらに,各委員の当時の職責から,一部を除いて他の機会で原爆被爆者対策に関する同様の意見を表明する場は皆無であり,原爆被爆者援護策という特別な性格をもつ内容での見解は,通常とは一線を画すべきである。
したがって,原爆被爆者対策に関係のない委員が,何らかの公職についていることをもって,慣行上氏名を開示すべきとするのは適当でなく,また,原爆被爆者施策に関わる委員のみの氏名を開示することも,委員間の公平の観点及び審議事項の重要性から,適当でない。
さらに,懇談会の議事内容自体は開示されており,情報公開の目的が,行政施策での検討内容の検証を行うものだとすれば,その趣旨は既に達成されており,氏名等の開示によるプライバシーの侵害に比べて,開示で得られる利益が上回るとは考え難く,比較考量の点からも開示すべきでない。
なお,議論部分での委員氏名を一部でも開示することは,その他の発言部分にも引用又は類推を通して確認される可能性は否定できず,結果的に,氏名を全面開示することと同様の結果を招来する可能性があり,開示すべきでない。
また,委員の発言中で引用されている他者の氏名等についても,当人の承諾なしに取り上げられており,当人の評価等につながる内容が含まれていることから,開示すべきでない。
また,懇談会では,外部の関係者からヒアリングを行っている(第5回及び第8回)ところ,ヒアリング参加者についても非公開を前提として実施しているものであり,発言者のほとんどが既に故人であり,氏名開示の了解を統一的に取れないことから,不開示とすべきである。
以上のように,仮に開示がされれば,懇談会への批判等を通して,今後の行政への影響は避けられず,かつ,発言者の評価をおとしめ,遺族の私的領域に係る利益(プライバシー)が侵害されるおそれがあることから,意思決定の中立性を不当に損ない,かつ,発言者等に不利益を及ぼし,特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがある情報であり,法5条5号にも該当し,これらの情報が記録されている部分を不開示とすべきである。
なお,会議の冒頭及び終了時における,議事進行に関する発言者の氏名について,個人的見解や議論の内容に関連しない部分であれば,開示することに問題はないと考える。

3結論
以上のとおり,原処分で不開示とした部分のうち,会議の冒頭及び終了時における発言部分で,個人的見解や議論の内容に関連しない部分を除いて,不開示を維持すべきである。

第4調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
平成24年9月6日諮問の受理
同日諮問庁から理由説明書を収受
同年10月12日審議
同日異議申立人から意見書を収受
平成25年8月2日委員の交代に伴う所要の手続の実施及び審議
同年9月3日本件対象文書の見分及び審議
同年10月1日審議

第5審査会の判断の理由
1本件対象文書について
本件対象文書は,昭和54年6月から昭和55年12月まで開催された懇談会の議事録(以下「議事録」という。)のうち,第1回ないし第10回,第12回及び第13回に係るものであり,その記載内容は,上記第3の2において諮問庁が説明するとおりである。
諮問庁説明によれば,当時,懇談会は14回開催されたとのことであり,当審査会において事務局職員をして諮問庁に確認させたところによれば,第11回及び第14回に係る議事録については,厚生労働省内の書庫,事務室等を探索したものの,それらの存在を確認できなかったとのことである。
処分庁は,本件対象文書のうち,法5条1号に該当するとした特定個人の所属,姓,氏名及び敬称(以下「特定個人の氏名等」という。)並びに同条1号及び5号に該当するとした発言者の姓,氏名及び敬称(以下「発言者の氏名等」という。)を不開示として,発言内容を含むその余の部分は開示し,本件対象文書として特定していない議事録は,これを保有していないとする原処分を行った。
異議申立人は,第11回及び第14回に係る議事録の不存在を争わず,本件対象文書の全部開示を求めている。
諮問庁は,発言者の氏名等の一部を開示することとするが,その余の部分は,いずれも法5条1号及び5号に該当するとして,なお不開示とすべきとしているので,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分(以下「本件不開示部分」という。)の不開示情報該当性について検討する。

2本件不開示部分の不開示情報該当性について
(1)別紙1及び別紙4に掲げる特定個人の氏名等
法5条1号該当性について
(ア)特定個人C,同O,同R,同S,同T,同U,同V,同Y及び同Zの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該部分について,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは言えないことから,法5条1号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も認められない。
次に,法6条2項による部分開示の可否を検討すると,当該個人の姓及び氏名は,個人識別部分に該当し,部分開示の余地がなく,法5条5号について判断するまでもない。
しかしながら,別紙4に掲げる敬称については,開示したとしても,個人を特定する手掛かりとなるとは言えないことから,当該個人の権利利益を害するおそれがないと認められる。

(イ)特定個人H,同I及び同eの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該個人は,いずれも,当時又は懇談会開催時の国家公務員であるものの,原処分において開示されている発言内容によれば,職務を遂行した国家公務員の姓ではなく,原爆投下地における自らの被爆等に関する体験を語り伝えた者の姓として,引用又は言及されていることが認められる。
そうすると,このような私的な体験を語り伝えた当該個人の姓が,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは言えないことから,法5条1号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も認められない。
次に,法6条2項による部分開示の可否を検討すると,当該個人の姓は,個人識別部分に該当し,部分開示の余地がなく,法5条5号について判断するまでもない。
しかしながら,別紙4に掲げる敬称については,開示したとしても,個人を特定する手掛かりとなるとは言えないことから,当該個人の権利利益を害するおそれがないと認められる。

(ウ)特定委員α及び同βの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該個人は,後述する懇談会委員であるものの,原処分において開示されている発言内容によれば,健康上の理由で懇談会を欠席した委員として言及されていることが認められる。
そうすると,このような私的な事情を言及された当該個人の姓が,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報とは言えないことから,法5条1号ただし書イに該当せず,同号ただし書ロ及びハに該当する事情も認められない。
次に,法6条2項による部分開示の可否を検討すると,当該個人の姓は,個人識別部分に該当し,部分開示の余地がなく,法5条5号について判断するまでもない。
しかしながら,別紙4に掲げる敬称については,開示したとしても,個人を特定する手掛かりとなるとは言えないことから,当該個人の権利利益を害するおそれがないと認められる。

法5条5号該当性について
次に,別紙4に掲げる敬称の法5条5号該当性について検討すると,開示することによって,将来同種の懇談会等において,外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとは認められず,当該部分を開示すべきである。

(2)別紙2及び別紙4に掲げる特定個人の氏名等
法5条1号該当性について
(ア)特定個人A,同D,同E,同F,同J,同K,同L,同N,同a,同g,同h,同j及び同kの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,原処分において開示されている発言内容には,当該個人の調査・研究活動又は言論・著作活動のあらましが述べられており,公に刊行されている当該個人の著作物及び公開されているインターネット・ホームページ上の当該個人の調査・研究成果を照合することにより,当該個人の所属,姓,氏名及び敬称は,慣行として公にされている情報であると認められ,法5条1号ただし書イに該当する。

(イ)特定個人b,同c及び同iの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,原処分において開示されている発言内容及び公開されているインターネット・ホームページ情報において,発言内容中の当該個人の研究活動が,国の科学研究費補助により行われたことが確認できる。
国の科学研究費補助により行われた研究成果がその研究者名とともに慣行として公表されている現時点においては,当該個人の氏名等は,慣行として公にすることが予定されている情報であると言うべきであり,法5条1号ただし書イに該当する。

(ウ)特定個人B,同G,同M及び同Qの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該個人は,原処分において開示されている発言内容及び公開されているインターネット・ホームページ情報において,当時又は懇談会開催時の国家公務員であることが確認できる。
平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議申合せにより,職務遂行に係る情報に含まれる公務員の氏名は,原則として,公にするものとされていることから,当該個人の姓,氏名及び敬称は,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報であり,法5条1号ただし書イに該当する。

(エ)特定個人P,同f及び同lの氏名等
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該個人は,原処分において開示されている発言内容において,当時又は懇談会開催時の国会議員であることが確認できる。
職務を遂行した国会議員の姓,氏名及び敬称については,国会議員の地位が極めて公共性の高いものであることにかんがみると,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報であり,法5条1号ただし書イに該当する。

(オ)特定個人W,同X及び同dの姓及び氏名
当該部分は,法5条1号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該部分は,特定訴訟事件における原告の姓及び氏名であるところ,原処分において開示された部分に,当該訴訟の概要が,当該個人の姓及び氏名が冠された事件名とともに記載されていることが認められる。
よって,当該個人の姓及び氏名は,法5条1号ただし書イに該当する。

法5条5号該当性について
次に,別紙2に掲げる特定個人の所属,姓及び氏名並びに別紙4に掲げる敬称の法5条5号該当性について検討すると,開示することによって,将来同種の懇談会等において,外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとは認められず,当該部分を開示すべきである。

(3)別紙3及び別紙4に掲げる発言者の氏名等
本件不開示部分のうち,上記(1)及び(2)において判断した部分以外の別紙3及び別紙4に掲げる発言者の氏名等は,①発言者の氏名等,②発言内容中,発言者が呼びかけている相手である別の発言者の氏名等及び③発言内容中,発言者が引用又は言及している別の発言者の氏名等(別紙1の9の特定個人α及び同βの姓を除く。)である。
法5条1号該当性について
まず,当該部分の法5条1号該当性について検討すると,これらは,同号本文前段に規定する個人に関する情報であって,当該個人を識別することができるものに該当する。
そして,当該個人は,厚生大臣から委嘱され懇談会において発言した委員及び懇談会において委員に対し意見を陳述した関係者である。
これらの発言者の氏名については,「懇談会等行政運営上の会合における発言者の氏名について」(平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議資料)において,各府省は,「懇談会等行政運営上の会合の議事録等における発言者の氏名については,特段の理由がない限り,当該発言者が公務員であるか否かを問わず公開するものであることに留意する」としている。
そうすると,別紙3に掲げる発言者の姓,氏名及び敬称は,いずれも,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報であり,法5条1号ただし書イに該当する。

法5条5号該当性について
次に,別紙3に掲げる発言者の姓及び氏名並びに別紙4に掲げる敬称の法5条5号該当性について検討すると,上記アの「懇談会等行政運営上の会合における発言者の氏名について」に基づき,現行の同種の懇談会等の議事録における発言者の氏名について,厚生労働省を含む各府省がインターネット・ホームページ上で公開することが慣行となっている現時点においては,作成及び保有から30年余を経た議事録における別紙3に掲げる発言者の姓及び氏名並びに別紙4に掲げる敬称を開示することによって,将来同種の懇談会等において,外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとは,もはや認めることができず,当該部分を開示すべきである。

3異議申立人のその他の主張について
異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

4本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号及び5号に該当するとして不開示とした決定について,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分のうち,別紙1に掲げる部分は,同条1号に該当すると認められるので,同条5号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当であるが,別紙2,別紙3及び別紙4に掲げる部分は,同条1号及び5号のいずれにも該当せず,開示すべきであると判断した。

(第3部会)
委員 岡島敦子,委員 大久保規子,委員 加々美光子




別紙1
1特定個人Cの姓及び氏名
第2回議事録51頁19行目及び52頁1行目
2特定個人Hの姓
第3回議事録33頁14行目及び第8回議事録20頁左側15行目(敬称を除く。)
3特定個人Iの姓
第3回議事録37頁20行目,第8回議事録12頁右側19行目及び19頁右側8行目(敬称を除く。)
4特定個人Oの姓
第3回議事録54頁1行目
5特定個人R,同S,同T及び同Uの姓
第5回議事録29頁右側20行目
6特定個人Vの姓
第5回議事録65頁右側12行目
7特定個人Y及び同Zの姓
第6回議事録44頁右側8行目及び9行目(敬称を除く。)
8特定個人eの姓
第8回議事録19頁右側15行目
9特定個人α及び同βの姓
第8回議事録85頁左側15行目及び右側5行目(敬称を除く。)




別紙2
1特定個人Aの氏名
第2回議事録38頁5行目及び6行目
2特定個人Bの氏名
第2回議事録50頁14行目
3特定個人Dの姓
第2回議事録64頁8行目,第3回議事録39頁18行目,第9回議事録14頁右側1行目及び第10回議事録34頁右側1行目
4特定個人Eの姓
第3回議事録12頁2行目及び20頁16行目並びに第12回議事録27頁右側20行目及び33頁左側6行目2人目
5特定個人Fの姓
第3回議事録18頁3行目及び36頁4行目
6特定個人Gの姓
第3回議事録22頁10行目
7特定個人Jの所属及び姓
第3回議事録39頁18行目及び19行目
8特定個人Kの姓
第3回議事録41頁12行目,42頁1行目及び44頁13行目並びに第6回議事録6頁左側6行目
9特定個人Lの姓
第3回議事録41頁12行目及び44頁12行目
10特定個人Mの氏名
第3回議事録53頁6行目及び7行目
11特定個人Nの姓
第3回議事録53頁12行目
12特定個人Pの姓
第4回議事録52頁16行目並びに第13回議事録20頁左側18行目及び右側1行目
13特定個人Qの姓
第4回議事録72頁5行目
14特定個人Wの氏名
第6回議事録9頁右側10行目及び18頁右側3行目並びに第7回議事録18頁右側15行目
15特定個人Xの姓
第6回議事録18頁左側8行目
16特定個人aの姓
第6回議事録48頁右側1行目
17特定個人b及び同cの氏名
第8回議事録3頁右側6行目
18特定個人dの姓
第8回議事録15頁左側5行目
19特定個人fの氏名
第8回議事録25頁右側10行目及び11行目
20特定個人gの姓
第8回議事録80頁左側13行目
21特定個人hの姓
第9回議事録37頁左側10行目及び右側1行目
22特定個人iの姓
第10回議事録9頁左側11行目
23特定個人jの姓及び氏名
第10回議事録14頁左側1行目及び2行目
24特定個人kの姓
第12回議事録33頁左側6行目3人目
25特定個人lの氏名
第13回議事録3頁左側15行目及び13頁左側7行目




別紙3
1発言者の姓及び氏名
2発言内容中,発言者が呼びかけている相手である別の発言者の姓及び氏名
3発言内容中,発言者が引用又は言及している別の発言者の姓及び氏名(別紙1の9の特定個人α及び同βの姓を除く。)




別紙4
姓及び氏名に敬称が付記されている者の敬称の全て

2017年9月25日月曜日

黒い雨:放影研データ 11万3000人分保有判明  広島


◇公表し影響再検討を--長崎県保険医協会副会長・本田孝也さん(55)


長崎県保険医協会副会長の本田孝也医師(55)の調査で、黒い雨を浴びた人に急性症状が高率に見られたとする報告書「オークリッジレポート」の存在が明るみになった。放射線影響研究所(南区)が、黒い雨に遭ったと回答した約1万3000人のデータを保有していることも判明した。黒い雨を巡っては、広島市などが援護対象区域を現行の約6倍に拡大するよう要望し、国の有識者検討会が議論している。資料の意義について、本田医師に聞いた。【樋口岳大】
--放影研が保有している1万3000人のデータの価値は。
◆黒い雨による低線量被ばく、内部被ばくの影響を知る上で、極めて有用だ。長崎県保険医協会はこのうち、長崎の約800人がどこで黒い雨に遭遇したかを記した放影研の資料を入手し、分布図を作成した。これは長崎の黒い雨の雨域を塗り替えるものになった。広島の分布図も、放影研がデータを公開すれば作成できる。
基本標本質問票(MSQ)には、下痢や発熱など急性症状のデータもある。より詳細な遮蔽調査では、いつ、どこで、どんな種類の雨に、どのくらいの間遭遇したかを聞き取っている。現在、広島の黒い雨の影響について国が設置した有識者検討会で議論されている。放影研は一刻も早くデータを公表し、この会議を始めとする中立的な専門家が入った場できちんと検討すべきだ。
--なぜこれまで公表されなかったのか。
◆私も強い疑問を感じる。放影研は「03年頃からコンピューターに入力を始め、最近終わった」と説明するが、なぜ、それまで作業をしなかったのか。入力に7年もかかるのか。少なくとも遭遇場所の分布図の作成などは、非常に短時間でできただろう。
--オークリッジレポートについては。
◆黒い雨を浴びた群の急性症状として、発熱13・56%、下痢16・53%、血便5・51%などと報告されている。放影研は比較対照群のデータの集計方法などに問題があると説明した。しかし、比較対照群を考慮しなくても、これらの急性症状の発生率は社会的常識、医学的常識から見て十分高いと言える。
--オークリッジレポートは、放射線の人体影響の研究に活用されなかったのか。
◆レポートを作った山田氏は、原爆放射線の被ばく線量の推定方式「DS86」を作成した旧厚生省原爆放射線量研究チームの一員となった。DS86は、国が「放射性降下物などの残留放射線による人体影響はない」と主張する根拠になっている。なぜDS86の作成で、オークリッジレポートや放影研が持つ黒い雨のデータが生かされなかったのか。国は黒い雨の人体影響について再検討すべきだ。
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◇「高率で急性症状」 オークリッジレポート


本田医師は、住民が黒い雨の健康被害を訴えているのに、被爆地域外とされる長崎市・間の瀬地区(爆心地の北東約7.5キロ)の資料を集めていた今年9月、収集した文献の中から「オークリッジレポート」を見つけた。
米原爆傷害調査委員会(ABCC)の職員だった山田広明氏(86年死去)と、米オークリッジ国立研究所研究員のT.D.ジョーンズ氏が72年に作成したレポートで、これまで存在は知られていなかった。広島の爆心地から1.6キロ以遠で被爆し黒い雨を浴びた236人について、放射線の影響を分析。黒い雨を浴びた群では、発熱、下痢、脱毛などの急性症状が高率で認められたと結論付けている。
一方、ABCCは被爆者ら約12万人が対象の「寿命調査」のため、1950年代に基本標本質問票(MSQ)を作成。対象者に、放射性物質を含む雨に遭ったか▽遭遇場所▽下痢や脱毛など被ばくによる急性症状--を質問していた。
本田医師の照会に対し、ABCCの後継機関・放射線影響研究所は、MSQで「黒い雨に遭った」と回答した人が約1万3000人いると回答。長崎県保険医協会などは、放影研を所管する厚生労働相に、データの公開を求めている。