平成25年度第1回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2014年2月24日 ページID:025134
長崎市の附属機関等について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
平成25年度第1回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成25年12月16日(月) 13:00~14:40
場所
長崎市役所本館3階 第二応接室
議題
(1)会長選出
(2)援護行政の課題説明
(3)会議の運営について
(4)次回開催について
(2)援護行政の課題説明
(3)会議の運営について
(4)次回開催について
審議結果
開会
1 委嘱状交付
1 委嘱状交付
2 副市長挨拶
3 委員紹介
4 事務局職員紹介
5 議題1.会長選出について
・委員の互選により会長が選出された。
・委員の互選により会長が選出された。
6 議題2.援護行政の課題説明について
事務局より説明
事務局より説明
主な質疑応答
1.被爆地域の拡大是正について
(会長) 資料に基づいて、これまでの歴史を説明いただいたが、重要な調査として、平成2年のプルトニウム調査の説明をいただいた。この調査は土壌汚染は確認されたが、人体への影響については、線量が低いという結果であり、白血病などの誘発の係数も低いという結果だった。そこで、市の方では方針を変えて、精神的な調査を行った。私も精神的調査には参加をした。科学的調査として認められたが、被爆者健康手帳が交付されたわけではなく、被爆体験者精神影響等調査研究事業が実施された。
1.被爆地域の拡大是正について
(会長) 資料に基づいて、これまでの歴史を説明いただいたが、重要な調査として、平成2年のプルトニウム調査の説明をいただいた。この調査は土壌汚染は確認されたが、人体への影響については、線量が低いという結果であり、白血病などの誘発の係数も低いという結果だった。そこで、市の方では方針を変えて、精神的な調査を行った。私も精神的調査には参加をした。科学的調査として認められたが、被爆者健康手帳が交付されたわけではなく、被爆体験者精神影響等調査研究事業が実施された。
(委員) 資料に「被爆地域拡大要望地域の最大被曝線量は2.5センチグレイで、発がんの過剰相対リスクは白血病で0.13、白血病以外の全ガンで0.01程度である。」と記載されているが、これは、実際に住民の健康調査をしたのか。
(会長) これは計算上ということ。原爆被爆者の調査で過剰相対リスクが分かっているので、それと比較して0.13ぐらいということ。これは住民の健康調査がプルトニウムの汚染地帯でやられているわけではなく推計しているということ。この報告書の原本とか元になった測定データを見直すことも大事であると考える。
(委員) 広島の場合は、おおざっぱに同心円状に考えられているが、長崎の場合は、地形の関係上いびつになっているわけだが、マップに沿った線量のデータというのはこの会に提示していただけるのか。
(事務局) 提示可能である。ただし、人体への推定線量ではなくて、プルトニウム調査で行った70地点の測定値のマップの資料となります。会長がおっしゃったようにプルトニウム調査では健康調査までは行っていないので、そのあたりはご理解いただきたい。
2.原爆症認定制度について
(会長) 長崎県内で長崎市以外の被爆者数は。
(会長) 長崎県内で長崎市以外の被爆者数は。
(長崎県) 15,000人くらい。
(会長) 健康管理手当受給者は、原爆放射線障害が明らかでない場合を除くとなっているが、放射線誘発が明らかなという規定になっていないのはなぜか。
(事務局) 健康管理手当は、放射線起因性がまったく関係ないという場合は該当しないが、それ以外については広く対象にするという趣旨のものである。
(委員) 原爆症として積極的に認定する範囲については、労災での規定と比べてどうなのか。
(事務局) 労災基準を承知していないので、次回の会議で資料として提出したい。
(会長) 放射線起因性が認められる心筋梗塞、あるいは甲状腺機能低下症。放射線起因性が認められるというところが外されたのではなかったのか。
(事務局) 資料記載の基準は、今現在の基準。それで、今、見直しがされる中であり、この「放射線起因性が認められる」という部分が外されるような案が出されているというところである。厚労省の方で新しい基準の案を示しているという段階である。
正式なものが出たら、こちらの方にもお出ししたい。
正式なものが出たら、こちらの方にもお出ししたい。
(会長) 3.5キロというところがもう一つ大きなところであると考える。実際に線量はあるのか。DS02ではどうか。
(事務局) 科学的部分については、次回お出ししたい。
(会長) 未指定地域で、25ミリシーベルトという結果が出て、3.5キロ付近では1ミリシーベルトくらいということではるかに小さい。矛盾している部分もあるのも事実。そこら辺を十分検討していかなければならない。
(委員) 3.5キロは1ミリシーベルトに近いという正式見解が出ている。資料で読んだ記憶がある。
3.放射線被爆の遺伝的影響について
(会長) 両親が被爆者で、線量が分かっていないと研究が成立しない。線量が分かっている被爆者の集団、いわゆる放射線影響研究所のLSS(寿命調査)集団が約8万人。その方の子供さんたち、追跡調査をしているという説明がさきほどあったが、現在のところはっきりした証拠がつかめていないというところである。このあたりは、まだ遺伝的影響がないと断定はできないという状況である。
母集団が約1万人くらいで、現在も調査が継続されているところであるが、被爆二世の実数は、長崎市は把握しているのか。
(会長) 両親が被爆者で、線量が分かっていないと研究が成立しない。線量が分かっている被爆者の集団、いわゆる放射線影響研究所のLSS(寿命調査)集団が約8万人。その方の子供さんたち、追跡調査をしているという説明がさきほどあったが、現在のところはっきりした証拠がつかめていないというところである。このあたりは、まだ遺伝的影響がないと断定はできないという状況である。
母集団が約1万人くらいで、現在も調査が継続されているところであるが、被爆二世の実数は、長崎市は把握しているのか。
(事務局) 把握できていない。
(会長) 過去に長崎大学原爆後障害医療研究所(原研)がアンケート調査をやっているようだが。
(委員) 昭和47~49年にかけて、被爆者の世帯の子供の調査をやっている。たしか5万人くらいだったと思う。1年目が近距離で、2年目が少し伸ばして、3年目が入市みたいな形で広げていっているようである。原本は原研が保管している。
(会長) 広島の方はいかがか。
(委員) 調査に基づいた線量データベースがあって、それを用いた遺伝の健康影響について少しある。さきほどの原研の調査結果は報告されているのか。
(委員) 長崎市に提出している。
(会長) 対象になる方が何人いるか分からないという状況で、しっかりした調査がなされていないという状況のようなので、遺伝的な影響については、ここをスタートにおいてみてはいかがか。
今すぐに結論がでるような研究ではないが、委員の皆さんは情報収集していただければと思う。
これまでに、二世に影響があるというのは、動物実験に限られており、それも動物の種類によって違うということを聞いたことがあるがいかがか。
今すぐに結論がでるような研究ではないが、委員の皆さんは情報収集していただければと思う。
これまでに、二世に影響があるというのは、動物実験に限られており、それも動物の種類によって違うということを聞いたことがあるがいかがか。
(委員) マウスの実験で結果がある。それは動物の種類によって影響が違うという結果であった。
(会長) 人体へはどうかというところが大きなテーマである。研究が進められているので、知見を収集していくことができればと思う。
まとめ
(会長) それでは、振り返って第1課題から第3課題までに対するこの研究会の進め方について、委員の皆様からご意見を伺いたい。
(会長) それでは、振り返って第1課題から第3課題までに対するこの研究会の進め方について、委員の皆様からご意見を伺いたい。
(委員) テーマが多岐にわたっているので難しいが、これまで、二世の集団が確定していなくて、ぜひ集団を固定して進めていければと感じている。
(委員) どういった形で進めていくのかもう少し細かく決めておいたがよいと思う。委員の方で、宿題のような形で調べておくことがあればなど。
(委員) 3つのテーマ課題については、得意なところと不得意なところがあって、過去のデータを見ていくということも大事であるが、新しいデータも公開できる範囲で集めていきたいと思う。
(委員) 被曝線量の評価について、いくつかデータがあるが、その解釈のところで混乱が生じているところがあるので、そこをフラットにして、どういう解釈ができるのかといういろんな可能性を出し合うということ、それから、外部被曝、内部被曝、初期被曝、残存被曝、ある程度きっちり分けて、データを評価していく必要があると考えている。
(会長) 残留被曝は、新しい知見はあるのか。
(委員) 今の所ない。
(委員) 今まで明らかにされたデータをもう一度きちっと評価するということは、まず基本として大事である。そのうえで、今後どういうデータが必要であるかということまで議論できたらと良いと考える。
(会長) 原爆後からのかなり古いデータにもう一度光を当てるとか、じっくり検討するとそこから、気づいてなかったデータなどを見出す努力をすると、そういうことから始めたい。
そして現在も行われている研究、知見などを可能な限り収集していって、この3つの課題の問題点の解決に向けて、この研究会なりのある程度の方向性を見出していきたい。
それでは、宿題というか、先生方お一人おひとり得意の分野というのがあろうかと思うが、3つの課題に関しては、皆さん共通して宿題としてとらえていただいて、まずは早速過去のデータを収集していただければと思う。
その都度、進捗状況は私にお知らせいただき、この会をどのくらいの頻度で開催するかということもあるが、皆さんお忙しいから、ある程度の間隔を置きながら、まとまりがある部分が出てきたところで、進めていきたいと会長としては考えている。
そして現在も行われている研究、知見などを可能な限り収集していって、この3つの課題の問題点の解決に向けて、この研究会なりのある程度の方向性を見出していきたい。
それでは、宿題というか、先生方お一人おひとり得意の分野というのがあろうかと思うが、3つの課題に関しては、皆さん共通して宿題としてとらえていただいて、まずは早速過去のデータを収集していただければと思う。
その都度、進捗状況は私にお知らせいただき、この会をどのくらいの頻度で開催するかということもあるが、皆さんお忙しいから、ある程度の間隔を置きながら、まとまりがある部分が出てきたところで、進めていきたいと会長としては考えている。
7 議題3.会議の運営について
・事務局より説明
・会議は原則公開とすることについて承認が得られた。
・事務局より説明
・会議は原則公開とすることについて承認が得られた。
主な質疑
(会長) 必要な研究論文などは、独自にリストアップしていただいて、それを私の方に送っていただきたい。重複などあるかもしれないので、自分はこれを担当したいというのは印をつけていただきたい。
それから、論文等の概要は、英文の場合などは特に、日本文で概要を作っていただいて提出していただき、行政にまとめて提出すると、それを資料としてまとめて各先生方にお返しするということを、次の会から順次やっていこうと考えている。
ぜひ、網羅的にということを念頭においていただいて、特に先生方のご専門は念入りにやっていただければと思う。
(会長) 必要な研究論文などは、独自にリストアップしていただいて、それを私の方に送っていただきたい。重複などあるかもしれないので、自分はこれを担当したいというのは印をつけていただきたい。
それから、論文等の概要は、英文の場合などは特に、日本文で概要を作っていただいて提出していただき、行政にまとめて提出すると、それを資料としてまとめて各先生方にお返しするということを、次の会から順次やっていこうと考えている。
ぜひ、網羅的にということを念頭においていただいて、特に先生方のご専門は念入りにやっていただければと思う。
8 次回開催について
・3月中に開催することで承認が得られた。
・3月中に開催することで承認が得られた。
閉会
平成25年度第2回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2014年4月25日 ページID:025439
長崎市の附属機関等について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
平成25年度第2回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成26年3月13日(木曜日) 13時~
場所
長崎市原爆資料館 平和学習室
議題
議題1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
議題2 情報収集(分担等)について
議題3 次回開催について
議題2 情報収集(分担等)について
議題3 次回開催について
審議結果
開会
1 市長挨拶
2 議題1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
(1)原子爆弾災害学術調査
・委員による説明
(2)行政主体による調査研究
・事務局による説明
(3)原爆放射線の人体影響
・事務局による説明
3 議題2 情報収集(分担等)について
4 議題3 次回開催について
1 市長挨拶
2 議題1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
(1)原子爆弾災害学術調査
・委員による説明
(2)行政主体による調査研究
・事務局による説明
(3)原爆放射線の人体影響
・事務局による説明
3 議題2 情報収集(分担等)について
4 議題3 次回開催について
主な質疑応答
1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
(1) 原子爆弾災害学術調査
【委員】
資料1の7ページの説明で、自然放射線の8倍あるいは200倍とあるが、自然放射線はどこを測定したのか。
【委員】
資料1の7ページの説明で、自然放射線の8倍あるいは200倍とあるが、自然放射線はどこを測定したのか。
【委員】
これはネーア型という測定器を使って測ったもので、バックグラウンド(※注1)から算出したもの。
※注1 バックグラウンド
放射線測定の分野では、対象とする放射線源以外の要因で計数される値を指す。
これはネーア型という測定器を使って測ったもので、バックグラウンド(※注1)から算出したもの。
※注1 バックグラウンド
放射線測定の分野では、対象とする放射線源以外の要因で計数される値を指す。
【会長】
原爆に関するいろいろな資料を網羅的に把握しようという作業をした。これだけで全てかというとそうではないので、もう少し調査する必要がある。こういう資料はアメリカの公文書館から発掘されることが多いので、長崎原爆に関する一時的なリストを見たいと思っている。長崎市にも協力をお願いしたい。
原爆に関するいろいろな資料を網羅的に把握しようという作業をした。これだけで全てかというとそうではないので、もう少し調査する必要がある。こういう資料はアメリカの公文書館から発掘されることが多いので、長崎原爆に関する一時的なリストを見たいと思っている。長崎市にも協力をお願いしたい。
(2) 行政主体による調査研究
【会長】
長崎市の行政主体の調査で一つ大きな点は、長崎残留放射能プルトニウム調査(以下、「プルトニウム調査」という。)があるというところ。被爆地域拡大に関しては、新しい知見を見出すことにつながる一つとして、これを見直すことが有効ではないか。
遺伝的な調査に関して、「被爆者とその家族の基本調査」は、私の知っている限りでは唯一の大掛かりな調査だと思うが、これは担当になられた委員にはよく見てもらいたい。
広島市でも黒い雨や精神的影響調査が現在進行形で進んでいるので、この研究会においても非常に重要な情報なので、広島市の状況を伺いたい。
【会長】
長崎市の行政主体の調査で一つ大きな点は、長崎残留放射能プルトニウム調査(以下、「プルトニウム調査」という。)があるというところ。被爆地域拡大に関しては、新しい知見を見出すことにつながる一つとして、これを見直すことが有効ではないか。
遺伝的な調査に関して、「被爆者とその家族の基本調査」は、私の知っている限りでは唯一の大掛かりな調査だと思うが、これは担当になられた委員にはよく見てもらいたい。
広島市でも黒い雨や精神的影響調査が現在進行形で進んでいるので、この研究会においても非常に重要な情報なので、広島市の状況を伺いたい。
【委員】
広島市も黒い雨の地域を被爆地域と認めてほしいということで、長崎市と同様に調査を行い、国に要望をしてきたが、なかなか認められてこなかったというのが現状である。
広島市では、精神的影響に関しては、十分な調査ができていないので、長崎市の例を踏まえて、平成13年度に、有識者による広島市原子爆弾被爆実態調査研究会が組織され、私が座長を務めて取りまとめを行った。この研究会で、平成14年度に1万人を対象とするアンケート調査を実施した結果、原爆体験した人は、やはり心身への影響を抱えている可能性が高い。もう一つ重要な点は、黒い雨を体験した人は、体験していない人に比べて影響が大きいということが示唆された。こういう基礎的な情報が得られたので、広島市としては、より実態解明を進める必要があるということで、平成19年にもう一度ワーキング会議を立ち上げて、どういう調査方法がいいかということを検討した。
それを踏まえて、平成20年に再度、被爆実態を解明するために広島市原子爆弾被爆実態調査研究会を立ち上げた。その座長も引き続き担当して、平成20年の6月から、原爆体験者等健康意識調査を開始した。この調査は非常に大規模なもので、対象者が3万7千人近く、得られた回答が2万7千人くらいあり、有効回答率は74%に達した。この回答の中から、任意に900人近い人の個人調査(面談)を行い、より詳細な調査を行った。
調査の結果は、被爆体験者に、今なお心身面、健康面の不良があるということが示された。その原因は、放射線に対する不安が大きいのではないかということが示唆された。また、この調査は被爆から63年後の時点だったが、その時点においても、被爆者の1~3%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)が認められるということで、ここで初めて、精神的影響が明らかになった。それに加えて、黒い雨を体験した未指定地域の住民に心身面、健康面において、被爆者に匹敵するような不調があるということも明らかになったと考えた。そして、この調査では、アンケート調査を基にし、再度黒い雨が降った地域の統計学的な解析を行った。その結果、黒い雨の降雨地域は従来言われていたものより、はるかに広い範囲に黒い雨が降った可能性があるということが示唆された。これが報告書の内容になり、それと同時に広島市では、物理学的な線量評価も行っている。これには気象の専門家も加わり、今までグローバルフォールアウト(※注2)のために、広島原爆に特異的な放射性物質の検出ができなかったが、今度は、古い家屋の床下、つまりグローバルフォールアウトの影響を受けにくい土壌を調査して、併せてその結果をもって国に要望した。
国はこの報告書の科学的妥当性を検証するための検討会を設置し、詳細に検討した。国の検討を紹介すると、黒い雨を体験した人の健康状態について、国も黒い雨を体験した人には、黒い雨を体験していない人に比べて精神的な健康状態が悪い傾向がみられると認めた。しかし、これが精神的健康状態が悪いという明確な証拠ではないということも指摘された。
黒い雨の地理分布に関しては、結論的には、今回のデータで黒い雨の降雨区域を決定することは難しいという結論であった。その理由として、未指定地域で黒い雨を体験した人が50%を超える地域が非常に少ないという点、それから20キロメートル以遠でのデータが少ないという点、それから被爆後60年以上たった記憶に頼っていて、その正確性が十分に明らかにされていないという点が指摘された。それから、広島原爆に由来する残留放射線の評価は、今回の調査で、要望地域において、広島原爆の放射性降下物が存在したという明確な痕跡が見い出せず、放射性降下物による被爆の明確な根拠は存在しないという結論が出された。
しかし、黒い雨を体験した人は、明らかに精神健康面で、黒い雨を体験していない人より、精神健康面が悪いという結果が出たので、これに対して何らかの対応が必要であり、現在相談事業を進めているということが、広島市の現状である。
このようになかなか国は、私どもが出した証拠を認めてくれず、非常に高いハードルとなっている。国も出された報告書を再度検討するが、非常に厳密な科学的な根拠あるいは合理的な根拠というのが求められる。その厳密な評価に対して耐えうるだけの有無を言わさないような証拠が必要である。私どももそのような根拠を作ったが、なかなか認められず、調査そのものも限界が指摘されるようなこともあった。疫学的調査に限れば、そういう厳密な調査となると、公益財団法人放射線影響研究所が実施しているようなコホート調査(※注3)のような調査になるかと思うが、限られた時間でそういう調査をするのは物理的に難しい点もある。
これからこの研究会でどういうことをやっていく必要があるのかを考えると、少なくとも2つのアプローチが可能ではないかと思う。1つは今までに報告されたデータを基に、再度そのデータを検証し、何か新しい証拠になるような糸口を見い出し、そこに最近進歩してきている新しい解析データあるいは統計の手法について新しい事実を見い出すということ。
もう1つは、新しい学問が進んできており、リスク評価に関する考え方も変わってきていると思うので、そういう新しい視点から、今までの線量データを再検討することが非常に有力な武器になるのではないかと思う。プルトニウム調査のデータでは、明らかにプルトニウムが出ているので、そういう情報というのは非常に重要であると思う。そういうところから新しい事実や線量の評価ができれば、大きな証拠になるのではないかと思う。
※注2 グローバルフォールアウト
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
※注3 コホート調査
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
広島市も黒い雨の地域を被爆地域と認めてほしいということで、長崎市と同様に調査を行い、国に要望をしてきたが、なかなか認められてこなかったというのが現状である。
広島市では、精神的影響に関しては、十分な調査ができていないので、長崎市の例を踏まえて、平成13年度に、有識者による広島市原子爆弾被爆実態調査研究会が組織され、私が座長を務めて取りまとめを行った。この研究会で、平成14年度に1万人を対象とするアンケート調査を実施した結果、原爆体験した人は、やはり心身への影響を抱えている可能性が高い。もう一つ重要な点は、黒い雨を体験した人は、体験していない人に比べて影響が大きいということが示唆された。こういう基礎的な情報が得られたので、広島市としては、より実態解明を進める必要があるということで、平成19年にもう一度ワーキング会議を立ち上げて、どういう調査方法がいいかということを検討した。
それを踏まえて、平成20年に再度、被爆実態を解明するために広島市原子爆弾被爆実態調査研究会を立ち上げた。その座長も引き続き担当して、平成20年の6月から、原爆体験者等健康意識調査を開始した。この調査は非常に大規模なもので、対象者が3万7千人近く、得られた回答が2万7千人くらいあり、有効回答率は74%に達した。この回答の中から、任意に900人近い人の個人調査(面談)を行い、より詳細な調査を行った。
調査の結果は、被爆体験者に、今なお心身面、健康面の不良があるということが示された。その原因は、放射線に対する不安が大きいのではないかということが示唆された。また、この調査は被爆から63年後の時点だったが、その時点においても、被爆者の1~3%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)が認められるということで、ここで初めて、精神的影響が明らかになった。それに加えて、黒い雨を体験した未指定地域の住民に心身面、健康面において、被爆者に匹敵するような不調があるということも明らかになったと考えた。そして、この調査では、アンケート調査を基にし、再度黒い雨が降った地域の統計学的な解析を行った。その結果、黒い雨の降雨地域は従来言われていたものより、はるかに広い範囲に黒い雨が降った可能性があるということが示唆された。これが報告書の内容になり、それと同時に広島市では、物理学的な線量評価も行っている。これには気象の専門家も加わり、今までグローバルフォールアウト(※注2)のために、広島原爆に特異的な放射性物質の検出ができなかったが、今度は、古い家屋の床下、つまりグローバルフォールアウトの影響を受けにくい土壌を調査して、併せてその結果をもって国に要望した。
国はこの報告書の科学的妥当性を検証するための検討会を設置し、詳細に検討した。国の検討を紹介すると、黒い雨を体験した人の健康状態について、国も黒い雨を体験した人には、黒い雨を体験していない人に比べて精神的な健康状態が悪い傾向がみられると認めた。しかし、これが精神的健康状態が悪いという明確な証拠ではないということも指摘された。
黒い雨の地理分布に関しては、結論的には、今回のデータで黒い雨の降雨区域を決定することは難しいという結論であった。その理由として、未指定地域で黒い雨を体験した人が50%を超える地域が非常に少ないという点、それから20キロメートル以遠でのデータが少ないという点、それから被爆後60年以上たった記憶に頼っていて、その正確性が十分に明らかにされていないという点が指摘された。それから、広島原爆に由来する残留放射線の評価は、今回の調査で、要望地域において、広島原爆の放射性降下物が存在したという明確な痕跡が見い出せず、放射性降下物による被爆の明確な根拠は存在しないという結論が出された。
しかし、黒い雨を体験した人は、明らかに精神健康面で、黒い雨を体験していない人より、精神健康面が悪いという結果が出たので、これに対して何らかの対応が必要であり、現在相談事業を進めているということが、広島市の現状である。
このようになかなか国は、私どもが出した証拠を認めてくれず、非常に高いハードルとなっている。国も出された報告書を再度検討するが、非常に厳密な科学的な根拠あるいは合理的な根拠というのが求められる。その厳密な評価に対して耐えうるだけの有無を言わさないような証拠が必要である。私どももそのような根拠を作ったが、なかなか認められず、調査そのものも限界が指摘されるようなこともあった。疫学的調査に限れば、そういう厳密な調査となると、公益財団法人放射線影響研究所が実施しているようなコホート調査(※注3)のような調査になるかと思うが、限られた時間でそういう調査をするのは物理的に難しい点もある。
これからこの研究会でどういうことをやっていく必要があるのかを考えると、少なくとも2つのアプローチが可能ではないかと思う。1つは今までに報告されたデータを基に、再度そのデータを検証し、何か新しい証拠になるような糸口を見い出し、そこに最近進歩してきている新しい解析データあるいは統計の手法について新しい事実を見い出すということ。
もう1つは、新しい学問が進んできており、リスク評価に関する考え方も変わってきていると思うので、そういう新しい視点から、今までの線量データを再検討することが非常に有力な武器になるのではないかと思う。プルトニウム調査のデータでは、明らかにプルトニウムが出ているので、そういう情報というのは非常に重要であると思う。そういうところから新しい事実や線量の評価ができれば、大きな証拠になるのではないかと思う。
※注2 グローバルフォールアウト
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
※注3 コホート調査
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
【会長】
プルトニウム調査は、非常に緻密に調査されている。プルトニウムの調査をあれだけやるというの非常に大変なのか。
プルトニウム調査は、非常に緻密に調査されている。プルトニウムの調査をあれだけやるというの非常に大変なのか。
【委員】
非常に大変であり数年かかる。再検証するにしても2か所くらいしかできないのではないか。
非常に大変であり数年かかる。再検証するにしても2か所くらいしかできないのではないか。
【委員】
広島市の場合はグローバルフォールアウトに隠れてなかなか分からない。
広島市の場合はグローバルフォールアウトに隠れてなかなか分からない。
【会長】
グローバルフォールアウトというのは、1960年代の核実験の影響である。日本の場合はソ連の実験によってセシウムとかストロンチウムとかが降ってきている。それがあるから隠れてしまうということ。
グローバルフォールアウトというのは、1960年代の核実験の影響である。日本の場合はソ連の実験によってセシウムとかストロンチウムとかが降ってきている。それがあるから隠れてしまうということ。
【委員】
広島市の調査では、被爆直後に立ったと想定されるような、古い民家の床下を掘った。それでもなかなか見い出せなかった。
広島市の調査では、被爆直後に立ったと想定されるような、古い民家の床下を掘った。それでもなかなか見い出せなかった。
【会長】
それに比べるとプルトニウム調査による長崎の測定値が実際にこれだけあるということは、非常に大きなデータである。
それに比べるとプルトニウム調査による長崎の測定値が実際にこれだけあるということは、非常に大きなデータである。
(3) 原爆放射線の人体影響
【会長】
原子爆弾後障害研究会は、毎年、広島市と長崎市交互で行われており、多数の論文発表がある。それから公益財団法人放射線影響研究所が独自に今まで2,000以上の研究論文を発表している。以上をまとめた形で、改訂第二版の原爆放射線の人体影響という冊子がある。今回の研究会の資料に加えたいと考えている。
【会長】
原子爆弾後障害研究会は、毎年、広島市と長崎市交互で行われており、多数の論文発表がある。それから公益財団法人放射線影響研究所が独自に今まで2,000以上の研究論文を発表している。以上をまとめた形で、改訂第二版の原爆放射線の人体影響という冊子がある。今回の研究会の資料に加えたいと考えている。
【委員】
原子爆弾後障害研究会総索引をもらったが、タイトルしか書いていない。この中身を検索する場合、長崎市追悼平和祈念館のデータベースにはどこまで入っているのか。最近5年とか10年とかの冊子は持っているが、それ以前についてはない場合が多いので、そういったものは収集できるのか。
原子爆弾後障害研究会総索引をもらったが、タイトルしか書いていない。この中身を検索する場合、長崎市追悼平和祈念館のデータベースにはどこまで入っているのか。最近5年とか10年とかの冊子は持っているが、それ以前についてはない場合が多いので、そういったものは収集できるのか。
【事務局】
現時点では、持ち合わせていないので、委員から依頼があった資料については、事務局の方で収集したい。
現時点では、持ち合わせていないので、委員から依頼があった資料については、事務局の方で収集したい。
【会長】
その他にこういった広島市・長崎市の研究論文以外にないかということだが、私が収集したものを紹介したい。2013年にサンフランシスコでhealth physics societyという核物理健康学の学会が、広島市の先生とか厚労省を招いて、ワークショップをやっているものが手に入った。これは残留放射能について今のデータはどういう意義があるか、問題はないかということなどを専門に検討している。これはアメリカの学者が主にやっているわけだが、公益財団法人放射線影響研究所がDS86(※注4)やDS02(※注5)を検討するときに中心になっているDr.Kerrという人が参加しており、このように定期的意見交換している。まだ解明されていないという意見もあり、こういう実態の部分も把握する必要があると思っている。原子爆弾の被害というのは広島市と長崎市以外にないので、世界には関心をもって熱心に研究している人がおり、視野を広げてみてもらいたい。
※注4 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
※注5 DS02
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。従来のDS86(Dosimetry System1986)を改善し、2003年3月より新しい線量推定システムDS02を寿命調査(LSS)に導入した。
その他にこういった広島市・長崎市の研究論文以外にないかということだが、私が収集したものを紹介したい。2013年にサンフランシスコでhealth physics societyという核物理健康学の学会が、広島市の先生とか厚労省を招いて、ワークショップをやっているものが手に入った。これは残留放射能について今のデータはどういう意義があるか、問題はないかということなどを専門に検討している。これはアメリカの学者が主にやっているわけだが、公益財団法人放射線影響研究所がDS86(※注4)やDS02(※注5)を検討するときに中心になっているDr.Kerrという人が参加しており、このように定期的意見交換している。まだ解明されていないという意見もあり、こういう実態の部分も把握する必要があると思っている。原子爆弾の被害というのは広島市と長崎市以外にないので、世界には関心をもって熱心に研究している人がおり、視野を広げてみてもらいたい。
※注4 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
※注5 DS02
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。従来のDS86(Dosimetry System1986)を改善し、2003年3月より新しい線量推定システムDS02を寿命調査(LSS)に導入した。
2 情報収集(分担等)について
【会長】
今後どういうステップで進めていくか、資料収集については、自分の得意分野を中心に全員で取り組んでもらいたい。被爆線量に関しては、先ほど話題になったプルトニウム調査報告書を中心に行われていく。それからマンハッタン調査団の方も測定しており、理化学研究所も測定している。整合性なども見ていかないといけない。人体影響が最終的なゴールであり、専門のA委員とチェルノブイリの現地でもそういうことに取り組んできたB委員にお願いしたい。
それから、広い意味での健康影響、遺伝的影響について、C委員とD委員の長い経験に基づいて情報収集してもらい、私も少し入らせてもらいたい。私とE委員は、各委員が情報収集してきたものに対し、総括的な意見を出そうと思っている。
A委員、プルトニウム報告書関連について、資料をチェックし直すことは可能か。
今後どういうステップで進めていくか、資料収集については、自分の得意分野を中心に全員で取り組んでもらいたい。被爆線量に関しては、先ほど話題になったプルトニウム調査報告書を中心に行われていく。それからマンハッタン調査団の方も測定しており、理化学研究所も測定している。整合性なども見ていかないといけない。人体影響が最終的なゴールであり、専門のA委員とチェルノブイリの現地でもそういうことに取り組んできたB委員にお願いしたい。
それから、広い意味での健康影響、遺伝的影響について、C委員とD委員の長い経験に基づいて情報収集してもらい、私も少し入らせてもらいたい。私とE委員は、各委員が情報収集してきたものに対し、総括的な意見を出そうと思っている。
A委員、プルトニウム報告書関連について、資料をチェックし直すことは可能か。
【委員】
プルトニウム調査については、生データにアクセスできれば可能である。
プルトニウム調査については、生データにアクセスできれば可能である。
【委員】
プルトニウム調査を行った岡島俊三長崎大学名誉教授が今も福島で活躍されている。時間があれば、当研究会に出席してもらい、話をしてもらうことも可能ではないかと思う。
プルトニウム調査を行った岡島俊三長崎大学名誉教授が今も福島で活躍されている。時間があれば、当研究会に出席してもらい、話をしてもらうことも可能ではないかと思う。
【会長】
この研究会には、関係人を招聘することができるので、専門の先生など、いろいろなお話を伺っていくことも必要であると思っている。資料が欲しい場合は、D委員に尋ねてもらいたい。
この研究会には、関係人を招聘することができるので、専門の先生など、いろいろなお話を伺っていくことも必要であると思っている。資料が欲しい場合は、D委員に尋ねてもらいたい。
【委員】
資料の収集について了解した。
資料の収集について了解した。
【会長】
今日持ってきている資料はD委員が持っているので、見てもらいたい。全6巻のMedical effects of atomic bombs The report of the joint Commission for the Investigation of the effects of the atomic bomb in Japanに目を通したが、非常に多くの記述がある。米軍が測定した放射能の検出はかなり遠方までいっている。特に東長崎方面の東に。広島市はそういうデータはないのか。
今日持ってきている資料はD委員が持っているので、見てもらいたい。全6巻のMedical effects of atomic bombs The report of the joint Commission for the Investigation of the effects of the atomic bomb in Japanに目を通したが、非常に多くの記述がある。米軍が測定した放射能の検出はかなり遠方までいっている。特に東長崎方面の東に。広島市はそういうデータはないのか。
【委員】
黒い雨の地域に関しては、国が認めているところがあるが、今回のアンケート調査ではそれ以上の広い範囲では降った可能性があるということを示しているが、そこでのアンケートの症例が少ない。
黒い雨の地域に関しては、国が認めているところがあるが、今回のアンケート調査ではそれ以上の広い範囲では降った可能性があるということを示しているが、そこでのアンケートの症例が少ない。
【会長】
もう一点、原爆症の認定基準が見直されたことについて 、事務局から報告がある。
もう一点、原爆症の認定基準が見直されたことについて 、事務局から報告がある。
【事務局】
原爆症認定基準について説明。
原爆症認定基準について説明。
【会長】
3つ目の課題がこの認定基準なので、資料を見てもらいたい。
3つ目の課題がこの認定基準なので、資料を見てもらいたい。
3 次回開催について
【会長】
次回開催については、半年ぐらい置く必要があるが、担当される委員はどうか。
次回開催については、半年ぐらい置く必要があるが、担当される委員はどうか。
【委員】
プルトニウム調査はできるが、マンハッタン調査団とかまで含めると難しい。
プルトニウム調査はできるが、マンハッタン調査団とかまで含めると難しい。
【会長)】
半年後でよいか。
半年後でよいか。
【事務局】
詳しい日程については、進捗状況を踏まえて、会長と事務局の方で調整させてもらいたい。
詳しい日程については、進捗状況を踏まえて、会長と事務局の方で調整させてもらいたい。
【会長】
9月中に第3回を開催したいと思う。
9月中に第3回を開催したいと思う。
以上
第3回(平成26年度第1回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2014年12月8日 ページID:026241
長崎市の附属機関等について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
第3回(平成26年度第1回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成26年10月7日(火曜日) 13時30分~15時
場所
長崎県勤労福祉会館4階 第2中会議室
議題
審議事項1 長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告について
審議事項2 原爆放射線の人体影響に関する研究等情報について
審議事項3 次回開催について
審議事項2 原爆放射線の人体影響に関する研究等情報について
審議事項3 次回開催について
審議結果
開会
審議事項1 長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告について
<委員説明>
【委員】
長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(※1)の論理で再計算できるものがないか検証した。この報告は、1991年に報告されたもので、調査の地点は基準地区として、高放射能汚染地区として知られていた西山地区の6地点とした。風下にあたる爆心地の北東から南東の90°48地点、それから風上にあたる南東から北東の270°16地点の表層から10センチメートルの土壌を採取した。これを乾燥させた後にふるいにかけ、直径2ミリメートル以下の表層圡50gを試料として、この中のプルトニウム(※2)をアルファ線スペクトルメトリィ(放射性核種はその壊変に伴って、固有のエネルギーを持つα線、β線、γ線などの放射線を放出する。スペクトロメトリィとは、この放射線の線束とエネルギーを測定し、核種を同定するとともにその存在量を決定する(定量)ことを言う。 )という手法で分析している。分析は、財団法人日本分析センターにて行った。
ここで得られるデータはプルトニウム239と240の合算値になる。原爆後の世界的な核実験によって、特に北半球はグローバルフォールアウト(※3)で同じプルトニウムが落ちているので、その分は差し引かなければいけない。その値は、同じ長崎の風上方向の平均値0.9Bq/kgを核実験上のプルトニウムとした。
得られた最大値は西山地区で24Bq/kgという数値が出た。そして、まったく同地区か分からないが、同じ西山地区でDS86(※4)による最大推定吸収線量(※5)が16cGyという値が出ているので、この土壌汚染プルトニウム濃度の24Bq/kgという値がDS86の吸収線量の16cGyに等しいという論理で、この関係をほかの地点で得られたプルトニウムの濃度に代入して吸収線量が出てくるという論理である。
結果は、実際にプルトニウムが有意に検出された15地点を資料1の4ページ下表にまとめたが、左から爆心地からの距離、プルトニウム濃度、DS86で得られた吸収線量であり、cGyは最近一般的ではない単位なので、mGyになおしている。160mGyが最大吸収線量となっている。これが長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告のデータである。
今回、検討したポイントは、今の論理の中の、プルトニウム濃度の測定が他の調査の測定値と比較してどの程度の範囲になるかということ、DS86との比較以外の方法がないかということ、マンハッタン調査団最終報告書(以下、「マンハッタン調査報告」という。)の空間線量データを取り入れることができないかという3点を検討した。
プルトニウム濃度に関する比較は、1975年に金沢大学の山本先生が広島大学の星先生、長崎大学の岡島先生などと調査(以下、「山本調査」という。)しているものがあり、西山地区の土壌中のプルトニウム濃度を測定している。資料1の6ページの上表に結果をまとめているが、爆心地からの距離が遠くなれば減るわけではなくある程度バラつきがあり、大体17-51Bq/kgの範囲にあるということが分かる。これも長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告と同じ手法を使っている。
それから、資料6ページの下表にまとめているが、こちらの調査は比較的新しくて、2006年の土壌採取分である。放射線医学総合研究所の吉田先生が学習院大学の小田松先生という放射線科学では著名な先生と一緒に調査(以下、「吉田調査」という。)している。これは、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告と違う方法での調査であり、新しい手法である質量分析を使っている。西山地区の貯水池の回りを調査しており、N-1というポイントだけ、様々な深さで調査している。深さ方向でいくとあまり大きな差はない。10cm位までくると値が安定してくるかなと感じている。これは新しい手法を使っているので、数値は比較的高めに出ている。
資料1の7ページに3つの調査結果の値を比較している。17あたりを下限値に最大で73というところまでバラついている。今の福島とかインドの高放射線地帯でもそうだが、地点が1m離れるとずいぶん違うということがあるので、そういう意味では、バラつきの範囲内と感じている。長崎原爆残留放射能プルトニウム調査で示された値は、ほかの調査と同範囲に収まるものと見ている。
次に、プルトニウム濃度から線量を推定する他の方法がないかということについては、プルトニウム濃度を測ってもプルトニウムからの被曝が分かるものではない。プルトニウムはアルファ線(※6)を出すが、体に届かない。気を付けなければならないのが、ガンマ線放出核種であるセシウム(※7)である。長崎原爆残留放射能プルトニウム調査ではプルトニウム濃度を測ることによって、セシウムから出てくるガンマ線(※8)の量を推定している。
そこで、セシウム濃度を実際には測定していないが、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査からのセシウム濃度を他の調査を参考にして計算することができれば、セシウムによる土壌汚染の線量推定の方法はIAEA(※9)がいくつか示しているので、その公式に代入するとある程度推定値が出るのではないかという仮定で計算を行った。セシウム134と137が等量あったという仮定で、その二つによるガンマ線被曝が主ではないかということで試算をした。資料1の8ページの下が実際使った計算式である。核種の数だけ、シグマで総和になっているが、CF4というのが、コンバージョンファクター(※10)で、汚染土壌から実効線量(※11)に変換する係数である。
まず、プルトニウムとセシウムの比を他の調査から計算していく必要があるが、資料1の9ページの上表になるが、山本調査でセシウム137を計算している。1945年に半減期(※12)補正する。プルトニウムは半減期が長いのでほとんど変わらないが、セシウムはだいたい倍くらいになる。ここで、比を取ると、0.11ということで、プルトニウムに対して10倍くらい高いという試算になる。原発事故の場合は、だいたいどれくらい放出されたというのが推定されているが、長崎原爆の場合の推定放出核種の比というは、種々調査したが、推定した資料はなかった。だから、この10倍というのが妥当であるかわからないが、少なくともこの土壌から見るとそれくらいということである。
それから、もう一つこれは西山貯水池のデータである。資料1の9ページの下表になる。これは貯水池ということでウェザリング(※13)の影響はないということで調査をされたと思う。これは西山貯水池の底の土を4メートルくらい掘っていって、その途中の土壌を区切っていって、その中のプルトニウムとセシウムを測定した調査である。この433-442cmあたりが原爆によるものではないかということが分かる。それから、3メートルあたりで値が高い地点があるが、それはおそらく中国の地上核実験の時のフォールアウトだと考えられている。バックグラウンド(※14)によるものが入って来ていないので、よいデータであるが、周りの川などからの流れこみがあるので、必ずしもこれが地表上のものを表しているとは言えない。多めには出てきている。こちらも同じく1945年に半減期補正していくと、比が0.57で、セシウムはプルトニウムの倍くらいしかなかったということになる。
2つの調査から実測値としてデータが出てくる。今の2つの比を範囲として、計算した。資料1の10ページの上表にまとめている。Cs137の列にまとめているが、比が1:2~1:10くらいまであるので、その範囲で示している。大体これくらいのセシウムが推定される。
そして、先ほどのIAEAの式に代入して、屋外にあたるField doseと屋内にあたるIndoor doseを計算すると、一番高いところで、0.4mSvときわめて低い数値となり過小評価となった。この手法でいくと、地面が汚染しているだけですので、三次元的に線源が存在していたと思われるので、汚染面だけでは説明がつかない。汚染があったときからの被曝になるし、ほかの核種による被曝が入ってこないので、もう少しここにデータを加える必要がある。
そこで、マンハッタン調査報告の空間線量データを使えないかということである。
方法は、資料1の11ページ上にまとめている。今度は、マンハッタン調査報告の空間線量データを導入する。先程とは別の式になるが、同じようにIAEAの手法で計算した。どこが変わってくるかというと、最初についているHが空間線量率(※15)である。あとは汚染面からの線量を計算する係数と実際の汚染面の汚染の度合いの係数である。セシウム134と137の両方の値を使って計算してみた。資料1の12ページに結果をまとめているが、ポイント1~4の西山地区で屋外で117~234mSvくらいの間、屋内で、67~134mSvくらいの間である。これは、これまで言われていた範囲に近くなるので、別の方法にはなるがこの方法であれば比較の対象になるのではないかと思う。それ以外の地域についても計算している。たとえば、矢上、かき道という地点においては、屋外で23.5 mSv、屋内で13.4 mSvという結果である。屋内は、家屋の素材、地下室があるかないかで大分変ってくるが、これは、木造2階建てということで計算している。この試算で、周辺地区の線量の比較をしてみたところ、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査の値は、25mSv、これはプルトニウムの核種分析にDS86の値をあてはめた計算である。一方、今回、プルトニウムの核種分析にマンハッタン調査報告の空間線量データを取り入れ、IAEAの計算を用いたところ、23.5mSvということである。
ここまで再検討してみて、私なりのまとめは、プルトニウム濃度は他の調査と大きな差はない。DS86を使わずに、マンハッタン調査報告の空間線量率データとIAEA TECDOC1162を用いた場合にも、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査とほぼ同程度の線量である。したがって、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査の手法は巧妙かつ堅牢であるということが再検証した感想である。
長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(※1)の論理で再計算できるものがないか検証した。この報告は、1991年に報告されたもので、調査の地点は基準地区として、高放射能汚染地区として知られていた西山地区の6地点とした。風下にあたる爆心地の北東から南東の90°48地点、それから風上にあたる南東から北東の270°16地点の表層から10センチメートルの土壌を採取した。これを乾燥させた後にふるいにかけ、直径2ミリメートル以下の表層圡50gを試料として、この中のプルトニウム(※2)をアルファ線スペクトルメトリィ(放射性核種はその壊変に伴って、固有のエネルギーを持つα線、β線、γ線などの放射線を放出する。スペクトロメトリィとは、この放射線の線束とエネルギーを測定し、核種を同定するとともにその存在量を決定する(定量)ことを言う。 )という手法で分析している。分析は、財団法人日本分析センターにて行った。
ここで得られるデータはプルトニウム239と240の合算値になる。原爆後の世界的な核実験によって、特に北半球はグローバルフォールアウト(※3)で同じプルトニウムが落ちているので、その分は差し引かなければいけない。その値は、同じ長崎の風上方向の平均値0.9Bq/kgを核実験上のプルトニウムとした。
得られた最大値は西山地区で24Bq/kgという数値が出た。そして、まったく同地区か分からないが、同じ西山地区でDS86(※4)による最大推定吸収線量(※5)が16cGyという値が出ているので、この土壌汚染プルトニウム濃度の24Bq/kgという値がDS86の吸収線量の16cGyに等しいという論理で、この関係をほかの地点で得られたプルトニウムの濃度に代入して吸収線量が出てくるという論理である。
結果は、実際にプルトニウムが有意に検出された15地点を資料1の4ページ下表にまとめたが、左から爆心地からの距離、プルトニウム濃度、DS86で得られた吸収線量であり、cGyは最近一般的ではない単位なので、mGyになおしている。160mGyが最大吸収線量となっている。これが長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告のデータである。
今回、検討したポイントは、今の論理の中の、プルトニウム濃度の測定が他の調査の測定値と比較してどの程度の範囲になるかということ、DS86との比較以外の方法がないかということ、マンハッタン調査団最終報告書(以下、「マンハッタン調査報告」という。)の空間線量データを取り入れることができないかという3点を検討した。
プルトニウム濃度に関する比較は、1975年に金沢大学の山本先生が広島大学の星先生、長崎大学の岡島先生などと調査(以下、「山本調査」という。)しているものがあり、西山地区の土壌中のプルトニウム濃度を測定している。資料1の6ページの上表に結果をまとめているが、爆心地からの距離が遠くなれば減るわけではなくある程度バラつきがあり、大体17-51Bq/kgの範囲にあるということが分かる。これも長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告と同じ手法を使っている。
それから、資料6ページの下表にまとめているが、こちらの調査は比較的新しくて、2006年の土壌採取分である。放射線医学総合研究所の吉田先生が学習院大学の小田松先生という放射線科学では著名な先生と一緒に調査(以下、「吉田調査」という。)している。これは、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告と違う方法での調査であり、新しい手法である質量分析を使っている。西山地区の貯水池の回りを調査しており、N-1というポイントだけ、様々な深さで調査している。深さ方向でいくとあまり大きな差はない。10cm位までくると値が安定してくるかなと感じている。これは新しい手法を使っているので、数値は比較的高めに出ている。
資料1の7ページに3つの調査結果の値を比較している。17あたりを下限値に最大で73というところまでバラついている。今の福島とかインドの高放射線地帯でもそうだが、地点が1m離れるとずいぶん違うということがあるので、そういう意味では、バラつきの範囲内と感じている。長崎原爆残留放射能プルトニウム調査で示された値は、ほかの調査と同範囲に収まるものと見ている。
次に、プルトニウム濃度から線量を推定する他の方法がないかということについては、プルトニウム濃度を測ってもプルトニウムからの被曝が分かるものではない。プルトニウムはアルファ線(※6)を出すが、体に届かない。気を付けなければならないのが、ガンマ線放出核種であるセシウム(※7)である。長崎原爆残留放射能プルトニウム調査ではプルトニウム濃度を測ることによって、セシウムから出てくるガンマ線(※8)の量を推定している。
そこで、セシウム濃度を実際には測定していないが、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査からのセシウム濃度を他の調査を参考にして計算することができれば、セシウムによる土壌汚染の線量推定の方法はIAEA(※9)がいくつか示しているので、その公式に代入するとある程度推定値が出るのではないかという仮定で計算を行った。セシウム134と137が等量あったという仮定で、その二つによるガンマ線被曝が主ではないかということで試算をした。資料1の8ページの下が実際使った計算式である。核種の数だけ、シグマで総和になっているが、CF4というのが、コンバージョンファクター(※10)で、汚染土壌から実効線量(※11)に変換する係数である。
まず、プルトニウムとセシウムの比を他の調査から計算していく必要があるが、資料1の9ページの上表になるが、山本調査でセシウム137を計算している。1945年に半減期(※12)補正する。プルトニウムは半減期が長いのでほとんど変わらないが、セシウムはだいたい倍くらいになる。ここで、比を取ると、0.11ということで、プルトニウムに対して10倍くらい高いという試算になる。原発事故の場合は、だいたいどれくらい放出されたというのが推定されているが、長崎原爆の場合の推定放出核種の比というは、種々調査したが、推定した資料はなかった。だから、この10倍というのが妥当であるかわからないが、少なくともこの土壌から見るとそれくらいということである。
それから、もう一つこれは西山貯水池のデータである。資料1の9ページの下表になる。これは貯水池ということでウェザリング(※13)の影響はないということで調査をされたと思う。これは西山貯水池の底の土を4メートルくらい掘っていって、その途中の土壌を区切っていって、その中のプルトニウムとセシウムを測定した調査である。この433-442cmあたりが原爆によるものではないかということが分かる。それから、3メートルあたりで値が高い地点があるが、それはおそらく中国の地上核実験の時のフォールアウトだと考えられている。バックグラウンド(※14)によるものが入って来ていないので、よいデータであるが、周りの川などからの流れこみがあるので、必ずしもこれが地表上のものを表しているとは言えない。多めには出てきている。こちらも同じく1945年に半減期補正していくと、比が0.57で、セシウムはプルトニウムの倍くらいしかなかったということになる。
2つの調査から実測値としてデータが出てくる。今の2つの比を範囲として、計算した。資料1の10ページの上表にまとめている。Cs137の列にまとめているが、比が1:2~1:10くらいまであるので、その範囲で示している。大体これくらいのセシウムが推定される。
そして、先ほどのIAEAの式に代入して、屋外にあたるField doseと屋内にあたるIndoor doseを計算すると、一番高いところで、0.4mSvときわめて低い数値となり過小評価となった。この手法でいくと、地面が汚染しているだけですので、三次元的に線源が存在していたと思われるので、汚染面だけでは説明がつかない。汚染があったときからの被曝になるし、ほかの核種による被曝が入ってこないので、もう少しここにデータを加える必要がある。
そこで、マンハッタン調査報告の空間線量データを使えないかということである。
方法は、資料1の11ページ上にまとめている。今度は、マンハッタン調査報告の空間線量データを導入する。先程とは別の式になるが、同じようにIAEAの手法で計算した。どこが変わってくるかというと、最初についているHが空間線量率(※15)である。あとは汚染面からの線量を計算する係数と実際の汚染面の汚染の度合いの係数である。セシウム134と137の両方の値を使って計算してみた。資料1の12ページに結果をまとめているが、ポイント1~4の西山地区で屋外で117~234mSvくらいの間、屋内で、67~134mSvくらいの間である。これは、これまで言われていた範囲に近くなるので、別の方法にはなるがこの方法であれば比較の対象になるのではないかと思う。それ以外の地域についても計算している。たとえば、矢上、かき道という地点においては、屋外で23.5 mSv、屋内で13.4 mSvという結果である。屋内は、家屋の素材、地下室があるかないかで大分変ってくるが、これは、木造2階建てということで計算している。この試算で、周辺地区の線量の比較をしてみたところ、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査の値は、25mSv、これはプルトニウムの核種分析にDS86の値をあてはめた計算である。一方、今回、プルトニウムの核種分析にマンハッタン調査報告の空間線量データを取り入れ、IAEAの計算を用いたところ、23.5mSvということである。
ここまで再検討してみて、私なりのまとめは、プルトニウム濃度は他の調査と大きな差はない。DS86を使わずに、マンハッタン調査報告の空間線量率データとIAEA TECDOC1162を用いた場合にも、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査とほぼ同程度の線量である。したがって、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査の手法は巧妙かつ堅牢であるということが再検証した感想である。
<主な質疑応答>
【会長】
山本調査と吉田調査のデータは、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査のデータと同じような地点を調査しているということか。その3つを比較したら、同程度の範囲内に収まるというのはA委員の判断であるか。
山本調査と吉田調査のデータは、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査のデータと同じような地点を調査しているということか。その3つを比較したら、同程度の範囲内に収まるというのはA委員の判断であるか。
【A委員】
そうである。
そうである。
【会長】
資料10ページの過小評価の部分の説明をもう一度お願いしたい。
資料10ページの過小評価の部分の説明をもう一度お願いしたい。
【A委員】
この計算方法は、無限に広がった地面にセシウム汚染があって、そこに生活した場合の生涯被爆線量を計算している。実際に長崎での地形を考えると、三次元的な中にあって、地面だけではなくて色々な所が汚染されているし、それから、セシウム以外のガンマ線核種(※16)も若干ながらあったのではないかということ、それから、原爆投下直後から土壌採取までの状況というのがこの計算上出てこないので、原爆投下直後を考えると他の要素もあるということである。ですから、初期の状況を示す何か他のデータがあれば、精度が上がるということである。
この計算方法は、無限に広がった地面にセシウム汚染があって、そこに生活した場合の生涯被爆線量を計算している。実際に長崎での地形を考えると、三次元的な中にあって、地面だけではなくて色々な所が汚染されているし、それから、セシウム以外のガンマ線核種(※16)も若干ながらあったのではないかということ、それから、原爆投下直後から土壌採取までの状況というのがこの計算上出てこないので、原爆投下直後を考えると他の要素もあるということである。ですから、初期の状況を示す何か他のデータがあれば、精度が上がるということである。
【会長】
今回利用したマンハッタン調査報告の空間線量がひとつの解決法になるのではないかということか。
今回利用したマンハッタン調査報告の空間線量がひとつの解決法になるのではないかということか。
【A委員】
そうである。マンハッタン調査報告や理化学研究所のデータである。
【会長】
理化学研究所のデータも空間線量であるのか。
理化学研究所のデータも空間線量であるのか。
【A委員】
そうである。
そうである。
【会長】
理化学研究所のデータを取り入れた分析はなされていないのか。
理化学研究所のデータを取り入れた分析はなされていないのか。
【A委員】
今回はそのデータは取り入れていない。
今回はそのデータは取り入れていない。
【会長】
理化学研究所のデータを使って、検証する可能性は残っているのか。
理化学研究所のデータを使って、検証する可能性は残っているのか。
【A委員】
残っている。
残っている。
【会長】
プルトニウムに関しては、異なる人が、異なる時期に測定して大体同じようなデータが出ているということで、プルトニウム汚染は被爆未指定地域を含めて確実にあったということだけは間違いないということが検証では言えるということである。
プルトニウムに関しては、異なる人が、異なる時期に測定して大体同じようなデータが出ているということで、プルトニウム汚染は被爆未指定地域を含めて確実にあったということだけは間違いないということが検証では言えるということである。
【E委員】
マンハッタン調査報告の空間線量の線源は何か。
マンハッタン調査報告の空間線量の線源は何か。
【A委員】
西山などは直接放射線の影響はないので、おそらく黒い雨に含まれている核種であろうと考える。
西山などは直接放射線の影響はないので、おそらく黒い雨に含まれている核種であろうと考える。
【E委員】
プルトニウムの汚染から線量を計算しているが、そこをもう一度説明してほしい。
プルトニウムの汚染から線量を計算しているが、そこをもう一度説明してほしい。
【A委員】
これは長崎原爆残留放射能プルトニウム調査で考え出された方法である。セシウムは半減期も短く、ウェザリングで流れていきやすいということもあって、セシウムだけを測ってということは難しい。プルトニウムは半減期も長く、西山地区はプルトニウム汚染されているということが分かっていたので、これを使おうということである。土壌採取からは、プルトニウム濃度しか出てこないので、それをいかに実効線量に変えていくかということで、DS86ですでに報告されている西山地区における実効線量と同じ地区で測定されたプルトニウム濃度の最大値を等しいものと仮定している。土壌汚染が半分であれば、線量も半分であるという簡単な計算である。等しいという仮定が、一番のポイントである。
これは長崎原爆残留放射能プルトニウム調査で考え出された方法である。セシウムは半減期も短く、ウェザリングで流れていきやすいということもあって、セシウムだけを測ってということは難しい。プルトニウムは半減期も長く、西山地区はプルトニウム汚染されているということが分かっていたので、これを使おうということである。土壌採取からは、プルトニウム濃度しか出てこないので、それをいかに実効線量に変えていくかということで、DS86ですでに報告されている西山地区における実効線量と同じ地区で測定されたプルトニウム濃度の最大値を等しいものと仮定している。土壌汚染が半分であれば、線量も半分であるという簡単な計算である。等しいという仮定が、一番のポイントである。
【C委員】
資料9ページの下表の西山貯水池のデータで、ウェザリングの影響がないからということで、2005年の採取データから1945年での数値を計算されているが、上表のデータは、推定したセシウムの量が、1976年に対して1945年では倍になっているが、これは、ウェザリングは考慮されているのか。
資料9ページの下表の西山貯水池のデータで、ウェザリングの影響がないからということで、2005年の採取データから1945年での数値を計算されているが、上表のデータは、推定したセシウムの量が、1976年に対して1945年では倍になっているが、これは、ウェザリングは考慮されているのか。
【A委員】
通常は流れ出すということだが、この場合は、流れ込んできているものと考えられる、そうでないとここまで高い値にならない。
通常は流れ出すということだが、この場合は、流れ込んできているものと考えられる、そうでないとここまで高い値にならない。
【B委員】
資料5ページで、バックグランドの0.98Bq/kgというのは、風上をとられたということだが、全国的にみて、この数値はどうなのか。
資料5ページで、バックグランドの0.98Bq/kgというのは、風上をとられたということだが、全国的にみて、この数値はどうなのか。
【A委員】
長崎原爆残留放射能プルトニウム調査にも入っているが、ほかと比べ大きな差はない、地域によって違って当然だが、ほぼ同じ辺りの値になる。
長崎原爆残留放射能プルトニウム調査にも入っているが、ほかと比べ大きな差はない、地域によって違って当然だが、ほぼ同じ辺りの値になる。
【会長】
風上というのは西側であるが、1960年代の核実験によるフォールアウトとみなしているのか。そこには原爆のフォールアウトが証明されたデータはないのか。
風上というのは西側であるが、1960年代の核実験によるフォールアウトとみなしているのか。そこには原爆のフォールアウトが証明されたデータはないのか。
【A委員】
10地区のバックグランドを選んでいるが、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告をそのまま読むと、原爆投下当時の風向きからみて風上にあたり、しかも、爆心地から7キロメートル以上の距離にあり、放射性降下物の落下確立が低いと考えられる地域である。この値の平均を用いている。
10地区のバックグランドを選んでいるが、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告をそのまま読むと、原爆投下当時の風向きからみて風上にあたり、しかも、爆心地から7キロメートル以上の距離にあり、放射性降下物の落下確立が低いと考えられる地域である。この値の平均を用いている。
【会長】
プルトニウムの比で原爆特有の比があるということがあったと思うが、いかがか。
プルトニウムの比で原爆特有の比があるということがあったと思うが、いかがか。
【A委員】
存じ上げない。バックグラウンドであるが、福井県で3.03Bq/kg、愛媛県で0.55 Bq/kg、青森県で0.13 Bq/kgとかなりのバラつきがある。その範囲には入っている。
存じ上げない。バックグラウンドであるが、福井県で3.03Bq/kg、愛媛県で0.55 Bq/kg、青森県で0.13 Bq/kgとかなりのバラつきがある。その範囲には入っている。
【D委員】
資料1の7ページで、3つの報告の比較があるが、17-73までの数値があるが、バラつきの範囲と言えるのか。
資料1の7ページで、3つの報告の比較があるが、17-73までの数値があるが、バラつきの範囲と言えるのか。
【A委員】
バラつきの範囲と言えると考える。
バラつきの範囲と言えると考える。
【会長】
資料1の12ページの矢上町、かき道の屋外で23.5mSv、屋内で13.4mSv、現川町や田中町は、爆心地から何キロなのか。
資料1の12ページの矢上町、かき道の屋外で23.5mSv、屋内で13.4mSv、現川町や田中町は、爆心地から何キロなのか。
【A委員】
現川町で7km、田中町で5~6km、矢上町は8km、表の下に行くにしがって少しずつ距離が伸びていく。
現川町で7km、田中町で5~6km、矢上町は8km、表の下に行くにしがって少しずつ距離が伸びていく。
【会長】
現川町は被爆地に入っているのか。
現川町は被爆地に入っているのか。
【事務局】
第一種健康診断特例区域である。
第一種健康診断特例区域である。
【会長】
宿町はどうか。
宿町はどうか。
【事務局】
宿町は被爆未指定地域である。
宿町は被爆未指定地域である。
【会長】
プルトニウムは、半減期が2万年ということで、流れない限りは半永久的に土壌の中に残るということで、常に測定できる対象物である。それに則り、土壌採取調査をしている。そこから実際にガンマ線を出すセシウムを推定していくという段階から、空間線量を測っているのが、マンハッタン調査報告だったり、理化学研究所の測定だったりする。そういうもので推定していけるだろうという仮定で、今回、A委員に推定値を求めていただいて、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告が独自にやっていた方法と違う方法を用いてもだいたい23.5mSvということで近い値が出ているということである。さらに信憑性を高めるために、A委員は他にどういう方法がとれるか。専門としてどう考えているか。また、第三者を入れて一緒に検討するなど、どのような方法が考えられるか。
プルトニウムは、半減期が2万年ということで、流れない限りは半永久的に土壌の中に残るということで、常に測定できる対象物である。それに則り、土壌採取調査をしている。そこから実際にガンマ線を出すセシウムを推定していくという段階から、空間線量を測っているのが、マンハッタン調査報告だったり、理化学研究所の測定だったりする。そういうもので推定していけるだろうという仮定で、今回、A委員に推定値を求めていただいて、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告が独自にやっていた方法と違う方法を用いてもだいたい23.5mSvということで近い値が出ているということである。さらに信憑性を高めるために、A委員は他にどういう方法がとれるか。専門としてどう考えているか。また、第三者を入れて一緒に検討するなど、どのような方法が考えられるか。
【A委員】
実測データは今から取れないので、マンハッタン調査報告と理化学研究所のデータをいかに活用するかという作業しかできないと思う。
実測データは今から取れないので、マンハッタン調査報告と理化学研究所のデータをいかに活用するかという作業しかできないと思う。
【会長】
IAEAの計算式が2つ出てきたが、プルトニウムを測定して、昔の被曝線量を測定するというのは、原爆以外にあるのか。
IAEAの計算式が2つ出てきたが、プルトニウムを測定して、昔の被曝線量を測定するというのは、原爆以外にあるのか。
【A委員】
IAEAの計算式が出来たのが15年前くらいなので、これは、基本的には原発事故のような緊急事態が生じたときに、そこに住むとどれぐらいの線量が推定されるということを出すためのものであり、その数値に従って、行政的にどういう処置をしようかということを考えるためのものである。したがって、原爆は状況が少し違うが、他にないかというとない。空間線量率から、どれくらいの被爆線量かというのは、専門の方に伺ってみるのもいいかと思う。
IAEAの計算式が出来たのが15年前くらいなので、これは、基本的には原発事故のような緊急事態が生じたときに、そこに住むとどれぐらいの線量が推定されるということを出すためのものであり、その数値に従って、行政的にどういう処置をしようかということを考えるためのものである。したがって、原爆は状況が少し違うが、他にないかというとない。空間線量率から、どれくらいの被爆線量かというのは、専門の方に伺ってみるのもいいかと思う。
【会長】
空間線量から人体が放射線を浴びるというのは、セシウムから出ているガンマ線が1mくらいの高さの人体にということだが、その他には、周辺の建物とか植物とかからか。そのような条件は先程のIAEAの式には入っているのか。食料からの被曝などはどうか。
空間線量から人体が放射線を浴びるというのは、セシウムから出ているガンマ線が1mくらいの高さの人体にということだが、その他には、周辺の建物とか植物とかからか。そのような条件は先程のIAEAの式には入っているのか。食料からの被曝などはどうか。
【A委員】
先ほどの式は内部被曝についてもある程度入っている。だから外部被曝だけではない。そこで栽培された植物だったりとか地下水とかからのセシウムというのも計算上、仮定で入っている。
先ほどの式は内部被曝についてもある程度入っている。だから外部被曝だけではない。そこで栽培された植物だったりとか地下水とかからのセシウムというのも計算上、仮定で入っている。
【会長】
ならば、プルトニウム測定の第一人者などに意見を聞いてみるのはをやった方がよいと考える。
ならば、プルトニウム測定の第一人者などに意見を聞いてみるのはをやった方がよいと考える。
【A委員】
一番重要なのは、土壌中のプルトニウム濃度でも空間線量でもそうだが、その値からの被曝線量をいかにして導けるかということなので、そこを専門として活躍されている方がよいのではないか。
一番重要なのは、土壌中のプルトニウム濃度でも空間線量でもそうだが、その値からの被曝線量をいかにして導けるかということなので、そこを専門として活躍されている方がよいのではないか。
【会長】
それでは、今後、そういう方を挙げていただき検討してはいかがかと考える。
ここで、審議事項1を終えるが、結論としては、現時点でのA委員の検証結果は、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告で、かき道辺りで25mSvというのは、A委員独自のやり方でも23.5mSvという近い数値だったが、今後、もう少し詰めていく。
理化学研究所の測定データがあるので、それとの類似性というか同一性に関しても検討していくということで今後の課題としたい。
それでは、今後、そういう方を挙げていただき検討してはいかがかと考える。
ここで、審議事項1を終えるが、結論としては、現時点でのA委員の検証結果は、長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告で、かき道辺りで25mSvというのは、A委員独自のやり方でも23.5mSvという近い数値だったが、今後、もう少し詰めていく。
理化学研究所の測定データがあるので、それとの類似性というか同一性に関しても検討していくということで今後の課題としたい。
審議事項2 原爆放射線の人体影響に関する研究等情報について
原子爆弾後障害研究会及びPubMedによる論文検索結果からの情報提供
原子爆弾後障害研究会及びPubMedによる論文検索結果からの情報提供
<委員説明>
【B委員】
資料2の2ページから8ページに、第53回原子爆弾後障害研究会、第54回原子爆弾後障害研究会の講演集の目次を載せている。その中から、いくつか詳しく説明したい。
もう一つが、資料2の9ページ以降になるが、PubMed(※17)で、「Atomic Bomb」というキーワードで2013年1月から2014年9月までの期間で情報収集したものである。それで、200件弱の文献がリストアップされたが、その中から私が確認して、原爆と関係があるもので、24件選んでいる。それが、9~12ページになる。その中でいくつか紹介したい。大きくガンに関係があるものと、ガンに関係しないもので説明する。
ガンに関係するものが、9ページの3番。これは放射線影響研究所からのものであり、皮膚ガンについてである。もともと皮膚ガンでは、基底ガン(※18)で有意に上がっているという報告があって、悪性黒色腫(※19)とかページェット病(※20)などでは差がないということだったが、放射線影響研究所で観察期間を延ばして、昨年新たに論文がでた。基本的にはこの時点では、同じである。
次に10ページの13番。これは、長崎大学原爆後障害医療研究所からのもので、前立腺ガンについてである。泌尿器系で以前から膀胱ガンは、有意に増えているというのがあったが、今回は前立腺ガンで近距離の被爆者で遠距離に比較して増えているという報告が出ている。被曝線量は正確には分からないが、距離で比較しており、前立腺ガンで臨床学的特徴で、局在型(※21)で悪性の高い前立腺ガンが増加している。前立腺ガンの増加ということでは、おそらく初めての論文である。
次に11ページの17番。これは軟部組織の肉腫である。軟部組織の腫瘍が増加しているという論文である。ERR(※22)が0.10/1Gyである。確定ではないがそういう傾向にあるということである。
それから、11ページの23番。悪性腫瘍と非悪性腫瘍の論文である。被爆者において、大腸ガンが増えているが、被曝線量は危険因子の一つであり、BMI(※23)もその一つであるというものである。ただ、被曝線量とBMIの間には相関はないという結果である。大腸ガンの危険因子として、被曝線量とBMIがそれぞれ独立した危険因子であるという論文である。BMIとの関係は、肥満の方が大腸ガンの危険性が高いということ。
次に非ガンの疾患として、9ページの4番。循環器についてである。循環器系の疾患として右脚ブロック(※24)が多いというのが、これまで言われていた。今回は、右脚ブロックの方が、どういう予後を辿るのかということで、右脚ブロックの方、特に軸の変異のある例が、房室ブロック(※25)から動心不全(※26)に移行してペースメーカー(※27)を挿入するという人が多いということが今回、明らかになっている。右脚ブロックが被爆者の方に多いというのが分かっていたが、その予後として、軸変異が伴う例が、予後が悪いということ、ペースメーカー挿入に至るということである。
次に10ページの11番。これは、緑内障(※28)である。白内障(※29)は以前から言われているが、緑内障が少し増えているという論文である。これは放射線影響研究所のものである。ただ、まだ健診率も低いので、今後の経過観察を続けてみていく必要があるということである。緑内障で、いわゆる開放隅角正常眼圧型(※30)というのが増えてきているということがこの論文で報告されている。
次に10ページの14番。被爆二世の調査である。これも放射線影響研究所であるが、多因子遺伝性疾患いわゆる高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳卒中を調べているが、今のところ増加はないということである。ただし、健診をうけた方が平均48歳と若いということで、今後の追跡調査の継続が必要であるということである。
次に11ページの18番。これもBMIが出てくるが、ここでは被曝線量とBMIに逆相関があるというのが健診で分かっている。大腸ガンに限っては被曝線量とBMIに相関はないということだったが、被爆者全体でみると、被曝線量とBMIに逆相関があるということである。
これらが、ここ1年半くらいで出た論文では新しいところではないかと思う。
資料2の2ページから8ページに、第53回原子爆弾後障害研究会、第54回原子爆弾後障害研究会の講演集の目次を載せている。その中から、いくつか詳しく説明したい。
もう一つが、資料2の9ページ以降になるが、PubMed(※17)で、「Atomic Bomb」というキーワードで2013年1月から2014年9月までの期間で情報収集したものである。それで、200件弱の文献がリストアップされたが、その中から私が確認して、原爆と関係があるもので、24件選んでいる。それが、9~12ページになる。その中でいくつか紹介したい。大きくガンに関係があるものと、ガンに関係しないもので説明する。
ガンに関係するものが、9ページの3番。これは放射線影響研究所からのものであり、皮膚ガンについてである。もともと皮膚ガンでは、基底ガン(※18)で有意に上がっているという報告があって、悪性黒色腫(※19)とかページェット病(※20)などでは差がないということだったが、放射線影響研究所で観察期間を延ばして、昨年新たに論文がでた。基本的にはこの時点では、同じである。
次に10ページの13番。これは、長崎大学原爆後障害医療研究所からのもので、前立腺ガンについてである。泌尿器系で以前から膀胱ガンは、有意に増えているというのがあったが、今回は前立腺ガンで近距離の被爆者で遠距離に比較して増えているという報告が出ている。被曝線量は正確には分からないが、距離で比較しており、前立腺ガンで臨床学的特徴で、局在型(※21)で悪性の高い前立腺ガンが増加している。前立腺ガンの増加ということでは、おそらく初めての論文である。
次に11ページの17番。これは軟部組織の肉腫である。軟部組織の腫瘍が増加しているという論文である。ERR(※22)が0.10/1Gyである。確定ではないがそういう傾向にあるということである。
それから、11ページの23番。悪性腫瘍と非悪性腫瘍の論文である。被爆者において、大腸ガンが増えているが、被曝線量は危険因子の一つであり、BMI(※23)もその一つであるというものである。ただ、被曝線量とBMIの間には相関はないという結果である。大腸ガンの危険因子として、被曝線量とBMIがそれぞれ独立した危険因子であるという論文である。BMIとの関係は、肥満の方が大腸ガンの危険性が高いということ。
次に非ガンの疾患として、9ページの4番。循環器についてである。循環器系の疾患として右脚ブロック(※24)が多いというのが、これまで言われていた。今回は、右脚ブロックの方が、どういう予後を辿るのかということで、右脚ブロックの方、特に軸の変異のある例が、房室ブロック(※25)から動心不全(※26)に移行してペースメーカー(※27)を挿入するという人が多いということが今回、明らかになっている。右脚ブロックが被爆者の方に多いというのが分かっていたが、その予後として、軸変異が伴う例が、予後が悪いということ、ペースメーカー挿入に至るということである。
次に10ページの11番。これは、緑内障(※28)である。白内障(※29)は以前から言われているが、緑内障が少し増えているという論文である。これは放射線影響研究所のものである。ただ、まだ健診率も低いので、今後の経過観察を続けてみていく必要があるということである。緑内障で、いわゆる開放隅角正常眼圧型(※30)というのが増えてきているということがこの論文で報告されている。
次に10ページの14番。被爆二世の調査である。これも放射線影響研究所であるが、多因子遺伝性疾患いわゆる高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳卒中を調べているが、今のところ増加はないということである。ただし、健診をうけた方が平均48歳と若いということで、今後の追跡調査の継続が必要であるということである。
次に11ページの18番。これもBMIが出てくるが、ここでは被曝線量とBMIに逆相関があるというのが健診で分かっている。大腸ガンに限っては被曝線量とBMIに相関はないということだったが、被爆者全体でみると、被曝線量とBMIに逆相関があるということである。
これらが、ここ1年半くらいで出た論文では新しいところではないかと思う。
<主な質疑>
【C委員】
14番の二世の方に関する論文について、疾患の有意な増加はないということですが、対象は二世とそうでない方なのか、親の線量ごとなのか。
14番の二世の方に関する論文について、疾患の有意な増加はないということですが、対象は二世とそうでない方なのか、親の線量ごとなのか。
【会長】
親の線量もみている。それぞれの論文は、委員各自でプリントアウトして読んでおいてほしい。
親の線量もみている。それぞれの論文は、委員各自でプリントアウトして読んでおいてほしい。
1 広島被爆者の子供における白血病発生について
<委員説明>
【B委員】
資料の13ページになる。
広島大学の鎌田教授の成果発表になる。「広島被爆者の子供における白血病について」は、長崎医学会雑誌の2012年版に掲載されている。これの次の発表が今年あったが、現在製本中で間に合わなかったので、2年前のものを紹介する。実際の論文は14ページからになるが、広島の方での「被爆者とその家族の調査」を利用したものになる。「被爆者リスト」「被爆二世リスト」「白血病症例リスト」「白血病染色体検査リスト」から被爆二世白血病の見極めを行っている。
結果、94人の方の被爆二世の白血病症例が発見された。1946-55年生まれが49例、1955-65年生まれが29例、1965-73年生まれが16例の方が発症している。発症のピークは1966-75年であり、0-25歳で多発、0-10歳で多いという結果である。病型は急性白血病。1946-55年生まれで片親被爆より両親被爆で発症が増加しているのではないかという論文である。
考察としては、通常の白血病は乳児期にピークを示すのに対し、今回の94名の方では発症年齢分布が広い。それから両親被爆群での発症率が有意に高い。ただし、被爆推定量というのは、すべて500mSv以下である。
鎌田教授はこの2点をもって、二世において白血病の発症が多いのではないかということを示唆されている。
私の意見としては、線量について触れていないこと、非被爆者における小児白血病の頻度の比較がないこと、メカニズムの研究もまだないので、そういうところが今後必要である。現在製本中のものは、今後紹介できるのではないかと思う。
資料の13ページになる。
広島大学の鎌田教授の成果発表になる。「広島被爆者の子供における白血病について」は、長崎医学会雑誌の2012年版に掲載されている。これの次の発表が今年あったが、現在製本中で間に合わなかったので、2年前のものを紹介する。実際の論文は14ページからになるが、広島の方での「被爆者とその家族の調査」を利用したものになる。「被爆者リスト」「被爆二世リスト」「白血病症例リスト」「白血病染色体検査リスト」から被爆二世白血病の見極めを行っている。
結果、94人の方の被爆二世の白血病症例が発見された。1946-55年生まれが49例、1955-65年生まれが29例、1965-73年生まれが16例の方が発症している。発症のピークは1966-75年であり、0-25歳で多発、0-10歳で多いという結果である。病型は急性白血病。1946-55年生まれで片親被爆より両親被爆で発症が増加しているのではないかという論文である。
考察としては、通常の白血病は乳児期にピークを示すのに対し、今回の94名の方では発症年齢分布が広い。それから両親被爆群での発症率が有意に高い。ただし、被爆推定量というのは、すべて500mSv以下である。
鎌田教授はこの2点をもって、二世において白血病の発症が多いのではないかということを示唆されている。
私の意見としては、線量について触れていないこと、非被爆者における小児白血病の頻度の比較がないこと、メカニズムの研究もまだないので、そういうところが今後必要である。現在製本中のものは、今後紹介できるのではないかと思う。
<主な質疑>
【会長】
これは発症率の分母になる母集団がわからないのか、ある程度わかっているのか。11万という数字は出てくるがどうなのか。
これは発症率の分母になる母集団がわからないのか、ある程度わかっているのか。11万という数字は出てくるがどうなのか。
【B委員】
正確な発症率は計算されていない。
正確な発症率は計算されていない。
【会長】
したがって、発症率で確定するまでのデータに至っていないということである。両親の被爆の中身を見てみると、入市して被爆した人が多い。そのあたりが放射線影響研究所の調査とは違う点である。放射線影響研究所の調査が4編くらいあるが、症例が少ない。将来それとの比較も必要なのではないか。被爆二世については、この研究会の重要なテーマである。
したがって、発症率で確定するまでのデータに至っていないということである。両親の被爆の中身を見てみると、入市して被爆した人が多い。そのあたりが放射線影響研究所の調査とは違う点である。放射線影響研究所の調査が4編くらいあるが、症例が少ない。将来それとの比較も必要なのではないか。被爆二世については、この研究会の重要なテーマである。
2 原爆被爆者における動脈硬化に関する検討
<委員説明>
【C委員】
ここでは動脈硬化に焦点を絞って話をしたい。現在、被爆者の高齢化が進んでおり、この動脈硬化系疾患の頻度が多いことから、そこに焦点を当てたい。
一般的な話だが、治療に使うような高い線量の放射線を心臓や血管に照射したときに、数十Gyだとか、そういった高い線量の放射線照射というのは、その後、循環器系疾患とか死亡に関係するということが、悪性腫瘍の放射線療法の追跡調査で分かっている。あるいは、脳血管についても頸部への治療目的の高線量の照射というのが頸動脈の狭窄とか脳卒中を起こすということは分かっている。血管の内皮の障害と組織の線維化というのが由来なんだろうと考えられる。
原爆被爆者につきましても、放射線影響研究所を中心として、心血管疾患についての調査がなされている。いわゆる寿命調査(※31)では、脳卒中及び脳卒中以外の循環器系疾患の死亡率と被曝線量は有意な関係があるということがわかっている。あるいは、成人健康調査(※32)では、被曝線量との関連で現在では認められない40歳未満の被爆者については、心筋梗塞の発症率と放射線との反応が見られている。動脈硬化に関しては、大動脈の脈波速度の検査では、男性の近距離被爆者で高いというのが出ている。
一方で、動脈硬化の評価法というのが種々でているが、簡便で精度が高いといわれている、頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)(※33)という方法がある。広島原爆障害対策協議会の健康管理センターでCIMTを評価指標にした調査をしている。2001-2012年で、健康管理センターで被爆者健診をうけた50歳から79歳までの約3,600名に、今説明した超音波検査を用いて評価している。従来の心血管疾患のリスクとして知られている喫煙歴や肥満、高血圧、脂質異常、耐糖能異常などを同時に評価するということをしている。
結果、CIMTは、年齢の上昇に伴って上昇していく、また、男女とも、被爆距離が2km未満と入市の群では、CIMTが高値の傾向を認めた。しかし、統計的に補正してみると有意な差は認めなかった。
この検討に関しては、被爆状況とCIMTの関連は認められなかったということである。
しかし、今後、被爆者健診において、受診者の高齢化が進み、加齢が大きな影響を与えているが、 動脈硬化を精度よく評価できる方法というのが開発されているので、こういう評価を進める中で被爆者の健康増進、疾病予防というのを進めていく必要があるというのがこの論文の主旨である。
ここでは動脈硬化に焦点を絞って話をしたい。現在、被爆者の高齢化が進んでおり、この動脈硬化系疾患の頻度が多いことから、そこに焦点を当てたい。
一般的な話だが、治療に使うような高い線量の放射線を心臓や血管に照射したときに、数十Gyだとか、そういった高い線量の放射線照射というのは、その後、循環器系疾患とか死亡に関係するということが、悪性腫瘍の放射線療法の追跡調査で分かっている。あるいは、脳血管についても頸部への治療目的の高線量の照射というのが頸動脈の狭窄とか脳卒中を起こすということは分かっている。血管の内皮の障害と組織の線維化というのが由来なんだろうと考えられる。
原爆被爆者につきましても、放射線影響研究所を中心として、心血管疾患についての調査がなされている。いわゆる寿命調査(※31)では、脳卒中及び脳卒中以外の循環器系疾患の死亡率と被曝線量は有意な関係があるということがわかっている。あるいは、成人健康調査(※32)では、被曝線量との関連で現在では認められない40歳未満の被爆者については、心筋梗塞の発症率と放射線との反応が見られている。動脈硬化に関しては、大動脈の脈波速度の検査では、男性の近距離被爆者で高いというのが出ている。
一方で、動脈硬化の評価法というのが種々でているが、簡便で精度が高いといわれている、頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)(※33)という方法がある。広島原爆障害対策協議会の健康管理センターでCIMTを評価指標にした調査をしている。2001-2012年で、健康管理センターで被爆者健診をうけた50歳から79歳までの約3,600名に、今説明した超音波検査を用いて評価している。従来の心血管疾患のリスクとして知られている喫煙歴や肥満、高血圧、脂質異常、耐糖能異常などを同時に評価するということをしている。
結果、CIMTは、年齢の上昇に伴って上昇していく、また、男女とも、被爆距離が2km未満と入市の群では、CIMTが高値の傾向を認めた。しかし、統計的に補正してみると有意な差は認めなかった。
この検討に関しては、被爆状況とCIMTの関連は認められなかったということである。
しかし、今後、被爆者健診において、受診者の高齢化が進み、加齢が大きな影響を与えているが、 動脈硬化を精度よく評価できる方法というのが開発されているので、こういう評価を進める中で被爆者の健康増進、疾病予防というのを進めていく必要があるというのがこの論文の主旨である。
<主な質疑>
【会長】
今までは、放射線というのは、白血病とガンが非常に注目されてきたが、こういったそれ以外の論文も徐々に増えているので、研究会としては網羅的に収集していかなければならないと考えている。これは、国の原爆症認定制度の中で議論すべきところである。原爆症認定基準に関して新たな因子が出てきているということである。動脈硬化に関しては、今回は傾向までは至っていないようだが、心筋梗塞は、出ているのか。
今までは、放射線というのは、白血病とガンが非常に注目されてきたが、こういったそれ以外の論文も徐々に増えているので、研究会としては網羅的に収集していかなければならないと考えている。これは、国の原爆症認定制度の中で議論すべきところである。原爆症認定基準に関して新たな因子が出てきているということである。動脈硬化に関しては、今回は傾向までは至っていないようだが、心筋梗塞は、出ているのか。
【C委員】
心筋梗塞については、若年被爆者だけである。
心筋梗塞については、若年被爆者だけである。
3 長崎原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群の予後:予備的調査結果
<委員説明>
【D委員】
昨年の原子爆弾後障害研究会の中で発表された、「長崎原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群(※34)の予後:予備的調査結果」ということで報告されているので、紹介したい。
これまで骨髄異形成症候群については、その発生率が被爆距離と関連しているということはいくつか論文が発表されている。長崎大学原爆後障害医療研究所の血液内科で研究を継続しているものである。
今回は、骨髄異形成症候群の後に白血病に移行するか、または死亡に至るかということが放射線被爆に関連しているかということを検討している。まず被爆距離を3つに分けて、1.5km未満、1.5~3km、3km以上に分けて白血病に移行した発症率と総死亡率を評価している。
近距離の方が生存率が低い結果が出ているが、統計的には有意でなかったと報告されている。もうひとつは、骨髄異形成症候群を評価するための指標であるIPSSスコア(※35)というものを用いて評価している。その結果、近距離ほど、予後不良が多い傾向であったが統計学的に有意とは言えなかった。ただし、染色体異常を有する割合はやはり近距離ほど高かった。
結論として、原爆放射線は骨髄異形成症候群の予後不良に関与している可能性が考えられるとなっている。今後、継続を観察してということが書かれている。個人的意見としては、これは予備的調査であるが、今後継続して研究していくと何か結果がでるのではないかと期待している。
昨年の原子爆弾後障害研究会の中で発表された、「長崎原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群(※34)の予後:予備的調査結果」ということで報告されているので、紹介したい。
これまで骨髄異形成症候群については、その発生率が被爆距離と関連しているということはいくつか論文が発表されている。長崎大学原爆後障害医療研究所の血液内科で研究を継続しているものである。
今回は、骨髄異形成症候群の後に白血病に移行するか、または死亡に至るかということが放射線被爆に関連しているかということを検討している。まず被爆距離を3つに分けて、1.5km未満、1.5~3km、3km以上に分けて白血病に移行した発症率と総死亡率を評価している。
近距離の方が生存率が低い結果が出ているが、統計的には有意でなかったと報告されている。もうひとつは、骨髄異形成症候群を評価するための指標であるIPSSスコア(※35)というものを用いて評価している。その結果、近距離ほど、予後不良が多い傾向であったが統計学的に有意とは言えなかった。ただし、染色体異常を有する割合はやはり近距離ほど高かった。
結論として、原爆放射線は骨髄異形成症候群の予後不良に関与している可能性が考えられるとなっている。今後、継続を観察してということが書かれている。個人的意見としては、これは予備的調査であるが、今後継続して研究していくと何か結果がでるのではないかと期待している。
<主な質疑>
【会長】
この骨髄異形成症候群というのは、長崎の被爆者では、ほぼ間違いないデータがでているが、広島がまだ完成していない。両方で同じようなデータが出てくると非常に確固たるデータになるのではないかと思う。今後、観察を要する領域である。このIPSSスコアというのは、国際的指標で、定評があるものなので客観性が出て来たのではないかと思う。
このような論文のサーチは今後も継続していきたい。
この骨髄異形成症候群というのは、長崎の被爆者では、ほぼ間違いないデータがでているが、広島がまだ完成していない。両方で同じようなデータが出てくると非常に確固たるデータになるのではないかと思う。今後、観察を要する領域である。このIPSSスコアというのは、国際的指標で、定評があるものなので客観性が出て来たのではないかと思う。
このような論文のサーチは今後も継続していきたい。
≪審議事項1及び2のまとめ≫
【会長】
第一番目の議題は、被爆地拡大地域を含む、長崎の東側を中心としたプルトニウム測定のデータが信頼できるものであったのではないかということで、最終結論ではないが、もう少し専門家の意見を取り入れて検証を深めたい。
そういう意味で、ひとつ重要なステップが生まれたのではないかと思う。23.5mSvという線量を50年間かけて浴びるというのは、家の中で生活するので、もう少し低いところに来るんだろうと思うが、人体にガンとか血管系の病気とかいろんなものに影響するかとういうことが次のステップとして重要になると思う。被爆地拡大地域の健康調査というのはアンケート調査は出ているが、疫学調査として、医師あるいは疫学者が10年、20年観察してガンがどれくらい出ていると、発症率を観察しているものはないので、今更それをスタートしてできるかというと難しいので、そういう意味で世界中で低い線量のところの健康影響がどの程度研究されて、今、一番新しい論文はどういうものがあるかというのが、我々が検討しているポイントになっている。
まだ、どういう論文を最終的に選んで、そこからどういう結論を出すかということには至っていない。次の段階ではそういう論文を見ていかないといけないと思う。これは、委員に目を通してほしいと思う。先程、B委員が紹介した論文も委員に目を通していただきたい。4回目か5回目の時には、論文の評価を6名でできればと考えている。これが、第一点目の被爆地域の拡大の問題でどれくらい人体影響があるかというところになる。
次回は、専門家の意見を聞く必要があるということで、プルトニウムの測定の専門家とか空間線量から人体にどれくらい影響があるかとか、そういう専門の先生の意見を聞くことも含めて、活動を続けていきたい。E委員はそういう方向性でいかがか。
第一番目の議題は、被爆地拡大地域を含む、長崎の東側を中心としたプルトニウム測定のデータが信頼できるものであったのではないかということで、最終結論ではないが、もう少し専門家の意見を取り入れて検証を深めたい。
そういう意味で、ひとつ重要なステップが生まれたのではないかと思う。23.5mSvという線量を50年間かけて浴びるというのは、家の中で生活するので、もう少し低いところに来るんだろうと思うが、人体にガンとか血管系の病気とかいろんなものに影響するかとういうことが次のステップとして重要になると思う。被爆地拡大地域の健康調査というのはアンケート調査は出ているが、疫学調査として、医師あるいは疫学者が10年、20年観察してガンがどれくらい出ていると、発症率を観察しているものはないので、今更それをスタートしてできるかというと難しいので、そういう意味で世界中で低い線量のところの健康影響がどの程度研究されて、今、一番新しい論文はどういうものがあるかというのが、我々が検討しているポイントになっている。
まだ、どういう論文を最終的に選んで、そこからどういう結論を出すかということには至っていない。次の段階ではそういう論文を見ていかないといけないと思う。これは、委員に目を通してほしいと思う。先程、B委員が紹介した論文も委員に目を通していただきたい。4回目か5回目の時には、論文の評価を6名でできればと考えている。これが、第一点目の被爆地域の拡大の問題でどれくらい人体影響があるかというところになる。
次回は、専門家の意見を聞く必要があるということで、プルトニウムの測定の専門家とか空間線量から人体にどれくらい影響があるかとか、そういう専門の先生の意見を聞くことも含めて、活動を続けていきたい。E委員はそういう方向性でいかがか。
【E委員】
承知した。広島では、同じように線量評価をやっていく。また、雨の降った地域のマップを作成している。
承知した。広島では、同じように線量評価をやっていく。また、雨の降った地域のマップを作成している。
【会長】
A委員、今のような方向性でいいか。
A委員、今のような方向性でいいか。
【A委員】
承知した。
承知した。
【会長】
他の委員の皆様は、文献サーチは、そういう方向性でいいか。
他の委員の皆様は、文献サーチは、そういう方向性でいいか。
【委員】
承知した。
承知した。
【会長】
また、二世の方も続けて検討していきたい。
また、二世の方も続けて検討していきたい。
審議事項3 次回開催について
【事務局】
次回開催については、今回の会議の内容を事務局で整理を行い、開催内容について会長及び委員の皆様のご意見を伺う中で調整させていただき、半年後の3月を目途に開催ということでいかがかと考えている。
次回開催については、今回の会議の内容を事務局で整理を行い、開催内容について会長及び委員の皆様のご意見を伺う中で調整させていただき、半年後の3月を目途に開催ということでいかがかと考えている。
【会長】
理化学研究所の分もお願いしたい。
理化学研究所の分もお願いしたい。
【A委員】
承知した。
承知した。
【事務局】
参考人についても相談させていただきたい。
参考人についても相談させていただきたい。
以上
<用語解説>
※1 長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告
被爆地域拡大是正の科学的根拠とすべく長崎県・市が行った調査報告のことである。報告は、岡島俊三長崎大学名誉教授によってまとめられた。
※1 長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告
被爆地域拡大是正の科学的根拠とすべく長崎県・市が行った調査報告のことである。報告は、岡島俊三長崎大学名誉教授によってまとめられた。
※2 プルトニウム
原子番号94で、超ウラン元素の一つである。天然には極微量しか存在しない。Pu-239はU-238の中性子捕獲によって生ずるU-239が、2段のβ崩壊をして生じる。その半減期は2.4×104年である。これがさらに中性子を捕獲すると順次Pu-240、241及び242などの同位体が生ずる。このうちPu-239とPu-241は核分裂断面積が大きいために核分裂物質(核燃料)として利用できる。
原子番号94で、超ウラン元素の一つである。天然には極微量しか存在しない。Pu-239はU-238の中性子捕獲によって生ずるU-239が、2段のβ崩壊をして生じる。その半減期は2.4×104年である。これがさらに中性子を捕獲すると順次Pu-240、241及び242などの同位体が生ずる。このうちPu-239とPu-241は核分裂断面積が大きいために核分裂物質(核燃料)として利用できる。
※3 グローバルフォールアウト
大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
※4 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
※5 吸収線量
放射線防護上の基本的な線量。物質によって吸収された電離放射線エネルギー。記号Dで表され、微少体積要素(dv)中の物質に付与されたエネルギー(dE)についてD=dE/dvで定義される。単位質量(kg)の物質に吸収された放射線のエネルギー(J)の単位で表され、この単位にグレイ(Gy)という呼び名が与えられている。
放射線防護上の基本的な線量。物質によって吸収された電離放射線エネルギー。記号Dで表され、微少体積要素(dv)中の物質に付与されたエネルギー(dE)についてD=dE/dvで定義される。単位質量(kg)の物質に吸収された放射線のエネルギー(J)の単位で表され、この単位にグレイ(Gy)という呼び名が与えられている。
※6 アルファ線
2個の陽子および2個の中性子(すなわち、ヘリウム原子核)から成る粒子線であるアルファ線は、ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドンなどの特定の放射性原子の自然崩壊によって発生する。アルファ線は質量が大きく、正電荷を帯びているため、水中では通常短い距離(1 mm未満)しか進めない。紙1枚でもアルファ線を容易に止めることができる。従って、アルファ線被曝により健康影響が現れるのは、アルファ線を放出する物質が体内に摂取された時(体内被曝)のみである。
2個の陽子および2個の中性子(すなわち、ヘリウム原子核)から成る粒子線であるアルファ線は、ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドンなどの特定の放射性原子の自然崩壊によって発生する。アルファ線は質量が大きく、正電荷を帯びているため、水中では通常短い距離(1 mm未満)しか進めない。紙1枚でもアルファ線を容易に止めることができる。従って、アルファ線被曝により健康影響が現れるのは、アルファ線を放出する物質が体内に摂取された時(体内被曝)のみである。
※7 セシウム(134・137)
セシウム134(134Cs)は、原子番号55のアルカリ金属元素であるセシウムの同位体のひとつで人工放射性核種である。半減期は2.06年でベータ崩壊して、ガンマ線(0.605 MeV 他)を放射して安定なバリウム134(134Ba)になる。
セシウム137(137Cs)は原子番号55のアルカリ金属元素であるセシウムの同位体のひとつで人工放射性核種である。半減期は、30.2年でβ崩壊して137mBaとなり、γ線(0.662MeV)を放射して安定な137Baになる。原子力発電所等の液体廃棄物にも含まれているので、周辺環境の被曝評価の対象としても重要な核種である。一方核爆発実験によって生じるフォールアウト中でも重要核種である。体内に蓄積された場合は、代謝による排泄などで70~80日で半減する。
セシウム134(134Cs)は、原子番号55のアルカリ金属元素であるセシウムの同位体のひとつで人工放射性核種である。半減期は2.06年でベータ崩壊して、ガンマ線(0.605 MeV 他)を放射して安定なバリウム134(134Ba)になる。
セシウム137(137Cs)は原子番号55のアルカリ金属元素であるセシウムの同位体のひとつで人工放射性核種である。半減期は、30.2年でβ崩壊して137mBaとなり、γ線(0.662MeV)を放射して安定な137Baになる。原子力発電所等の液体廃棄物にも含まれているので、周辺環境の被曝評価の対象としても重要な核種である。一方核爆発実験によって生じるフォールアウト中でも重要核種である。体内に蓄積された場合は、代謝による排泄などで70~80日で半減する。
※8 ガンマ線
ガンマ線はコバルト60やセシウム137などの放射性物質の自然崩壊により発生する。コバルト60のガンマ線は人体の深部まで透過できるのでがんの放射線治療に広く使用されてきた。
ガンマ線はコバルト60やセシウム137などの放射性物質の自然崩壊により発生する。コバルト60のガンマ線は人体の深部まで透過できるのでがんの放射線治療に広く使用されてきた。
※9 IAEA
原子力の平和利用に関する国際協力を推進することを目的に設立された国際機関。国連での審議を経て1956年にIAEA憲章が採択され、1957年に発足した。2012年時点で154ヶ国が加盟している。IAEAは原子力平和利用の推進とともに、軍事利用(核兵器の拡散)の防止を目的としており、この目的の達成に向けて、原子力の研究・開発及び実用化に係る協力と情報交換、開発途上国に対する支援、保障措置の設定・実施等を行っている。
原子力の平和利用に関する国際協力を推進することを目的に設立された国際機関。国連での審議を経て1956年にIAEA憲章が採択され、1957年に発足した。2012年時点で154ヶ国が加盟している。IAEAは原子力平和利用の推進とともに、軍事利用(核兵器の拡散)の防止を目的としており、この目的の達成に向けて、原子力の研究・開発及び実用化に係る協力と情報交換、開発途上国に対する支援、保障措置の設定・実施等を行っている。
※10 コンバージョンファクター
変換する因子。
変換する因子。
※11 実効線量
身体の放射線被曝が均一又は不均一に生じたときに、被曝した臓器・組織で吸収された等価線量を相対的な放射線感受性の相対値(組織荷重係数)で加重してすべてを加算したものである。単位はシーベルト(Sv)で表される。
身体の放射線被曝が均一又は不均一に生じたときに、被曝した臓器・組織で吸収された等価線量を相対的な放射線感受性の相対値(組織荷重係数)で加重してすべてを加算したものである。単位はシーベルト(Sv)で表される。
※12 半減期
物質の量がある観測時点の値から半分に減少するまでに要する時間。
物質の量がある観測時点の値から半分に減少するまでに要する時間。
※13 ウェザリング
放射性物質が、雨で流されたり、地中に浸透したりするなど自然作用で除去されること。
放射性物質が、雨で流されたり、地中に浸透したりするなど自然作用で除去されること。
※14 バックグラウンド
放射線測定の分野では、対象とする放射線源以外の要因で計数される値を指す。
放射線測定の分野では、対象とする放射線源以外の要因で計数される値を指す。
※15 空間線量率
ある時間内に空気中を通過する放射線の量を言う。平常時や緊急時の環境モニタリングにおける重要な測定項目のひとつである。
ある時間内に空気中を通過する放射線の量を言う。平常時や緊急時の環境モニタリングにおける重要な測定項目のひとつである。
※16 核種
原子または原子核の種類を示すのに用いる用語。現在約1900種の核種が知られており、うち280種が天然の安定核種である。
原子または原子核の種類を示すのに用いる用語。現在約1900種の核種が知られており、うち280種が天然の安定核種である。
※17 PubMed
アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービス。
アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービス。
※18 基底ガン
表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞が悪性化したもの。
表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞が悪性化したもの。
※19 悪性黒色腫
皮膚に発生する皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)はいろいろな種類があるが、悪性黒色腫はその中のひとつで、最も悪性度が高いと恐れられている。
皮膚に発生する皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)はいろいろな種類があるが、悪性黒色腫はその中のひとつで、最も悪性度が高いと恐れられている。
※20 ページェット病
ページェット病(Paget病)は乳房,腋窩,会陰部,肛門周囲などに発生する上皮内癌で進行するとページェット癌になる。
ページェット病(Paget病)は乳房,腋窩,会陰部,肛門周囲などに発生する上皮内癌で進行するとページェット癌になる。
※21 局在型
限られた場所にあること。かたよった所にあること。
限られた場所にあること。かたよった所にあること。
※22 ERR
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
※23 BMI
体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数。
体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数。
※24 右脚ブロック
心電図でみられる異常所見のひとつ。
心電図でみられる異常所見のひとつ。
※25 房室ブロック
心臓の刺激伝導系において、心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する病態。
心臓の刺激伝導系において、心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する病態。
※26 動心不全
心臓が血液を全身へ十分に送れない状態。
心臓が血液を全身へ十分に送れない状態。
※27 ペースメーカー
必要な電気刺激を心筋に伝えて心臓を拍動させる装置。
必要な電気刺激を心筋に伝えて心臓を拍動させる装置。
※28 緑内障
視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患。
視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患。
※29 白内障
さまざまな原因で水晶体が濁る病気。
さまざまな原因で水晶体が濁る病気。
※30 開放隅角正常眼圧型
緑内障の一種。
緑内障の一種。
※31 寿命調査
疫学調査に基づいて生涯にわたる健康影響を調査する研究プログラムで、原爆放射線が死因やがん発生に与える長期的影響の調査を主な目的として放射線影響研究所で行われている。1950年の国勢調査で広島・長崎に住んでいたことが確認された人の中から選ばれた約94,000人の被爆者と、約27,000人の非被爆者から成る約12万人の対象者を、その時点から追跡調査している。
疫学調査に基づいて生涯にわたる健康影響を調査する研究プログラムで、原爆放射線が死因やがん発生に与える長期的影響の調査を主な目的として放射線影響研究所で行われている。1950年の国勢調査で広島・長崎に住んでいたことが確認された人の中から選ばれた約94,000人の被爆者と、約27,000人の非被爆者から成る約12万人の対象者を、その時点から追跡調査している。
※32 成人健康調査
2年ごとの健康診断を中心とした放射線影響研究所における臨床調査プログラム。この調査の主な目的は原爆放射線の健康に及ぼす影響を調査すること。
2年ごとの健康診断を中心とした放射線影響研究所における臨床調査プログラム。この調査の主な目的は原爆放射線の健康に及ぼす影響を調査すること。
※33 頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)
頸動脈の内膜、中膜、外膜のうち、内膜中膜の厚さを合計したもの。動脈硬化の指標となる。
頸動脈の内膜、中膜、外膜のうち、内膜中膜の厚さを合計したもの。動脈硬化の指標となる。
※34 骨髄異形成症候群
骨髄機能の異常によって、造血障害を起こす症候群。
骨髄機能の異常によって、造血障害を起こす症候群。
※35 IPSSスコア
IPSS(International Prognostic Scoring System:国際予後判定システム)for MDSは、
•骨髄の未熟な血液細胞(芽球:blast)の割合
•末梢血での血液細胞数の減少が3種類のうち何種類あるか?
•染色体異常の種類(程度)
という3項目が予後に深く関連すると考えて、これらを点数化して予後を予測する方法。
IPSS(International Prognostic Scoring System:国際予後判定システム)for MDSは、
•骨髄の未熟な血液細胞(芽球:blast)の割合
•末梢血での血液細胞数の減少が3種類のうち何種類あるか?
•染色体異常の種類(程度)
という3項目が予後に深く関連すると考えて、これらを点数化して予後を予測する方法。
第4回(平成26年度第2回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2016年11月10日 ページID:029042
長崎市の附属機関について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
第5回(平成27年度第1回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成27年3月31日(火曜日) 13時30分~15時30分
場所
長崎原爆資料館 平和学習室
議題
1 原爆放射線とフォールアウトについて
2 原爆放射線の人体影響に関する研究等の情報について
3 次回開催について
2 原爆放射線の人体影響に関する研究等の情報について
3 次回開催について
審議内容
審議事項1 原爆放射線とフォールアウトについて
広島・長崎の原爆残留放射能の測定とフォールアウト
(内容)
1. 広島の残留放射能測定 -DS02以降の新データ-
日本銀行(広島)、原爆ドームの銅板等を利用した中性子の測定データについて等。
日本銀行(広島)、原爆ドームの銅板等を利用した中性子の測定データについて等。
2. 長崎の残留放射能測定
浦上天主堂の石垣、長崎の被爆鉄材、山王神社前の個人宅の石垣を利用したコバルト60の測定について等。
浦上天主堂の石垣、長崎の被爆鉄材、山王神社前の個人宅の石垣を利用したコバルト60の測定について等。
3. 広島のフォールアウト(※1)
広島市内の「黒い雨」の降雨域、己斐・高須の積算線量について等。
広島市内の「黒い雨」の降雨域、己斐・高須の積算線量について等。
4. 長崎のフォールアウト プルトニウム調査報告について
初期空間線量率に基づく被爆線量の推定(岡島報告書等)
初期空間線量率に基づく被爆線量の推定(岡島報告書等)
【A参考人 】
この話をいただいた時に、メインはこのプルトニウム調査についてポイントのようであったが、私自身は長崎のフォールアウトについては何も行っていないので、フォールアウト以外の原爆による放射能の測定など、そのような話を出してよろしいか、というお願いをした。話としては広島の残留放射能の測定、長崎の残留放射能の測定、広島のフォールアウト、長崎のフォールアウト。それで、調べてみると長崎のフォールアウトについて非常にたくさんの論文があり、本日はその論文紹介のようになるが、いろいろと紹介したい。特に残留放射能におきましては、DS02(※2)以降の新しいデータについて紹介させていただきたい。
この話をいただいた時に、メインはこのプルトニウム調査についてポイントのようであったが、私自身は長崎のフォールアウトについては何も行っていないので、フォールアウト以外の原爆による放射能の測定など、そのような話を出してよろしいか、というお願いをした。話としては広島の残留放射能の測定、長崎の残留放射能の測定、広島のフォールアウト、長崎のフォールアウト。それで、調べてみると長崎のフォールアウトについて非常にたくさんの論文があり、本日はその論文紹介のようになるが、いろいろと紹介したい。特に残留放射能におきましては、DS02(※2)以降の新しいデータについて紹介させていただきたい。
1.広島の残留放射能測定―DS02以降の新データ
これはDS02のファイナルレポートである。2002年にできあがったが、出版が少し遅れて2005年くらいになったと思う。DS02はアメリカ側の計算に対して、広島・長崎の実際の測定データと比較検討するということを非常に細かくやり、γ線、中性子、コバルトの測定等は非常に細かく一致するということを検証している。それで、新しい事実として、速中性子(※3)、銅の中に原爆の中性子np反応(※4)でニッケル63ができているということが分かり、これを測れば原爆のスペクトルの非常に高い中性子の検証ができるということで、DS02では、そのニッケル63の測定が行われていなかった。主には物理学としてはAMS加速器質量分析法(加速器マス)(※5)であるが、一番近い点では日本銀行、あと市役所辺りや、広島大学の理学部辺りまでである。これは広島のデータであり、長崎ではニッケルは測定されていない。このような測定データが得られ、速中性子についても一致するという風に評価されている。このファイナルレポートの後でデータをいくつか追加し、その分の紹介をさせてもらうが、一つは私自身で日銀のその銅の試料の測定を行った。また、原爆ドームについての銅の試料を得ており、それをアメリカのグループと、日本の柴田誠一(京大)さんのグループに託したが、残念ながらすぐに結果を出すにまではいかなかった。日銀は広島の爆心地から約392mの位置辺りにある。原爆ドームから155mくらいになる。
(1)日銀避雷針の銅線
日銀の避雷針の銅線であるが、日銀の壁が爆心の方向に向かっており、銅線が残っている。それで、銅線が壁を伝って床に埋まっている。実際のサンプリングは広島の放影研の方で行い、それをアメリカのStraumeのグループと我々と柴田先生のグループに送って分析を行った。
日銀の避雷針の銅線であるが、日銀の壁が爆心の方向に向かっており、銅線が残っている。それで、銅線が壁を伝って床に埋まっている。実際のサンプリングは広島の放影研の方で行い、それをアメリカのStraumeのグループと我々と柴田先生のグループに送って分析を行った。
(2)原爆ドーム
次に原爆ドームの銅の話であるが、原爆ドームは被爆前は、建物部分が銅板で覆われていた。それが、原爆の熱線でこの銅が溶けてどこかへ飛んで行き、形が残ったという風に思われている訳であるが、実際は、銅板が少し残っている。それで、影になって熱線が直接あたってない所では、銅板がこういう格好で何ケ所かある。それで、我々は何度かこの原爆ドームの改修のときに、鉄材などいろいろサンプルを得ているので、その時に銅板が付いてるというのが分かった。その時は、既に世界遺産になっていたので、文化庁からこれを取っていいという許可を得るのに1年以上かかったが、その後でこのような銅を取った。
次に原爆ドームの銅の話であるが、原爆ドームは被爆前は、建物部分が銅板で覆われていた。それが、原爆の熱線でこの銅が溶けてどこかへ飛んで行き、形が残ったという風に思われている訳であるが、実際は、銅板が少し残っている。それで、影になって熱線が直接あたってない所では、銅板がこういう格好で何ケ所かある。それで、我々は何度かこの原爆ドームの改修のときに、鉄材などいろいろサンプルを得ているので、その時に銅板が付いてるというのが分かった。その時は、既に世界遺産になっていたので、文化庁からこれを取っていいという許可を得るのに1年以上かかったが、その後でこのような銅を取った。
これは最近撮った写真であるが、その時に半分しか切り取っていない。あと半分は残っており、それを見ることができる。少し大きな望遠鏡であれば、この周りにも、このような格好で銅が残っているというのが分かる。この銅を分けて、この部分は私のほうで分析を行い、この部分はアメリカに送って加速器マスで分析した。これは、原医研(※6)にある訳であるが、恐らく星先生の所にある。それでアメリカに送ったデータは、加速器マスで、ちゃんとデータを出している。勿論これは直接ではなく煉瓦の陰になっているので、その遮蔽の計算もしないと最終的なデータは出ないが、そのあたりの計算もアメリカの方で、きっちりやってこういう値を出してきている。
(3)Copper sampling from A-Dome
それで、我々は、上のほうの銅を採取したが、実はあの時に原爆ドームの保存工事のために下にこの排水溝を造るという作業が行われていた。それでこのように発掘されたが、そしたら銅のカケラが出てきたという事で、これは広島市にとっては、ゴミと同様で、文化庁に許可を得る必要はなく、これを頂いた。これは、先程のドームを覆っていた銅が、どこかに飛んで行ったのではなく、少し溶けたものなどがパラパラと地上に落ちて、その上に爆風による瓦礫が積もり、埋まっていたということが分かった。これは、最終的なデータである。アメリカの日銀のデータがあったが、私が測ったのがこの位置にあった。さらに原爆ドームの銅については、アメリカのグループの加速器マスのデータがこのように載って、それと京大原子炉の柴田誠一先生のところの液シンのデータがこの点である。それで、これをみると、こちらがDS02で、上のがDS86(※7)であるので、DS02にぴったり合うという感じではないが、誤差の範囲で一致しているということが分かった。
それで、我々は、上のほうの銅を採取したが、実はあの時に原爆ドームの保存工事のために下にこの排水溝を造るという作業が行われていた。それでこのように発掘されたが、そしたら銅のカケラが出てきたという事で、これは広島市にとっては、ゴミと同様で、文化庁に許可を得る必要はなく、これを頂いた。これは、先程のドームを覆っていた銅が、どこかに飛んで行ったのではなく、少し溶けたものなどがパラパラと地上に落ちて、その上に爆風による瓦礫が積もり、埋まっていたということが分かった。これは、最終的なデータである。アメリカの日銀のデータがあったが、私が測ったのがこの位置にあった。さらに原爆ドームの銅については、アメリカのグループの加速器マスのデータがこのように載って、それと京大原子炉の柴田誠一先生のところの液シンのデータがこの点である。それで、これをみると、こちらがDS02で、上のがDS86(※7)であるので、DS02にぴったり合うという感じではないが、誤差の範囲で一致しているということが分かった。
2.長崎の残留放射能の測定
次に、長崎の残留放射能の測定についても我々もいくつか測っているので、その話を少し紹介する。これはDS86のファイナルレポートで2巻に渡ってこういう形で出版されている。これをみると、DS86というのは、ほとんどアメリカ側の計算主体で、ごく短期間でまとめられたものであるので、実験データとの比較検討というのは、あまり行われていないと思う。特に広島フィールドの測定としては、金沢大学の中西先生たちのデータがいくつかあり、大体あっていると思う。長崎の場合は非常にばらついており、中西先生のデータもあるが、岡島先生のデータもかなりばらついているというのが分かったので、これは、長崎で実際にEu-152(※8)をGe検出器(※9)で測ってみる必要があるということで我々も長崎のサンプリングから行った。この赤字が我々が集めた試料。この浦上天主堂については、岡島先生に直接、石の試料を頂いた。あとは、長崎放影研と広島放影研のかたといっしょに集めてもらった試料である。先程の岩石はEu-152測定に使えるものである、同じように鉄の中のコバルト60があるということもあり、これは平成6年頃に島崎先生から譲ってもらった鉄の試料である。
次に、長崎の残留放射能の測定についても我々もいくつか測っているので、その話を少し紹介する。これはDS86のファイナルレポートで2巻に渡ってこういう形で出版されている。これをみると、DS86というのは、ほとんどアメリカ側の計算主体で、ごく短期間でまとめられたものであるので、実験データとの比較検討というのは、あまり行われていないと思う。特に広島フィールドの測定としては、金沢大学の中西先生たちのデータがいくつかあり、大体あっていると思う。長崎の場合は非常にばらついており、中西先生のデータもあるが、岡島先生のデータもかなりばらついているというのが分かったので、これは、長崎で実際にEu-152(※8)をGe検出器(※9)で測ってみる必要があるということで我々も長崎のサンプリングから行った。この赤字が我々が集めた試料。この浦上天主堂については、岡島先生に直接、石の試料を頂いた。あとは、長崎放影研と広島放影研のかたといっしょに集めてもらった試料である。先程の岩石はEu-152測定に使えるものである、同じように鉄の中のコバルト60があるということもあり、これは平成6年頃に島崎先生から譲ってもらった鉄の試料である。
これは、岡島先生から頂いた浦上天主堂の石垣である。石の表面を削ったものを頂いた。あと長崎医専のレンガや医専納骨堂のレンガである。
これは、片足鳥居で半分は、山王神社に並べてある。その並べてあるものを少し貰えないかと山王神社の宮司さんにお願いしたが断られ、それで、長崎の放影研の方とで、神社の近くのSさん宅の石垣の表面を少し削って集めた。これは最後の測定結果だが、この黒いものが我々が測定したデータで、白い四角が中西先生のこれまでのデータである。
この黒い点が我々の測定で、DS86と、DS02がまだこの時点では出ていなかった。ほとんど93Rev(※10)に一緒であるが、このデータが合うことが分かった。DS02のファイナルレポートには、この中に我々のデータを入れて貰っているが、奥村先生たちのデータがあり、少し外れているという研究になっている。同じくコバルト60のデータの赤い点が我々が測定したデータで、橋詰先生たちのデータ、この場合はそれほど外れている感じではないが、誤差の範囲で確定という結果が得られた。
DS86からDS02において変更された点としては、簡単に紹介すると、まずは、原爆出力スペクトルの非常に詳細な計算が行われたということがある。それと、長崎の場合は、あまり変更はなかったが、広島の場合は、爆発高度が580mから600m、原爆の出力15ktから16ktに変更された。これらは我々の測定データと比較していって、こうした方がいいだろうということでアメリカ側が変更したものである。残留放射能のいろいろな放射線を比較をして、それらとの比較も行われている。さらに、爆心は15mほど西に移動するということになっており、このような変更が行われている。最終的な線量としてはほとんど変わりないと思っている。
3.広島原爆のフォールアウト
3-1 原爆残留放射能の初期調査
―広島・長崎のフォールアウトに関する調査を中心として―
次は、広島原爆のフォールアウトについて。
原爆の燃料というのは、長崎はプルトニウムであるが、その長崎の評価にあたって、広島での評価の仕方というのも関係してきている。まずは、その原爆残留放射能の初期調査からみると、これはご御存じのとおり、8月6日以降の初期調査としては、理化学研究所(※11)、京都大学、大阪大学、広島・当時の文理大の先生方も測定をされている。また、学術会議を基にできた原子爆弾災害調査研究特別委員会(※12)の調査、いわゆる原災報の調査に載っている。
アメリカ側の調査団としては、マンハッタン管区調査団MED(※13)と、米国海軍医学研究所NMRIの二つの調査団が入って調査をしている。これは、理化学研究所の仁科芳雄先生が、日本の原爆開発の依頼を受けていたので、原爆の後にすぐに陸軍から広島、長崎に調査に行くようにということで、8月9日に広島に入られている。8月10日に広島の土のサンプルを、土以外にも銅線やゴムなども集められており、それを10日に東京に空輸して理化学研究所でたローリッツエン検電器(※14)を使って測ったら、銅線から放射能がみられたことから、これは原爆であるということを認めたひとつの根拠であった。これが仁科財団の原子爆弾の資料に載っている。
これが使い古しの封筒にサンプルを集めたもの、こういうものを入れて、こういう格好で送ったという風に写真が残っている。この試料はどうなったかのかと言うと、理研の仁科研究室(※15)の方が、試料を引き継いでこられたが、最後に岡野真治先生が手伝い、岡野先生は、まだ、お元気で福島の事故でもご活躍されているが、岡野先生は、実はだいぶ前に退任されているので、この試料を自宅のほうに保管されていた、ということを聞いている。それで、その時、いろんな方にその仁科試料を持っているんだという事を言われており、我々もそういう事を聞き、その試料を是非あたらせて欲しいと申し入れたが、了解を得られなかった。それで、我々は仁科試料を、広島の原爆資料館に寄贈して欲しい。寄贈してもらうにあたっては、マスコミを呼びたい。こういう貴重な試料を資料館に保管したいということを言うと、すぐに持ってこられ、これはその時の新聞記事であるが、各紙とも同じような記事を載せている。「47年ぶり広島に戻る」ということで写真入りで紹介されている。資料館に戻ると、我々は、すぐこれをお借りして測定を行った。実物はこういう格好で、理研はペニシリンとか作っていたので、その土の試料もそのペニシリンの瓶の中に入れて、封入されていた。それで、調べてみると、いくつか欠番がある。同じ場所でも2本とか3本あるような試料もある。先程の封筒についても、実際にはこういう色がついた非常に鮮やかな封筒だということが分かった。そして、我々の測定が終わり、現在は広島の資料館の方で「広島の土」として展示されている。仁科試料は爆心から5km以内で集められている。サンプルだが、実際に現存するのは22本。土から、セシウムが検出されたが、セシウムの値を出すのに、重量濃度は我々で出すことができるが、面積あたりの濃度も必要になる。今回の長崎のプルトニウムについて、重量濃度あたりで出すのか、表面積あたりで出すのかで違ってくるので、苦労した点である。重量濃度は、放射能(Bq/g)である。それを面積あたりに直すときに、仁科試料については、封筒に入る程度の量であることと、被爆の直後であるので、ほぼ表面についていただけであろうということ。それをサンプルにしたであろうということで、Xcmまで入っているとすれば、面積あたりの濃度は、QをSで割ると、深さ、密度でいうと何cmまで分布したかというので決めた。これはもう1cmまでをサンプルにしたというふうな仮定をした。これが、No7スペクトルのナンバーワンのセシウム137、非常に強いと思う。14番、この辺りであるが、これは出ていないということが分かった。これで、この丸がセシウムの面積あたりの(mBq)であるが、この7番は実際のもの1月20日になっている。それくらいこの辺りが非常に強いことが分かった。後は、この辺りは割と少ない。
仁科試料から何がわかるか?
それで、この仁科試料から何が分かるかというと、広島市内の「黒い雨」の降雨地域ということと、広島でフォールアウトの強かった己斐・高須でのフォールアウトの線量が評価できる。
(1)広島市内の「黒い雨」の降雨域―「黒い雨」雨域と援護地域―
広島の「黒い雨」の降雨地域については、これは原災報(※16)に載っている1953年に宇田雨域というものがあり、北西11km、南北が19kmの楕円形の範囲である。この地域について、国は1976年に「大雨地域」という風に指定し、「援護地域」としており、健康診断が受けられることや、被爆者が病気になったら被爆者健康手帳に切り替えられるということがあるが、その外の小雨地域は、援護対象外となっていた。それで1978年にその援護地域の外の人達が、その援護地域拡大をするようにということを厚労省や県・市に求めて、そのような運動が始まっている。1987年に、もと気象研(※17)の室長の増田先生が、この宇田雨域のアンケートに加えて、116のアンケートに加え、さらに170のアンケート調査を行っている。そして、降雨域は宇田雨域より2倍ぐらい広い。これが増田雨域と言われている。これが宇田雨域であり、これが大雨地域、その外の地域。それで、増田雨域は、もっと複雑でこのピンク色の部分が大雨地域である。この破線で描かれているのが、宇田雨域の大雨地域、その外が小雨地域である。それで、増田雨域の緑の部分が小雨地域となっている。この色は、増田先生自身が最近塗られた部分である。
広島の「黒い雨」の降雨地域については、これは原災報(※16)に載っている1953年に宇田雨域というものがあり、北西11km、南北が19kmの楕円形の範囲である。この地域について、国は1976年に「大雨地域」という風に指定し、「援護地域」としており、健康診断が受けられることや、被爆者が病気になったら被爆者健康手帳に切り替えられるということがあるが、その外の小雨地域は、援護対象外となっていた。それで1978年にその援護地域の外の人達が、その援護地域拡大をするようにということを厚労省や県・市に求めて、そのような運動が始まっている。1987年に、もと気象研(※17)の室長の増田先生が、この宇田雨域のアンケートに加えて、116のアンケートに加え、さらに170のアンケート調査を行っている。そして、降雨域は宇田雨域より2倍ぐらい広い。これが増田雨域と言われている。これが宇田雨域であり、これが大雨地域、その外の地域。それで、増田雨域は、もっと複雑でこのピンク色の部分が大雨地域である。この破線で描かれているのが、宇田雨域の大雨地域、その外が小雨地域である。それで、増田雨域の緑の部分が小雨地域となっている。この色は、増田先生自身が最近塗られた部分である。
これを広島市内で比べてみると、宇田雨域というのは単純な楕円であるが、増田雨域は非常に複雑で、それと原災報等をみても、馬蹄形の記録が残っており、その、この黒い点の部分が大雨が降った地域である。この青い所が中くらいの雨域、緑のところが小雨域と分布している。これを仁科試料と比べると、宇田雨域と比べた場合は、宇田雨域の外にもセシウムがこのように数ケ所検出されている。これを増田雨域と比べると、今のように小雨雨域の中に全部入ってくるということで、これからも降雨域は宇田雨域よりも広い、増田雨域の方が近いという事を、我々としても結論として論文としている。
(2)己斐・高須地域のフォールアウト
次に、己斐・高須のフォールアウトであるが、この地域で採取された試料はない。ただし、これは、9月3日、4日に理研のグループが何度か入っているが、山崎文男先生たちが、カーボーン、車に測定器を、ローリッツエンを積んで測ったデータがある。この数値はバックグラウンド(※18)に対して何倍としている。これで、ちょうどこの古江については、仁科試料の土の試料と、空間線量(※19)の測定データがあったので、ここで繋げばこの非常に強かった地域での線量評価ができるということである。積算線量の推定方法としては、DS86のVol. 1に岡島先生、藤田さん、ハーレーが書いた章が6章にある。それには評価に二つの方法があり、一つは、初期の線量率測定である。それを基にそのセシウムの沈着データと、線量率のほうは、核分裂片の線量率の時間的変化、これは1時間後の線量率のtは経過時間、時間のマイナス1.2乗で減るとされている。実測データで、広島の場合、1.3乗であるというデータがあるが、まずはこの1.2乗とする。それで、爆発の1時間後から無限時間までの時間はこれを積分するだけであり、簡単に積分でき、1時間後の線量の5倍、これが1時間後から無限時間までの積分線量がレントゲンという格好で出ている。
次に、己斐・高須のフォールアウトであるが、この地域で採取された試料はない。ただし、これは、9月3日、4日に理研のグループが何度か入っているが、山崎文男先生たちが、カーボーン、車に測定器を、ローリッツエンを積んで測ったデータがある。この数値はバックグラウンド(※18)に対して何倍としている。これで、ちょうどこの古江については、仁科試料の土の試料と、空間線量(※19)の測定データがあったので、ここで繋げばこの非常に強かった地域での線量評価ができるということである。積算線量の推定方法としては、DS86のVol. 1に岡島先生、藤田さん、ハーレーが書いた章が6章にある。それには評価に二つの方法があり、一つは、初期の線量率測定である。それを基にそのセシウムの沈着データと、線量率のほうは、核分裂片の線量率の時間的変化、これは1時間後の線量率のtは経過時間、時間のマイナス1.2乗で減るとされている。実測データで、広島の場合、1.3乗であるというデータがあるが、まずはこの1.2乗とする。それで、爆発の1時間後から無限時間までの時間はこれを積分するだけであり、簡単に積分でき、1時間後の線量の5倍、これが1時間後から無限時間までの積分線量がレントゲンという格好で出ている。
もう一つは、セシウムの表面沈着量(mCi/㎢)から換算係数を使うというやり方で、1mCi/㎢の降下量がある時に、1時間後から無限時間までの線量は、300mR、0.3R(レントゲン)だというのが、この後半に載っている。それは、そのデータというのは実は古いものではなく、ネバダの核実験場でのそういったデータを何人かの科学者が調査して出している。300より少し低いのと、少し高いのがあり、それをまるめて、1mCiが0.3R(レントゲン)として、このDS86の方では使っている。そして、R(レントゲン)は旧単位であるので、Gy(グレイ)に直すと8.76mGyということで換算している。これは、先程の古江のデータを基にして、己斐・高須の最大値はバックグラウンドの5.1倍であるので、これは古江の20倍の値で、そうすると、己斐・高須の最大線量であるが、空気吸収線量(※20)それで37mGyぐらいがでる。DS86のファイナルレポートでは、初期線量から見積もった値とセシウムの降下量から見積もった値は、結果としては同じにならなければいけないと思う。それで、広島の初期線量率の測定データでネーヤ(※21)とかローリッツエンとかで測られたもので、マンハッタンのティボー,アラカワ、Pace and Smithの値です。マンハッタンの60日後で 1.2Rという値を出している。Pace and Smithは0.6~1.6。それで、宮崎・増田3~2.3。広島大学のグループも、これは少しずれていて差がある。結局、広島の己斐・高須では、1~3Rと評価されている。これはGyに直すと9~26mGyぐらい出て、私が見積もって37mGyになっている。
長崎の西山地区の初期線量率と線量であるが、これは、九州大学・篠原先生たちが、53日後に測った値で、これから2.5~70 R、マンハッタングループがふたつのデータが出て29、24~43R、Pace and Smithの42、38ふたつ出て DS86では20~40Rと評価されている。
これに対してセシウム137から求めた集積線量は、これは、Millerが1956年に土を採取しており、この間はゲルマニウム検出器(※22)とかないので1982年になってゲルマニウム検出器で測っている。この時は、西山地区のセシウムの降下量、バックグラウンドが長崎市内のバックグラウンドを用い、それを引いて5倍したら、1時間後から無限時間までの集積線量がでる。それで、40Rという値を出している。その他に馬原先生と、岡島先生の、1969年、1981年にサンプリングのデータがあるが、全てバックグラウンド引いても270とか非常に高い値になっており、ここに書かれてようにセシウムの分布は状態が変わってきている、それで、いかにバックグラウンドを引いても正確な長崎原爆によるフォールアウトの評価ができないということで、40Rこの値を採用している。
これをまとめてみると、上は旧単位であるが、広島・長崎でみるとセシウムフォールアウトについては空間線量の測定と、セシウムの測定から己斐・高須は1~3Rセシウム4.2R、長崎の場合は、西山地区で20~40セシウムの値40Rであるので、最大値は、40Rとしている。これを、Gyに直すと広島は9~26mGy、セシウムは37mGyこれは私どもの数字。それで、旧市内、広島市内については、これも仁科試料等ありますので測ると1mGyと低くく、ほとんどないというのが分かる。長崎はGyに直すと土で350mGy、初期線量が180~350mGyとまとめている。
(3)最近の研究―原爆資料館の「黒い雨」の壁面
このあとについては、最近の話をひとつ付け加えさせてもらうと、原爆資料館に「黒い雨」の筋がついた壁面が展示されている。このふたつは、同じ家の同じ壁の別な所から切ったもので、一つは資料館の本館に展示されているが、一方は企画展とかそういった時に使われている。この試料から平成12年に、この端を少し切り取った。こちらについては、以前にいろんな人がサンプルに採っている。ここは、アメリカが採って分析している。こちらの本館展示の方は、なかなかサンプルを採る機会はないが、平成14年に資料館の改修が行われた時に、この壁が外されていたので、その時にこのようないくつかのサンプルを採った。
このあとについては、最近の話をひとつ付け加えさせてもらうと、原爆資料館に「黒い雨」の筋がついた壁面が展示されている。このふたつは、同じ家の同じ壁の別な所から切ったもので、一つは資料館の本館に展示されているが、一方は企画展とかそういった時に使われている。この試料から平成12年に、この端を少し切り取った。こちらについては、以前にいろんな人がサンプルに採っている。ここは、アメリカが採って分析している。こちらの本館展示の方は、なかなかサンプルを採る機会はないが、平成14年に資料館の改修が行われた時に、この壁が外されていたので、その時にこのようないくつかのサンプルを採った。
この「黒い雨」の壁は、フォールアウトのちょうど真ん中にあたりにあるYさんという家の壁。黒い雨といっても、この壁のほんの表面に付いている黒い雨であり、これをカミソリで切り分けて、黒い部分とそうでない部分に分けて分析を行った。それで、セシウムがこのようなところに流れ、この様に非常に強いセシウム、別の所だとセシウムが少し出てきたというのが確認できた。
それとウランの分析を、これは京大原子炉(※23)の藤川先生にお願いし、ウラン235とウラン238の比を測定してもらった。これから天然比(※24)は0.00726というのは、これはご存じだとは思うが、「黒い雨」の壁からは、小さいものが0.00779、大きいほうは0.00887という値が出てきており、天然比は、どこで採っても一緒のはずであるが、それが高いのは、ウラン235が高い、ことを示している。広島原爆は濃縮ウランが使われているので、濃縮ウランの材料が「黒い雨」に含まれて飛んできたといったことが分かった。原爆自体は90%ぐらい濃縮されたものであるが、壁のウランは壁のどこにでもあるので、その中のほんの一部からでも天然比より大きい値が出るということは、ウラン235を多く含んでいたということを表している。
4.長崎のフォールアウトと被爆線量について
次に4番目として、長崎のフォールアウトと被爆線量についてであるが、これは、この研究会でも常にいろいろ調べられているので、ご存じのとおりであるが、ひとつはマンハッタンの測定データと、もうひとつPace,Smith、それと理研のデータである。これが初期線量に基づく推定になっている。それともうひとつは、被爆地の土の測定データに基づく推定で、これは過去の文献をみると、大規模なサンプリングが3回行われている。それで、1回目は、厚生省ですけれども、広島・長崎で大規模なサンプリングを行っている。1976年でいくつか高い地域を、さらに1978年に追加で測定した。これは、公衆衛生協会(※25)の報告書として出ているが、セシウムとストロングチウムがあるが、主にセシウムを測っている。プルトニウムは測っていない。それで、この同じサンプルで金沢大学の山本先生たちがプルトニウムとセシウムを測っている。残念ながら、サンプルがほんの僅かであった。次に1981年に馬原、工藤先生たちのグループが、大規模なサンプリングを行って、プルトニウム、セシウムの測定を行っている。それと、これは1990年に採取された岡島報告書の土のサンプリングである。岡島報告書の方では、プルトニウムのみであるが、同じサンプルを島崎先生、奥村先生たちが、ここだけ(5点)バックグラウンドのサンプルに加えて、プルトニウム、セシウムの分析をされている。最近になると、放医研のグループがプルトニウムの測定を行っている。これは、大規模というより、西山地区とかそういうところの測定である。
次に4番目として、長崎のフォールアウトと被爆線量についてであるが、これは、この研究会でも常にいろいろ調べられているので、ご存じのとおりであるが、ひとつはマンハッタンの測定データと、もうひとつPace,Smith、それと理研のデータである。これが初期線量に基づく推定になっている。それともうひとつは、被爆地の土の測定データに基づく推定で、これは過去の文献をみると、大規模なサンプリングが3回行われている。それで、1回目は、厚生省ですけれども、広島・長崎で大規模なサンプリングを行っている。1976年でいくつか高い地域を、さらに1978年に追加で測定した。これは、公衆衛生協会(※25)の報告書として出ているが、セシウムとストロングチウムがあるが、主にセシウムを測っている。プルトニウムは測っていない。それで、この同じサンプルで金沢大学の山本先生たちがプルトニウムとセシウムを測っている。残念ながら、サンプルがほんの僅かであった。次に1981年に馬原、工藤先生たちのグループが、大規模なサンプリングを行って、プルトニウム、セシウムの測定を行っている。それと、これは1990年に採取された岡島報告書の土のサンプリングである。岡島報告書の方では、プルトニウムのみであるが、同じサンプルを島崎先生、奥村先生たちが、ここだけ(5点)バックグラウンドのサンプルに加えて、プルトニウム、セシウムの分析をされている。最近になると、放医研のグループがプルトニウムの測定を行っている。これは、大規模というより、西山地区とかそういうところの測定である。
これは先程と同じなので省略するが、被爆当時のグローバルフォールアウトを被ってない土でないと評価はできないので、私の今日の結論もそれ以降の土では、セシウムが検出されても、それはそれから評価は無理だということである。
4.1 初期空間線量率に基づく被爆線量の推定
(1)マンハッタン管区の測定
初期空間線量率に基づく被爆線量の推定については、マンハッタン管区の測定が、放影研のArakawaの報告として、一部載っているが、西山地区でこういうことが載っている。
初期空間線量率に基づく被爆線量の推定については、マンハッタン管区の測定が、放影研のArakawaの報告として、一部載っているが、西山地区でこういうことが載っている。
(2)N.Pace,R.E.Smith(米国海軍医学研究所:NMRI)
さらに、今度のデータについては、米軍の資料でそちらの方で、手に入るようだ。私自身もちょっとそのデータは持ち合わせていないが、このPace and Smithの10月15日から27日に長崎で900ヶ所、その後、広島で100ヶ所測っているが、放影研のレポートにこんな図で載っている。こちらに飛んだということと西山地区の評価線図が描いてあるが、この地図自体からとても数値は読めない。京大原子炉の今中さんからいただいた資料で、これはもう少しはっきりして、ただ広い範囲については、Pace and Smithは何ケ所も測っているが、これしか今のところ分からないということである。
さらに、今度のデータについては、米軍の資料でそちらの方で、手に入るようだ。私自身もちょっとそのデータは持ち合わせていないが、このPace and Smithの10月15日から27日に長崎で900ヶ所、その後、広島で100ヶ所測っているが、放影研のレポートにこんな図で載っている。こちらに飛んだということと西山地区の評価線図が描いてあるが、この地図自体からとても数値は読めない。京大原子炉の今中さんからいただいた資料で、これはもう少しはっきりして、ただ広い範囲については、Pace and Smithは何ケ所も測っているが、これしか今のところ分からないということである。
(3)理研グループの測定
次に、理研グループの測定であるが、これは、原災報に増田、坂田、中根の3名の調査として載っている。ネーヤ型宇宙線計データという。そのデータがこのように載っているが、よく見ると、0(ゼロ)という数値があり、これは、バックグラウンドの比にする場合に0はないはず。1、最低でも1のはずであるが、実際1以下もある。そのこともあって、このデータはあまり使われてこなかったということがある。これに対して、先程の調査された中根先生が2000年に、ラジオアイソトープ誌、アイソトープ協会の研究誌にレポートを載せている。これは、今のようにネーヤ型のデータというのが分かりづらいというのがあり、ネーヤ型の測定データを[J]という単位になっているが、もともとのデータで数値が入っている。それで、この黒い数値は、6.4J以下と低くく、バックグラウンドに似ている。それで、このあたり白抜きが10J以上で、緑が中間くらいということ。まず、この論文をみるとネーヤ型は、少し古いものかなと思っているが、実は宇宙線計でフィールドワーク用だと非常に安定しているということが書かれており、ローリッツエンは、室内で使うものであり、フィールドワーク用ではないので外にでるというと少しいろいろある。ネーヤ型というのは、フィールドワーク用であると書かれてある。それで、西山地区では先程の篠原先生たちが、集中的に測られていたので、自分たちはそれより広い範囲を測っている。これは米軍のジープにネーヤ型を積んで、測ったということであるので、かなり広範囲に測られている。これを見ると、非常にこの辺りが高い。ここは少し薄くなっている。それと、雲仙の島原、この辺りが高いというのが分かる。およそここで17Jぐらいの値であるので、この辺り十数kmとほぼ同じくらいの降下物が島原にも来ていたというのがよく分かる。
次に、理研グループの測定であるが、これは、原災報に増田、坂田、中根の3名の調査として載っている。ネーヤ型宇宙線計データという。そのデータがこのように載っているが、よく見ると、0(ゼロ)という数値があり、これは、バックグラウンドの比にする場合に0はないはず。1、最低でも1のはずであるが、実際1以下もある。そのこともあって、このデータはあまり使われてこなかったということがある。これに対して、先程の調査された中根先生が2000年に、ラジオアイソトープ誌、アイソトープ協会の研究誌にレポートを載せている。これは、今のようにネーヤ型のデータというのが分かりづらいというのがあり、ネーヤ型の測定データを[J]という単位になっているが、もともとのデータで数値が入っている。それで、この黒い数値は、6.4J以下と低くく、バックグラウンドに似ている。それで、このあたり白抜きが10J以上で、緑が中間くらいということ。まず、この論文をみるとネーヤ型は、少し古いものかなと思っているが、実は宇宙線計でフィールドワーク用だと非常に安定しているということが書かれており、ローリッツエンは、室内で使うものであり、フィールドワーク用ではないので外にでるというと少しいろいろある。ネーヤ型というのは、フィールドワーク用であると書かれてある。それで、西山地区では先程の篠原先生たちが、集中的に測られていたので、自分たちはそれより広い範囲を測っている。これは米軍のジープにネーヤ型を積んで、測ったということであるので、かなり広範囲に測られている。これを見ると、非常にこの辺りが高い。ここは少し薄くなっている。それと、雲仙の島原、この辺りが高いというのが分かる。およそここで17Jぐらいの値であるので、この辺り十数kmとほぼ同じくらいの降下物が島原にも来ていたというのがよく分かる。
【D委員】
これは、先生、何年の測定か?
これは、先生、何年の測定か?
【A参考人】
測定は、同じ1945年の12月25日。
測定は、同じ1945年の12月25日。
それで、同じ論文に西山地区でも測られているのは、1か所ではなく、実は何ケ所か測られている。その数値が627Jとか、685 Jというのがある。この辺りだと、私が土地勘がないので分からないが、100ぐらいという数値で、同じ西山でも高い所と低い所がある。それで、先程のデータを私なりに解析をしてみた。ただ、先程の色刷りのデータも距離が非常に曖昧で、あまり正確でないので、まずは、島原あたりの距離を現在の地図で確認してそれから換算したが、あまり距離は正確ではない。まず、爆心から北の方向、バックグラウンドを測っているが、この辺りは5Jという単位。南の方向もこの辺りでだいたい5J。島原半島の下の方についても5Jくらいになっている。5Jをバックグラウンドとしてとったが、島原半島全体についてみると、この辺5Jであるが、島原辺りについてはこれぐらい高くなっているので、大体バックグラウンドの3~5倍ぐらいの線量になっている。
それで、これは少し小さいが、一応、私のほうで東側についての生データを、原爆の1時間後から、マイナス1.2乗の式で直し、それを5倍して積算線量に直した。西山地区の空間線量40Rとして計算した。そうすると、積算で空気中の線量が出て、組織吸収に直すと0.7かけて、実際の生活では家の中にいる、又は外にいるというのがあるので、それも0.7ぐらいで、cGy(センチグレイ)に直すと16.4。これは、岡島先生の報告にあるが、それと同じになる。あと計算したが、当然ながら岡島先生が言われたようにネーヤとの比較は全体に合っている。それと、同じ結果である。長崎のフォールアウトによる被爆線量というのは、このデータが一番いいだろうというのが私の結論である。
これをグラフに直すと西山地区から20km、この辺りまで、このような分布になっている。この回帰曲線の傾きを求めた。傾きについては後で、全部まとめて評価するが、マイナス2.66という傾きとなっている。この傾き数値が大きいほど急傾斜です。
4.2 土の137Csの測定データに基づく推定
(1)1976、1978年に採取された土(S51厚生省サンプル)
次に、その後、集められた土のセシウムについて、データに基づく推定というのを私なりに行っている。
次に、その後、集められた土のセシウムについて、データに基づく推定というのを私なりに行っている。
最初に1976年に採取された厚生省サンプルの土である。これは、広島で107ヶ所、長崎98ヶ所、西山20ヶ所で爆心から30km以内で測られている。結果は西山地区では高いけれども、それ以外では有意性がなかったという結論になっている。それを調べてみたが、長崎の場合は、この報告で10kmから30kmまでのサンプリングが行われている。実は、この同じデータは、広島医学の橋詰先生たちが、岡島先生、竹下先生とともに、1978年に同じような論文を書かれている。これをみると、東側であれば、具体的にこういう所のサンプリングを行ったというのが載っている。
それで、このデータ全部を並べてみると、この赤い点が西山地区。西山地区だけでも、低い所、高い所があるというのが分かる。それで、東側の方にもサンプルから、何となく、傾斜があるというのが分かる。その他の方向についてはバラバラで、特に分布はみられない。これを、バックグラウンドを差し引くと、このような分布で、さらに、最大値を推定すると、低い値は少し外すとこのような分布になってくる。これを、回帰曲線を描くと、傾きとして0.596とかなり緩い傾斜となっている。
(2)山本政儀ら(金沢大)によるS51年厚生省試料のPu、Am、Csの分析(一部試料)
この同じサンプルを、金沢大学の山本先生が分析されている。これは、西山地区で5点、それ以外8点、合計14点しかされていない。結論としては、西山地区のプルトニウムの面積あたりの14.4から45.1 mCi/km2、プルトニウム・セシウム比、これが、西山地区では、0.15~0.31。それに対して、その他のグローバルな値は0.016~0.027と非常に低くく違いがあるというのが分かる。それで、8kmくらいまでは、長崎原爆の影響を検出できると考えている。広島については、距離、方向に依存しない。
この同じサンプルを、金沢大学の山本先生が分析されている。これは、西山地区で5点、それ以外8点、合計14点しかされていない。結論としては、西山地区のプルトニウムの面積あたりの14.4から45.1 mCi/km2、プルトニウム・セシウム比、これが、西山地区では、0.15~0.31。それに対して、その他のグローバルな値は0.016~0.027と非常に低くく違いがあるというのが分かる。それで、8kmくらいまでは、長崎原爆の影響を検出できると考えている。広島については、距離、方向に依存しない。
山本先生の論文を少し紹介すると、これが西山地区で、これがそれ以外のところであるが、白いのがプルトニウムで、西山以外ではこれくらい低い。これに対してセシウムは、この黒い方であるが、あまり違いがない。プルトニウム・セシウム比にすると、西山地区では、先程言った0.3ぐらいの数値が並んでいる。それ以外では、0.02の数値が出ている。
山本先生はこういうグラフは描かれていないが、プルトニウムデータを距離で表して、回帰曲線を求めると、傾きとして-2.506で、セシウムについては、これくらいで、-0.928くらいの値になった。
(3)馬原保典、工藤章(京大原子炉)の長崎フォールアウトに関する研究
次に馬原先生たちが行った測定であるが、1981年から行われており、これも、原論文は見ていないが、原論文をみれば数値が出ていると思うが、20kmまで2kmごと、80~120kmの土、橘湾の海底土から測ったというのが分かった。プルトニウムは、長崎原爆のプルトニウムはだいたい15kgとして1.2kgが爆発して、要するに92%はグローバルフォールアウトとなり、全体の0.25%が地上に落ちたという風な評価がされている。馬原先生たちのデータは、距離にして爆心の風上側にも何点かあり、西山地区で64.5mBq/g。それで、この傾きとして100km、この辺りだと思うが、これがグローバルで0.2mBq/gとあり、このように20kmぐらいまで飛来してる。これも先程と同じように傾きをグラフから読み、解析してみたが、プルトニウムで少し大きいが、-3.58、セシウムは-0.67という傾きになった。
次に馬原先生たちが行った測定であるが、1981年から行われており、これも、原論文は見ていないが、原論文をみれば数値が出ていると思うが、20kmまで2kmごと、80~120kmの土、橘湾の海底土から測ったというのが分かった。プルトニウムは、長崎原爆のプルトニウムはだいたい15kgとして1.2kgが爆発して、要するに92%はグローバルフォールアウトとなり、全体の0.25%が地上に落ちたという風な評価がされている。馬原先生たちのデータは、距離にして爆心の風上側にも何点かあり、西山地区で64.5mBq/g。それで、この傾きとして100km、この辺りだと思うが、これがグローバルで0.2mBq/gとあり、このように20kmぐらいまで飛来してる。これも先程と同じように傾きをグラフから読み、解析してみたが、プルトニウムで少し大きいが、-3.58、セシウムは-0.67という傾きになった。
(4)岡島報告書 平成3年(1991)6月岡島報告書であるが、これはもう、よくご存じのとおりだが、70地点のサンプルを採取されている。結果としては、バックグラウンド0.9Bq/kgとなっている。馬原論文では0.2Bq/kgぐらいで違いがある。有意なものは西山地区で6地点、その他で9点あり、被爆線量の推定は西山地区で20~40R、DS86の線量評価にその数値をもってきて、人体組織で0.7倍、行動実態ではその0.7という値で、最大で16cGyという値になっている。これは、西山地区のプルトニウム24Bq/kgこれを16cGyに相当するものとされている。プルトニウム自体から線量評価はできないので、これをされたというのは、プルトニウムとセシウムが同じ比であるということで、セシウムの換算比を使って出されたということになる。表面的にみればセシウムは全然変わってないが、セシウム・プルトニウム比が一定だという仮定がはいっている。それで、結論としては、ネーヤ型と比較した場合、概ね一致したというのが分かる。内部被曝についても、先生自身が評価されて、大きくないということを言われている。拡大要望地域での最大の推定線量は、2.5cGy、25mGyということで、過剰相対リスク(※26)は、この程度、要するに低いということが分かる。
岡島報告書では、プルトニウム・セシウム比が一定と仮定されているが、実際にはセシウムとプルトニウムの比は一定でない。これが影響するかと言うと、遠方で過小評価ということになる。岡島先生のデータを、グラフにしてみると、西山地区からこんな感じ、バックグラウンドを岡島先生0.9Bq/kgをとられているが、これは、要するに東側以外のプルトニウム0.9Bq/kgであるが、東側をとると0.9より高くなることになっている。それで、傾きを調べると、プルトニウムで-1.89という値になる。
(5)島崎、奥村他の研究
この同じサンプルを実は島崎先生、奥村先生たちが測定されており、長崎医学の1992年と1994年の広島医学に載っている。これは、なにをされたかというと、岡島先生の報告書は、プルトニウムしか測られていないが、プルトニウムとセシウムを測ったということと、初期線量率の測定と比較したということが書かれている。しかしながら、大部分のサンプルは一緒であるが、この岡島報告書については、全く引用されていないということがある。それと、岡島先生の報告書や島崎、奥村先生の論文も先程の2000年の理研のデータについては、まだ知られておらず、最初のデータしかない。この島崎、奥村先生たちの論文では、沸点の高い元素は早く凝固して落ちる、ということで、プルトニウムが先に落ちて、セシウムが遠くまでいくからプルトニウムとセシウムの分布が違ってくるということが分かる。岡島先生のサンプルに対して、この5点を追加されたということである。それで、この5点ついてプルトニウムを測ったということである。プルトニウムを並べてみると、先程、岡島論文でいわれたようなグラフになる。それで、バックグランド引くと、こういう傾斜になって、この傾きはマイナス1.81。セシウムを並べると、こういう感じ。この中でプルトニウムが高かったのは黒い点で、これをみると少し傾斜がある感じにはみえる。それで、プルトニウム・セシウム比のグラフを作られて、このようなプルトニウム・セシウムの傾きは、比が一定であれば、傾きは先程の1.81と一緒であるが、セシウムの傾きが緩やかであれば小さくなり、1.76となる。ただ、大部分がプルトニウム。最後にこの、島崎論文にこのようなグラフが載っており、距離でプルトニウムの減少がこの間マイナス1.81の間、セシウムがこのくらいになる。私が厚生省のデータから見積もった時のものと比べるとおよそ似た感じ。それで、初期の線量率のデータの傾きがこの辺にくると出てきた。
この同じサンプルを実は島崎先生、奥村先生たちが測定されており、長崎医学の1992年と1994年の広島医学に載っている。これは、なにをされたかというと、岡島先生の報告書は、プルトニウムしか測られていないが、プルトニウムとセシウムを測ったということと、初期線量率の測定と比較したということが書かれている。しかしながら、大部分のサンプルは一緒であるが、この岡島報告書については、全く引用されていないということがある。それと、岡島先生の報告書や島崎、奥村先生の論文も先程の2000年の理研のデータについては、まだ知られておらず、最初のデータしかない。この島崎、奥村先生たちの論文では、沸点の高い元素は早く凝固して落ちる、ということで、プルトニウムが先に落ちて、セシウムが遠くまでいくからプルトニウムとセシウムの分布が違ってくるということが分かる。岡島先生のサンプルに対して、この5点を追加されたということである。それで、この5点ついてプルトニウムを測ったということである。プルトニウムを並べてみると、先程、岡島論文でいわれたようなグラフになる。それで、バックグランド引くと、こういう傾斜になって、この傾きはマイナス1.81。セシウムを並べると、こういう感じ。この中でプルトニウムが高かったのは黒い点で、これをみると少し傾斜がある感じにはみえる。それで、プルトニウム・セシウム比のグラフを作られて、このようなプルトニウム・セシウムの傾きは、比が一定であれば、傾きは先程の1.81と一緒であるが、セシウムの傾きが緩やかであれば小さくなり、1.76となる。ただ、大部分がプルトニウム。最後にこの、島崎論文にこのようなグラフが載っており、距離でプルトニウムの減少がこの間マイナス1.81の間、セシウムがこのくらいになる。私が厚生省のデータから見積もった時のものと比べるとおよそ似た感じ。それで、初期の線量率のデータの傾きがこの辺にくると出てきた。
これも、元の表が島崎論文の表であるが、これに、私が今までに見積もってきた傾きのデータを加えると、島崎論文では、プルトニウムは傾きマイナス1.81、セシウムはマイナス0.74で、岡島報告書は、マイナス1.89で、山本先生のプルトニウムでマイナス2.5で、理研のグループは概ねマイナス1.4、これをまとめると、プルトニウムがマイナス1.8~3.5、かなり急な傾斜になる。それで、セシウムはこれに比べると0.6~0.9と緩やかになる。私が理研のデータから読み取った傾きはマイナス2.68であるので、これとかなり違う。これがなぜ違うのか原因は分かっていない。
岡島報告書の中にあるデータと理研のデータ、私が見積もったもので比較すると、西山のほうでは一緒。青い点が岡島報告書のデータ、赤い方が理研のネーヤのデータで、概ね合っている。岡島報告書が少し上で、これは対数値。リニアに直しますと岡島報告書はこの辺りで、理研のデータは少しわずかに低い。この岡島先生の1990年のプルトニウムのデータも原爆のあとの状態が少し分布が広がっている。セシウムだともっとはるかに変わってくる。それがあると少し上にくる。本来これ同じはずであるが、若干、上にきているのは、やはりプルトニウムはほとんど動かないが、少し動いている可能性があるということ。
これは私の感想であるが、岡島先生の報告書にある住民の最大被爆線量というのは西山地区で、ここが被爆地点からだいたい7kmあたりで、拡大要望地域というのは、12kmになっている。岡島先生のデータをみても7kmの前後であまり変わらない。ここに線引きする理由がないんじゃないかとういうのが私の印象。また、今回のこの12kmにとっても、これはもうほとんど変わらないと思っている。
それでは、もう一回比べてみると今の指定地域はこのあたり(*6.7kmを指す)に線が引かれている。ここについては、理研のデータがたくさんある。12kmの前後で比べるとやはりそんなに変わらない。大きく変わるのはここ(*16km辺りを指す)、このあたりが妥当ではないのかなというのは、これは私の印象である。
(注)(*・・・)の部分は、事務局で追記しました。
(まとめ)
最後であるが、被爆線量を推計するには、やはり、初期調査のデータが最適じゃないかとのこと。長崎の場合は、プルトニウムが非常に多く検出されている。それはプルトニウムというのはあまり動かない。だから原爆の後の状況をかなり留めている、ということが言える。岡島報告書では、プルトニウムのデータをもとにセシウムから被爆線量を出している。プルトニウムを使われているということで多少過大評価であるが、妥当であると言える。
最後であるが、被爆線量を推計するには、やはり、初期調査のデータが最適じゃないかとのこと。長崎の場合は、プルトニウムが非常に多く検出されている。それはプルトニウムというのはあまり動かない。だから原爆の後の状況をかなり留めている、ということが言える。岡島報告書では、プルトニウムのデータをもとにセシウムから被爆線量を出している。プルトニウムを使われているということで多少過大評価であるが、妥当であると言える。
あとは私の印象で、線引きの場所がちょっと離れているかなという気がしている。
ひとつ付け加えると、マンハッタンのデータというのは、理研のデータと比べると諫早の上のほうと西側、南側のあまり関係ないところのデータが多く、島原の高いところは測られていない。
【D委員】
マンハッタンのほうが測っていない。
マンハッタンのほうが測っていない。
【A参考人】
測っていない。
測っていない。
【D委員】
そうですね。
そうですね。
【A参考人】
結局は、あまり違わないだろう。
結局は、あまり違わないだろう。
【D委員】
基本的にはいっしょだけれども、測っている地域が少し違う。
基本的にはいっしょだけれども、測っている地域が少し違う。
【会長】
新しい我々が採ったデータとか、測定値も含めて、解析していただいた。これは、D委員からまずはご質問をいただきたい。
新しい我々が採ったデータとか、測定値も含めて、解析していただいた。これは、D委員からまずはご質問をいただきたい。
D委員が前回報告されたあれは、だいたい岡島先生の評価と同じ考え方ということなのか。
【A参考人】
IAEA(※27)のデータ換算率。
IAEA(※27)のデータ換算率。
【D委員】
IAEAの換算率を使っている。
IAEAの換算率を使っている。
【A参考人】
セシウム137である。それ(核分裂生成物)を全部いれればちゃんとした評価になると思う。セシウムだけでは過小評価になっていると思う。その点だけ。
セシウム137である。それ(核分裂生成物)を全部いれればちゃんとした評価になると思う。セシウムだけでは過小評価になっていると思う。その点だけ。
【会長】
はい。それではどうぞD委員。
はい。それではどうぞD委員。
【D委員】
全体の解析の基本的なやり方として、横軸に爆心地からの距離をとって、被爆線量或いは換算係数をとって、それをセシウムなりプルトニウムで全部評価して傾きをみてみたと。そうすると空間線量率の場合と、それから土壌中の汚染濃度の場合と、それから同じ汚染であってもセシウムの場合とプルトニウムの場合で、違った時間の傾きが得られたということか。
全体の解析の基本的なやり方として、横軸に爆心地からの距離をとって、被爆線量或いは換算係数をとって、それをセシウムなりプルトニウムで全部評価して傾きをみてみたと。そうすると空間線量率の場合と、それから土壌中の汚染濃度の場合と、それから同じ汚染であってもセシウムの場合とプルトニウムの場合で、違った時間の傾きが得られたということか。
【A参考人】
そうである。
そうである。
【D委員】
それで、実際の初期調査の空間線量率では、-2.68という値と急なストロークをしていると。それに対して放射線量からみた場合は、セシウムはかなり緩やかに、プルトニウムは急であるというお話しということでよかったか。
それで、実際の初期調査の空間線量率では、-2.68という値と急なストロークをしていると。それに対して放射線量からみた場合は、セシウムはかなり緩やかに、プルトニウムは急であるというお話しということでよかったか。
【A参考人】
そうである。
そうである。
【D委員】
分かりました。今のは、ちょっと基本的なところの確認をさせていただいた。それから、岡島報告書に関しては、セシウム・プルトニウム比を1対1にという、同じだと前提が実は違ってくるからちょうど相殺してあの程度で、実際の報告書ぐらいのデータのところが妥当ではないか、とそういうご判断ということでよろしいか。
分かりました。今のは、ちょっと基本的なところの確認をさせていただいた。それから、岡島報告書に関しては、セシウム・プルトニウム比を1対1にという、同じだと前提が実は違ってくるからちょうど相殺してあの程度で、実際の報告書ぐらいのデータのところが妥当ではないか、とそういうご判断ということでよろしいか。
【A参考人】
そうである。
そうである。
【D委員】
極めて分かり易い。
極めて分かり易い。
【会長】
よく理解できたと。
よく理解できたと。
【D委員】
はい。
はい。
【会長】
非常にたくさんのデータがあるので、また、これは、後日、先生方の言いかけた質問を先生にEメール等でお伺いするという方法をとらさせていただきたい。
非常にたくさんのデータがあるので、また、これは、後日、先生方の言いかけた質問を先生にEメール等でお伺いするという方法をとらさせていただきたい。
審議事項2 原爆放射線の人体影響に関する研究等の情報について
1 被爆2世における遺伝的影響研究のまとめと考察
【会長】
今日の予定の第2の原爆放射線の人体影響に関する研究等の情報について、まずは、被爆2世における遺伝的影響研究のまとめと考察をB委員にやっていただく。よろしくお願いします。
今日の予定の第2の原爆放射線の人体影響に関する研究等の情報について、まずは、被爆2世における遺伝的影響研究のまとめと考察をB委員にやっていただく。よろしくお願いします。
【B委員】
手元の資料2になるが、私の宿題は、被爆2世における遺伝的影響です。被爆2世の遺伝的影響調査ということで、放射線がDNAに影響を与えると、体細胞に異常が起これば被爆者自身の健康に影響を与えるわけであるが、生殖細胞である卵子、精子でのDNA障害では被爆2世への遺伝的影響が懸念される。
手元の資料2になるが、私の宿題は、被爆2世における遺伝的影響です。被爆2世の遺伝的影響調査ということで、放射線がDNAに影響を与えると、体細胞に異常が起これば被爆者自身の健康に影響を与えるわけであるが、生殖細胞である卵子、精子でのDNA障害では被爆2世への遺伝的影響が懸念される。
スライド2枚目にあるように1945年以降に生まれた2世の方に対して、今まで出生時の障害、それから染色体異常、血液タンパク質の突然変異、DNA調査云々というのが行われてきている。それぞれの2世の方の年齢と、その当時にできる検査との組み合わせでこのようなことが順次行われてきている。
順次説明させていただく。
最初が出生時の障害になる。1948年であるので原爆が落ちて3年後であるが、新生児として約75000人、この中で両親に血縁関係がないということで約65000人、血縁関係にあると劣性遺伝とかあるので65000人が対象になっている。調べられたのが体重、未熟度、性比、新生児期の死亡、出生時障害。妊娠終結異常も調べられているし、循環器疾患等はなかなか新生児期にはわからないということで生後8~10か月後に改めて検査されている。両市に不在と低・中・高線量被爆に分けているが、低は50ミリシーベルト以下、中は500ミリシーベルトまで、高は500ミリシーベルト以上ということで、父親と母親とそれぞれで分けて奇形率が計算されている。全体として約600名で異常が見つかっている。見つかった奇形は無脳症、口蓋裂など、いわゆる普通見られる奇形と同じである。当時、戦前に東京で大規模に奇形率が調べられており、それは比率が0.91であるので、ほとんど変わらないということで出生時の障害はないということがわかると思う。死産の率も出ているが比率に差はない。これを併せた妊娠終結異常で、奇形と死産と2週間以内の死亡と併せても線量との関係はないということで結論付けられている。他にも原爆以外の被ばくのデータもたくさんあるが、治療に伴う高い線量率では、早産、死産、低体重とか多いという場合があるが、どちらかというと遺伝的な影響というよりも、いわゆる子宮への障害が考えられるということ。
さらに性比に関してもやられている。性比に関しては被爆を受けた遺伝子を赤で書いているが、黒のエックス赤のエックス対赤のエックス黒のワイが大体1対1になる。
この場合、優性遺伝の場合はどちらも死亡となるので変わらないが、劣性致死の場合は黒のエックス赤のエックスは生存するが、赤のエックス黒のワイは死亡するということで、母親が被爆を受けた場合は、子供として男児が減るんじゃないかと予想である。逆に父親側が被爆を受けた場合はエックスとワイが赤になるのでこの形で1対1で理論的には生まれる。優性致死の場合は、赤のエックス黒のエックスが死亡する。劣性の場合は差が出ないので、優性致死が起こって、父親被爆の場合は女の子が減るんじゃないかという予測ができる。実際子供の性比を調べると差は見られていない。実際、最初の頃は少し予想に合うような結果があったようであるが、症例が増えるにしたがって差がなくなって最終的にはこのようになったという、歴史的な経緯があったようだ。
次に1960年代から染色体が調べられるようになっている。基本的にはギムザ染色、簡単に染色体を染める方法であるが、被爆者8,000人と、対照8,000人で検査が行われている。染色体の異常として見つかったのが、性染色体の異常がこのように被爆群に19例、対照群に24例と、対照群の方がちょっとであるが、少し多めに出ている。常染色体の異常に関しては、構造異常と、数の異常が報告されているが、このように影響は見られていない。数の異常として、ダウン症候群が1例あるが、全体的な異常としては0.5%とうことで、世界各地の新生児における染色体異常との比較は差はないということが報告されている。
このうちの転座(※28)と逆位(※29)について報告があるが、23例と27例のうち転座と逆位は18例と25例である。この中で実際に親も調べて親にも同じ異常があった場合、親に異常が無い場合、親が調べられなかった場合がある。親に異常があったということは、放射線に関係ないわけである。両親が正常で異常があるということは、生殖細胞に異常があった可能性がある。被爆群の場合、このように18例であるが、親が調べられた11例のうち、1例で異常が見つかっている。そういう頻度で異常が起こるとすれば、この調べられなかった7例のうち、親が異常であるという確率は、7×1月11日になる。こちらも同じように9×1月16日ということになって、18例と25例の中で、実際に推定される新規の異常というのは、1+7月11日で1.64。こちらは1+9月16日で1.56ということである。それがもともとの数が8,000人ということで比率というのが0.0197とか0.0196とかの頻度になっている。これも世界でいろんな調査がされており、新規の構造変異が0.018%と言われているので、ほとんどこれも変わらない。被爆群と対照群でも差はなく、世界の他の地域とも差はないということで、放射線と関係なく低頻度で起こる生殖細胞での遺伝子の異常というのがここに反映されているだけということになる。
1970年代になって、血液の蛋白質の解析がされている。まだ、遺伝子の検査が詳しく出来ない時代であるので、血液の中の蛋白質を電気泳動で調べて、遺伝子の異常があればアミノ酸が変わって電気泳動のパターンも変わるだろう。更にはアミノ酸が変わったことによって酵素の活性がなくなるんじゃないかという考えで検査がされている。電気泳動に関しては血漿蛋白4種類、赤血球蛋白が26種類。酵素活性には赤血球酵素9種類の活性が調べられている。11,000人から12,000人が対象になっているが、1人当たり調べられた数をかけると50万から60万位の蛋白質が調べられたことになるが、頻度として出てくるのは2例とか3例くらいで、頻度的にも0.5×10-5、酵素の反応も調べられているが、基本的には被爆群1例だけであるが統計学的に血液の蛋白質に異常をきたすような遺伝子の異変はないんじゃないかという結論もここになされている。
そして、1980年代半ばになって、やっとDNAの検査ができるようになっている。ここでミニサテライトという人の遺伝子の中にある繰り返し酵素がある。6塩基から100塩基くらいを繰り返すミニサテライト、それからもっと短い1塩基から6塩基くらいの反復マイクロサテライトというものをそれぞれ8箇所、40箇所選んで、その反復の数が変わるかどうかというところを見ているが、調査した子供の数は少なく、60例前後でパイロットスタディ的にやられておるが、ミニサテライトで2%台、マイクロサテライトで0.4%くらいの頻度ということで、対照群被爆群とも差は出ていない。
それ以外に詳しいデータは出していないが、DNAの二次元の電気泳動で調査するもので、ゲノムを制限酵素で切ってそれを二次元に流し、スポットで出てくるが、スポットの強度からコピー数を推定するという方法や、さらには最近、マイクロアレイという方法があるが、これもまたコピー数を推定する方法であるが、コピー数の異常で有意な差は出ていない。
次が生活習慣病の有病率であるが、2002年から2006年に行われている。当時平均年齢が49歳で、高血圧→糖尿病などの疾患が調べられており、父親被爆と母親被爆で区別しているが、これら多因子疾患の発症に差は無いということがこの時はわかっている。年齢がまだ50歳未満と若いので今後もさらに調査が必要だということはこの時言われおり、昨年の放影研の地元連絡協議会では被爆2世の臨床調査4年ごとの健診を計画ということで、9,000人以上の受診の予想であるので、この調査は今後進んでいくのではないかと考えている。
次は死亡率。出生時の死亡率の話はしたが、20歳未満と、20歳以降の死亡率というのが報告されており、2007年の時点で平均年齢47歳である。
がんの死亡とがん以外の死亡を20歳未満と20歳以上で出して、ハザード比(※30)を計算しているが、基本的には上がっていないということで被爆量による有意な死亡率の増加はないとこの時点では結論されている。
がんの死亡率に関してはいくつか報告がある。最初の報告は白血病。小児の白血病が多いとのことで最初の3つが白血病だけの報告であるが、距離とか被爆量に従って1群2群3群に分けて発症率が検討されて、基本的には差が見られていない。Yoshimotoらの報告は白血病と固形がんも含んでいるが、白血病に関してはここにあるように基本的には差はなく、固形がんにも頻度には変わりないと言われている。この次にIzumiらの報告であるが、血液疾患と固形がんの発症率であるが、20歳前と20歳以降の発症で比較されているが、20歳前だと、リンパ腫を含めた血液のがんの父親被爆と母親被爆で変わらない。固形がんでも変わらず、そして20歳以降でも父親被爆と母親被爆でも変わらない。固形がんでも基本的には差はないということが言われている。
ここまで報告は基本的に放影研を中心に調査が行われてきたが、今までのところ差は全く認められていない。ただ一つ、広島の鎌田先生らの報告が2世で白血病がでてるんじゃないか、という報告があり、前回の時もご報告したが、もう一度改めて新しい論文が出たので、そこを少し報告させていただく。
これが3年前の後障害研究会で発表されましたデータである。放影研のデータでは被爆者からの白血病が20~30例くらいしか把握されていないが、鎌田先生は広島の94件の被爆2世の白血病の症例を持っておられる。その中で原爆投下後から分類していって、最初の10年くらいで50名が発症した。次の10年で30例が発症した。その後が16例であるが、その中で1966年から1975年の発症が高いということが先ず言えるということである。次に発症年齢というのが図3にあるが、0歳から20歳25歳くらいまで非常にずっと高い、これが一つの特徴だと鎌田先生が言っている。次のスライドで示しているが、一般的な人口での小児の白血病は最初2~3歳でピークがあって以後下がるが、鎌田先生の症状では下がらないということである。それから慢性と急性の比率も示されている。結局、子供の出生年として、1946年から1955年、いわゆる原爆がおちて早期に生まれた子供さんに、しかも両親被爆の場合に非常に白血病の頻度が高いということが分かった。両親被爆の場合に期待値が最も高くなっています。
こういう報告を2年前3年前にされている。両親の被爆量の記載が全くない。ただし、白血病の分で骨髄芽球性とか色々あるが、あるタイプの白血病は幼少期だけでなく年齢は高くなっても発症率が高いというものもある。実際に鎌田先生の症例がどういうタイプの白血病なのかという記載がないので、一概に違うと言っていいのかどうかというのは問題かなという気がする。
次に去年、後障害で発表された内容がまた論文になっている。先ほど94例症例をいったが、その中で兄妹の例がある78例の中で、兄妹が発症している発症していないで差があるんじゃないかということで、リスクの計算がされている。両親の被爆区分、つまり爆心地からの距離と入市の有無、それから子供の性別、子供の出生日、つまり原爆が落ちた日から出生日までの経過時間の3つを変数として、スライドにあるようなモデルをたてられている。この3つで想定されているが、この論文で見る限り、この想定が正しいのかどうか、ちょっと情報不足で分からない。しかし、この3つで決まるんじゃないかということで結論としては。原爆投下後早期に生まれた人で、父親が1キロ以内で被爆の場合は、原爆投下からの期間が短いほど発症リスクが高いということを報告されている。ですから父親の場合なので、父親の精子と、精母細胞のDNAダメージ、異常ということになるが、精母細胞の生存には影響しないけれども、将来白血病になるような遺伝子の異常が起こり、それが早い時期に受精して子供ができた場合には病気になるけれども、時間がたつと、それは出てこないということになると思うが、そこらの解析というのも問題になってくるのかな、と思う。いずれにせよ、被爆の早期に生まれた2世の方に影響があった可能性というのは、ちょっと示唆される報告ではないかと思っている。もう少し鎌田先生は調査されるのでしょうけれども、あえて言うと早期に起こった可能性が有るのではないかと思っている。
【会長】
B委員ありがとうございました。それでは委員の先生から何かご質問はないか。
B委員ありがとうございました。それでは委員の先生から何かご質問はないか。
【A委員】
単位の確認だけだが、スライド9、10ページ。DNA調査の被爆群の平均被爆量の1.47と書いてあるのは単位は何なのか。グループ分けは0.01グレイで分けているが。
単位の確認だけだが、スライド9、10ページ。DNA調査の被爆群の平均被爆量の1.47と書いてあるのは単位は何なのか。グループ分けは0.01グレイで分けているが。
【B委員】
これは多分ミリグレイ。
これは多分ミリグレイ。
【A委員】
下も一緒。
下も一緒。
【B委員】
そうである。
そうである。
【A委員】
先生がされたのはほとんどが放影研の文献。
先生がされたのはほとんどが放影研の文献。
【会長】
センチグレイ。確認するように。
センチグレイ。確認するように。
【A委員】
それとスライド11だが、ぱっとこのハザード比を見ると、ガン以外の死亡では20歳以降で5から149。これもセンチグレイか。単位グレイじゃなくて。
それとスライド11だが、ぱっとこのハザード比を見ると、ガン以外の死亡では20歳以降で5から149。これもセンチグレイか。単位グレイじゃなくて。
被爆線量はグレイになっている、センチグレイか。
【B委員】
ミリが抜けている。これはミリグレイ。
ミリが抜けている。これはミリグレイ。
【A委員】
5から149のグループで横に行ってガン以外の死亡、一番はし。1.39。ここだけちょっと高い感じで。線量の高い所は低くて、統計の変動かなにかか。
5から149のグループで横に行ってガン以外の死亡、一番はし。1.39。ここだけちょっと高い感じで。線量の高い所は低くて、統計の変動かなにかか。
【B委員】
ですからこれは結局、その下のより高い線量で0.99で上がっていないということで、線量依存性はないというふうに捉えられて結論付けられている。
ですからこれは結局、その下のより高い線量で0.99で上がっていないということで、線量依存性はないというふうに捉えられて結論付けられている。
【A委員】
参考の母親被爆の場合も1.43と変な動きをしているが、同じような感じなのか。
参考の母親被爆の場合も1.43と変な動きをしているが、同じような感じなのか。
【B委員】
はい。
はい。
【A委員】
ありがとうございました。
ありがとうございました。
【会長】
よろしいか。そうするとB委員、今までの調査をされた被爆2世への遺伝的影響というのは、まだはっきりしないということになる。鎌田先生のデータもまだ完全なものではなくって、まあ、いずれ鎌田先生に実際にここに来てもらうということもあっていいかな、と思っているが。あと、今後、どういう研究、研究は今されているのが、放影研の研究がある。これがまだ先生、分析されていない。先ほどのページの生活習慣病ですかね、あれがそうか。
よろしいか。そうするとB委員、今までの調査をされた被爆2世への遺伝的影響というのは、まだはっきりしないということになる。鎌田先生のデータもまだ完全なものではなくって、まあ、いずれ鎌田先生に実際にここに来てもらうということもあっていいかな、と思っているが。あと、今後、どういう研究、研究は今されているのが、放影研の研究がある。これがまだ先生、分析されていない。先ほどのページの生活習慣病ですかね、あれがそうか。
【B委員】
あれは臨床の健診。今年からやられるのだろうと思うが。
あれは臨床の健診。今年からやられるのだろうと思うが。
【会長】
そういうデータの結果はまだまだ先にしか出てこない。
そういうデータの結果はまだまだ先にしか出てこない。
【B委員】
放影研が中心でやられてきて、いわゆるその時代時代に合わせた最先端の検査方法でやられてきていると思う。いわゆる遺伝子の検査もどんどん進んでいるので。
放影研が中心でやられてきて、いわゆるその時代時代に合わせた最先端の検査方法でやられてきていると思う。いわゆる遺伝子の検査もどんどん進んでいるので。
【会長】
今後はそういう非常に新しい遺伝子の分析方法を使った研究がされる可能性が有るということか。
今後はそういう非常に新しい遺伝子の分析方法を使った研究がされる可能性が有るということか。
【B委員】
そうだ。
そうだ。
2 放射線の低線量被曝による人体影響に関する学術報告の調査と解析
【会長】
「放射線の低線量被曝による人体影響に関する学術報告の調査と解析」をお示しする。これは、みなさんよくご存知のように、100mSV以上で原爆被爆した場合にガン白血病の発生率が少しずつ上がっていくわけであるが、直線的に上がったり、少し指数関数的に上がったり、これは世界中で認められているが、100mSV以下の低線量、特に50mSV以下くらいになると、真相が分からないというのがこれまでの通説で、その中でどういう報告が今までになされているかということで、インドのケララ州をはじめ世界中にいくつかある高線量被曝地帯が1番目。それから2番目にウラニウム鉱山のラドンのガスを吸って肺がんが増えるっていう報告がある。それから3番目にCTスキャンで子供の被曝は白血病ガンを増やす可能性があるという論文があるということ。それからウラニウム鉱山と、ラドンと少し近いが、ラドンは一般の家庭でもあり、それを詳細に分析したのが2番目。ウラニウム鉱山のラドンが4番目。この辺の論文が数百あるが、調べてみると、現在、分析に値する、20mSVとか50mSVくらいの範囲で、健康影響、すなわちガンが子供たちに増えるというのは、唯一このCTスキャンの被曝である。この論文が6つくらいあり、その中から非常に大規模の研究である英国とオーストラリアの研究を2つ紹介する。それから、この二つを見るとほとんど影響があるのではないかと思われる結果であるが、それにもいろんな欠陥があり、それを指摘した第3の論文が今年になって、フランスのある大規模研究から出た。ここに紹介する1,2,3の論文の結果、やはり100万人規模の子供のデータがないと本当の分析ができないということで、EUの11ヶ国でEpi-studyというのが始まっている。これが今年ぐらいに一応結果が論文になって出ると予告されている。そしてその結論は、20ページに示している。今回の結論は、研究会の現時点での見解を書いているところである。精度の高い大規模研究により50msv以下の低線量被曝のCTスキャンによる健康影響について、影響ありとする論文が多く出版されている。しかし、いずれの論文も、なぜCTスキャンをしたか。健康な子供がCTスキャンを受けるにはそれなりの症状とか、いろんな医学的な理由があるはずであるので、その検討がいずれもされていないとのこと。この点を疑問視して行われたフランスの大規模研究では、その何万人もの子供を集めると、ガンを発症しやすい先天異常の子供とか、免疫不全、特に腎移植などの移植を既に受けている子供たち等の症例を考慮しないといけない。それを考慮すると、これが子供たちの症例のCT検査の回数が、フランスのこのグループの解析では有意に多く、回数が1回じゃない。2回3回と繰り返されている。そうするとこのグループの被曝線量が高い。そこから白血病・ガンを発症した症例がかなりあり、全体の白血病・ガンを100とすると、この群に属しており、これを計算に入れないと本当の群が分からない。計算に入れてみるとイギリス、オーストラリアの第1と第2の論文でいわれた低線量被曝の健康影響は、フランスのこの解析では有意ではなかった。完全に否定しているのではないが、有意にはならなかった。従って、今後、こういう先天異常とか、免疫不全の子供をしっかり把握したうえで、全体解析をしないと、純粋の低線量被曝の影響は結論は出ないということであることから、既にフランスのグループを中心に、Epi-study(※31)が始まっているという状況があるということが分かった。これは去年までは把握してはなかったことである。
「放射線の低線量被曝による人体影響に関する学術報告の調査と解析」をお示しする。これは、みなさんよくご存知のように、100mSV以上で原爆被爆した場合にガン白血病の発生率が少しずつ上がっていくわけであるが、直線的に上がったり、少し指数関数的に上がったり、これは世界中で認められているが、100mSV以下の低線量、特に50mSV以下くらいになると、真相が分からないというのがこれまでの通説で、その中でどういう報告が今までになされているかということで、インドのケララ州をはじめ世界中にいくつかある高線量被曝地帯が1番目。それから2番目にウラニウム鉱山のラドンのガスを吸って肺がんが増えるっていう報告がある。それから3番目にCTスキャンで子供の被曝は白血病ガンを増やす可能性があるという論文があるということ。それからウラニウム鉱山と、ラドンと少し近いが、ラドンは一般の家庭でもあり、それを詳細に分析したのが2番目。ウラニウム鉱山のラドンが4番目。この辺の論文が数百あるが、調べてみると、現在、分析に値する、20mSVとか50mSVくらいの範囲で、健康影響、すなわちガンが子供たちに増えるというのは、唯一このCTスキャンの被曝である。この論文が6つくらいあり、その中から非常に大規模の研究である英国とオーストラリアの研究を2つ紹介する。それから、この二つを見るとほとんど影響があるのではないかと思われる結果であるが、それにもいろんな欠陥があり、それを指摘した第3の論文が今年になって、フランスのある大規模研究から出た。ここに紹介する1,2,3の論文の結果、やはり100万人規模の子供のデータがないと本当の分析ができないということで、EUの11ヶ国でEpi-studyというのが始まっている。これが今年ぐらいに一応結果が論文になって出ると予告されている。そしてその結論は、20ページに示している。今回の結論は、研究会の現時点での見解を書いているところである。精度の高い大規模研究により50msv以下の低線量被曝のCTスキャンによる健康影響について、影響ありとする論文が多く出版されている。しかし、いずれの論文も、なぜCTスキャンをしたか。健康な子供がCTスキャンを受けるにはそれなりの症状とか、いろんな医学的な理由があるはずであるので、その検討がいずれもされていないとのこと。この点を疑問視して行われたフランスの大規模研究では、その何万人もの子供を集めると、ガンを発症しやすい先天異常の子供とか、免疫不全、特に腎移植などの移植を既に受けている子供たち等の症例を考慮しないといけない。それを考慮すると、これが子供たちの症例のCT検査の回数が、フランスのこのグループの解析では有意に多く、回数が1回じゃない。2回3回と繰り返されている。そうするとこのグループの被曝線量が高い。そこから白血病・ガンを発症した症例がかなりあり、全体の白血病・ガンを100とすると、この群に属しており、これを計算に入れないと本当の群が分からない。計算に入れてみるとイギリス、オーストラリアの第1と第2の論文でいわれた低線量被曝の健康影響は、フランスのこの解析では有意ではなかった。完全に否定しているのではないが、有意にはならなかった。従って、今後、こういう先天異常とか、免疫不全の子供をしっかり把握したうえで、全体解析をしないと、純粋の低線量被曝の影響は結論は出ないということであることから、既にフランスのグループを中心に、Epi-study(※31)が始まっているという状況があるということが分かった。これは去年までは把握してはなかったことである。
それで、あとは簡単に、資料の横書きの資料が(1)。論文1です。Pearceという人が著者で、Lancet(※32)という世界で有数の雑誌であるが、これは論文タイトルが、小児のCTスキャンによる放射線被曝がその後に白血病及び脳腫瘍を引き起こすリスクの後方視的コホート(※33)、studyということである。後方視的というのは最初から計画してやったんじゃなくて、後から振り返ってみてという意味。研究の方法は、過去にガンはもちろん患っていない子供たち、健康な子供たち、ということで集めてCTスキャンを行った。
また、フランスの全国の13の大学病院のデータも全部集めた。そこで、178,604人の子供たちを分析している。かなり大きい数字である。
そして、1985~2008年まで。CTは2002年までのグループである。それと、結果の要約であるが、2008年まで経過をみたところ、白血病と脳腫瘍を発症してきた子供が、白血病74例、脳腫瘍135例あったこと。それからCTスキャン被曝線量をしっかり計算したところ、癌の発生の間に相関が認められたこと。そして、彼らのデータでは、CTスキャン回数が1回、2回、3回と増えるごとに、白血病と脳腫瘍の発生が上がるというデータになっている。そこに、1mSVのあたりの過剰相対リスクとして、白血病が0.036、それから脳腫瘍が0.023。白血病の場合は対象のCTを受けてない小児の白血病の発生率にすると約3倍になっている。また、脳腫瘍の場合は約2.8倍ということをいっている。この論文の理由が、CTを受けた理由が分かっていないので、そこが調査されていないのが欠点だということを自分たちも認めている。従って、癌、白血病の発症の1年前にCTを受けているグループは除くとか、2年前までの症例も除くとか、いろんな除外をしており、それらをしても有意にこういう結果が出たということである。これは、統計学的には有意だという論文のはしりであり、ここから世界中がそれは大変だと、子供のCTで白血病とか脳腫瘍が起こったら本当に大変なので、あらゆる国がEpi-Studyを開始したはしりの論文ということである。これは、多いといっても10,000回CTをする時に1例の白血病という、或いは1例の発症という程度の低さではある。それが有意であるかどうかということ。論文の評価として、3点挙げているが、いままでのとおりこれは繰り返しとなるので省略する。
次の論文が、さらに大規模のオーストラリアでの論文であり、68万の子供たち、CTを受けた子供たちを対象としている。そして、もともとのデータは11百万人、オーストラリアのメディケア(※34)という日本の保険制度の同じようなものがあるが、そこで、CTを受けた子供を68万人追跡している。そこから出てきた結果の要約であるが、11百万人のデータのうち、60万人が癌を発症しており、その68万人のうちCT検査を受けていた人が3,150人の集団をいろいろ分析した。そこで、4,5,6,7と結果が書いてあるが、癌と白血病の発症が1.24倍ぐらいになっている。そして年齢が低いほど、1.35倍ぐらい高い。白血病、その他の癌を調べており、それぞれ有意に増えている。ただ8番目であるが、100,000人あたりに換算すると、9.9人が白血病になっているということである。その時の平均のCTの被曝線量は4.5mSvとかなり低いようである。これは、驚きのデータである。もちろん、これがある期間だけみたその期間内の白血病、癌の発生率から、将来ずっとこの子供たちが成人していく頃には、あと20年、30年、50年と続いて、そういう研究はある意味では意味がない。だから何年間みればいいんだという問題も含まれているが、生涯リスクは計算できない。しかし、こういうデータが出た以上は、少年、青年のCT検査は、早い時期に制限するべきだという主張をしている。それで、評価の1.2.3.であるが、先程と同じようなことで、CT検査を受けるに至った理由が調査されていない。本論文もそういう欠点を自分たちも認め、そのために、CT検査と癌、白血病の発症の間が短い症例を除くとか、そういう2次的なことをいろいろやっている。
そして、3番目の論文から、先程言ったように、フランスの論文にでた。これは、結果のところだけ最初に見ると、癌を発症しやすい小児の先天性疾患を含めて精査したということである。2番目に67,000人の集団で、2000年から2010年の間に、10歳までに受けた最初のCTスキャンによる被曝とその後の癌の発症の関係を23の大学病院において調査した。CT検査後4年間の観察期間で結構短い。ですからこれも決定的な論文とはいえないかもしれない。これらの癌症例中32%がこういう先天症とかPF群のグループに属したということ。その疾患が欄外の一番下に*(アスタリスク)の1に挙げている。例えば3行目のダウン症候群。これ67,000のうち202例のダウン症候群。ダウン症候群は白血病を起こしやすいということがよく知られている。実際ここから白血病がでてきており、それを放射線の影響だといってしまうと問題がある。それから臓器移植が一番先に書いてあるが749例もしてある。ここから臓器移植すると免疫が落ちまして癌が起こり易い。そういう意味では、非常に重要なことであるが、この論文はそういったところもしっかりとしている。しかし、自分たちのこの研究も67,000人という大規模であるが、それぞれの癌の症例の数が少なくなってしまった。そういうことで100万人規模のコホートのデータがないといけない。これからデータがとれるかどうかということであるが、100万人規模といえば、ひとつの国ではとてもできない規模で多国籍の検証をしないといけないということで、現在はEpi-studyというのが行われている。小児及び青年におけるCTスキャンの放射線被曝による癌リスクがあるとする論文が相次いでいることに鑑み、フランス、英国、オーストラリアを除くEU内のベルギー以下の11ヶ国の共同研究で、計算するとだいたい100万人規模のコホートということで、癌のリスクをあげるような、先天症なども十分検討をして結果を出そうとしている。それで既に被曝線量をどういう風に統一して出すかという被曝線量の推定方法がもう論文になって出ている。
これはかなり着々と進められており、今年中に結果が出てくるとなっている。今回、私が調べたこの問題の現在、低線量被曝で人体影響があると、すなわち100mSV以下で、ところでこれは推定しかできないということで、例えば、福島の場合20mSVで避難地区が設定されているが、年間20mSVが本当に人体影響があると証拠がないが、これだけ熱心にやられているということは、やっぱり非常に重要であると思われる。その100mSV以下ということがどこまで影響があるのかということを本当にデータをだす可能性がある大きなテーマになってきているということで、これは、ひいては今日のA参考人の発表にもあったように被爆拡大地域の被爆線量が20~25ぐらいか、ミリシーベルトに推計されるということは、この間、D委員からもご報告いただいたが、そういうものから人体影響が推計できるかということで、直結する部分もあり大変注目している。
【C委員】
よろしいか。
よろしいか。
【会長】
はい。
はい。
【C委員】
一番最初のPearceさんと、実は去年の12月、私、ドイツでPearceさんといっしょに会い、その時にいろいろと話をしたが、Pearceさん自身も、今、先生がいわれたようにリスクが、このリスクがどうなのかという気持ちを感じており、リスクとしてこのくらいの癌の発症リスクであれば、その小児のCTをすることによって病気を早期診断するとか、治療に役立てることが今のままでは大きいんじゃないのかという、やっぱり検査をすることによるベネフィット(利益、ためになること)。ベネフィットのほうが大きいんじゃないかなというのがPearceさん自身もそういう見解である。
一番最初のPearceさんと、実は去年の12月、私、ドイツでPearceさんといっしょに会い、その時にいろいろと話をしたが、Pearceさん自身も、今、先生がいわれたようにリスクが、このリスクがどうなのかという気持ちを感じており、リスクとしてこのくらいの癌の発症リスクであれば、その小児のCTをすることによって病気を早期診断するとか、治療に役立てることが今のままでは大きいんじゃないのかという、やっぱり検査をすることによるベネフィット(利益、ためになること)。ベネフィットのほうが大きいんじゃないかなというのがPearceさん自身もそういう見解である。
【会長】
非常に、リスクはあるけど非常に低い。CTで例えば病気で使って、それを手術なり、なんなりで命を救える利益のほうが大きい。それはある。
非常に、リスクはあるけど非常に低い。CTで例えば病気で使って、それを手術なり、なんなりで命を救える利益のほうが大きい。それはある。
【C委員】その1点と、その論文の中で、その時も実は話題になったのが、いわゆる検査時年齢と癌リスクを比較したところがあるが、この論文では、検査時年齢が高いほうがリスクが上がるという風な傾向になっている。いわゆるこれまでの原爆被爆者のかたもそうで、チェルノブイリなんかもそうであるが、いわゆる年齢の層が逆のデータになっている。それがひとつのこれまでの本来というか、いままでの傾向とちょっと違うところになる。以上です。
【会長】
その検査法としてCTが安全性がどうだという本研究会の直接テーマではないが、放射線関係の世界では、このCT検査を子供にしていいのかということの方が大きい課題となっている。はい。ありがとうございました。他には。
その検査法としてCTが安全性がどうだという本研究会の直接テーマではないが、放射線関係の世界では、このCT検査を子供にしていいのかということの方が大きい課題となっている。はい。ありがとうございました。他には。
【D委員】
高線量地帯であったり、或いは、ラドン(※35)があり、高線量地帯の全身被曝、それからラドンの場合は内部被曝と違いがある。CTの場合は、これは恐らく局所被曝が多いのではないかと思う。今回のこのような調査内容では。
高線量地帯であったり、或いは、ラドン(※35)があり、高線量地帯の全身被曝、それからラドンの場合は内部被曝と違いがある。CTの場合は、これは恐らく局所被曝が多いのではないかと思う。今回のこのような調査内容では。
【会長】
局所だけれども、ある程度の範囲で。
局所だけれども、ある程度の範囲で。
【D委員】
だから、線量の出し方も違うし、シーベルトという単位でもっていくところも計算というか評価の仕方を統一しておかないとリスクだけみてもなかなかできないと思う。
だから、線量の出し方も違うし、シーベルトという単位でもっていくところも計算というか評価の仕方を統一しておかないとリスクだけみてもなかなかできないと思う。
【会長】
それは、かなり細かくやられてはいる。臓器線量として。例えば、低線量をみるときは骨髄線量とか。
それは、かなり細かくやられてはいる。臓器線量として。例えば、低線量をみるときは骨髄線量とか。
【D委員】
なるほど。分かった。
なるほど。分かった。
【会長】
それは、あくまで100万人規模くらいにしてしっかりやらないとそれぞれの症例とですね、発病してくる白血病、癌はほとんど少ない。その症例が、何十例とかぐらいでは、なかなか難しい。それが何百例とか何千例とか。そこまで出てきてでないと確定できない。
それは、あくまで100万人規模くらいにしてしっかりやらないとそれぞれの症例とですね、発病してくる白血病、癌はほとんど少ない。その症例が、何十例とかぐらいでは、なかなか難しい。それが何百例とか何千例とか。そこまで出てきてでないと確定できない。
【D委員】
脳のCTで脳腫瘍はまだ分かり易いが、脳のCTで白血病というのは、ではどのように説明をするかということ。
脳のCTで脳腫瘍はまだ分かり易いが、脳のCTで白血病というのは、ではどのように説明をするかということ。
【会長】
それは、分析を。それも11ヶ国の間で、統一しようと既に論文が出てくる。統一されているかどうか。今日はこれで終わりたいと思いますが、全体を振り返って何か。E委員何か。今日のところで新しい知見といいますか、あれば是非。
それは、分析を。それも11ヶ国の間で、統一しようと既に論文が出てくる。統一されているかどうか。今日はこれで終わりたいと思いますが、全体を振り返って何か。E委員何か。今日のところで新しい知見といいますか、あれば是非。
【E委員】
今日は、本当に貴重な情報を整理していただいて、整理された先生方には感謝申し上げたいと思う。A参考人の新しい情報の再解析みたいなデータも非常に今後この検討会では、大きな検討課題になるのではないかという風に思っている。会長が照会したCTのデータは、これからもEpi-studyの大規模な調査が行われるということであるので、低線量影響に関しての非常に大きなきちっとした論文になるんじゃないかと思っている。これは、先程のC委員の議論との続きですが、これが先程のちょっと実は控室で会長にもご質問させていいただいたことであるが、Pearceの論文も白血病の増加に関しては、ほとんどがMDS(※36)である。それは一般の今までの被曝のリスクからすれば、少し気になる感じもするので、そのあたりの解析というのも今後必要になってくるような気がする。
今日は、本当に貴重な情報を整理していただいて、整理された先生方には感謝申し上げたいと思う。A参考人の新しい情報の再解析みたいなデータも非常に今後この検討会では、大きな検討課題になるのではないかという風に思っている。会長が照会したCTのデータは、これからもEpi-studyの大規模な調査が行われるということであるので、低線量影響に関しての非常に大きなきちっとした論文になるんじゃないかと思っている。これは、先程のC委員の議論との続きですが、これが先程のちょっと実は控室で会長にもご質問させていいただいたことであるが、Pearceの論文も白血病の増加に関しては、ほとんどがMDS(※36)である。それは一般の今までの被曝のリスクからすれば、少し気になる感じもするので、そのあたりの解析というのも今後必要になってくるような気がする。
【会長】
細かいところまで入っていくと、そういうところがポイントだ。それから、被爆2世のほうでは、疑問に思っているのが放影研の白血病の症例がすこし少なかった。鎌田先生のはその3倍くらい、それがどうなのかということがある。放影研は、高線量被爆した両親はかなりの数で捕捉しているからこれでよろしいということになっているが。それも分析を加えていただければと思う。
細かいところまで入っていくと、そういうところがポイントだ。それから、被爆2世のほうでは、疑問に思っているのが放影研の白血病の症例がすこし少なかった。鎌田先生のはその3倍くらい、それがどうなのかということがある。放影研は、高線量被爆した両親はかなりの数で捕捉しているからこれでよろしいということになっているが。それも分析を加えていただければと思う。
【会長】
あと控えている解析すべき主な点は、今日、マンハッタン調査団、日米合同調査団、海軍の報告書など、まだ手つかずで膨大なデータを分析する必要がある。
あと控えている解析すべき主な点は、今日、マンハッタン調査団、日米合同調査団、海軍の報告書など、まだ手つかずで膨大なデータを分析する必要がある。
これは、認定基準とかいろんな問題も含めたことに関わってくると思うが、A委員にみていただきたい。そういうものも検討としていく。それからA参考人の今日の文献をみると非常にデータが膨大であるということが分かったので、D委員はそこを含めてA参考人とも接触していただき、もう少しデータの原点に戻ってといったところで、少し分析を続けていただければと思うが、理化学研究所のデータも入っていたので。それも含めて。それから、島原地区まで測定されてるデータ、馬原データもあった。汚染という意味ではその辺りまで行っているということは事実ではあるけれども、それで健康影響があるかどうかということは、また別問題ではあると思うが、是非よろしくお願いしたい。
次回は9月ぐらいを目途にということで。
〈用語解説〉
※1 フォールアウト
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
※2 DS02
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。従来のDS86(Dosimetry System1986)を改善し、2003年3月より新しい線量推定システムDS02を寿命調査(LSS)に導入した。
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。従来のDS86(Dosimetry System1986)を改善し、2003年3月より新しい線量推定システムDS02を寿命調査(LSS)に導入した。
※3 速中性子
中性子のうち、大きな運動エネルギーを持つもの
中性子のうち、大きな運動エネルギーを持つもの
※4 中性子np反応
1個の中性子の照射により1個の中性子と1個の陽子を放出する反応
1個の中性子の照射により1個の中性子と1個の陽子を放出する反応
※5 AMS加速器質量分析法(加速器マス)
加速器を利用し、物質を通過する際のエネルギー損失率の差などを利用して同重体などを除去し、特定の原子のみを計測するもの
加速器を利用し、物質を通過する際のエネルギー損失率の差などを利用して同重体などを除去し、特定の原子のみを計測するもの
※6 原医研
広島大学原爆放射線医科学研究所
広島大学原爆放射線医科学研究所
※7 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
※8 Eu-152
ユウロピウムの人工放射性同位体
ユウロピウムの人工放射性同位体
※9 Ge検出器
半導体を利用した放射線検出器
半導体を利用した放射線検出器
※10 93Rev
原爆線量
原爆線量
※11 理化学研究所
1917年(大正6年)に創設された物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行う日本国内唯一の自然科学系総合研究所。
1917年(大正6年)に創設された物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行う日本国内唯一の自然科学系総合研究所。
※12 原子爆弾災害調査研究特別委員会
1945年9月に文部省学術研究会議によって、原子爆弾の災害を総合的に調査研究するために設立された
1945年9月に文部省学術研究会議によって、原子爆弾の災害を総合的に調査研究するために設立された
※13 マンハッタン管区調査団MED
1945年に米国から広島、長崎の原爆から出た放射能及び残留放射能を測定することと、それらの人体への影響を明らかにするために広島、長崎に派遣された調査団
1945年に米国から広島、長崎の原爆から出た放射能及び残留放射能を測定することと、それらの人体への影響を明らかにするために広島、長崎に派遣された調査団
※14 ローリッツエン検電器
放射線の被曝量を測定するのに用いられる検電器
放射線の被曝量を測定するのに用いられる検電器
※15 理研の仁科研究室
1931年7月に、当時国内では例のなかった量子論、原子核、X線などの研究を行なうために仁科芳雄氏が理研で立ち上げた
1931年7月に、当時国内では例のなかった量子論、原子核、X線などの研究を行なうために仁科芳雄氏が理研で立ち上げた
※16 原災報
原子爆弾災害調査報告書 … 原子爆弾災害調査研究特別委員会が昭和20年度に行った調査研究について、総括編として昭和26. 年に「原子爆弾災害調査報告書」として出版したもの。
原子爆弾災害調査報告書 … 原子爆弾災害調査研究特別委員会が昭和20年度に行った調査研究について、総括編として昭和26. 年に「原子爆弾災害調査報告書」として出版したもの。
※17 気象研
気象庁気象研究所
気象庁気象研究所
※18 バックグラウンド
放射線測定の際の、測定対象以外からの放射線。宇宙線や天然の放射性物質などに起因する。
放射線測定の際の、測定対象以外からの放射線。宇宙線や天然の放射性物質などに起因する。
※19 空間線量
ある空間における放射線量を表す単位の事で、基本的に地上1メートルで測定した1時間あたりの放射線量のこと。
ある空間における放射線量を表す単位の事で、基本的に地上1メートルで測定した1時間あたりの放射線量のこと。
※20 空気吸収線量
空間線量(※注19)と同義
空間線量(※注19)と同義
※21 ネーヤ
ネーヤ電位計 … 宇宙線を観測する野外用の電気計
ネーヤ電位計 … 宇宙線を観測する野外用の電気計
※22 ゲルマニウム検出器
放射性核種の同定や放射能の測定をする機器
放射性核種の同定や放射能の測定をする機器
※23 京大原子炉
京都大学原子炉実験所
京都大学原子炉実験所
※24 天然比
ある元素について、同位体の種類ごとに自然界に存在する割合
ある元素について、同位体の種類ごとに自然界に存在する割合
※25 公衆衛生協会
日本公衆衛生協会 … 公衆衛生の向上をはかり、健康で文化的な国民生活の建設に寄与することを目的とした会。
日本公衆衛生協会 … 公衆衛生の向上をはかり、健康で文化的な国民生活の建設に寄与することを目的とした会。
※26 過剰相対リスク相対リスク(暴露群の発生率を非暴露群の発生率で徐したもの)から1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分。
※27 IAEA
国際原子力機関
国際原子力機関
※28 転座
細胞は染色体切断端を誤って再結合することがある。こうした再結合が1つの染色体内で生じた場合、2個所の切断端の間に挟まれた染色体分節の方向が逆になること。
細胞は染色体切断端を誤って再結合することがある。こうした再結合が1つの染色体内で生じた場合、2個所の切断端の間に挟まれた染色体分節の方向が逆になること。
※29 逆位
切断された染色体末端の再結合が2つの染色体にかかわる場合、2つの異常染色体ができる。これらの異常染色体はそれぞれ他の染色体の一部と結合し、自身の染色体の一部が欠落すること。
切断された染色体末端の再結合が2つの染色体にかかわる場合、2つの異常染色体ができる。これらの異常染色体はそれぞれ他の染色体の一部と結合し、自身の染色体の一部が欠落すること。
※30 ハザード比
追跡期間を考慮したリスクの比。追跡期間によりリスクが変化する場合に使用する。生存率を指数関数モデルで表した生存関数において、その時定数をハザードという。
追跡期間を考慮したリスクの比。追跡期間によりリスクが変化する場合に使用する。生存率を指数関数モデルで表した生存関数において、その時定数をハザードという。
※31 Epi-study
疫学調査
疫学調査
※32 Lancet
週刊で刊行される査読制の医学雑誌。同誌は世界で最もよく知られ、最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つである。
週刊で刊行される査読制の医学雑誌。同誌は世界で最もよく知られ、最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つである。
※33 コホート
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
※34 メディケア
公的医療保険制度の名称
公的医療保険制度の名称
※35 ラドン
希ガス類元素の一つ。元素記号Rnラジウムの崩壊に際して生ずる放射性の気体元素
希ガス類元素の一つ。元素記号Rnラジウムの崩壊に際して生ずる放射性の気体元素
※36 MDS
骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群
第5回(平成27年度第1回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2016年11月10日 ページID:029039
長崎市の附属機関について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
第5回(平成27年度第1回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成27年9月28日(月曜日) 14時00分~15時10分
場所
長崎原爆資料館 平和学習室
議題
議題: 研究論文等の調査結果について
その他:・長崎総合科学大学 大矢名誉教授の研究論文について ・次回開催について
その他:・長崎総合科学大学 大矢名誉教授の研究論文について ・次回開催について
審議内容
審議事項 研究論文等の調査結果について
1 被ばく線量をモニターした原子力施設労働者(INWORKS)における電離放射線と白血病および悪性リンパ腫による死亡リスクの関連性についての国際コホート(母集団)研究
【会長】
まず、被ばく線量をモニターした原子力施設労働者(INWORKS)(研究のコード名で、「INWORKS」と言われる国際研究)、における電離放射線と白血球及び悪性リンパ腫(血液の癌)による死亡リスクの関連性についての国際コホート研究について、「コホート」とは労働者の大きな集団という意味であるが概要を説明をしたい。
まず、被ばく線量をモニターした原子力施設労働者(INWORKS)(研究のコード名で、「INWORKS」と言われる国際研究)、における電離放射線と白血球及び悪性リンパ腫(血液の癌)による死亡リスクの関連性についての国際コホート研究について、「コホート」とは労働者の大きな集団という意味であるが概要を説明をしたい。
まず1ページ目だが、タイトルは英語名では、Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers。これは著者名にLeuraudという人が筆頭著者になっているが3番目にCardisという人が入っている。このグループは今からもう10年ぐらい前に大規模なこれと同じような研究をやって、原子力発電所で働いている人たちは、低線量被曝をしているということと、そこで少し白血病による死亡のリスクが増えているということを発表していたが、そのデータは、まだ十分に国際的には低線量被曝の証拠としては不十分だというふうに考えられていたという背景がある。
背景のところに書いているように、職業、環境、あるいは医学的診断による低線量被曝。低線量被曝は職業で原子力施設、あるいは核兵器製造施設の被ばく。環境というのは、自然放射線が高いところが世界にいくつもあるので、そこでの住民が被ばくしているということである。医学的診断は前回取り上げたCT検査。特に子供のCT検査とか、そういう医学的診断による低線量被曝があるが、こういうもので反復被曝している、或いは、持続的に被ばくしている場合に、後障害として白血病及び悪性リンパ腫による死亡が過剰に発生するかどうかについては、これまで多くの不明部分があった。著者らはフランス、英国、米国、この3か国。Cardisが発表したのが日本も含まれた15か国のデータであったが、今回は3か国。これは放射線被曝のモニターを、ずっと被曝線量測定してきたということであるが、成人の労働者について白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫による死亡数と被曝線量の関係について調査研究を実施している。
今後は、1.対象の労働者というのは、フランスの原子力省、それとAREVA(※1)という核サイクルの企業から見つけたもの、フランスは国営企業のAREVAの1者で全てやっているが、そこの労働者、それから米国国防総省、これは、核兵器製造工場の労働者、それから米国のエネルギー省の原子力発電所の労働者、それから、英国の原子力労働者登録機構に所属する労働者、合計で、308,297人である。それで、観察期間が相当長いので、観察期間をこれに掛けると8.22百万人年ということになる。約8百万人年である。統計というのは、何人の人を何年間、観察したかで掛け算をする。それから3番目に白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫による死亡数の割り出し、罹患した人だとこれよりも大きい数字が出てくると思うが、今回死亡数である。そして、Poisson regression法(※2)という統計学の手法を用いて、赤色骨髄吸収線量といわれる、血液の腫瘍は骨髄から発生するが、その骨髄がどのくらい線量を浴びていたかというのを赤色骨髄吸収線量という。それと死亡の相関を計算したということである。この研究費が3か国の政府から出ているのに含めて、日本も厚生労働省がこの研究費の支援をしている。
結果は4つにまとめられている。この約30万人の方々の年間の平均被曝線量は1.1mGy。平均就業期間が27年ということであるから被曝線量は平均では約16mGyということになる。それから白血病は4つのタイプがあるが慢性リンパ性白血病は除かれている。これは日本人には非常に少ない、白人に多いという特徴があるが、放射線によって起こるという白血病ではないと考えられている点もあり除かれている。そして、過剰相対リスク(※3)いわゆるERRというのを求めたところ2.96/Gy、これは90%の信頼区間が1.17-5.21で、lagged 2 yearsというのは、就職されて原子力労働開始したあと2年間はその前に発病した病気が出てくる可能性があり、白血病の場合は比較的早く出てくるという事で、2年間での死亡は入れないで計算している。そして、特に慢性骨髄性白血病の過剰相対リスクがこの過剰相対リスクの2.96という主要因であり、慢性骨髄性白血病は、単独では10.45で90%の信頼区間が4.48-19.65です。悪性リンパ腫と多発性骨髄腫はデータは示していないが、リスク上昇は全くなかった。白血病が特に出ている、ということであった。
それで、持続性の低線量被曝によっての白血病による死亡の過剰なリスクが生じる強い証拠が得られた、ということが結論である。
私の個人的な意見を述べさせていただくが、2005年、10年前にCardisらが日本の原子力産業労働者も含めた15ヶ国の原子力労働者において同様の研究結果を発表している。British Medical Journal(※4)である。このとき白血病死亡リスクの上昇は明瞭ではなかった。可能性はあったけれども明瞭ではなかった。今回の研究はデータセットがしっかりしている米英仏の3ヶ国に限り、観察期間をさらに延長して検討したものであり、この種の疫学調査としては、おそらくこれ以上のものは、最大、最長の規模となった、今後これ以上の研究は出ないのではないかと思う。死亡者数が15か国の場合の検討の196人から531人に増えている。観察期間の平均は13年から27年に伸びている。これができたものが3か国が歴史が古いわけだ。そこに絞って精密な分析ができると考えて研究を行ったということだと思う。先程言ったように白血病は2年のラグタイムがある。悪性リンパ腫はさらに長く10年のラグタイムを設けている。これは就業早期の発病者を慎重に除外したわけである。3番目に原爆白血病の場合のERR 2.63というのがこれまでの一番最近の放影研からの報告である。これはほとんど戦後60年近くのデータの集積で2.63ということになっていたが、これに近似した数字、ERR 2.960/Gyが低線量の持続被曝でもたらされたことになる。その線量との相関が図に示されている。(P5)図に示されているように、100msv以下のいわゆる低線量領域においても、有意な直線関係モデルがヒットするという結果を報告している。これまでの原爆被爆者白血病における研究では、死亡リスクは線量が下がるにつれて低下し、特に100msv以下になると有意の上昇が観察されないと解釈されてきた。これにのっとってICRP(※5)などは、100msv値を基準においているが、今回の研究では、この100msv、mGyとほぼ同じであるが、白血病による死亡リスクが成人では初めて観察されたことになる。前回、小児のCTの報告で、これもまだ確定的ではないが100msv以下で小児でも上昇があるということが主張されており、成人で初めて、こういう研究が出てきたということは重要じゃないかと思う。この結果は、被爆地域拡大の住民の方々でこれまでに過去3回の研究会で、A委員、あるいは広島大学の静間先生が過去の実測値といえ、放射線量の測定、あるいはプルトニウムの測定から推定していった被曝線量の例えば、一番高い所で25msv程度の低線量被曝があると推定されたわけであるが、これは70年代の厚労省の検討会によっては、完全に、この程度では人体影響はないと否定された。それが今の経過になっているが、そういうところについて、少し再考するという研究結果になるのではないかと思う。前回の研究会で検討したヨーロッパ及びオーストラリアからの小児のCT検査による低線量被曝で、白血病と脳腫瘍が増加するという論文が、今年中に100万人規模で、EUの各国が協力してやられているが、発表が今の段階ではなく、今年中にあるとアナウンスされているが、白血病になりやすい先天異常の子供が100万人も子供がいるとその中に結構、先天異常を持っておられる子供さんが入ってくる。その人たちは特別に白血病になりやすいというのがあるのではないかという懸念を除外すべく研究がされている、と言われている。そういうものが今後出てくると思われるので、その時に今回のこの英米仏の合同研究の成人の結果を併せて総合判断する必要があるのではないかと思う。今のTable1を振り返ってみると、フランス、アメリカ、イギリス、それぞれ、どれくらいの癌の人たちを検討したかというのが、フランスが59,000人、アメリカが101,000人、イギリスが147,000人と書いてあり、一番下の白抜きのところで、積算された骨髄線量が書かれているが、少し国によって平均値が違うが、Overallという全体をまとめると15.9、約16という数字がそこに出てきている。それがどれくらいの線量の分布になっているかというと、6ページにFigure A1と書いてあるところで、一番大きいグラフで0というところに、225,000くらいのところに黒い棒グラフが伸びているが、ほとんどの人が0で少しずつ線量が上がってくる。100mGyを超える人があってもこのグラフでは分からない。そこで、上に100 mGy以上のところが桁数を変えて、100,000人弱で、2,000人単位で書かれているが、100msv超える人、300msv超える人が、結構数百人から数千人いるということが分かる。そういうところから導かれたデータだと思う。それから、Table2、4ページに戻るが、先程申し上げた、白血病でCLLを除くとどうなるかというのがそこに書かれている。慢性骨髄白血病が1番目にあるが、100人これで亡くなっているわけであるが、それの相対リスクが10.45で一番大きかったということである。その結果、この線量が上がるにつれて、どういうふうに白血病で死亡するリスクが上がっていくかというグラフが、Figureに、図に書いてあるが、こういうふうに100msv以下でも、統計学的には、この傾きが上がっていくということが、ある程度信頼できるものである。これが200 mGy、300 mGyと上がっていくというわけだ。もちろん原爆被爆者では100、200、300というところが一番が最低のところで、右のほうに1,000msvとか、2,000 msvとか、4,000 msvとかずっと上がっていくわけである。そういう高い線量のところのデータというのは、原爆被爆者のデータは非常に正確であるというふうに考えられているが、低い所では、原爆被爆者は100 msv以下は、どうもよく分からないというところが今回初めて統計学的に有意に低線量でも死亡率が上がる、ということを示したという研究である。細かい各線量区分ごとのどのくらい死亡例があるか細かいデータは、Table A2横書きでご覧いただければ分かると思う。区分は、0-5mGy、5-50mGy、50-100mGy、100-200mGy、200-300mGy、300mGy以上というふうにして6区分で検討している。そこで、その傾き、リスクが上がっていくとその傾きを統計処理して求めている。それから、悪性リンパ腫の原爆被爆者で増えているか増えていないか、非常に男性では増えているというデータが出ているが、女性では出ていないのでトータルとしては、はっきりしないという状況があり悪性リンパ腫は、最近非常に日本人にも多くなってきているのであるが、本当に放射線の影響の関係があるかというのは、まだ結論は出ていないが、この原子力労働者の30万人のデータでは、悪性リンパ腫が放射線との関係が見いだせなかったということになっている。
【B委員】
この論文は、社会的にとって結構、大きかったと思う。それで、最初の論文を眺めてみると、気になったのが7ページ、先程説明があったTable A2と書いてあるところ。これに対応して論文自体がResultsのところに記述があるのだが、ここでは、CLL(※6)を除く白血病の相対リスクというのが、同数、線量の範囲のカテゴリだと200mGy以上の蓄積線量のところでは、明らかなリスクが生じるというふうに書いている。つまり、それ以下については、明らかなリスクはない、ということだと思う。実際にTable A2に戻ってみると、CLL以外、慢性リンパ急性白血病以外の白血病のリスクというのは、順番に線量のカテゴリでみていくと、確かに100-200までは、これは有意な上昇ではない。200-300になって初めて相対リスクが2.30でこれが有意だ、300以上もそのとおり、ということになる。ですから、この表とこの結果の比率から素直に読むと恐らくこれは、200-300以上のところで有意性が認められる、有意な相関が認められる、ということではないかと思う。更に低線量、いわゆる慢性被曝と急性被曝の違いについての議論というのがあるので、今、ICRPがひとつのモデルとして、このリスクの比を大体1対2というようなひとつの基準を出しているが、それから考えても、これまでのいわゆる原爆被爆者の方の疫学調査の結果とも祖語はないのではないか、と私はこれをみて素直にそう思った。
この論文は、社会的にとって結構、大きかったと思う。それで、最初の論文を眺めてみると、気になったのが7ページ、先程説明があったTable A2と書いてあるところ。これに対応して論文自体がResultsのところに記述があるのだが、ここでは、CLL(※6)を除く白血病の相対リスクというのが、同数、線量の範囲のカテゴリだと200mGy以上の蓄積線量のところでは、明らかなリスクが生じるというふうに書いている。つまり、それ以下については、明らかなリスクはない、ということだと思う。実際にTable A2に戻ってみると、CLL以外、慢性リンパ急性白血病以外の白血病のリスクというのは、順番に線量のカテゴリでみていくと、確かに100-200までは、これは有意な上昇ではない。200-300になって初めて相対リスクが2.30でこれが有意だ、300以上もそのとおり、ということになる。ですから、この表とこの結果の比率から素直に読むと恐らくこれは、200-300以上のところで有意性が認められる、有意な相関が認められる、ということではないかと思う。更に低線量、いわゆる慢性被曝と急性被曝の違いについての議論というのがあるので、今、ICRPがひとつのモデルとして、このリスクの比を大体1対2というようなひとつの基準を出しているが、それから考えても、これまでのいわゆる原爆被爆者の方の疫学調査の結果とも祖語はないのではないか、と私はこれをみて素直にそう思った。
【会長】
確かに、先生が言われるように6つの区分でみると、300以上でそのグループ、グループでの統計的な有意差というのが300以上で出てきている。しかし、その下側の200以下から5 msvまで、これをプロットして、いわゆるモデルにあてはめて、直線関係があるというデータになっている。それ以上、我々はそれを検証できないが、それが、有意だとしている。
確かに、先生が言われるように6つの区分でみると、300以上でそのグループ、グループでの統計的な有意差というのが300以上で出てきている。しかし、その下側の200以下から5 msvまで、これをプロットして、いわゆるモデルにあてはめて、直線関係があるというデータになっている。それ以上、我々はそれを検証できないが、それが、有意だとしている。
【B委員】
要するに上の線量で、直線関係があるのを下の線量のほうに外挿して、有意性がある、有意になっているということを証明している。これも、私の理解では、原爆被爆者の線量についても同じような結果ではないかと思うが、どうなのか。リスクの外挿をしているという意味ではないか。
要するに上の線量で、直線関係があるのを下の線量のほうに外挿して、有意性がある、有意になっているということを証明している。これも、私の理解では、原爆被爆者の線量についても同じような結果ではないかと思うが、どうなのか。リスクの外挿をしているという意味ではないか。
【会長】
原爆被爆者では、外挿が有意にならないのではないか。だから、放影研の判断では200以上となっているのではないかと思う。
原爆被爆者では、外挿が有意にならないのではないか。だから、放影研の判断では200以上となっているのではないかと思う。
【B委員】
これは0-100の範囲もこれだけとっても、有意に直線関係が成り立っているということなのか。
これは0-100の範囲もこれだけとっても、有意に直線関係が成り立っているということなのか。
【会長】
私はそのように考える。
私はそのように考える。
【B委員】
そうすると多分このTable A2の有意性はこのようにならないと思う。0-5、5-50、50-100、これは全て有意性ではない。
そうすると多分このTable A2の有意性はこのようにならないと思う。0-5、5-50、50-100、これは全て有意性ではない。
【会長】
そう、各区分に分けたら有意性がみれない。
そう、各区分に分けたら有意性がみれない。
【B委員】
だから、それで普通それを求めて直線にして有意性が出るか少し考えにくい。
だから、それで普通それを求めて直線にして有意性が出るか少し考えにくい。
【会長】
それがモデルにあてはめて、放影研がやっているモデルを利用してやっている。だから、そこを言われる通り本当に正しいやり方なのか、正しい結論を導いているか検証がいると思う。
それがモデルにあてはめて、放影研がやっているモデルを利用してやっている。だから、そこを言われる通り本当に正しいやり方なのか、正しい結論を導いているか検証がいると思う。
【B委員】
だから、おそらく生のデータを出したのが、Table A2だと思う。これをみる限りは、何かいままでとそこまで大きな違いはないのかなという気がする。今、言われたその直線で引いたときのやり方というのがよく分からないが、データから、そういう印象があるのがひとつ。
だから、おそらく生のデータを出したのが、Table A2だと思う。これをみる限りは、何かいままでとそこまで大きな違いはないのかなという気がする。今、言われたその直線で引いたときのやり方というのがよく分からないが、データから、そういう印象があるのがひとつ。
【会長】
そういう見方と、もうひとつは、もう少し外挿していくところでも有意になっているというデータと解釈すると、100 msv以下が分からないと言われてきたことが、100 msv以下においても影響が出る可能性が示唆されているということになるというのがこの人達の主張である。
そういう見方と、もうひとつは、もう少し外挿していくところでも有意になっているというデータと解釈すると、100 msv以下が分からないと言われてきたことが、100 msv以下においても影響が出る可能性が示唆されているということになるというのがこの人達の主張である。
【B委員】
論文の主旨としては、分かる。結果として、どうかなという気が少ししている。もうひとつ気になったのが、同じくTable 1であるが、これでみるとやはり確かに平均値でいうと、11.6、15.2というそういったところであるが、そのかっこ付けで最大値と最小値を示した、これでみるとかなり高い人が多いという気がする。特に例えばアメリカで一番高い方で820、イギリスが一番高い人で1217、かなり高い人の線量も測っている。いかに慢性被曝とはいえ、かなり高い線量であるという人が、かなり混じっているということも、少し考慮すべきことではないかなというふうに思う。
論文の主旨としては、分かる。結果として、どうかなという気が少ししている。もうひとつ気になったのが、同じくTable 1であるが、これでみるとやはり確かに平均値でいうと、11.6、15.2というそういったところであるが、そのかっこ付けで最大値と最小値を示した、これでみるとかなり高い人が多いという気がする。特に例えばアメリカで一番高い方で820、イギリスが一番高い人で1217、かなり高い人の線量も測っている。いかに慢性被曝とはいえ、かなり高い線量であるという人が、かなり混じっているということも、少し考慮すべきことではないかなというふうに思う。
【会長】
この図でいくと何人かというのが読み取れないが少しいる。そういう人たちが全部、白血病になっていると引っ張られて、そういう現象が起こるかもしれない。
この図でいくと何人かというのが読み取れないが少しいる。そういう人たちが全部、白血病になっていると引っ張られて、そういう現象が起こるかもしれない。
【B委員】
かなり、高い確率で、当然確率が上がる。
かなり、高い確率で、当然確率が上がる。
【会長】
そのあたりは、著者らに直接あたってみないと細かい数字まで分からない。この論文がTHE LANCET Haematology(※7)という論文に一応採択、レビュアーが4、5人はいるでしょうから、一応それぞれのレビュアー側の評価をうけ、論文化されているので一定の評価は受けているのではないかとは思う。
そのあたりは、著者らに直接あたってみないと細かい数字まで分からない。この論文がTHE LANCET Haematology(※7)という論文に一応採択、レビュアーが4、5人はいるでしょうから、一応それぞれのレビュアー側の評価をうけ、論文化されているので一定の評価は受けているのではないかとは思う。
【A委員】
今の線量評価のところに関しては、今年、同じグループが線量評価だけの論文を出しており、それを見てみると、かなり細かくやっている。発電所なので中性子の規模がどれくらいあるかによって、被曝線量が随分変わってくる。実は国別で線量が随分違うが、発電所の中のワーキングエリアの構成、レイアウト、いわゆる遮へいがどれくらいあるかでこういうところで随分違ってくるのではないかと思う。したがって個々の例に関して、ワーキングエリアであったり、動きであったりを加味したうえで計算をしているので、その中で、1sv超えというのはあったのではないかと思う。中性子の規模が大きくなると勝手にそうなると思う。それでもしっかりと線量評価している。
今の線量評価のところに関しては、今年、同じグループが線量評価だけの論文を出しており、それを見てみると、かなり細かくやっている。発電所なので中性子の規模がどれくらいあるかによって、被曝線量が随分変わってくる。実は国別で線量が随分違うが、発電所の中のワーキングエリアの構成、レイアウト、いわゆる遮へいがどれくらいあるかでこういうところで随分違ってくるのではないかと思う。したがって個々の例に関して、ワーキングエリアであったり、動きであったりを加味したうえで計算をしているので、その中で、1sv超えというのはあったのではないかと思う。中性子の規模が大きくなると勝手にそうなると思う。それでもしっかりと線量評価している。
【会長】
それを入れたり除外したりして、両方検討したということでないのか。
それを入れたり除外したりして、両方検討したということでないのか。
【A委員】
両方入っている。だから、そのあたりは良いが、B委員の意見に少し近いが、この資料の5ページ、Figureのグラフだが、これは恐らくモデルをフィットさせたら合うか合わないかということをみているのだろうと思う。それで、青の部分の要は300mGy以下の被曝線量群にすると90%CIでも確かに上昇しているので、これは恐らくLNTにもフィットするかと思うが、100mGy以下の集団に絞りますと90%CIがむしろ下がってくるようなところも見受けられる。ばらつきがこれだけ広がっているのであるから。したがって100mGy以下で、有意に上昇している証拠ではないと思う。300mGy以下であれば、少なくとも統計的にフィットするといえると私は理解した。
両方入っている。だから、そのあたりは良いが、B委員の意見に少し近いが、この資料の5ページ、Figureのグラフだが、これは恐らくモデルをフィットさせたら合うか合わないかということをみているのだろうと思う。それで、青の部分の要は300mGy以下の被曝線量群にすると90%CIでも確かに上昇しているので、これは恐らくLNTにもフィットするかと思うが、100mGy以下の集団に絞りますと90%CIがむしろ下がってくるようなところも見受けられる。ばらつきがこれだけ広がっているのであるから。したがって100mGy以下で、有意に上昇している証拠ではないと思う。300mGy以下であれば、少なくとも統計的にフィットするといえると私は理解した。
【会長】
この論文の記述にその記述がない。そこが一番ポイント。100 msv 以下の強い証拠が出たとは書いていないので、一応今まで言われている100 msv 以下のところでは癌の発生というのは、特に白血病の発生というのは、よく分からないといういままでの説を覆せるかどうかは、A委員が言われたところにかかっているので、これは統計の専門家、特に放射線疫学の統計の専門家、例えば放影研のモデルを開発してきたプレストン先生とか、そういう方の意見を聞いてみないと。私達が判定するのは難しいという形になっている。そのもう一つの論文は、この論文より先に出たのか。
この論文の記述にその記述がない。そこが一番ポイント。100 msv 以下の強い証拠が出たとは書いていないので、一応今まで言われている100 msv 以下のところでは癌の発生というのは、特に白血病の発生というのは、よく分からないといういままでの説を覆せるかどうかは、A委員が言われたところにかかっているので、これは統計の専門家、特に放射線疫学の統計の専門家、例えば放影研のモデルを開発してきたプレストン先生とか、そういう方の意見を聞いてみないと。私達が判定するのは難しいという形になっている。そのもう一つの論文は、この論文より先に出たのか。
【A委員】
同時期。今年。
同時期。今年。
【会長】
並行して出たのか。
並行して出たのか。
【A委員】
そうである。同じ時期に。
そうである。同じ時期に。
【会長】
ポイントは、B委員とA委員の意見のとおり100 msv 以下、これは、全体としては、それを主張しているのだが、それが本当に、それでいいかということを今後検証していく。それでよろしいか。もしそれが事実とすれば、いわゆる直線仮説というのがあるがLNT(※8)の、100mGy以下でもある程度は影響があるとなっていくのかどうかである。そこの皮切りの論文ではないかと思う。小児のCTの論文がまだ続けて出てくるので、新しい展開がしてるということが一番重要でないかと思う。
ポイントは、B委員とA委員の意見のとおり100 msv 以下、これは、全体としては、それを主張しているのだが、それが本当に、それでいいかということを今後検証していく。それでよろしいか。もしそれが事実とすれば、いわゆる直線仮説というのがあるがLNT(※8)の、100mGy以下でもある程度は影響があるとなっていくのかどうかである。そこの皮切りの論文ではないかと思う。小児のCTの論文がまだ続けて出てくるので、新しい展開がしてるということが一番重要でないかと思う。
もうひとつは、環境放射線でインドとか中国とかブラジルとかイランとかいろんな所に高線量地帯があるが、そういうところの研究は我々はまだ網羅的に検討していないので、今後の重要な課題になろうかと思う。
やはり集中的に100 msv 以下で被爆拡大地域も100 msv 以下であるので、健康障害が、健康影響があり得るかとの観点から国際的な研究の現状を最終的には、この1、2年では結論を出していかねばならないかなと思っている。
2 日米合同調査団報告書に見る急性症状
【C委員】
11ページに日米合同調査団(※9)の報告書の全6巻の目次、タイトルを示している。1巻が物理的被害調査、2巻が臨床所見、3巻が血液学的調査、4巻が病理学的調査、5巻が統計学的分析、6巻が集団と傷害ということで、今回、用いたのは第5巻、統計学的分析。長崎の6898人について分析されたものを使っている。
11ページに日米合同調査団(※9)の報告書の全6巻の目次、タイトルを示している。1巻が物理的被害調査、2巻が臨床所見、3巻が血液学的調査、4巻が病理学的調査、5巻が統計学的分析、6巻が集団と傷害ということで、今回、用いたのは第5巻、統計学的分析。長崎の6898人について分析されたものを使っている。
17ページには長崎におけるいろんな急性症状の距離別の表が作成されている。まず、Ringというところに1~7まである。次にDistanceで距離が0~1000、1100~1500、1600~2000というふうに距離が刻まれている。それを横に行くとDistance の横はTotal Numberなので、例えば0~1000mの人は789人いたと。その次が脱毛(Epilation)なので249人の方が脱毛した。割合的にみると、31.6%。というこの表を用いて13ページのグラフを作成した。13ページのグラフは横軸が被爆距離、縦軸が脱毛の頻度となっている。この画のごとく近距離には脱毛が多く、遠距離になるほど脱毛の頻度は減っている。しかし、4kmから5kmまでは少しではあるが脱毛があるということを表している。
次のグラフは17ページの表で脱毛の隣が出血斑ということになっているので、この数値を用いてグラフ化したのが14ページのグラフ。これは横軸が被爆距離、縦軸が出血斑の頻度ということで、先ほどの脱毛のグラフと類似のパターンを示しており、近距離では高く、遠距離では減っている。しかし、遠距離になっても数パーセントであるが、その症状は見られた、というグラフである。
15ページのグラフであるが、これはABCDというカテゴリーに分けている。青で示したAというのは、1kmまでで外にいたか日本家屋にいたかというグループをAと呼んでいる。Bという赤で示したグループが1100m~1500mで外にいたか日本家屋にいたか、もしくは1000m未満で純遮蔽にいたかというグループ分けになっている。これは横軸が原爆後の経過の週である。縦軸が平均白血球数。4週目のところに点線を入れているが、4週目のところを見ると、一番近距離のA青グループが低く、次の近距離のBグループが次に低いということを示している。横軸に3500のところに点線を横に引っぱっているが、これは一般的に3500未満が異常値とされるものなので、AグループとBグループについて4週目にかなり平均白血球数は減っているが、あとは徐々に回復しているというグラフである。以上、脱毛と出血斑と平均白血球数について示した。
【D委員】
ABCDの区分の説明を再度お願いしたい。
ABCDの区分の説明を再度お願いしたい。
【C委員】
分かりにくいが、16ページにABCDのグループ分けの定義がある。Aグループは距離が0~1000、外か日本家屋、Bグループは1100~1500で外か日本家屋、0~1000の純遮蔽。ちょっと複合的になっているので分かりにくいが、16ページに示している。
分かりにくいが、16ページにABCDのグループ分けの定義がある。Aグループは距離が0~1000、外か日本家屋、Bグループは1100~1500で外か日本家屋、0~1000の純遮蔽。ちょっと複合的になっているので分かりにくいが、16ページに示している。
【先生】
遮蔽方法として、例えばBの遮蔽が外か日本家屋と、その0-1000のコンクリートと本当にいっしょかどうかというのは少し疑問があると思う。だから、原爆直後の9月の調査であり最も早期の米軍のドクターが中心になっているので、脱毛の調査としては確実な調査だろうとは思うが。米軍としても、とりあえずはこういうふうにして区分してみようということで、試行錯誤しているような感じもする。
遮蔽方法として、例えばBの遮蔽が外か日本家屋と、その0-1000のコンクリートと本当にいっしょかどうかというのは少し疑問があると思う。だから、原爆直後の9月の調査であり最も早期の米軍のドクターが中心になっているので、脱毛の調査としては確実な調査だろうとは思うが。米軍としても、とりあえずはこういうふうにして区分してみようということで、試行錯誤しているような感じもする。
ここまでは原爆被爆者では、距離との関係で症状を信頼できるとか何か言えるか。
【C委員】
このデータからだけでは何とも、その距離における頻度が有意かどうかというのは分からない。
このデータからだけでは何とも、その距離における頻度が有意かどうかというのは分からない。
【会長】
今、国の認定制度では3.5kmだが、3.5km以内の方で癌になった場合は、原爆症と認定されておられるという現状だが、3.5kmというのが、こういうグラフから出てきたのかと思ったが、そういうことじゃないのか。この当時の調査としては最大の調査なので非常に重要な医学的な観察記録だったと思うが、脱毛というのはなかなか難しく4km、5kmのところでも脱毛する人は数パーセントは出る。それから、被爆地拡大の住民の調査にも脱毛があるというふうに答えている人が数パーセントある。それが本当に放射線の影響かどうかというのがいつも議論になるが、明解な判定基準というのがなかなかない。そういうものがこの合同調査団の記録から出ないかと思って分析していただいているが、グラフで見る限りは、これを全部放射線の影響だというふうに言えるかどうかというのは、なかなか難しい。それから時間的に経過があって1週間目に既に脱毛が起こっている人がマンハッタン調査団(※10)の調査に有るんじゃないのか。
今、国の認定制度では3.5kmだが、3.5km以内の方で癌になった場合は、原爆症と認定されておられるという現状だが、3.5kmというのが、こういうグラフから出てきたのかと思ったが、そういうことじゃないのか。この当時の調査としては最大の調査なので非常に重要な医学的な観察記録だったと思うが、脱毛というのはなかなか難しく4km、5kmのところでも脱毛する人は数パーセントは出る。それから、被爆地拡大の住民の調査にも脱毛があるというふうに答えている人が数パーセントある。それが本当に放射線の影響かどうかというのがいつも議論になるが、明解な判定基準というのがなかなかない。そういうものがこの合同調査団の記録から出ないかと思って分析していただいているが、グラフで見る限りは、これを全部放射線の影響だというふうに言えるかどうかというのは、なかなか難しい。それから時間的に経過があって1週間目に既に脱毛が起こっている人がマンハッタン調査団(※10)の調査に有るんじゃないのか。
【C委員】
記憶にないんですけど、1週間目で起きていたかどうか、被爆後何週間から脱毛が、ちょっと遅れて脱毛は2~3週目後だったと思う。
記憶にないんですけど、1週間目で起きていたかどうか、被爆後何週間から脱毛が、ちょっと遅れて脱毛は2~3週目後だったと思う。
【会長】
それが1週目ぐらいからの脱毛があったということで。脱毛のメカニズムに関して、新しい研究がないかをもう1回みてみる必要があるようだ。例えば熱線とか。髪の毛がある意味で焼ける、毛根の細胞が熱線で焼けるという、死ぬということを利用して、医学研究があるようだ。そういうものを含めて今後、脱毛をどこまで信頼できるかということを、我々の研究会でももうちょっと追求していかなければいけないかなと思っている。
それが1週目ぐらいからの脱毛があったということで。脱毛のメカニズムに関して、新しい研究がないかをもう1回みてみる必要があるようだ。例えば熱線とか。髪の毛がある意味で焼ける、毛根の細胞が熱線で焼けるという、死ぬということを利用して、医学研究があるようだ。そういうものを含めて今後、脱毛をどこまで信頼できるかということを、我々の研究会でももうちょっと追求していかなければいけないかなと思っている。
C委員はこれとマンハッタン調査団のデータとは比べていないか。
【C委員】
随分前に比べたのでちょっと記憶が薄れていますけど、マンハッタンがもうちょっと高く出ていたかもしれない。
随分前に比べたのでちょっと記憶が薄れていますけど、マンハッタンがもうちょっと高く出ていたかもしれない。
【会長】
それと根本的な疑問ですけど、マンハッタン調査団で調査された対象の被爆者は、この合同調査でも同じ被爆者をやっていいので、重なっているんじゃないかなと。
それと根本的な疑問ですけど、マンハッタン調査団で調査された対象の被爆者は、この合同調査でも同じ被爆者をやっていいので、重なっているんじゃないかなと。
【C委員】
私が思うには、マンハッタンの調査はだいたい入院患者に絞ってあった。大村海軍病院とか。これは一般のその日にいた人を調べてたと思うので、重なりがあるかもしれないが、ほとんど重なっていないと想像している。ちょっと調べてみないと正確なことは分からない。
私が思うには、マンハッタンの調査はだいたい入院患者に絞ってあった。大村海軍病院とか。これは一般のその日にいた人を調べてたと思うので、重なりがあるかもしれないが、ほとんど重なっていないと想像している。ちょっと調べてみないと正確なことは分からない。
3 広島および長崎の原爆における残留放射能強度測定報告書(米海軍報告書)
【会長】
次は、既に前回の静間先生の発表の中に、測定値そのものは含まれていた、米国海軍の調査である。原爆が落ちた年の10月頃に長崎で、そしてその後広島で調査された報告書が出ており、中身のデータは静間先生が利用しておられる。新しいことではないが、私がこの前ニューヨークに出張した時、アメリカの国立健康医学博物館というのが新しく設立され、従来からの広島長崎原爆の被爆者に対する医学調査のすべての調査の基本データがそこに保管されている。元々は米国陸軍病理研究所というのがそこにあり、そこに保管していたのが、今その組織がなくなり、そちらに移行していて、インターネットでアクセスすると、この博物館の長崎、広島の関係のデータのリストが全部見られる。そのリストを見てから、これとこれを見たいということで私がいくつか読み、厳重な資格審査があったが、それをクリアして見てきた。そして彼らが提供してくれたデータの中に、この海軍のデータがあり、それが図の2と3と4である。これが静間先生の報告書の中ではパワーポイントで薄く入っており、よく分からなかったが、ここで初めて明確な図を目にすることができた。そこに各ポイントの測定された線量が記入されていた。Figure2ですけど長崎県と熊本県を含む地図上で主要な地点の測定値が記入されている。この当時、1945年8月9日の原爆当日の11時から16時の風の方向が矢印で示してあると思う。Figure2で見ると長崎市内が72μr/hrとか数字があり、少し東の方に1080、さらに東に80、島原半島にいって15ないし20という数字が記入してあり、あと、熊本の方まで見ると熊本のところに放射線、放射能が日本側によって記録されている記述があるが、数字が書いていないので分からない。熊本あたりまで本当にいっていたのかは分からない。
次は、既に前回の静間先生の発表の中に、測定値そのものは含まれていた、米国海軍の調査である。原爆が落ちた年の10月頃に長崎で、そしてその後広島で調査された報告書が出ており、中身のデータは静間先生が利用しておられる。新しいことではないが、私がこの前ニューヨークに出張した時、アメリカの国立健康医学博物館というのが新しく設立され、従来からの広島長崎原爆の被爆者に対する医学調査のすべての調査の基本データがそこに保管されている。元々は米国陸軍病理研究所というのがそこにあり、そこに保管していたのが、今その組織がなくなり、そちらに移行していて、インターネットでアクセスすると、この博物館の長崎、広島の関係のデータのリストが全部見られる。そのリストを見てから、これとこれを見たいということで私がいくつか読み、厳重な資格審査があったが、それをクリアして見てきた。そして彼らが提供してくれたデータの中に、この海軍のデータがあり、それが図の2と3と4である。これが静間先生の報告書の中ではパワーポイントで薄く入っており、よく分からなかったが、ここで初めて明確な図を目にすることができた。そこに各ポイントの測定された線量が記入されていた。Figure2ですけど長崎県と熊本県を含む地図上で主要な地点の測定値が記入されている。この当時、1945年8月9日の原爆当日の11時から16時の風の方向が矢印で示してあると思う。Figure2で見ると長崎市内が72μr/hrとか数字があり、少し東の方に1080、さらに東に80、島原半島にいって15ないし20という数字が記入してあり、あと、熊本の方まで見ると熊本のところに放射線、放射能が日本側によって記録されている記述があるが、数字が書いていないので分からない。熊本あたりまで本当にいっていたのかは分からない。
それから、次のFigure3だが、これは拡大になるがさらに拡大したのが次の23ページのFigure3だが長崎市内の浦上の中心のところ、それから西山水源池周辺。それからさらに東の方を測定したデータが、等高線といい、線量が大体同じレベルにあるところを色分けしているが、西山のところが一番高い。555μr/hr。その外側が130μr/hr。一番外側が19μr/hr。市内はどうかとしてみると、更に拡大されているが、爆心で69μr/hr、57とか、45とか。それから右の端のところに大学病院がかかれているが650m位で11μr/hrとか、こうした数字は意外と低い。そういうところがあり残留放射能が10月の時点であって、測定できているのは間違いないと思う。10月15日から27日の間に測定されているが、こういう図を明瞭に見たのは私も初めてだったので、みなさんにお示ししたいと思う。静間先生が既に触れておられるので私の方から追加することはないが、爆心から東側に風が向かって吹いていてプルトニウムのデータもそうであるが、10月15日以降の実測値でも放射能汚染があったと。A委員、これはセシウムを中心としたものでしょうか。
【A委員】
そうである。
そうである。
【会長】
プルトニウムから出て来ない。
プルトニウムから出て来ない。
【A委員】
出ない。
出ない。
【会長】
プルトニウムも降ってるのだろうが、それと同時に分裂物質として核分裂物質として、セシウム以外の数多の放射性核分裂生成物質が散ってて、そこからγ線が出てるのを測定している、というふうに言っていいか。そういうことで、一応ビジュアルにきれいに出ているということで紹介した。東側がかなり汚染があったということは、もう非常に動かない事実ということだと思うが。
プルトニウムも降ってるのだろうが、それと同時に分裂物質として核分裂物質として、セシウム以外の数多の放射性核分裂生成物質が散ってて、そこからγ線が出てるのを測定している、というふうに言っていいか。そういうことで、一応ビジュアルにきれいに出ているということで紹介した。東側がかなり汚染があったということは、もう非常に動かない事実ということだと思うが。
【事務局】
一つ目は「米国戦略爆撃調査団(※11)と日本映画社の長崎原爆記録映画(2011年9月)」。大矢先生は、長崎原爆被害記録フィルムのデジタル化と被爆の実相を「社会的記憶」にするための研究に取り組まれているが、この論文は、その原爆記録映画の一端である、日本及び米軍それぞれの長崎原爆記録映画や米国戦略爆撃調査団が撮影した映画などの概要を示し、結びにはこの研究に関しての今後の取り組むべき課題について述べられたものになっている。
一つ目は「米国戦略爆撃調査団(※11)と日本映画社の長崎原爆記録映画(2011年9月)」。大矢先生は、長崎原爆被害記録フィルムのデジタル化と被爆の実相を「社会的記憶」にするための研究に取り組まれているが、この論文は、その原爆記録映画の一端である、日本及び米軍それぞれの長崎原爆記録映画や米国戦略爆撃調査団が撮影した映画などの概要を示し、結びにはこの研究に関しての今後の取り組むべき課題について述べられたものになっている。
二つ目は「相原秀二資料に見る長崎原爆の残留放射線」。(2012年11月)分。これは、日本映画社の記録映画『広島・長崎における原子爆弾の影響』の制作に参加した相原秀二氏の資料が長崎原爆資料館に寄贈され、長崎原爆資料館で相原秀二企画展が開催されているが、それを機会に大矢先生が相原資料の調査研究を行われたものである。なお、この資料は、長崎原爆被害の写真、長崎医大・三菱長崎製鋼所・城山国民学校などの被害記録、被爆者の証言などである。この論文では、その中でも長崎原爆による残留放射線量の測定に関する資料を取り上げ、長崎原爆の残留放射線の研究を示し、また今後の課題を述べたられたものになっている。
最後に3つ目は、「坂田民雄資料に見る長崎原爆の残留放射線」(2015年3月)。この論文は、理化学研究所仁科研(※12)の坂田民雄氏の資料によるものが中心で、内容は、理化学研究所仁科研グループが1945年12月末から翌年1月中旬まで測定した長崎原爆の残留放射線の測定経過について述べ、この理化学研究所仁科研グループの測定結果と、九州帝国大学の篠原健一氏らのグループによる調査と、米国マンハッタン管区調査団等の測定結果を比較したものになっている。また、2002年から2008年までの長崎原爆の放射性降下物についての論文を紹介した内容である。
【会長】
これをすぐ議論することは今日は出来ないが、前もって少し読んでいただいているA委員にコメントをいただきたいと思う。
これをすぐ議論することは今日は出来ないが、前もって少し読んでいただいているA委員にコメントをいただきたいと思う。
【A委員】
これは先ほどあったように、1945年12月から翌年の1月の間の理研のネーヤ型(※13)という当時の環境放射能測定に一番適しているといわれていた測定器を使った結果に関してで、これは既に報告書が出ており、前回の静間先生のレビューの中にも紹介いただいていたけれども、今回、大矢先生が紹介されているのは、その元となった生データである。オリジナルデータにアクセスすることができたということで、それをご照会されているということで、内容的には坂田先生が理研のグループに入っておられ、資料でいきますと「坂田民雄資料に見る長崎原爆の残留放射線」の例えば一つ典型的なところ、103ページ。これは西山地区のネーヤ型で測定した結果を示している。理研仁科研グループの測定日、1945年12月15日で0.038から1.085mR/hである。これは大矢先生がこのmR/hに換算されている。生データはジュールとなってでてくるが、この線量率に換算されている。同じような方法を使って篠原健一ら、マンハッタン調査団、と先ほどの米国海軍の4つの測定時期と線量率の結果を全て並べてここに一覧に書いている。これ見た限りでは、大体同じような線量が出ているが、このあと例えば矢上であったり島原。それから今度は積算線量。こういったところへの話がこの後続いている典型的な比較のデータである。
これは先ほどあったように、1945年12月から翌年の1月の間の理研のネーヤ型(※13)という当時の環境放射能測定に一番適しているといわれていた測定器を使った結果に関してで、これは既に報告書が出ており、前回の静間先生のレビューの中にも紹介いただいていたけれども、今回、大矢先生が紹介されているのは、その元となった生データである。オリジナルデータにアクセスすることができたということで、それをご照会されているということで、内容的には坂田先生が理研のグループに入っておられ、資料でいきますと「坂田民雄資料に見る長崎原爆の残留放射線」の例えば一つ典型的なところ、103ページ。これは西山地区のネーヤ型で測定した結果を示している。理研仁科研グループの測定日、1945年12月15日で0.038から1.085mR/hである。これは大矢先生がこのmR/hに換算されている。生データはジュールとなってでてくるが、この線量率に換算されている。同じような方法を使って篠原健一ら、マンハッタン調査団、と先ほどの米国海軍の4つの測定時期と線量率の結果を全て並べてここに一覧に書いている。これ見た限りでは、大体同じような線量が出ているが、このあと例えば矢上であったり島原。それから今度は積算線量。こういったところへの話がこの後続いている典型的な比較のデータである。
【会長】
そうすると大矢先生の研究は積算線量まで出しておられるのか。
そうすると大矢先生の研究は積算線量まで出しておられるのか。
【A委員】
そうである。
そうである。
【会長】
積算線量の先生が前に推計されたのとか、静間先生が推計されたのとか比較するのは可能か。
積算線量の先生が前に推計されたのとか、静間先生が推計されたのとか比較するのは可能か。
【A委員】
可能である。
可能である。
【会長】
理研のデータというのは、既にある程度分かっていたので細かい所での微動があるかもしれないが、理研データと同じものじゃないのか。
理研のデータというのは、既にある程度分かっていたので細かい所での微動があるかもしれないが、理研データと同じものじゃないのか。
【A委員】
同じ。
同じ。
【会長】
ほぼ一緒。
ほぼ一緒。
【A委員】
ですから最近生データとして出てくるジュールをR/hに換算するところ、そしてそれを生涯線量に換算するところのロジックが微妙に違ってくる。
ですから最近生データとして出てくるジュールをR/hに換算するところ、そしてそれを生涯線量に換算するところのロジックが微妙に違ってくる。
【会長】
大幅に高い線量が出てきたということではないのか。
大幅に高い線量が出てきたということではないのか。
【A委員】
そういうことではない。
そういうことではない。
【会長】
では、これはもう少し委員の先生方にも読んでいただき、大体、プルトニウムの実測値、それから放射線の実際のこういう測定値というのが出揃って、ほぼこれ以上は出てこないのではないか。
では、これはもう少し委員の先生方にも読んでいただき、大体、プルトニウムの実測値、それから放射線の実際のこういう測定値というのが出揃って、ほぼこれ以上は出てこないのではないか。
米国の国立の博物館のリストを見たときに一番私が興味あるというか、注意しないといけないと思ったのが、今まで述べてきた各調査以外の調査がないか、ということで、そこを非常に熱心にみたが、ない。やっと海軍の報告書の中にそういう明瞭な写真があったというくらいで、残念ながら他に特に長崎の被曝線量を比べた国際グループ、例えば全然違うイギリスのグループとかもない。そういう意味で、もう出尽くしたということで、これは来年の3月くらいに予定されている次回の研究会くらいまでには、まとめて、最終的には我々としての判断をしないといけない。
ただそれで人体影響が有るか、無いかということに関しては、被爆地拡大の人の約1万人の方々の健康調査で証明することは不可能だと一応我々はみているので、先程から何度も述べている、海外の非常に大型の30万人とか、小児のCTだと恐らく100万人のデータが出てくるので、それによって低線量被曝が100msv以下でも、ある程度白血病とか病気を引き起こすというデータにほんとになっていくかどうか。これは人類の放射線被曝の課題でもある。それを被爆地拡大の住民の方々の健康障害の可能性を推定するデータになるんではないかなということで注目している。それは、まだ3月までは出ないかもしれないが、継続の課題にしていきたいと思う。
低線量被曝では、あと環境放射線があるので、それはできればC委員に是非調査をしていただいて。鹿児島大学に秋葉先生と言われる公衆衛生学の教授がおられるが、その先生が日本では環境放射線の第一人者であるが、ここにきていただいて最新知見を話していただくというのもあっていいと思う。ざっと総説的な論文を見ると多くの研究が、低線量被曝地域はあまり影響が無いとなっていると、一部有ると、出ているという書き方になっているので、そこの評価をしっかりして。低線量の地帯の生涯線量というのは結構なるのであろう。
【B委員】
年間で17とか15とかであったか。
年間で17とか15とかであったか。
【A委員】
年間ではもっと高い。100越えた場合もある。空間線量で。
年間ではもっと高い。100越えた場合もある。空間線量で。
【会長】
ということは、生涯線量は何千ミリにもなるのか。
ということは、生涯線量は何千ミリにもなるのか。
【A委員】
はい。
はい。
【会長】
その集団からは癌が多いというデータは出てきていない。
その集団からは癌が多いというデータは出てきていない。
【A委員】
ケララでは出ていないですね。染色体異常は増えるんですけど。癌にはなっていない。
ケララでは出ていないですね。染色体異常は増えるんですけど。癌にはなっていない。
【会長】
染色体異常は増えるけれども癌にはならないのは何か意味があるのか。
染色体異常は増えるけれども癌にはならないのは何か意味があるのか。
【A委員】
説明は難しい。
説明は難しい。
【会長】
人間の方が順応するのか。
人間の方が順応するのか。
【A委員】
不安定型染色体異常(※14)しか見ていないので、はたしてそれが良い指標かどうかはまだ分からない。
不安定型染色体異常(※14)しか見ていないので、はたしてそれが良い指標かどうかはまだ分からない。
【会長】
このあたりの問題を、秋葉先生という方に、是非1回まとめてもらいたい。今日、用意しました検討課題はこれで終了だが、先ほどのような方針でやらさせていただく。
このあたりの問題を、秋葉先生という方に、是非1回まとめてもらいたい。今日、用意しました検討課題はこれで終了だが、先ほどのような方針でやらさせていただく。
〈用語解説〉
※1 AREVA
フランスに本社を置く世界最大の原子力産業複合企業
フランスに本社を置く世界最大の原子力産業複合企業
※2 Poisson regression法
一般に、ある現象が一定時間内に起こった回数を数え上げたデータのことをカウントデータといい、カウントデータの発生頻度と、それに影響する要因との関係を分析する手法のことをカウントデータ分析といい、その代表的なものがポアソン回帰分析(Poisson regression analysis)である。
一般に、ある現象が一定時間内に起こった回数を数え上げたデータのことをカウントデータといい、カウントデータの発生頻度と、それに影響する要因との関係を分析する手法のことをカウントデータ分析といい、その代表的なものがポアソン回帰分析(Poisson regression analysis)である。
※3 過剰相対リスク(ERR)
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
※4 British Medical Journal
イギリス医師会雑誌
イギリス医師会雑誌
※5 ICRP
国際放射線防護委員会
国際放射線防護委員会
※6 CLL
慢性リンパ球性白血病
慢性リンパ球性白血病
※7 THE LANCET Haematology
イギリスの医学誌 血液学の有力紙
イギリスの医学誌 血液学の有力紙
※8 LNT(仮説)
放射線の被ばく線量と影響の間には、しきい値がなく直線的な関係が成り立つという考え方を「しきい値無し直線仮説」という。
放射線の被ばく線量と影響の間には、しきい値がなく直線的な関係が成り立つという考え方を「しきい値無し直線仮説」という。
※9 日米合同調査団
原子爆弾の人体への影響を調査する目的で、1945年9月に組織された合同調査団。
原子爆弾の人体への影響を調査する目的で、1945年9月に組織された合同調査団。
合同調査団は、連合国軍最高司令官総司令部軍医団・マンハッタン管区調査団・日本側研究班の3者で構成され、日本側は九州帝国大学・長崎医科大学・大村海軍病院が協力した。
※10 マンハッタン調査団(マンハッタン管区原子爆弾調査団)
原爆から出た放射能及び残留放射能を測定することと、それらの人体への影響を短期間に明らかにする事を目的とし、昭和20年9月20日から10月6日までに長崎に派遣された調査団
原爆から出た放射能及び残留放射能を測定することと、それらの人体への影響を短期間に明らかにする事を目的とし、昭和20年9月20日から10月6日までに長崎に派遣された調査団
※11 米国戦略爆撃調査団
アメリカ軍による戦略爆撃(空爆、艦砲射撃)の効果を検証するための陸海軍合同機関。
アメリカ軍による戦略爆撃(空爆、艦砲射撃)の効果を検証するための陸海軍合同機関。
※12 理化学研究所 仁科研
1917年(大正6年)に創設された物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行う国内唯一の自然科学系総合研究所。その中で1931年7月に、当時国内では例のなかった量子論、原子核、X線などの研究を行なうために仁科芳雄氏が立ち上げた
1917年(大正6年)に創設された物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行う国内唯一の自然科学系総合研究所。その中で1931年7月に、当時国内では例のなかった量子論、原子核、X線などの研究を行なうために仁科芳雄氏が立ち上げた
※13 ネーヤ型
ネーヤ型宇宙線計式測電器。放射能を測定する計器
ネーヤ型宇宙線計式測電器。放射能を測定する計器
※14 不安定型染色体異常
染色体異常は1個の染色体が変化する異常と2個の染色体の間で起こる異常がある。また、安定型染色体異常と不安定型染色体異常があり、不安定型染色体異常は細胞分裂できず細胞死してしまうために時間とともに減少するという特徴がある。
染色体異常は1個の染色体が変化する異常と2個の染色体の間で起こる異常がある。また、安定型染色体異常と不安定型染色体異常があり、不安定型染色体異常は細胞分裂できず細胞死してしまうために時間とともに減少するという特徴がある。
第6回(平成27年度第2回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
更新日:2016年11月10日 ページID:029043
長崎市の附属機関について(会議録のページ)
担当所属名
原爆被爆対策部調査課
会議名
第6回(平成27年度第2回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会
日時
平成28年3月30日(水曜日) 14時00分~16時00分
場所
長崎原爆資料館 平和学習室
議題
1 低線量放射線の健康リスクについて
(高自然放射線地域の調査結果など)
2 第5回までの被爆線量調査結果についてのまとめ
3 低線量被ばくに関する人体影響の研究論文の調査結果について
(高自然放射線地域の調査結果など)
2 第5回までの被爆線量調査結果についてのまとめ
3 低線量被ばくに関する人体影響の研究論文の調査結果について
審議内容
1 低線量放射線の健康リスクについて(高自然放射線地域の調査結果など)
【A参考人】
最初のスライドで日本の各地の自然放射線のレベルをお示ししたいと思うが、多くの人がもういまやμGy/h(マイクログレイパーアワー)というのがどれくらいの線量かというのがわかってきている、ただ地域によって意外と大きな差があるということである。これががんのリスクと関係してるかどうかというのは、はっきりとわかっていない。それは自然放射線に伴うかもしれない、がん、或いは、他の健康な人と比べて生活要因による影響の方が大きいとか、そこの検証が難しいということがある。
最初のスライドで日本の各地の自然放射線のレベルをお示ししたいと思うが、多くの人がもういまやμGy/h(マイクログレイパーアワー)というのがどれくらいの線量かというのがわかってきている、ただ地域によって意外と大きな差があるということである。これががんのリスクと関係してるかどうかというのは、はっきりとわかっていない。それは自然放射線に伴うかもしれない、がん、或いは、他の健康な人と比べて生活要因による影響の方が大きいとか、そこの検証が難しいということがある。
世界的にみるとだいたいこの3つが現在調べている高自然放射線地域である。一番上にタレシュマハレというところであるが、イランのラムサール地域にある、カスピ海の南岸であり、ここはラジウム226(※1)が非常に多い、その結果ラドン(※2)も沢山出てくるわけで、非常に放射線のレベルは高い。ただ、人口があまりたくさん住んでいないので、例えばがんの調査については、不向きであるということがある。それから中国の広東省のヤンジャンという地域がある。私達が最初行ったときは、非常にへき地で道路を走っていると道路の上に稲わらを敷いて、そこを車が走ってくれると脱穀できるなんていう、のどかな風景がある地域で、今は、中国の経済のメインエンジンであり、非常に経済的に発展している。そのヤンジャン地域というところに、やはり、自然放射線が高い所がある。世界の自然放射線のレベルというのはラドンガスを含めて、だいたい2.4mGy/yearというふうにいわれているが、この地域はラドンを除いて、3mGy/yearある。もう1つは、インドの大陸南端の西の方にあるカルナガパリ地域で、ここでの疫学調査の話を今日は主にさせていただきたいと思っている。
このインドのカルナガパリであるが、大陸南端、西海岸にケララ州という人口が3000万人くらいの地域があり、このケララ州の南端にトリバンドラムという州の都があって、そこから車で北にだいたい2時間くらい上がるとこの地域がある。この地域というのが実は、キリストの12使徒のひとりであるセントトーマスがここに来て、布教したというふうに言い伝えられており、インドはもちろんヒンズー教の国だが、イスラム教徒も多いが、この地域は古くからキリスト教徒もかなりいる。インドのキリスト教徒は主に、アウトカースト(※3)の方達が多いが、この地域はそういうことではなくて、キリスト教徒はかなり経済的にも教育の制度も高いという州で、だいたい10%はキリスト教徒で、20%がイスラム教徒で残りがヒンズー教徒である。
放射線の高い地域というのは、実は海岸線でして、恐らくは、一旦、海に溜り込んだモナザイト(※4)が例えばチタン(※5)なんかと共沈して、共沈の仮定で濃縮されて、それがこちらに打ち上がってくる、となっている。カルナガパリ地域の一部、特に海岸線で放射線の高い地域がある。これがどんな家に住んでいるかであるが、海岸線に比較的、経済的に恵まれない方たちが、こういう何というか掘っ建て小屋でないが建物に住んでいて、床はないので、直接この放射能を含んだ砂の上に寝ているような感じになる。また、これは海岸線であるので漁師さんが結構多くて、この地域はかなりお魚を食べる地域であるが、道を歩いていてもかなり小魚を売っている。この漁師さんが、この黒っぽいのがお分かりなるかと思うが、黒っぽいのは、先程言いましたチタンが黒いので、それといっしょにこの放射能を含むモナザイトが共沈する、それがここに打ち上がって黒い砂となっているわけだが、その上に直接座って網を繕いでいたりするので、結構この人達も、放射線への被ばく量というのはかなりあるということになる。中産階級の人達は、ちゃんとした床がある家に住んでおられるが、やっぱり地面の方から放射線がくるということになる。モナザイト、先程からお話があるがこのようなサンプルで、この中にトリウム(※6)が入っていて、これは核燃料としては使いづらい物ではあるが、放射能を含むということになる。この地域で特に放射能線が高いのは、チャバラという地域、或いはリンダ川という地域で、ここは漁港であるが、年間に5mSV、平均ではこうなるが、10mSVを超える地域もかなりある。1年間の被ばくが10mSvという地域もかなりある。むしろ、ここの地域の問題は、比較的低い地域でも1mSv/yearで、本当のコントロールではないというところが実は問題である。この地域にはだいたい40万人の人が住んでおられて、その地域の12の小さな行政区域パンチャヤットと呼ばれているが、分かれている。
この地域の調査結果を2009年にナイア先生が発表されており、私も共著者の一人であるが、その調査では、この地域にある12のパンチャヤットのうち6つのパンチャヤット、比較的放射線の高い地域と低い地域が入っているが、インド側が選んだ6つの地域で調査をしている。あまりにも膨大な集団ではなくて、この2009年の時点では、まだ全ての調査結果をデータベース化、或いは、その内容を構築するということが十分に間に合ったということである。ですから40万人の中のだいたい半分の人達を調査対象にした。それを、あまりお子さんというのはがんにならないので、がんになる年齢というのを考えてこういうふうな年齢とした。あまりお年寄りになるとまた、もちろんがんで死ぬ方は多いが診断があまり正確ではないということで除いている。その他いろいろ実はよく調べたら調査を始める前にもうがんになっていた、という人もいるので、そういう人達を除いて69,958人を対象にした結果をナイア先生が発表したということである。
こういう調査で一番問題なのは、地域別に放射線が高い低いというのは当然あるが、その地域とで、がん罹患率を比べるというような調査が実は多いが、それはエコロジカル調査ということで、あまりそこから出てくるデータというのは信用されないことになる。それで、私どもがやった調査は、まずコホート(※7)を作って、集団を決めて、実際は40万人近くの人達をとって1990年から97年まで、全ての家屋を訪れて、屋内、屋外の線量を測った。それから、同時に質問票調査をして、例えばたばこを吸っているかどうか、或いは、どういう教育を受けただとか、年収がどれくらいあるとか、そういう健康影響に関係する可能性がある要因を逐一調べたわけである。これを同時に進めて、それだけでは当然不十分で、今度はこの人達がどれくらいがんで死ぬか、がんに罹患するか、或いは、他の病気で死亡されるかということを調べなければいけないが、インドの場合は特にアンタッチャブルの人がこの地域でもおられるので、この地域のカースト制度(※8)というのは、比較的いろんな経済的に発展してきてゆるくなってきてはいるが、やはりアンタッチャブルというのは非常に深刻な状態で、そういう人達の死亡の診断の精度というのはちょっと信用できないところがある。
そういうこともあって1990年に広島でも長崎でもある、がん登録というシステムを作って、がんになる、がんになったら訪れるというような病院を、患者さんが行くような病院を全て調査対象として少なくとも1年に一遍そこに訪れて、カルテを見せてもらい、がんの患者さんを拾い上げるというシステムを作っている。同時に先程から申し上げている屋内、屋外の線量を測定したが、7万戸全てについて測定したが、屋内にどれくらい住んだ、24時間のうちにどれくらい住んで、屋外でどれくらい過ごしたというパーセント、1年1歳ごとに計算してそれを生涯というか現在まで、がんになっている人は、がんになった方、或いは、健康な人はとにかくその時点まで累積をするということで累積線量を計算している。がん症例の同定は、先程申し上げた通りであるが、この地域のがん症例というのは、当初は先程申し上げたアンタッチャブルの人については若干、不安があったが、最近では、こういうがん登録の場合は、広島、長崎でも死亡診断書だけの情報でがん登録に登録される人達がいるが、それをDCOパーセント(※9)というふうにいいまして、それも10%を最近は切っていて、かなり完全にがん登録、がん症例がこのがん登録に登録されている。病理的な診断がある症例というのも今は75%を超えていたと思う。
こういう世界中のがんがどういうふうに今発生しているか調べるというのは非常に重要なので、フランスのリオンにある国際がん研究機関というところが音頭をとって世界各地のがん登録のデータを集めてそれを本、或いはインターネットで公表している。それは、どこのがんでも登録されるというわけではなくて、やはりある程度、基準を満した、すなわち信用できると考えられたがん登録が掲載、収載されている。これもこの地域のがん登録も収載されているということで、少なくても最低限の基準は満たしたがん登録だということになる。日本は今年ぐらいからがん登録が全国で始まったが、日本の中で都道府県別にがん登録があるが、基準に満たないということであるから、このインドのカルナガパリの地域のがん登録というのは日本のほとんどの都道府県よりも良いということになるわけである。
念のためにどれくらいがんが出てくるかということであるが、みなさんが想像されるような状況では実はない。このインドでは、中国もそうであるが、がんの罹患とういうのは、まだ非常に低い。かつて日本もそうだった。ただこの地域の特徴は、ここに書いていないのは申しわけないが、乳がんはびっくりするくらい多くて、もう30歳くらいになると、乳腺症、乳房にしこりが結構出て、手術するような方もいて、うちに来ている留学生もやはり、まだ30になっていないが手術をした。ということでこれは乳がんリスクと関係するというふうにいわれているが、例えば、この地域は、僕たち、極東アジアの人間とは、そういうがんの罹患率が違うということがある。でも共通なのは、肺がんが多いということである。肺がんはなぜ起きているかというとこの地域は、紙巻たばこというのはあまりない。紙巻たばこというのはちょっと高すぎる。紙の代わりに現地で採れる葉っぱで巻いたたばこを吸っている。当然、フィルターは付いていないので、僕たちには吸えない。逆にいえば非常に強いたばこであり、これについてどれくらい紙巻たばこと比較して肺がんが増えてくるのかというのは、インターナショナルジャーナルキャンサーとか幾つかのジャーナルに書いている。だいたい、同じである。もう一つは、紙たばこを吸う習慣があり、これは女性でもかなり多い習慣であるが、その結果として口腔がんは増える。口腔がんの比較というのは、紙たばこのせいだと思っている。逆に言えば、そういう比較的、世界でも名の通った国際誌にここで調べた喫煙、たばこの習慣とがんの関係が収載されている。それだけちゃんとした検証をしていると国際的には評価されている。少なくともがんについての疫学的な問題についてである。
次に白血病については、まだよく分からない。数も少ない。今の時点では、あるともないとも、少なくともあるというリスクが上がっているという証拠はないとしか申し上げられない。
これが、白血病を除くがんの表である。申し上げているのは、累積線量が500mSV、場合によっては、これは生涯の累積線量であるが1Gyを越えている人も多少いる。男女合わせると、これは2005年までのデータであるが上がっていっている。その相対リスクというのは、ここを基準にして、こちらの方が何倍リスクが高いかというのを示しているが、ほとんど1に近いということで増えていない。女性だけがここでちょっと増えているが、ここも9例しかないので、本当に増えているかどうかは、はっきりいえない。全体のこういう線量のトレンド(※10)というのは、増えてるということは、この結果を調べると、だいたい1Gyあたり過剰相対リスクというのを計算するが、過剰相対リスクというのは、相対リスクから1を引いたものであるが、それがマイナス0.13になる。ただし、私どもは、放射線に被ばくしたら、がんが減るということを主張したいわけではなくて、少なくとも増えていくという証拠はない、ほとんどゼロに近いということを申し上げたいわけであるが、一方で原爆被爆者はどれくらいになっているかというと広島と長崎の放影研の調査結果では非常に大雑把にいってだいたい1Gyあたり5割程度ということになる。この二つを比較すると、実は有意な差がある。だから僕たちの調査は以外と統計学的なパワーがあるということだが、正確に比較する時に、原爆被爆者との5割というふうに言ったが男の方は線量あたりのリスクが低い、女は高い、或るいは、被ばく時年齢が若いとリスクが高い、年齢が年をとってくると到達年齢が高くなるがリスクは低くなる、そういう、いろんなファクター(※11)があり、特にこういう自然放射線というのは、毎年ずっと被ばくしているので、被ばく時年齢どうするのかというような問題も例えばある。ということで、そう簡単には比較できない。だから、原爆被爆のような1回きりの被爆と比べてこちらの方が少なくとも線量あたりのリスクが低いというふうな可能性が高いと思っているが、国際的な評価に耐えれるような厳密な比較になっているか、今の時点ではなっていない。今年、そういう論文を書いて国際誌に書いていこうと思っているところであるが、現時点では、追跡は2013年まで、8年間さらに追跡されて、且つ、コホート全体、約40万人についてのデータの整理が終わっているのでそれを使って原爆被爆者などの急性被爆の計算と特にがん発生リスクを比較したいというふうに考えているところである。
いろいろな疫学調査については、当然批判がある。僕たちの調査というのは、放射線レベルが、いわゆる統計学的なパワーはなくて、実際にはがんが増えているのに軽視できないんじゃないかということになるが、先程お話ししたように、実際に計算してみると差が出てくるわけであるから、そういう比較をできる、統計学的なパワーはあるということになる。喫煙を始めとする、生活習慣の影響がマスクしているんじゃないか。それはどこまでいってもわからないが、原爆被爆者でさえいろいろな生活習慣の影響はあるはずだが、そこは、多分、無視できるでしょうということになって、普通に公表されているように、そこは直接調整はされていない。或いは最近出たINWORKSというフランス、アメリカ、イギリスの放射線作業者の追跡調査結果があるが、あれなどでも、そういう喫煙とかそういうものの調査はやっていない。ちょっと言い忘れているが、私どもの調査では、この結果を計算するときに、もちろん累積線量だけではなくて、社会経済状態、例えば、宗教、それと教育の影響を取り除いている。それと生活習慣としては、喫煙集団で、ビーディーというたばこは、紙巻たばこの紙の代わりにビーディーという現地の木の葉っぱを巻いている。そういう重要ながんのリスク因子の影響を取り除いてこのように解析をしている。そういうことをやっているのは、あまりない。原爆でも直接そういう情報をモデルに取り込んでやっているということはあまりやっていない。放射線作業者でもそういうことをやっているのはほとんどなくて、ウラル地域にかつてマヤックという秘密のソ連の原子炉施設があったが、それの作業者の人達については、そういう情報を取り込んだものがあるが、ほとんどない。僕たちのは、それを取り込んだ計算データである。ということで、非常にクオリティは、そういう意味では高い、とは主張できるとは思う。
もうひとつは内部被ばくがあるのではないかということである。これは、はっきりしたことは言えない。ただし、僕たちが福島で簡易な測定やってみても高くはない。食べ物を実際にもらってきて、その放射能がどのくらいかというのを調べるが、ぜんぜん高くない。ということで、少なくとも食べることによる内部被ばくというのは無視していいのではないかというふうに思っている。
空気中のラドン、ラドンというのは、崩壊してアルファ線(※12)を出すというのはよくご承知の通りであるが、この地域はラドンはほとんどない。ラドンというのは、結局先程のラジウム226が崩壊して222になって、さらにそれがそれぞれの仮定でアルファ線が出てくるが、そういうのがほとんどない。日本では、だいたい、10m㏃/立方メートルもないぐらいであるが、この地域でのラドンは、だいたいそんなものである。だから、日本並み。日本は非常にラドンが低い地域であるが、日本並みに低いということになる。ただし、ガンマ線(※13)というのは、当然のことながら非常に高いレベルに達している。原爆被爆者では、こんなふうになっていて、線量1Gyの50%くらいが、がんリスクであるが、これはインドの結果だが、インドでは、減っているということを主張したいわけでなくて、だいたいフラット。これは、最近、先程申し上げた通り2013年まで追跡期間を延長したというふうに申し上げたが、現在の調査ではほとんどフラットになっている。両方とも直線にあてはめて、その直線の傾きが違わないかどうかとやってみると有意に違うということが言えるけれど、いろいろな仮定がある、ずいぶん違うのではないかということで、国際的な評価に堪え得る環境になっていない。他の固形がんは先程も言った、このようなリスクであるが、他の主ながん、肺がん、乳がんについては、はっきりしたことは言えない。信頼区間が非常に広いということで、全がん以外については何も言える状況ではないということになる。
他の有名地域にいろいろな放射線が自然に高い、或いは、人工的な問題で高くなっている建物、或いは、地域に住んでおられる方は世界中におられるが一つはテチャ川である。先程申しましたウラル山脈の東側に秘密のソ連の核工場があったが、そこで、大量の放射能をテチャ川という川に流した。だいたい1951年、52年くらいにとんでもない量を流している。その流域では、白血病が発生した。固形がんも増えたんではないかといわれており、これは、1.0ということは、100%増えているということになる。原爆は50%増えている。僕たちは、全然増えていない。最近のデータでは、これは60%ぐらいではないかというふうにいわれている。ただ、これはいろんな批判があるでしょうが、ここは放射性の廃棄物を流したという仮定では、当然、硝酸も流している。それが、亜硝酸に変わって胃がんが増えるという可能性はあって、特にこの地域、胃がんは多い。最近、部位別のがんを調べましたら。それをどれくらい考慮できるか、取り除けるのかという問題はある。増えてないとは言えないが、そういう他のファクターの影響を十分取り除いているかなという批判はある。
台湾ではビルの建材にコバルト60(※14)が間違って入り込んでいる、その結果、そこに住んでいる人達が10年近く経って、放射線に被ばくしたという、これは20%くらいである。だから、このように比べると半分くらい。こちらは当然、連続被ばく、低線量率の被ばくであるが、急性に比べると半分くらいのリスクがあると。これもかなり信頼区間は低い。且つ、これもなかなか線量測定というのは難しい。被ばく線量というのは、部屋の中ではかなり減っているので、なかなか難しい。最近、実は台湾の行政が線量について再調査をやっているが、実は私もハーバードに特修生大学院に留学していた時の同級生がこれの責任者であるが、全く結果は出してくれないので、とにかくお互いにとっては非常にセンシスティブ(※15)な結果になっているということしか申し上げられないが、いずれにしてもそういう線量推定の問題がある。
さらに、原子力作業者の作業者の調査結果があって、最近これは、この調査には、いろいろな問題がある。例えば、喫煙の影響があるんではないか、特にアメリカのオークリッジでは喫煙の影響によって肺がんだけはリスクが高いとか、或いは、カナダでは、非常に高いリスクなっている。どうもなにか間違いがあったらしいということであるが、未だに本当の理由はよく分かっていないが、そういうことで、カナダを除いて、この時は日本も入っていたが、日本のデータは、この中に実は入っていない。その理由は日本のデータは、社会経済状況をちゃんと考慮した解析結果になっていないということで、この0.97という推定値に入っていないが、いずれにしても最近、イギリス、アメリカ、フランスのデータを使ってINWORKSという雑誌に結果が出ていて、30%くらいでているという結果ではなかったか、今、正確な数字が分からないが。ただ、ここで申し上げたいのは、INWORKSについては、大半がデータをよくみていたということである。一番低い線量で入っている。そこのリスクがもっと小さい。実は、がらっと線量あたりのリスクが変わっている。こういう作業者の場合は、線量が低い分というのは比較的線量の高い分と社会階層が違う。だからそこは本当に比較ができるかどうかという問題が常に付きまとう。
もうひとは、ここで例えば、僕達は原爆では50%増えている。ただ、これは1Gyの話である。低線量というのは100mGy、場合によっては、10mGyぐらいの話である。特に作業者の場合10mGyぐらいの場合が多い。10mGyと1Gyの差というのは、100倍違うわけであるから、50%の100分の1というのは、0.5パーセント。それは0.5が0.2になるか0.1になるかという議論で、それは悪いけど僕は先程、疫学者というご紹介を受けたが、必ずしも放射線疫学者かなというところがあって、放射線疫学者のみなさんそれは無理でしょう、と私は言いたい。どんな結果お出しになるのも、自分の責任でお出しになるのも、もちろんそれはいいが、実は私どもの結果も含めて、あまりにも小さいところで議論しようと思ったら、それは、ほぼ何もいえないでしょうと。ただ僕達の目的はシュミュレートがある程度出てもほとんど上がってない、ということである。僕たちは低線量の話をしようとしているわけではない。比較的中線量くらいでも線量率が低ければリスクが上がってくる、ということで、平均線量が10mSVぐらいの話をされているので、高くても15ぐらいでしょう。それは、例えば0.5が0.25になるかどうかというのは、実験動物のような全てがコントロールされている世界では可能でしょうけど、でも、私はもうコントロールできないことがいっぱいあるわけである。喫煙を含めて、食習慣を含めて、生活習慣を含めて、そういう世界で、そんなことを比較できないでしょう。実験動物だって勝手になんでもできない。そういうことをやっているのではないでしょうかというのが、私の言いたいことでである。
白血病では、よくわからない。固形がんについては残念ながらこういう検討できるのは、今の時点でインドのカルナガパリしかない。僕が知ることはナムジーでもちゃんとした結果が出てきているかもしれないが、今の状況では、お金を確保できるか、或いは、人体を確保できるか分からない。乳がんについては、ちょっと自信がないところがある。先程言ったようにインドの乳がんは、なにか特殊な状況もあるようなので、それについては、さらに詳しく検討する必要があるのかなという気がしている。以上です。
【会長】
主に、インドのケララ州での先生の長年のお仕事のまとめをお話しいただき、低線量被ばくの疫学的な調査研究の結果の解釈はなかなか難しい部分がたくさんあるということを含めてお話しいただいた。それでは、委員の先生方からそれぞれ、逐次ご質問があろうと思うが、まずは質問をお受けしたいと思う。
主に、インドのケララ州での先生の長年のお仕事のまとめをお話しいただき、低線量被ばくの疫学的な調査研究の結果の解釈はなかなか難しい部分がたくさんあるということを含めてお話しいただいた。それでは、委員の先生方からそれぞれ、逐次ご質問があろうと思うが、まずは質問をお受けしたいと思う。
【A委員】
先生のデータは本当に低線量率の人のリスクを考える上では非常に重要なデータだと常々思っている。先生、非常に細かいことをおひとつ教えて頂きたいが、最後に先生が申された乳がんのリスクに関しては、はっきりしないというお話ですが、それはどういうことが原因でそういうご見解か。というのが、乳がんの線量率効果に関しては、動物実験でも結構データが線量率効果が有るというのと、無いというのがございまして、そういうことからも非常に人のデータで線量率効果に関する情報を教えていただきたいと思う。
先生のデータは本当に低線量率の人のリスクを考える上では非常に重要なデータだと常々思っている。先生、非常に細かいことをおひとつ教えて頂きたいが、最後に先生が申された乳がんのリスクに関しては、はっきりしないというお話ですが、それはどういうことが原因でそういうご見解か。というのが、乳がんの線量率効果に関しては、動物実験でも結構データが線量率効果が有るというのと、無いというのがございまして、そういうことからも非常に人のデータで線量率効果に関する情報を教えていただきたいと思う。
【A参考人】
乳がんリスクを示したのが11ページの上のスライドに出ているが、これ見ていただけるとお分かりのように、マイナス6と異様に高い。追跡調査を8年間延長したらこれは当然0(ゼロ)にかなり近づいてくると思っていたが、本当に意外というか、現時点での推定値はよく覚えていないが、あまり期待していた程、0(ゼロ)には近づかない。それで、なんなんだろうと正直なところよく分からない。ここでは、実は潜伏期というのを10年間でカットしているが、このあたりの仮定を変えると変わるかなということでやってみたが、それでも結果はほとんど変わらないし、場合によっては、やはり乳がんの場合は、特定のウインドウを使うことも考えた解析が必要なのかなという気がしており、そういうことで、いろいろな先生の知識をお借りして、もうちょっと別の切り口でやってみる必要があるなということで、ある意味で、現地点では慎重な対応になっているということである。
【B委員】
今のケララ州のコホートで他のインデックスで、細胞染体的に何か変化というのがあったのかどうか、どうなんでしょうか。
今のケララ州のコホートで他のインデックスで、細胞染体的に何か変化というのがあったのかどうか、どうなんでしょうか。
【A参考人】
インドでは、有名な放影研の早川先生達がおこなった結果がある。不安定型染色体異常(※16)が浴びさせると共に増えていくということが確認されているわけである。インドの場合は、私どものグループの調査をしているが、正直なところを申し上げると、不安定型についてはバックグランドの不安定型の染色体の異常の頻度が高すぎて、なぜ高いのかは分からない。多分、やり方が悪い。ということで、ちょっと国際誌には通らないと思っている。もうひとつはインドのムンバイにあるグループがやった結果がある。安定型染色体は彼らの結果だと増えていない。不安定型は、これも有意に出てたんではないかと思うが、ちょっと正確な数字を覚えていない。あとは、染色体異常を調べたという論文がふたつ、ふたつとも、そういう異常はあるというふうにいわれて、放射線が傷をDNAにつけているということは、彼らの主張によると、実際そうなんだろうと思ったが、あるということになる。
インドでは、有名な放影研の早川先生達がおこなった結果がある。不安定型染色体異常(※16)が浴びさせると共に増えていくということが確認されているわけである。インドの場合は、私どものグループの調査をしているが、正直なところを申し上げると、不安定型についてはバックグランドの不安定型の染色体の異常の頻度が高すぎて、なぜ高いのかは分からない。多分、やり方が悪い。ということで、ちょっと国際誌には通らないと思っている。もうひとつはインドのムンバイにあるグループがやった結果がある。安定型染色体は彼らの結果だと増えていない。不安定型は、これも有意に出てたんではないかと思うが、ちょっと正確な数字を覚えていない。あとは、染色体異常を調べたという論文がふたつ、ふたつとも、そういう異常はあるというふうにいわれて、放射線が傷をDNAにつけているということは、彼らの主張によると、実際そうなんだろうと思ったが、あるということになる。
【C委員】
染色体の異常のことが気になったが、基本的に数mSVから10~20mSVの方なんでしょうけども、10ページのところにある多い方で0.6Gyぐらいの高線量の方もおられるが、幅が大きいのは、非常に数が少ないということか。
染色体の異常のことが気になったが、基本的に数mSVから10~20mSVの方なんでしょうけども、10ページのところにある多い方で0.6Gyぐらいの高線量の方もおられるが、幅が大きいのは、非常に数が少ないということか。
【A参考人】
人数は覚えていないが、数万人いるが、例えば8ページを見ていただくと、がんでは22例であるのでかなりこの集団は少ない。
人数は覚えていないが、数万人いるが、例えば8ページを見ていただくと、がんでは22例であるのでかなりこの集団は少ない。
【会長】
対照群の平均線量はいくらくらいか。
対照群の平均線量はいくらくらいか。
【A参考人】
対照群はいない。0から49がここの解析では1にする。ただし、線量あたりの実数推定の場合は、ここを1にしているわけではなくて、0Gyが対照だが、こういうふうに線量群を分けてお見せした方が分かり易いということで、この8ページの上の表を作っている。この表に関しては、0から49を対照群としているということである。
対照群はいない。0から49がここの解析では1にする。ただし、線量あたりの実数推定の場合は、ここを1にしているわけではなくて、0Gyが対照だが、こういうふうに線量群を分けてお見せした方が分かり易いということで、この8ページの上の表を作っている。この表に関しては、0から49を対照群としているということである。
【会長】
そこは、さらに例えば10mSV以下と10から49ぐらいのふたつにすると、それは意味がないのか。
そこは、さらに例えば10mSV以下と10から49ぐらいのふたつにすると、それは意味がないのか。
【A参考人】
逆に低い所がほとんどいない。
逆に低い所がほとんどいない。
【会長】
比較的、高い人達か。
比較的、高い人達か。
【A参考人】
そうである。
そうである。
【会長】
日本と比べれたら、明らかに高い人。
日本と比べれたら、明らかに高い人。
【A参考人】
明らかに高い。ですから冒頭申し上げた通り、本当の意味でのコントロール群というのはいない。
明らかに高い。ですから冒頭申し上げた通り、本当の意味でのコントロール群というのはいない。
【会長】
どこかインドの別の州でバックグラウンドが似たような、比較的似たような、しかし放射線は高くないという所のがんデータというのは。
どこかインドの別の州でバックグラウンドが似たような、比較的似たような、しかし放射線は高くないという所のがんデータというのは。
【A参考人】
インド全国、全ての州ではないが、いろんな州でがん登録がある。この地域でがん罹患が他の州に比べて特に目立って高いということはない。むしろちょっと低いかなと。
インド全国、全ての州ではないが、いろんな州でがん登録がある。この地域でがん罹患が他の州に比べて特に目立って高いということはない。むしろちょっと低いかなと。
【会長】
インド国内での地域差というのはあまりないということか。
インド国内での地域差というのはあまりないということか。
【A参考人】
それはあるが、この地域が高いということではない。
それはあるが、この地域が高いということではない。
【会長】
他の地域が高いというのが一方では、あるということか。
他の地域が高いというのが一方では、あるということか。
【A参考人】
肺がんが多い地域がある。一番比較し易いのは、白血病だが先程申し上げたトリバンドラムという地域があって、その地域と比較したデータが、僕のデータですけど差はない。
肺がんが多い地域がある。一番比較し易いのは、白血病だが先程申し上げたトリバンドラムという地域があって、その地域と比較したデータが、僕のデータですけど差はない。
【会長】
肺がんは、紙巻たばこじゃなくて、紙たばこか。
肺がんは、紙巻たばこじゃなくて、紙たばこか。
【A参考人】
肺がんは、ビーディー。
肺がんは、ビーディー。
【会長】
肺がんは多いのか。
肺がんは多いのか。
【A参考人】
他の地域もかなりポイントがあり地域的にみるとここの地域が特に高いというわけではない。ただこの地域は、紙巻ではなくてビーディーという葉っぱ巻たばこ。
他の地域もかなりポイントがあり地域的にみるとここの地域が特に高いというわけではない。ただこの地域は、紙巻ではなくてビーディーという葉っぱ巻たばこ。
【会長】
直接、葉っぱを巻くのか。
直接、葉っぱを巻くのか。
【A参考人】
その中にたばこの葉っぱが入っている。
その中にたばこの葉っぱが入っている。
【会長】
台湾のデータは、ビルの鉄筋にコバルト60が紛れ込んだという陽明大学のデータか。
台湾のデータは、ビルの鉄筋にコバルト60が紛れ込んだという陽明大学のデータか。
【A参考人】
台湾のデータはそうである。
台湾のデータはそうである。
【会長】
これは、90%あたりの信頼区間がマイナス。
これは、90%あたりの信頼区間がマイナス。
【A参考人】
だから、有意ではない。一部のがんは有意になっている。乳がんは有意になっているという記憶がある。
だから、有意ではない。一部のがんは有意になっている。乳がんは有意になっているという記憶がある。
2 第5回研究会までの被爆線量調査結果についてのまとめ
【B委員】
第3回の本研究会で、最初に被爆線量の検討が行われた「岡島報告書」の検証をだしている。そして第4回の広島大学の静間先生による総括的なレビューをいただいている。そして前回、事務局の方から研究会の資料として大矢先生の報告書が提出されて、これは今回報告する。それから米国海軍医学研究所の調査報告書に含まれていた詳細は会長のほうからご紹介いただいた。これも今回いれさせていただいている。
第3回の本研究会で、最初に被爆線量の検討が行われた「岡島報告書」の検証をだしている。そして第4回の広島大学の静間先生による総括的なレビューをいただいている。そして前回、事務局の方から研究会の資料として大矢先生の報告書が提出されて、これは今回報告する。それから米国海軍医学研究所の調査報告書に含まれていた詳細は会長のほうからご紹介いただいた。これも今回いれさせていただいている。
このような流れでまずは最初に、被爆線量についての方法をまとめている。まず今回のメインになるのが、初期の線量率から推計するという方法である。これはDS86(※17)によって報告されており、測定日はバラバラであるが、この測定日の空間線量率から爆発1時間後の空間線量率を逆算する。そこから被爆線量率を算出するスタンダード的な方法である。この空間線量率の基となるデータは、マンハッタン報告書、九州大学の篠原先生の報告、それから米国海軍医学研究所の報告、そして理研(※18)のネーヤ型測定器(※19)を使いまして測定されたもの。これが前回事務局から提出されました大矢先生の報告書の主たるデータになっている。初期の線量率からの後は、後になればなるほど当然ながら線量率は下がってくるので、土壌中の放射能濃度からから推定するという方法がある。特に長崎原爆の場合はプルトニウム型であったのでプルトニウム(※20)を測ってやれば、他のセシウム(※21)とかワールドフォールアウト(※22)があったものから影響を除外していくということで、この土壌中のプルトニウム濃度から被爆線量を推計するという方法を使われたのは、岡島先生である。第3回のときには、この岡島先生の意見書を資料に出す過程でこの初期の線量率と土壌中の放射能濃度の、この両方使ってIAEA(※23)のTECDOCという方法で推計してみた。こういった全体的な方法がある。
今日は、まず、その4つの初期の唯一のデータによって、比較検証が可能な西山地区を例として被爆線量の比較を行う。特に前回提出されました大矢先生の報告書に示されている数値では、理研などの他の被爆線量などもここで比較されている。それを全面的に使っている。それから矢上地区、こちらは篠原先生のデータはないので、マンハッタン、海軍、理研、大矢先生、また静間先生のレビューの時に、理研のデータを使って静間先生も推計されている。それから最終的に岡島先生の報告書と私の推計と、全部これをまとめている。
まずこれが生データになり、西山地区の各測定日における空間線量率(※24)を示している。ただ、測定の方法が違うので出てくる単位が異なっている。それで今の標準的な単位であるμ㏉/hに換算している。換算するにあたっての出典は、大矢先生の報告書、及び最近基本的に使われている換算式を使っている。そうしますと一番最初に測定されましたマンハッタン調査。GMカウンター(※25)という器械を使っていて、大体この範囲。その測定日における範囲。大体10μ㏉、10μSv/hくらいが、一般のGMカウンターあるいはフィールドメーター(※26)だと、かなり連続音が鳴る程度の線量で、測定の間違いは考えられないくらいの線量である。それから篠原先生はローリツェン型測定器(※27)で、これはかなり場所によってばらつきがある。それから米国海軍医学研究所もGMカウンター。基本的にマンハッタンと同じタイプ。それから理研のグループでネーヤ型、これは単位がJ(ジュール)ででている。大矢先生は1ジュール=1.73μR/hという換算式を使われている。且つ、ここで出てきたμR/hから私がμ㏉に直している。そういう換算である。それでこういう4つが比較ができるわけであるが、そうすると大体この範囲に入ってくる。ということでこれは測定器における空間線量率の比較である。次にそこからDS86の式。こちらで、べき乗で、-1.2を使っているが、この換算式で爆発1時間後の空間線量率を比較するとこのような形になる。
理研が倍に大きく上がって、それだけ測定日と爆発の間の間隔が長いが、それが逆算すると大きくなるということで、こういう範囲になっている。ぜんぜん違う方法ではあるが、これぐらいのだいたいこういうばらつきのどこかに入ることが言えるかと思う。100mGy/h位の線量は、普通のサーベイメーター(※28)、或いはフィールドメーターがあるが、それの測定の上限を超えるとかなりのピッ、ピッ、ピッと鳴る程度の線量が、実際に測定したら1時間後にはあったというふうなことになる。
そこから今度は無限積算、積算していきまして、ずーっと生活していた場合にはトータルして累積線量としてどのぐらいだったという事を示している。そうすると当然ながら400、あるいは500といったところから、高いところで800ということである。これはつまり自分が被爆をするというわけではなくて、そこの空間線量を累積するとこれだけになる、そういう意味であるが、大体この程度の範囲に入ってくる。これは一番データがたくさんある西山地区の調査データ、この程度ばらつきがあるというな所である。
次に矢上地区に移るが、それと全く同じ方法で矢上地区を測定したデータである。これはマンハッタン報告書に記載されていたこのあたり矢上地区。道路沿いでGMカウンターで測定している。先ほど言ったように十分音が鳴る、検出できる、探すのに苦労するようなことではない、もう点ければすぐ数値が出るくらいの線量域になる。その中で最も高かったのが、0.19で、単位はmR/hである。ここをまずひとつのポイントとして使うということになる。それから米国海軍医学研究所は前回、会長からいただいたコピーをそのまま掲載したのですが、ここに矢上の記載がある。大きくしますとこちらで、80μR/hという数値がある。これ一本にしかない。これを使う。それから理研のネーヤ型、これはかなり広範で島原半島までいって測定している。最もフィールド調査には適した頑丈な測定器といわれているが、一番高いところで70.3という数値がある。単位はJ(ジュール)で、ここからR(レントゲン)にかえてμRというわけだが、そこで推定の方法によって数値の違いが出てきますが、これがオリジナルの数値70.3となる。
これを使って、まず、測定したときの空間線量率であるが、これは大矢先生の推定というか、換算されたものをマンハッタン、理研と使っている。それから米国海軍に関しては先ほどのデータは私の方で換算をしている。大体、このあたりに入ってくるが、比較の対象という事で西山地区と比べてみると、これが西山地区を測定したときの空間線量率で、この3つが矢上地区、これぐらいの差はあるわけだが、15から0以上の数値が出ている。これは地域間の比較。
ここから爆発1時間後の線量率を逆算したものがこちらになる。先程の西山地区と同様に、測定日と爆発日の間の間隔が長いので理研がどうしても高めに出ている。マンハッタン米国海軍はこういったところである。これはいずれもマンハッタンと理研はともに大矢報告書に記載されている数値。それから、米国海軍は私の方で計算したものである。計算式は全部同じ。今のこのデータから無限の線量を計算する。さらに、この他の3つ以外の報告、或いは、推定と比較するために、これは最大実効線量mSvになるが、その場所における無限の線量を組織吸収線量、体の組織が吸収する線量が換算すると、これは0.7を掛けるが、それが、ほぼ実効線量となる。無限線量を計算して次の0.7を掛けて、実際、人が受ける線量としてあらわしているのが縦軸mSvということになる。そうすると、当然、マンハッタンと米国海軍、理研の関係というのは、20mSvから60mSvの範囲に入っている。マンハッタンの大矢先生の試算では、このあたりに推計されている。それから理研のネーヤ型のデータですが、先程申し上げました様にJ(ジュール)と出てきますので、それをどう換算するのかというところで話が変わってくる。大矢先生は先程の1J=1.73μR/hこれは理論値である。理論的な関係から導き出されている数値である。それに対して、静間先生が前々回に発表していただいた時にお示された線量評価というのは、西山地区におけるネーヤ型の測定データ、J(ジュール)と西山地区はDS86できっちり線量評価されているから、その時に、DS86の実際の線量の関係を使って、そのまま矢上の方にもってきておられると。これは、岡島報告書にもまったく同じようなロジックである。西山地区のプルトニウム濃度と西山地区のDS86の線量を一致させて、そこから比例で計算しておられて、全く同じ方法。静間先生は、そういった方法で推計されている。だいたい20をちょっと超える程度というデータを別の資料で示されている。岡島先生の報告書では、これが25、私の推計でも23.5だったが、だいたいこの範囲に入ってくる、しかも測定器も違うが、マンハッタンと海軍は同じ測定器であるが、場所は微妙に違う。それから理研に関しては、全く別の測定方法。それからこちらは、土壌汚染から、こちらも土壌汚染と空間線量率からという、全く違う方法であるが、線量評価を考える、いつも測定しているという立場からいうと、この程度の範囲に70年前のデータが入ってくると、逆にちょっと驚きなところがある。以上です。
【会長】
一応今日でこの被爆地拡大地域の代表的なポイントが示されているわけであるが、もっとも高いところでどのくらいかという推計のデータの総まとめということで、それを確定するという意味でもご質問をいただきたいと思う。
【A傍聴者】
挙手
挙手
【会長】
これは、フロアからのご質問は受けていないのだが。
【A傍聴者】
大矢先生が今日みえていないので、代わりに訂正を。
大矢先生が今日みえていないので、代わりに訂正を。
【会長】
どんな訂正か。
どんな訂正か。
【A傍聴者】
大矢先生は、単位のジュールは間違いだとずっとおっしゃていた。あれは単位はジェイという単位。
大矢先生は、単位のジュールは間違いだとずっとおっしゃていた。あれは単位はジェイという単位。
【会長】
ジュールではないということか。
ジュールではないということか。
【A傍聴者】
はい。それは、大矢先生、前々からおっしゃっていた。
はい。それは、大矢先生、前々からおっしゃっていた。
【会長】
それでは、大矢先生のところはカットしましょう。今日は。大矢先生にもう1回確認しないといけない。ジェイというのはジュールのことではないのか。
それでは、大矢先生のところはカットしましょう。今日は。大矢先生にもう1回確認しないといけない。ジェイというのはジュールのことではないのか。
【A傍聴者】
違う。
違う。
【会長】
B委員、なにかご意見があるか。
B委員、なにかご意見があるか。
【B委員】
中根良平先生の資料で、大矢先生もこれを使われておられる、全く同じデータであるが、これはいわゆるジェイ、要はジェイと呼ぶか、私はジュールと呼んでおりましたので、エネルギーだと思っていましたから。
中根良平先生の資料で、大矢先生もこれを使われておられる、全く同じデータであるが、これはいわゆるジェイ、要はジェイと呼ぶか、私はジュールと呼んでおりましたので、エネルギーだと思っていましたから。
【会長】
普通、エネルギー単位のジェイはジュールなんですが。
普通、エネルギー単位のジェイはジュールなんですが。
【A傍聴者】
いや、そのジュールではなくて、ジュールと違うジェイという名前の単位だというふうに大矢先生おしゃっている。
いや、そのジュールではなくて、ジュールと違うジェイという名前の単位だというふうに大矢先生おしゃっている。
【会長】
そうですか。それでは、それは、ジュールとの関係をさらに詰めないといけない。それでは、大矢先生の推計からすると理研のデータが一番高い値なんだから。そこをチェックしなければならない。後は、ちょっとその問題が残る。なぜ、高いのかということについて、B委員なにかご意見はないか。もうちょっと低くなるのか。そのジェイの定義が違うということで。
そうですか。それでは、それは、ジュールとの関係をさらに詰めないといけない。それでは、大矢先生の推計からすると理研のデータが一番高い値なんだから。そこをチェックしなければならない。後は、ちょっとその問題が残る。なぜ、高いのかということについて、B委員なにかご意見はないか。もうちょっと低くなるのか。そのジェイの定義が違うということで。
【B委員】
ネーヤ型電位計というのは、実際見たことも、使ったこともないから分からない。ただ、今回、静間先生の推計と、もともとデータ同じなんですが。
ネーヤ型電位計というのは、実際見たことも、使ったこともないから分からない。ただ、今回、静間先生の推計と、もともとデータ同じなんですが。
【会長】
理研の生データはもともと同じなんでしょう。
理研の生データはもともと同じなんでしょう。
【B委員】
同じである。
同じである。
【会長】
それをDS86の方から導いていったのが静間先生の方か。
それをDS86の方から導いていったのが静間先生の方か。
【B委員】
いや、両方ともDS86は同じだが、1ジェイから大矢先生はレントゲンを理論的に換算しておられて、静間先生は、西山地区における実測値とDS86による推定値を使って、比例的に換算しておられる、ということの違いがある。実際に線量値はなんでもそうだが、測定したときのいわゆる構成である。それがだから、果たして、そのジェイという単位が当時の何ミリレントゲンに相当するか。その実測でも構成値が果たして有るのか無いのかというのが分からない。理論的にジェイは何ミリレントゲンに相当するか書いておられるが。
いや、両方ともDS86は同じだが、1ジェイから大矢先生はレントゲンを理論的に換算しておられて、静間先生は、西山地区における実測値とDS86による推定値を使って、比例的に換算しておられる、ということの違いがある。実際に線量値はなんでもそうだが、測定したときのいわゆる構成である。それがだから、果たして、そのジェイという単位が当時の何ミリレントゲンに相当するか。その実測でも構成値が果たして有るのか無いのかというのが分からない。理論的にジェイは何ミリレントゲンに相当するか書いておられるが。
【会長】
今日は、大矢先生のデータを使いますよ、とはまだお知らせしていなかったので、提供はいただいたが、ジェイ、ジュールの問題がでてきたので、これは、あとでもう1回詰めるということで。しかし、だいたい20mSvを超える値が推計されているということは間違いないところである。よろしいか。これについて、他の委員の先生方。
今日は、大矢先生のデータを使いますよ、とはまだお知らせしていなかったので、提供はいただいたが、ジェイ、ジュールの問題がでてきたので、これは、あとでもう1回詰めるということで。しかし、だいたい20mSvを超える値が推計されているということは間違いないところである。よろしいか。これについて、他の委員の先生方。
他にいろんな研究がされているかというのも、同時並行してみてきているが、ここにあげた、マンハッタン調査団以下の報告書以外にはもうないだろうと、だいたいここで確定をしなければいけないと思うが。それでよろしいか。もっとも高いところで20mSvを超えていく、しかしそんな100mSvを越えているところはないと、一番高い推定値でも今のところ理研の推計の60、これは訂正される可能性があって。大体そういう結論でよろしいか。
近い将来全体をまとめなければいけないが、実際の被爆地拡大地域でそこに永久におられたという仮定での実効線量が20mSvを超えと、最大値が超えるだろうというところで、もう少し細かいところを詰めていくということで、この議題は終わりにしたいと思う。
3 低線量被ばくに関する人体影響の研究論文の調査結果について
【会長】
これまでの原爆被爆者の研究から先程のA参考人のところでも出てきたように、だいたい200mSV以上からがんが増えることが検出できるだろうと、200mSV以下、或いは100mSV以下では、検出できないということだが、最近幾つか論文が立て続けに出ており、もっとも最近出たものを今日はご紹介する。
これまでの原爆被爆者の研究から先程のA参考人のところでも出てきたように、だいたい200mSV以上からがんが増えることが検出できるだろうと、200mSV以下、或いは100mSV以下では、検出できないということだが、最近幾つか論文が立て続けに出ており、もっとも最近出たものを今日はご紹介する。
先程、A参考人がちょっとこれに触れられた、INWORKSという国際研究の論文のデータである。私の情報提供シートの1ページ目をご覧ください。研究の課題は、日本語に訳すと職業放射線被ばくのがんリスクということで、フランス、英国、米国の3ヵ国原子力施設労働者の後方視的、ちょっと難しい言葉ですけど、過去に遡って研究したという意味である。これは。英、米、仏の疫学専門家が14名、連名で米国疾病コントロール・予防センター、日本厚生労働省、フランスの原子力企業のAREVA、米国立労働安全・健康研究所、英国エネルギー省および健康省、国際がん研究機構(IARC)というのがあるが、ここがデータを管理して、研究費用を出して提供した研究論文の報告である。
研究の目的は、長期間にわたる低線量の被ばくである。労働のたびに毎日浴びていくわけだから、その低線量、率というのもあるが、放射線被ばくは固形がんの発症リスクをもたらすか、固形がんの発症が増えるかというクエスチョンで、それに対する答えを出そうということで1943年以来の3ヵ国におけるマンハッタン計画がスタートで、原爆の材料を作るマンハッタン計画に従事した人も含んだ原子力産業に従事する308,297名の労働者のつい最近までの長い期間に渡る被ばく線量モニタリングのデータと、どういうがんによって亡くなった方々が何人かということから関連づけをするということである。
がんによる死亡に対する1Gy、1000mSV当たりに換算して過剰相対リスクをERRと計算しますが、例えば2倍に増えていれば、2対1で1という値が出てくるわけである。過剰相対リスクはそういうことである。これの追跡の総量は、8.2百万人年、観察年数を先程のがんの死亡者の17,957人に掛けていくと8.2百万人ということである。この研究は以前には15ヵ国の研究として発表されたが、その時から大幅に死亡例が増えて、
66,632人。そのうちがんの死亡は17,957人。そういうふうにがん死亡者が長期間のフォローアップ期間がおかれたので、とれるようになったということで、非常に増えている。
研究の結果ですが、線量が上昇するとともに直線的に、これは比例してということで、がん死亡率の上昇が確認されている。問題の被ばく線量がどれくらいかということだが、これは大腸レベルでどのくらい被ばくしたかという、そこでの平均値として表されているが、
20.9mSVである。中央値というのは、この1万7千数百人の被ばくの中央値は4.1mSVですから、かなり低い線量の人が沢山おられるわけである。非常に高い人が一部がおられて、平均は20.9mSVになっているということだと思う。それから、続いてデータが出てくるが、白血病を除きまして、全がん死亡率は積算線量に対して48%/Gyですから、1Gyに換算して約48%ですから約50%増しのがんの発生が起こると、その信頼区間は20~79%である。まあまあの範囲にある。それから、全固形がんで、これは、上の全がん死亡率というのが、非常に稀な珍しいがんも含めた全部の値である。普通にみられる固形がんだとその死亡率に対しては47%/Gyという数字が出ている。信頼区間は18~79%。この時にいろんな問題がやっぱりありまして、就職して仕事を開始される時に、みなさん成人であるが、もうがんが既に体内に発生しているという場合もありうるし、健康診断も受けてはいるんでしょうけど、見つからないということもある。だから、最初の10年間にがんが出た場合は一応除くというラグタイムをおいている。これは、一般的にとられている方法で、これを5年と短い期間でした場合、それから、さらに長く15年、これは放射線を浴び始めて15年間の間に発症した者は除くということで、なるべく、長期間、被ばくしたことの影響が直接みれるような、がんの死亡をみていこうということである。結果は、10年のラグタイム、5年のラグタイム、15年のラグタイムも全部比較しているが、ERRのリスクはほとんど同じであった。除くことによって、そんなにオーバーにERRのリスクが動くことはない。逆にいいますと、ほぼ放射線による発がんをみてるのではないかということを主張している。それから国別で、3ヵ国のそれぞれを1国づつのデータでみていっても、3ヵ国間の差はなくて、ほぼ同等だったということである。それから、被ばく線量が被爆地拡大では非常に重要なポイントになってくるが、100mSV以下、0~100mSVの被ばく線量の区間におけるERRリスクがどうかということが一番ポイントになってくるわけであるが、正確さはやや劣るけれどもそれ以上の低線量区間100~200mSV、200~300mSVという値がある。ERRリスクと同じであると、それが下にかっこの1,2,3で示した通りで、一番上の0~200mGyが1.04/Gyで、それから2番目が0~150mGyで0.69/Gyこれは、ちょっと下がる。それから、0~100mGyが0.81、ここは、上のふたつに比べて信頼区間が非常に広くなっている。0.01から、マイナスにはなっていないが、1.64。交絡因子(※29)として、たばこ、喫煙の問題、特に肺がんについてある。それから、原子力産業に就職される前に他の職種の仕事をしてこられた方は、もうひとつ発がんに関係するアスベストの暴露歴がぼちぼちいて、それらが影響しているのではないかということで、両方とも肺がんとか胸膜の腫瘍が出易いがんですが、従って、肺がん及び胸膜の腫瘍を全部除いて、他のがんの腫瘍だけで比較するということをやってみたけれども、結果はほとんど同じであったということである。だから、あまり大きい影響は起こしていないと。これは疫学的な観点からいくと、交絡因子というのは非常に慎重にやらないとというか、検討しなければならないので、大事な所見だと思う。
本研究の短所としては、被ばく線量の測定は職場がいろいろあって難しい。最大の努力がされているが、測定誤差がある程度はあるということが留意しなければならない、というふうに書かれてある。今のそのネガティブリスクの話なんですが、それを0~600mGyまでのところで、どのくらい過剰が出ているかということを、相対率という。ネガティブリスクではない。特別な疫学のエピキュアーという方法で線量反応があるかないかというトレンドをみているわけですが、こういうふうに直線的に右上がりに上がっていく。この比例関係が重要なわけで、科学的ということで、そういう所見であるということである。それから表A2ですけれども、これは、この直線が正しいと一応仮定して、線量を5mSV以下を、5<10、10<20、20<50と一番左の縦のラインですが、細かく線量区分を分けて、そこの平均線量が次に書いてあるが、0.6、7.2、14.3というところで、これはずーっと上がっていくのですけれども、630.8まで。そこに属する人達が何人いて何年間観察したということで、一番上の5mSV以下は平均線量が0.6mSVで、6百8万9千人年ということになる。その観察期間中にがんが10、433人がんで亡くなれたということである。そういうことで、ずーっと計算値が出ている。その計算値が要するに観察された2,065という数字は、過剰がどのくらいかということからいえば、5<10mSVの2,065は、7.1人の過剰があった。それから、10<20が2,026人で14.3人の過剰があったというふうにして、過剰が32.2、37.9、27.0、それから上は、かなり線量のところも人数が少ないので過剰も少なくなっていく。一番多いところで話をするとそういうことである。これに過剰がでてますよということがデータとして示されている。
その次のページは、図S1ということで、これは、補助的な図が電子版に載っているが、これは100mSV未満のところに注目して、相対率が上がるかということをみている。点線のラインが1からずっと上がっていくのが分かる。これが、統計操作で直線的なモデルができるということをいっている。それから3ヵ国の国別のERRが下に書いてあり、フランスが90%の信頼区間がかなり広く、下がマイナスにかかっているが、あとは、英国と米国がほぼ一緒で、全体としては既にお話ししたように0.47、1Gyあたり47%ぐらい増えていると。これが低線量区域までずーっと同じ率だということをいっているわけである。この論文は。
この研究で新たに得られた知見として著者らが上げているのが主に4点で、長期間にわたる低線量率放射線被ばくによるがん死亡のリスク上昇が確認されたわけである。これは、本当に長期間である。それから30万人という職業被ばく対象者は世界最大級でして全て成人で、男性が90%以上である。3番目にこれまでの高線量被ばくの方がより危険であるとみなす考え方がありましたが、本研究で低線量被ばくでも、より高線量、且つ、短時間被爆の広島と長崎の原爆被爆者で観察されたリスクと同等のERRリスクが認められたということで、これは、専門的ですけど、DDREFという略語で呼ばれる、線量率が高いところと低いところで比べるとこれまでの公的な機関が設定した放射線の強さ、生体に与える健康影響の強度が線量率が高いと原爆被爆者のように1.5倍になるとか2.0倍になるということが公式の見解としてこれまで発表されてきたが、今回のこの調査からいえば、それは、それ程でもなくて1か1ちょっとくらいだろうというふうに彼らは述べている。ということで、以上の成人における低線量率被ばくによる人体影響の知見は、今後の放射線防護の基準策定の強化につながる知見であるということを主張している。
これは、私の個人的な意見なんですけれども、3ヵ国の成人の原子力作業者30万人の本調査で、低線量率の被ばくにおいて、0~100mSVの範囲でもわずかながら、これはかなりわずかです、リスクが生じることを否定できない結果が得られていると思う。被爆地拡大地域住民の方々のいまのところ推定値が20mSV台くらいになっていますが、そこが含まれているわけである。
そういうところで、健康影響を被爆地拡大地域住民のことを考える場合もこのデータはある程度使えるといいますか、慎重に検証しないといけないというふうに思う。これまで、プルトニウム測定に基づく岡島報告書やその他、この間、B委員が総括していただきましたような20mSV超えるような積算線量があるということで、これがわずかながらでも健康影響があるというひとつの根拠になる論文というふうに考える。ここにINWORKSのスタディというのが、もうひとつは白血病の悪性リンパ腫が去年既に発表されていて、これは前々回からここで検討していただきましたけれど、まだ、統計的手法に少し疑義があるということが委員のひとりのE委員からも指摘されているのですが、今、そういうところをいろんな疫学専門家の意見を聞いてどの程度信頼できるものかということを調査している。ということで、私の情報提供シートの説明は以上ですが、委員の方々からご質問を受けたいと思う。
【A委員】
会長ご指摘のように、このデータは今まで線量率が低いとがんのリスクが下がるということで先程、A参考人が出されたデータとは異なる所見を報告されているということで非常に重要なデータだと思う。
会長ご指摘のように、このデータは今まで線量率が低いとがんのリスクが下がるということで先程、A参考人が出されたデータとは異なる所見を報告されているということで非常に重要なデータだと思う。
【会長】
今日は一方でA参考人のご発表があったように、インドでは全然影響が現れていない、一方でこういうふうに表れているというようなことがあって、大変難しい問題が、検討しないといけない部分が沢山あるんじゃないかと思うが、白血病は悪性リンパ腫の方でも低線量でも影響がある。それからこのデータでもある。
今日は一方でA参考人のご発表があったように、インドでは全然影響が現れていない、一方でこういうふうに表れているというようなことがあって、大変難しい問題が、検討しないといけない部分が沢山あるんじゃないかと思うが、白血病は悪性リンパ腫の方でも低線量でも影響がある。それからこのデータでもある。
あともうひとつは、みなさんご記憶だと思うが、子どものCT検査のデータが今どんどん出てきていて、60万人台のオーストラリアの子ども達もかなり線量関係が出ており、世界中で低線量域の人体影響の新たな研究の見解があっている。それを、最大限に我々も取り入れて被爆拡大地域の人達の人体影響があるとすれば、データを推定していきたいと思う。
あとひとつはその被ばく地域の方が実際にどういう病気で亡くなられたかと、これまでの方々が、そういう疫学研究が本格的になされてないが、精神的影響調査はかなり本格的なものが行われ、それはポジティブな結果が出て今の精神的な疾患をお持ちの方に対する医療支援というのか、制度というか、研究体制としてはそういう体制が置かれて、実際、補助も行われているが、まだ、人体影響の最大の問題であります、がんの発生に関しては、結論が出ていないということで、我々の委員会のひとつの大きな役割がその点を明らかにするということで、そろそろ結論を出す時期にきているわけですけれども、これで論文はだいたい出そろったんですが。
【C委員】
ひとついいですか。この論文の読み方ですけど、被爆者の方のデータでは、どちらかというと高線量での直線関係を被爆量とリスクのですね、それを低線量に引っぱって階層してということをやってきたわけですが、この論文では30万ぐらいの方のフォロアーがいて、低線量の方が非常に多いために0~600mGyの間で、直線性は確認できたと、それは、被爆者の方のデータと違うとこだと思うが、でも2ページの図ですか、Relative rate(※30)ですよね。全部、結局95%信頼区間が1をまたいでいますよね。ですからやっぱり、直線関係はあるけども、有意に増えているということがいえないですよね。
ひとついいですか。この論文の読み方ですけど、被爆者の方のデータでは、どちらかというと高線量での直線関係を被爆量とリスクのですね、それを低線量に引っぱって階層してということをやってきたわけですが、この論文では30万ぐらいの方のフォロアーがいて、低線量の方が非常に多いために0~600mGyの間で、直線性は確認できたと、それは、被爆者の方のデータと違うとこだと思うが、でも2ページの図ですか、Relative rate(※30)ですよね。全部、結局95%信頼区間が1をまたいでいますよね。ですからやっぱり、直線関係はあるけども、有意に増えているということがいえないですよね。
【会長】
いえないという根拠は。
いえないという根拠は。
【C委員】
いえないという根拠はといわれると。
いえないという根拠はといわれると。
【B委員】
おそらく、直線性を全線量域で検出すれば、ちゃんと有意に直線性があって増加しましたといえると思うが、その直線に載っているポイントが、はたして、原点はもちろん0としても、本当に低いところでの直線性に載るかどうかというのは分からない。というのも今の1ページの資料の(1)、(2)、(3)の積算線量区分をしますと、もう差が出てきていない。だから、直線に載ることは分かるとして、直線に載ってきたそのリスクそのものが有意に0で有るか無いかということは、また別の検討になるわけである。解析としては。それが今の(1)、(2)、(3)に書かれていますけど、それで線量区分で見てみると、いずれも1をまたいでいるわけです、90%信頼区間が。或いは、低いままになっている。それから先程、C委員がご指摘の2ページのFigureにおいてもバーの上と下をみると、もう1をまたいでいると、又は、1以下かもしれないということを示しているわけである。
おそらく、直線性を全線量域で検出すれば、ちゃんと有意に直線性があって増加しましたといえると思うが、その直線に載っているポイントが、はたして、原点はもちろん0としても、本当に低いところでの直線性に載るかどうかというのは分からない。というのも今の1ページの資料の(1)、(2)、(3)の積算線量区分をしますと、もう差が出てきていない。だから、直線に載ることは分かるとして、直線に載ってきたそのリスクそのものが有意に0で有るか無いかということは、また別の検討になるわけである。解析としては。それが今の(1)、(2)、(3)に書かれていますけど、それで線量区分で見てみると、いずれも1をまたいでいるわけです、90%信頼区間が。或いは、低いままになっている。それから先程、C委員がご指摘の2ページのFigureにおいてもバーの上と下をみると、もう1をまたいでいると、又は、1以下かもしれないということを示しているわけである。
【会長】
ここでちょっと僕が疑問に思っているのは、日にちが論文に書いていない。
ここでちょっと僕が疑問に思っているのは、日にちが論文に書いていない。
【C委員】
これは、95%の信頼区間をとっているのか。
これは、95%の信頼区間をとっているのか。
【会長】
B委員がおっしゃったのは。
B委員がおっしゃったのは。
【B委員】
そういうことである。
そういうことである。
【会長】
これが統計的に有意ではない。
これが統計的に有意ではない。
【B委員】
その線量区間をみれば有意ではない。ただ、線量の直線性はある、ということだと思う。ただ、どこまで低いところまでいっても線量の直線性があるのかというのは、それぞれの線量区分の中で有意差が出てくるところまでは、ちゃんと直線性に載るでしょうと、それ以下は分かりませんという理解だと思う。ひとつの直線性だけで全て判断できるというわけじゃないということである。
その線量区間をみれば有意ではない。ただ、線量の直線性はある、ということだと思う。ただ、どこまで低いところまでいっても線量の直線性があるのかというのは、それぞれの線量区分の中で有意差が出てくるところまでは、ちゃんと直線性に載るでしょうと、それ以下は分かりませんという理解だと思う。ひとつの直線性だけで全て判断できるというわけじゃないということである。
【会長】
直線性は原爆被爆者の場合も直線性が示されている。先程のA参考人の資料の10ページのところに、これがだいたい直線性がある。放影研の一番最新のデータの小笹先生が出されているのをみてると、小笹先生の論文にも0から200mSVの範囲が、0から0.2Gyだから200mSVである。リスクが固形がんに対して0から0.20Gyの200mSVまでの範囲が直線性があると。いわゆる閾値、これが事実上は、0(ゼロ)だということで、だから、ここが、我々に今後、検討が残されているところじゃないかなと思っている。直線性が統計値なのか、どうかということなんですよ。エピキュアという開発ソフトが開発されて、これは放影研のプレストンさんという方が開発したが、これである程度の傾きがあって、直線性があることを統計的に処理する方法が、このほとんどの論文で使われている。だから直線性がみられることを、統計的に有意な直線性だと、傾きをもった直線性だというソフトというふうにもみれる。そこがポイントで、その点をA委員、何かご存じないか。プレストンさんが開発しているエピキュアという。
直線性は原爆被爆者の場合も直線性が示されている。先程のA参考人の資料の10ページのところに、これがだいたい直線性がある。放影研の一番最新のデータの小笹先生が出されているのをみてると、小笹先生の論文にも0から200mSVの範囲が、0から0.2Gyだから200mSVである。リスクが固形がんに対して0から0.20Gyの200mSVまでの範囲が直線性があると。いわゆる閾値、これが事実上は、0(ゼロ)だということで、だから、ここが、我々に今後、検討が残されているところじゃないかなと思っている。直線性が統計値なのか、どうかということなんですよ。エピキュアという開発ソフトが開発されて、これは放影研のプレストンさんという方が開発したが、これである程度の傾きがあって、直線性があることを統計的に処理する方法が、このほとんどの論文で使われている。だから直線性がみられることを、統計的に有意な直線性だと、傾きをもった直線性だというソフトというふうにもみれる。そこがポイントで、その点をA委員、何かご存じないか。プレストンさんが開発しているエピキュアという。
【A委員】
エピキュアはちょっとあまりよく知らないが、いっているのは要するに、例えば0から100までなら直線性はみられないけれど、200mGyまでとれば直線性がみれると小笹先生の論文はいっている。
エピキュアはちょっとあまりよく知らないが、いっているのは要するに、例えば0から100までなら直線性はみられないけれど、200mGyまでとれば直線性がみれると小笹先生の論文はいっている。
【D委員】
いいですか。今のA委員のに。この小笹論文は要するに0から0.01きざみでずっといって0.19までは直線性にならなかった、0.2になって初めて直線性があったという、単に回帰の手法モデルであってそれが有意であるということと、その0.20以下で、いろんな健康状態に有意差があるというのは別の問題である。あくまで、回帰のモデルにあてはめたということである。だからそれを分かり易く説明ができないところでいつも混乱している。
いいですか。今のA委員のに。この小笹論文は要するに0から0.01きざみでずっといって0.19までは直線性にならなかった、0.2になって初めて直線性があったという、単に回帰の手法モデルであってそれが有意であるということと、その0.20以下で、いろんな健康状態に有意差があるというのは別の問題である。あくまで、回帰のモデルにあてはめたということである。だからそれを分かり易く説明ができないところでいつも混乱している。
【会長】
小笹先生の論文も閾値が実質上0だというのもそういう意味か。
小笹先生の論文も閾値が実質上0だというのもそういう意味か。
【A委員】
そうである。200まで引けば、閾値は0で回帰する。
そうである。200まで引けば、閾値は0で回帰する。
【会長】
そうするとやっぱり放影研のデータは200mSVまでが有意なのか。
そうするとやっぱり放影研のデータは200mSVまでが有意なのか。
【D委員】
有意というか、ちょっとどうしても分かり易く説明できないが、だから直線性とそれ以下での個々の個体の有意が話が別ということである。だから、いつもそのモデルにあてはまってあって、それでオッケーで直線引けたよということであるが、そこが別問題というのをどうやって説明していいのかちょっと分からないが、とにかく直線性のモデルにあてはまったということと。
有意というか、ちょっとどうしても分かり易く説明できないが、だから直線性とそれ以下での個々の個体の有意が話が別ということである。だから、いつもそのモデルにあてはまってあって、それでオッケーで直線引けたよということであるが、そこが別問題というのをどうやって説明していいのかちょっと分からないが、とにかく直線性のモデルにあてはまったということと。
【会長】
人体影響とは直接関係ない。或いは、検出できていない。可能性はあるけど検出できていない。
人体影響とは直接関係ない。或いは、検出できていない。可能性はあるけど検出できていない。
【D委員】
そういうことである。検出できていないと思う。
そういうことである。検出できていないと思う。
【会長】
否定はできない、とこのいい方は。
否定はできない、とこのいい方は。
【D委員】
否定はできないというか。
否定はできないというか。
【会長】
いやいやこれはずーと100までは影響が有ると書いてある。100以上はね。
いやいやこれはずーと100までは影響が有ると書いてある。100以上はね。
【D委員】
はい。そうである。
はい。そうである。
【会長】
そこが直線性に載っているデータがいっぱいあって、そこで突然もう影響がなくなってしまうということは、逆に考えにくい。ICRP(※31)はある程度そういう考え方をしていると思う。
そこが直線性に載っているデータがいっぱいあって、そこで突然もう影響がなくなってしまうということは、逆に考えにくい。ICRP(※31)はある程度そういう考え方をしていると思う。
それから、一方、胎児の影響の評価を調べているが、子宮内で胎児が放射線を浴びた時にX線検査で浴びるが、そのデータでは、非常に低線量で影響が出ている。それが、一応ICRPとかでも、一応認められているようである。そういう意味で胎児では認められて1歳以下、以上の子どもを含めた人体影響としては、今のところ100mSVぐらいが最低値だとなっていて、そこを覆すようなデータが本当にこういう論文のデータなのかどうか、これをもうひとつ明らかにしないといけないな、というのが、今の私の考えである。この論文の、今ご紹介した論文の最後にも放射線保健の基準に影響を与えたということを書いている。
【B委員】
今日せっかくA参考人の資料がありましたので、これで比較できるので、そこだけちょっと発言します。今回のこの論文の結論のうちのひとつでDDREF=1.0いわゆる被ばく者と、それから今回のこの原発労働者との変わらないということですが、ちょうど今日のA参考人の資料で11ページで原爆被爆者固形がん罹患、1Gyあたりでの換算すると0.47、それが今回のこの論文では0.47ですから、だいたい同じくらいというのがここから比較できると思う。
今日せっかくA参考人の資料がありましたので、これで比較できるので、そこだけちょっと発言します。今回のこの論文の結論のうちのひとつでDDREF=1.0いわゆる被ばく者と、それから今回のこの原発労働者との変わらないということですが、ちょうど今日のA参考人の資料で11ページで原爆被爆者固形がん罹患、1Gyあたりでの換算すると0.47、それが今回のこの論文では0.47ですから、だいたい同じくらいというのがここから比較できると思う。
ですから、前回のこのINWORKSの前の15か国の時のデータがここの11ページ一番上が0.97ですけど、これはかなり高いところを引っぱってましたので今回ちゃんと精査したら0.47くらい、やっぱり被爆者の場合と同じくらいあると、DDREF=1.0という多分結論につながるのではないかと思う。これは、1Gyあたりの換算ですから、その低くした時にどうなるかというのは、A参考人がおっしゃった通りである。
【会長】
他に何かご指摘はないか。
他に何かご指摘はないか。
【C委員】
今のB委員のは、1Gyでの計算上は47~48%ぐらいだけど、もうちょっと線量率の低いところでのDDREFは変わってくるんじゃないかということか。
今のB委員のは、1Gyでの計算上は47~48%ぐらいだけど、もうちょっと線量率の低いところでのDDREFは変わってくるんじゃないかということか。
【B委員】
そういうことである。
そういうことである。
【会長】
はい。それでは今日はこれで終了とします。
はい。それでは今日はこれで終了とします。
(次回の開催について)あとは、小児のCTのデータが出ることが非常に大事なところかなと。今、EUのグループが100万人規模でやっているので、そういうものが9月までに出るんじゃないかと一応期待をしている。それで我々は最終結論、低線量の問題は、ある程度の結論を得ることができるかなと期待している。よろしいか、9月。場合によっては、論文がいつ頃出るかということが分かった時点でちょっと延ばさなければいけない場合もある。
それでは、今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
第7回(平成28年度第1回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
1 原爆被爆者追跡調査における低線量被曝リスクの評価について【A参考人】
本日は、原爆被爆者追跡調査、被爆者ご本人につきましては寿命調査と、英語でLSSと略しているが、そこにおける低線量被曝リスクの評価についてどのように行っているかということについて、ご説明させていただきたいと思う。
本日は、原爆被爆者追跡調査、被爆者ご本人につきましては寿命調査と、英語でLSSと略しているが、そこにおける低線量被曝リスクの評価についてどのように行っているかということについて、ご説明させていただきたいと思う。
原爆被爆者追跡調査(寿命調査:LSS)における低線量被曝リスクの評価
それに先立ちまして、寿命調査について少し詳しく説明しておかないと低線量被曝の評価をするうえで、どこが問題になるかということが分かりにくくなるので、それについて少し細かくご説明させていただきたいと思う。寿命調査の母集団になる方は、被爆者の方であるが、その被爆者の方をどのようにして把握したのか、誰が被爆者であるかということを知ったのかということだが、これは1950年に国勢調査・付帯調査というのが行われて、その質問というのは、この原爆時に広島市、又は長崎市にいましたかというような内容である。ご本人ないしご家族がいましたか、ということでどなたかその時に広島市内、長崎市内におられたか、ということを把握しており、これが日本全国で284,000人の方がこれは概数であるが、いたという形で回答しておられる。その内1950年当時に広島市または長崎市に住んでおられた方というのは195,000人になる。この方々の住所、氏名等がこの当時のABCC(※1)に渡されて、その99%以上の方にとにかくABCCの職員が面接、或いは郵送等でコンタクトをとったとされている。つまり、どこで被爆したかという状況が必要になってくるので、そういう、面接ないし何らかの形でのコンタクトをとっている。その調査により、被爆時の場所によって対象者を選択している。選択の仕方は大きく分けて2.0km以内の方々、近距離被爆者でも2.0km以内の方、2.0kmから2.5kmまでの間の方、そして遠距離被爆者の10 kmまでの方である。まずは、被爆者の方については、こういう分け方をしている。その当時は、線量というものは、当然、全く分からないような状況なので、要は距離でもってグループで比較しようという考え方である。2.0 km以内からまず28,000人の方を選んで、その方に対応するということで、2.5kmから10kmまでの遠距離被爆者の方でこの近距離被爆者の方から性・年齢をマッチさせて同数を選ぶと。ここの間に入ってくる方がおられるが、これは比較の意味でこういうふうに特に近距離の方と遠距離の方を比べているがこの間の方も当初17,000人入っている。それに対して、この原爆時に市内におられなかった方というのがいる。NICということで原爆時市内におられなかったということを意味する英語の略称であるが、その方を27,000人これは丸めの関係でこの数字になるが、基本的にはこの数字とこの数字が対応している。この方も基本的にはこの方々に対応するように性・年齢をマッチさせて採用したわけであるが、この調査は被爆者の方は分かるが、それ以外の方は分からない。それから、こういう作業をした時点においては、この集団以外の国勢調査の資料は全て終わってしまっており、利用できないので、広島市、長崎市にお願いをしてその1950年当時の市内在住者の資料を再構成して、この条件でこれだけの方を対象として選ばせていただいているということになる。こういう形でスタートした訳だが、それ以後、もう少し数を増やす必要があるだとか、或いは個人線量というのが分かってきたということでグループの比較ではなく、個人ごとに線量に基づいて比較することが可能になったとか、いうような状況があるので、近距離被爆者の方については、基本集団の全てを追加している、それから長崎のほうでは後で見ていただくが全体として人数が広島に比べて少ないということもあり、さらに後で長崎の遠距離被爆者の方を追加しているというような、やや不規則な形での追加がある。それらのすべての人に関して1950年当時以降の状況が分かっているので、最終的に120,000人の方について1950年を起点として追跡している、というのがこの寿命調査の対象者に関する枠組みである。
そういう方々がどのように性別、年齢別に分布しているかということである。広島の男性、女性、長崎の男性、女性で被爆時年齢ごとにまとめている。全体として女性の方が多い。これは基本的に2.0 km以内の方々の分布に全体が引っぱられるので、元々が2.0 km以内の被爆者は女性の方が多かったわけである。それから男性の若い方々が、おられない、これは軍の仕事とか兵士につくとかいう形で、市内には残っておられなかったということが非常に大きなところがある。その当時若い方で残っておられる方は、昔でいう丙種合格になるのでしょうか、どちらかというと健康にすぐれなかったというような方が残っておられたのではないか、ということもある。そういう性別、年齢階級別の分布になっている。長崎の場合は、比較的、遠距離被爆者の方がおられるということがある。色の関係で区別しにくいが、外側の方が2.5km以遠である。
これは、個人が被爆された線量をどのように評価しているのかということの説明である。原子爆弾から放出された放射線は初期放射線と残留放射線に分かれる。初期放射線は核分裂が始まって以降、ほぼ1分以内に放出されたもの、多くは30秒以内といわれているが、もちろんこれは核分裂による中性子線(※2)の他に核分裂後にできた核分裂物質が非常に不安定だから、それが崩壊していく過程でのガンマ線(※3)が、むしろそちらのほうが非常に大きいが、そういうものが出る。一番影響を与えるのはもちろん距離である。その次に遮蔽状況、それから個人の体格とか、どちらを向いているとかそんなことも影響してくる、体の中の臓器の線量を考えようとすると。それを後で示すような方法で体内の15臓器について線量を推定している。これは、中性子線が生物学的にガンマ線よりも効果が大きいだろうという、この場合10という係数をあてはめているが、それにガンマ線を足して重み付け吸収線量という形で、吸収線量なので単位はGyということで表現している。ただ一般的には、Sv。放射線防護で使う等価線量としてのSv。或いは、実効線量の場合もSvを使うが、そういう単位のほうが、馴染みがあるということ、それから等価線量の場合、この係数が中性子線のエネルギー量に対しては、10というのがあてられているので、我々が使っている重み付け吸収線量は、放射線防護の等価線量と実質的には同じ数値になってくる。従いまして、よく説明等でGyというのはSvと同じですかというように聞かれるが、それに対しては実質的に同じであると考えて頂いて差し支えありません、という形でのご説明をしている。その他に中性子線がいろんな元素に当たって、その元素が放射化されることによる誘導放射能は、爆心地ほど当然中性子線が当たる量が多いから強いということ。それから放射性降下物は、原爆はだいたい空中で500mから600mの高さで爆発しており、ここで全てのものは、数十万度という温度になるから、気化、或いは原子の状態になって、上昇気流になっていく。それが冷やされて、雨となって降ってくる。その時には巻き上げた土や塵、或いは火災の煤、そういうようなものが巻き込まれるから、いわゆる黒い雨となって降ってくるということになる。これはどこに降ってくるかというのが不規則になるので、不規則なホットスポットという形で出てくる。
これは、爆心地からの地上距離別のDS02(※4)、2002年の線量体系での被曝線量である。広島が15kt、長崎が21ktという原子爆弾の規模で、爆弾の規模としては長崎のほうが若干大きいから無遮蔽での空中線量は、同じ距離であれば長崎のほうが高くなっている。一方、広島がウラン爆弾、長崎がプルトニウム爆弾ということなので、中性子線の量は広島のほうが相対的に多い、多いといいましてもこの量に対して数パーセント、この場合5%ちょっと、それぐらいの量になる。長崎のほうがむしろ少ない。中性子線のほうが、ガンマ線より早く減衰していくので、この距離になると中性子線はほとんど出てこないということになる。それから1,000mのところは、全身被曝線量としては致死量であるが、当然この辺りでは熱線とか爆風とか、そういうものはもっと厳しいから、通常、被爆して生存される方という方はまず無いという状況である。放射線に関すると、ここから500m離れると、このような形でどちらも約1月10日近くに低下する。同じ様にここからここまでが500mで1月10日近く低下する。さらに500m離れると広島で13mGy、長崎で23mGyとなり、その減り方は大きいものがある。ただ被爆の体験ということでみるとこの辺でも非常に熱線とか爆風とかは厳しいものがあり、即死される方とか、重症を負われる方というのがおられるので、そういう被爆された体験というものと放射線量というものは必ずしも感覚として一致しないという面はある。
個人線量をどのようにして推定したのかということである。面接調査では、被爆時の位置をおおまかに聞いているが、2km以内の方、約20,000人の方については、こういう形での調査をしている。まず地図でどこにおられましたかと、屋外であれば屋外の位置を指していただき、自宅であれば自宅をお伺いしてその周辺の地図を1人1人について作成していく。こちらが爆心の方向。これは、爆心を向いているということなので、実際には放射線はこちらからきたことになるが、それに対してさらに家の中の間取りを書いていただいて、その中のどこにおられましたかと、どちらを向いていましたかということもここで入ってくる。これは横から見た場合。この方の場合だと、爆心方向を、爆発中央点の方向を見上げるということになる。これは広島の場合だったと思うが、こういう形を見上げるとこの角度になり、この方の場合でしたら屋根を通し、天井を通して、それだけ減衰していると。もっとこちらにおられたら障子とか或いは壁とかを通してという形で減衰が少ないことになる。この状況でどうであったかということを、計算をするわけである。これは非常に手間がかかることで、1人につき最低でも3回4回の面接をお願いして聞き取り調査をしたと聞いている。ただこれはとてもでないけれど全員についてできるものではないということで、遠距離被爆者の方については、路上であればその地点の空中線量の100%を受けていたであろうと、こういう家の中であれば、家の中のどこにいたかわからないから、平均的に50%弱ぐらいの数値になってくるが、そういう値を機械的に適用していくということになる。ですから、遠距離被爆者の方での線量推定の正確度というのは、落ちるわけであるが、例えば近距離被爆者の方で線量が半分になるといった場合に、2Gyが1Gyに半分になると非常に大きなことであるが、遠距離被爆者の方で、例えば100mGyが50mGyになるのはそんなに影響はないだろうと、その当時は考えていたわけである。ただ、今、100mGyで被爆したのと50mGyで被爆したのとでどんなに違いがありますか、みたいなことを問題にするようになってくると、その辺りの遠距離被爆者での線量推定はかなり大まかであるということが、どういうふうに影響してくるのかということは、難しい問題になってくるのかもしれません。
これで、個人の被爆した線量をずっと見ていくと5mGy未満の方が約4万人、広島、長崎合わせてである。ずっとまいりまして、1Gy以上の方は2,400人くらいしかおられない。しかしながら後で出てくるように、この2,400人でほとんどの原爆被爆者における放射線リスクの推定が成り立っているというような状況である。
これは、被曝線量別の対象者の地理的分布である。こちらは広島でここは原爆ドームがあるところであるが、広島はもう本当に市内のど真ん中に落とされたということで、ここ一円が市内だが、その中で生存されている方は、ほとんどないわけである。ちょっとこれでは見にくいが、線量不明というのは、灰色でポツポツポツと記載してあるが、大きなビルディングとか或いは防空壕とかそういうところに入っておられて助かったという方だが、そういう方の場合、先程のような調査では、そのビルの中でどれだけ線量が減衰したのか、防空壕でどれだけ線量が減衰したのかということは、ちょっと計算できないので線量不明という形になっている。外側に1Gy以上の線量の方がおられて、1.7 kmぐらいまでだと500mGyぐらいまでである。それから、2.5 km以遠になるとほとんど5mGy未満の方という形で、当然距離が一番大きな要素になるので、同心円状になってくる。こういう線量の出入りは、当然遮蔽の状況によって変わってくる。長崎も、もちろん同じようなことだが、長崎の場合、東西が山になっているから、そこにはあまり人は住んでおられないということで人の分布は南北方向になる。放射線の量が広島よりやや多いので、同心円が外側に広がるような形で分布している。今我々がいるのは、ここであるが長崎の市内というのはもっとこちら側だから、長崎の場合多くの方々が遠距離被爆者というカテゴリーに入ってくる。
後は、残留放射線の問題である。中性子による誘導放射能は原子爆弾からどれだけの中性子が出てそれがどういう元素に当たったかということが分かるので、そこから後で再計算することが可能である。広島の場合、爆心地から例えば200mの距離であれば、翌日に12時間そこに滞在すれば82mSv被爆したであろうと、こういうことが計算できる。長崎の場合には中性子線量が少ないので、このような数値になる。もうひとつは放射性降下物である。これは不規則に下りてくるので、そういう計算はできない。戦後に測定された地上の放射線の分布から推定していくというようなことが行われてきた。これはその代表例、沢山そういう測定があり、この委員会でも議論しておられたと思うが、その1例である。1945年10月の日米合同調査団での放射線の等線量曲線があり、爆心地を中心とする同心円はこちらであろうと、こういう不規則な部分、これはこちらであろうということになる。広島の場合は、己斐・高須地区であるが、長崎の場合は、ご承知のように西山地区で非常に強い放射性降下物が観測されている。これからどれだけの被曝をするのかということ、これはDS86(※5)が報告された時に、一定の代表的な結論というか、そういうサマリー(※6)されたものが出ており、広島ではこのレベルであり、長崎ではこのレベルでかなり高いものがある。ただ西山地区で被爆された方は、数百人レベルになるので、放射線リスクの全体としてのリスク推定には、影響が及ぼさないと考えている。ここで被爆された方が少ないからである。それから内部被曝に関しては、60年代の後半から80年代にかけて、ボディカウンターが実用化された頃だと思うが、いろいろ測定されており、その結果も報告されているが、やはりそれは被爆当時の状況を反映しているものではないのではないかというのが現代の評価であるかと思う。
これから少しリスクのお話をさせていただくが、その前にリスクをどのようにして評価するのかということをご説明する。通常リスクというものを疫学的に評価する場合には、比較した場合に比をとる。例えば1,000人あたり10人に発生していたものに対して、1,000人当たり15人発生したとすれば1.5倍だと、そういう比較の方法。それから差をとる方法、1,000人当たり10人から15人で5人増えたという、そういう差をとる方法がある。それが一般的だが、放射線においては過剰相対リスクというERRという略称を使うが、それをよく使う。これは、この部分である。1,000人当たり5人増えた部分がもとの部分に対してどれだけの割合があるのかという、非被曝でのベースラインとしての率に対してどれだけ増えているのか、ですから相対的にどれだけ増えたのか、ということを示している。相対的にといいましても、比での1.5倍という表現に対してこちらは50%増しというような表現が適切かなと思うが、なぜこういう指標をとるのかということに関してよく聞かれるが、これは基本的には放射線によるがんの増え方の考え方というのはやはり相加的なもの、いってみれば放射線で傷ついた細胞の数だけがんが増えるというような相加的なものであるという特性がある、それに基づいていると思う。そうしますと、どれだけ増えたかというと、こちらでもいいわけだが、がんには一般的に多いがん、非常に稀ながんというものがあるから、その率に依存する。というのは、全ての部位で一義的に増えるわけではないから。元のがんの部位の率に対して何%増えるのかという形で表現すると、ある一定の幅に増えてくるだろうというような考えの基に作られていると思う。それが本当にそれでいいのかどうかというのは、なかなか難しいところがあり、そのことが例えば日本人は胃がんが非常に多くて、アメリカ人は胃がんが少ないと。その場合に例えば1Gy被曝した場合にどれだけ胃がんが増えるのかということを考える場合に、日本人の胃がんの罹患率や死亡率を基にして、その何倍という形でアメリカ人に適用できるのかどうかという問題、アメリカ人はもともと胃がんが少ないわけですから。日本人で増える分を差でとれば、多分ものすごく増えるでしょうし、比でとればさほどでもない。同じように日本人では、乳がんはこの世代の方では非常に少ないから、それに対してアメリカ人とか西洋人では、乳がんは昔から割と多いがんだから日本人での乳がんで観察されたこういう放射線のリスクの絶対値を足せばいいのか、或いは相対的な率を掛けてやればいいのかというのは、また大きな問題になってくる。そのことは、我々のようなリスクを評価する者からはそこまではとても考える余地のないといいますか、それが専門でもないわけだが、放射線防護からいくと、その問題は大きな問題となってくるので、それはICRP(※7)等でいろいろ考えられているが、現在のところそんなに決定的な、どちらが適切であるかという決定的な考え方はないように思う。いくつかのものでは絶対値を足すか相対的な率を掛けるかの傾向があるが、しかし、あとは概ね半々で考えるような折中的な考え方にはなってくると思う。そういうふうなこともあるが、いずれにしても、こういう指標をとること自体が放射線によるがんの影響というものが相加的なものであることを示すために、一般的にはこちらよりもこちらの指標を使うということになっていると思う。
これは追跡の状況である。2003年までのデータなのでこのようになっている。若くして被爆された方はまだご生存ですし、高齢で被爆された方は、ほとんどお亡くなりになっているという状況である。
これが問題の焦点になってくるが、被爆時の年齢とか、何歳になった時のリスクだとか、というそういうことがやはり問題になるので、30歳で放射線被曝された方が被曝されていない方と比べて70歳になった時にどのような差があるのかということを過剰相対リスクで調べている。それは1Gyのときにだいたい40数パーセントという形であるが、この点が1Gy以上の人でこういうように非常にきれいに、ちょっと外れ値のようなものがあるが、直線的に並んでくるということでほぼここで、この傾きは決定される。非常に多くの方がここに入ってくるが、見ていただいて分かるように非常にばらついているという状況である。Lというのは、直線で近似させた場合、LQというのは直線とその曲線で、二次項だが、それを加えた場合にどの程度変わるかと。これは2Gy未満に限った場合にどのようになるかということで、2Gy以上の線量推定がかなり大きな誤差があるのではないかというひとつの仮定に基づいて2Gyまでということを考えた場合にどうかということを問われる場合があるので、それを示しているが、ちょっと下向きが強い。ただ下向きが強いというのは、この部分が直線の下にくるものが多いので、それに引っぱられているところがある。こういう直線は全体としての傾向がどうであるかということを見るためのものである。ですからこの直線でもって、例えばここから上のほうで有意にリスクがありますよ、というようなことはできない。この直線はいってみれば全線量において、どういう傾向があるかということを示している、直線或いは曲線モデルである。従いまして、ここに点線が入っている。これは、この直線の95%の信頼区間を示している。そうしますと、この直線はどんどんどんどん小さくなってゼロに収束する。つまり初めからそういう仮定でこのモデルを作っているわけである。従いまして、この辺は、こういうそれぞれのカテゴリーごとの95%の信頼区間と似たような値をとってくるが、この辺は明らかに他のものは非常にばらついているのに、ゼロに収束していく。明らかにその現実を反映していない。ですから繰り返しになるが、この直線というのは全線量の傾向を示しているものであって、どこからどこまでがリスクがはっきりしていて、どこからどこまでがはっきりしませんよ、というものはこれでは表せない。それが、まず第1にある。そして、このグラフで次に閾値のことが書いてあるので、それをご説明するが、閾値は自動的に決まってくるものではないので、まずこの直線は原点を通ると仮定して計算する。次に、例えば10mGyに閾値がある、20mGyに閾値がある、という形で順々に閾値があるということを仮定して計算をする。そのどこで一番このデータにモデルがフィットするのか、それはフィットすることを示す統計値があるので、その統計値で判断していく。この場合には、原点を通るというものが、閾値があると仮定するよりも、最もこのデータにフィットするということなので、閾値の推定値は0.0Gyであるという形で通常考えている。ただもちろん、その95%信頼区間がどこまでで、上側が曖昧かということが出てくるので閾値については0.15Gyぐらいまでは、ある可能性があるという、そういう推定値になっている。
先程の直線に戻る。ここの曖昧さをどのようにして表現するのかということが次の課題になる。それがこのグラフである。これがある線量までの傾き、それを低いほうの線量の傾きと高い方の線量の傾きを別々にとれると考えて計算をする。あとのパラメータは一緒とすると最初の傾きはこの辺が上にいっているのが多いのでどうしても高い所に出てくる。それがだんだんだんだん全体のところに収束していき全体の線量というのは、さっきのグラフに一致するわけだが、そういうこの部分がどうであるか、というのを示したのがこのグラフである。小さいところでは、当然どっちを向いていようがまったく有意ではない、というところから始まる。推定値としてはこういうところを取るが。それがだんだんだんだん一定の方向を向いてきて、有意になるという点がこの0.2Gyのところである。先程のリスクが有意となる最小線量は0.2Gyというのは、こういうことで計算をしている。このことで、ただちに、有意になるのは0.2Gy以上なのかということは、それはまた必ずしもそういえるのかどうかというのが難しいところもあるが、現在のところそれ以下では有意にはならない、ということでもってこれ以上で有意になると考えていいのではないかと、そういう考え方をしている。ここが、多分、一番現在分かりにくいところだとは思うが、曖昧さというものを現在こういう方法で、他にも方法ありますけど、従来的にはこういう方法で評価してきたということである。
これが他のデータでどうかということである。これが今のデータ。これが前段階。これが、がんの死亡だが、がんの罹患、それに対応するUNSCEAR(※8)での集約値である。リスクが有意となる最小線量は今回これである。前回はこれだがp値が0.1で計算しているので、これに比べて小さい値になっている。これは統計学的に有意性を広くとると、この値は小さくなるということになるので、直接的には比較できない。がん罹患に関しては、こちらを見てもらったほうがいいが、同じデータを使っているので、0.25Gyという値になる。ですからこの辺で報告ごとに、やっぱりこういう数値がばらついてくるということになる。同じように閾値についてもこれが今回で、がん罹患では40mGyぐらいに閾値があるというふうなことになっているが、もちろんこれはゼロと比べて有意にならないから、これでもって閾値がある程度確定できるとはとてもいえない数値であるから、今のところ閾値はないということに対する有効な考え方にはなっていないということにはなる。
こういうものがどういう分布をとるのかというと、このデータではこういう分布をとっているし、この罹患リスクに関しては、こういう分布をとっている。上のほうは、少々点は変わるが、ここにこういう傾向があるいうのは変わりようがないが、ここの分布というのは結構、報告ごとに変わっている。次が新しい方法である。今のような形で全体としての傾向、そして、この辺としての結果、曖昧さについて、ふたつに分けてやるのはどうにもよくないのではないかと、今まではそれしかなかったが、ということでいろんな方法が試されている。
これはそのひとつである。これは英語になっておりBayesian semi-parametric modelということになるが、こういう点をつないでいった場合にどういう形になるのかということだが、単純につなぐと緑のような恰好になるが、これではあまりかんばしくないだろうということで一定のルールの下につないでいくという、そこのルールというのが、なかなか一言で説明できないが、最も統計学的に適切だろうと考えられるルールに基づいてつないでいくとどうなるか、というのが今回のこの赤い線である。この黒いのが、閾値がなくて且つ直線であることを示す線、それから青いのが先程のこのデータであるから、40mGyに閾値があるというのが最も統計学的にはフィットするという形で、結果が出されているものである。40mGyのところに閾値があるとして、こういうふうになっている。そうしますとこの赤い線というのは、最初はあまり上がらなくて、そこから上がっていくという、そういう線をとる。ここでは、そういう線は、だいたい今までの結果とほぼ共通する。この点線が、この赤い線に対応する95%信頼区間を直接的に示しているものである。この場合、下のほうとしては0.1Gy、100mGyまでは、下のほうでかなりばらつきが入り込みますよと。しかし、100mGyを超えるあたりよりは、概ね有意になってくるだろうとそういう結果を示している。ですから、これは、先程見ますとここに相当するもので、これよりかなり小さい値になる。ですから、こういう形で直接に誤差を推定するほうが、より正確なのかなということにはなるが、一方でこのやり方だと結局つないでいくので例えば1Gyでは、どれくらいのリスクがあるのか分かるが必ずしも直線にはならないので、そういう直線にならないものをどう考えるのかということが、また一方で課題になるわけで、モデルによる一長一短というものがある。従って、このレポートでは0.2Gyという値が出てくるが、なにもこれが決定的なものでなくて、いろんな意味で0.1Gyから0.2Gy、0.3Gyぐらいのまでの間は、リスク推定というのは曖昧にならざるを得ないだろうということである。
その理由である。なぜリスク推定にならざるを得ないのか、これは統計学的に研究が少ないことになるが、これはやむを得ないところだが、これを増やしたからといって必ずしもなるものでもないと。その理由がよくいわれる生活習慣等の理由である。一般的には原爆の被爆者の方というのは、原爆放射線に対して無差別に被曝されている。例えばたばこを吸う人ほどたくさん放射線を浴びたとかいうことは全くないわけである。ですから大きな交絡というのはない。喫煙で調整しても値は変わらない。しかしながら、地理的なもの、広島でいえば爆心地が市内であって遠距離被爆者の方は、当時でいえば周辺地域に住んでおられると、そういうものが、こういうレベルになってくると影響を及ぼしてくるのではないか。それから被爆している人、被爆していない人でも、たばこを吸っている人、吸っていない人が沢山いるからそういうものがどうしても信頼区間を広げていくだろうと。それともうひとつは線量推定の誤差というものがあり、遠距離被爆者での情報というのは、近距離被爆者の方よりも乏しい、曖昧であるということを先程申し上げたとおりである。それから残留放射線とか、後での医療放射線被曝等の付加される放射線量というものが入っていないのも、線量推定の誤差に入ってくる。ただ、そういうものが付加されていないということで線量評価を過小評価すると、リスクはむしろ過大評価されるほうになる。従いまして、放影研でもよく付加されるべき線量が付加されていないというご指摘を受けるが、リスク推定という意味では、線量が付加されない方がどちらかというとリスクを大きく評価するということで、いわば保守的に評価しているという考えなので、そういうことである程度カバーされているだろうということを考えている。
これで最後にしたいと思うが、その辺のベースライン。要はここがゼロだが、ここがゼロというのは、本当は何だというところである。そのゼロというものがどれだけばらつくかということを少しご説明しておきたいと思う。これはちょっと古くて全死亡ということで、がんではないが、全体の傾向を示すものとしてお示ししたいと思う。ここのゼロは、要は全被爆者でのゼロである。それに対して上の点線が遠距離被爆者3 kmから10 kmの線量ゼロの人のリスクのあるところ、こちらが近距離被爆者での線量ゼロの人のリスクがあるところ、何でこんなに差があるかというと被爆距離によって、つまり外側の人ほど内側の人よりもリスクが高くなっている、全線量、線量ゼロの人であっても。これだけの差があるわけである。では、これは先程の例えば、広島だと遠隔地の当時、農村であった人たちの方が全体として健康リスクが高かったのではないか、とかそういう地理的なものがこれに反映されているのではないかというようなことが考えられている。さらにこの赤いところは原爆時に市内に不在であった方々である。この方々は、直接被爆者の方よりも死亡リスクは低い。さらに早期入市された方はもっと低い。これはその被爆当時に市内におられた方とそれ以外の方の全体としての健康格差、それから早期に入ってこられた方は、健康な方、頑健な方が多かっただろうかとか、そういったことを示唆する所見である。こちらがそれぞれの被曝線量に対応するリスク。これのばらつきがどれくらいに対応するのかというと、結構な被曝線量のリスク、ここで250~500mGyだからそれぐらいのばらつきに相当してくるわけである。もちろんそれがそのままここにかかるわけではない。統計学的とか、疫学的な手法でもって調整はするが、しかしながらやっぱりそれだけの誤差があるということは調整しきれない部分とか、そういうのがいろいろ出てくるので、それがどこまで影響するのかということはなかなか単純に判断できない、かなり低線量域におけるリスク推定の曖昧さというものにかかってくるだろう、そのことを本当にこういうもの全て考慮してリスク推定するのは、なかなか難しいというのが、これは広島、長崎のその時点の調査における情報の今持っているものが限られているので、そこでの限界であろうというところである。
後は今日いままでしたことをまとめている。時間が超過したが、以上で私からのご説明を終わらせていただきたいと思う。どうもありがとうございました。
【会長】
A参考人どうも非常に丁寧にご説明していただき、かなり分かり易かったという印象を持った。一番印象に残ったのは、なかなか低線量域の人体影響、特にがんの発生を、リスクを評価するというのは大変な作業だということで、いろんな統計手法を駆使して推定しているけれども、今のところは0.2Gy以上だと確かな影響があっているけれども、ということであった。今日は是非、委員の先生方から日頃、低線量領域についてのこういう統計学的な推定法について、もうご理解されている方も多いとは思うが、まだ聞いてみたいということがあると思うので、どうぞ委員の先生方からご質問を挙げてください。
A参考人どうも非常に丁寧にご説明していただき、かなり分かり易かったという印象を持った。一番印象に残ったのは、なかなか低線量域の人体影響、特にがんの発生を、リスクを評価するというのは大変な作業だということで、いろんな統計手法を駆使して推定しているけれども、今のところは0.2Gy以上だと確かな影響があっているけれども、ということであった。今日は是非、委員の先生方から日頃、低線量領域についてのこういう統計学的な推定法について、もうご理解されている方も多いとは思うが、まだ聞いてみたいということがあると思うので、どうぞ委員の先生方からご質問を挙げてください。
【A委員】
スライド18ページ。Comparison groupでのばらつきが大きいというところがある。これは、広島、長崎合わせたものか。
スライド18ページ。Comparison groupでのばらつきが大きいというところがある。これは、広島、長崎合わせたものか。
【A参考人】
はいそうである。
はいそうである。
【A委員】
広島と長崎で別々にやるとまた変わってくるのか。
広島と長崎で別々にやるとまた変わってくるのか。
【A参考人】
そうだろうと思う。ちょっとそこまでは。人数はやっぱり広島の方のほうが多いので、広島の方を反映しているように思う。
そうだろうと思う。ちょっとそこまでは。人数はやっぱり広島の方のほうが多いので、広島の方を反映しているように思う。
【会長】
広島に引っ張られている可能性はあるのか。
広島に引っ張られている可能性はあるのか。
【A参考人】
はいそうである。
はいそうである。
【A委員】
でも7 km~10 kmが、かなりこっちにいくと0.5~0.7Gyぐらいに相当するぐらいの。
でも7 km~10 kmが、かなりこっちにいくと0.5~0.7Gyぐらいに相当するぐらいの。
【A参考人】
これは全死亡であるから、死亡全体でいけば、がん以外のものも多いので、そこらへんは必ずしもがんは反映していないところがあるので、これは一例としてこういうことがあるということで、これが今後、広島、長崎の別だとか、がん及びがん以外の死亡であるとか、そういうものできっちり見ていかなければならないところであると考えている。
これは全死亡であるから、死亡全体でいけば、がん以外のものも多いので、そこらへんは必ずしもがんは反映していないところがあるので、これは一例としてこういうことがあるということで、これが今後、広島、長崎の別だとか、がん及びがん以外の死亡であるとか、そういうものできっちり見ていかなければならないところであると考えている。
【会長】
がんに絞った距離との関係は。
がんに絞った距離との関係は。
【A参考人】
やっていない。
やっていない。
【会長】
プレストンさんの論文に何かあったような気がするが、なかったか。
プレストンさんの論文に何かあったような気がするが、なかったか。
【A参考人】
ゼロ線量で、ですか。
ゼロ線量で、ですか。
【会長】
3 km以内でもゼロ線量のグループでのがんは、リスクはどうだ、こうだとか。
3 km以内でもゼロ線量のグループでのがんは、リスクはどうだ、こうだとか。
【A参考人】
はい。がんの解析の場合に3 km以遠で少しベースラインが違うということを前提にして解析する場合がある。
はい。がんの解析の場合に3 km以遠で少しベースラインが違うということを前提にして解析する場合がある。
【会長】
その時も遠距離のほうが高く出ていたのか。
その時も遠距離のほうが高く出ていたのか。
【A参考人】
はい。これと同じような傾向はある。
はい。これと同じような傾向はある。
【会長】
プレストンさんのは、がんでしたよね。
プレストンさんのは、がんでしたよね。
【A参考人】
はいそうである。
はいそうである。
【B委員】
初歩的な質問。13ページ。いつもこのグラフをみて悩ましいが、左側にあるのと右の真ん中といっしょか。
初歩的な質問。13ページ。いつもこのグラフをみて悩ましいが、左側にあるのと右の真ん中といっしょか。
【A参考人】
いえ違う。これはここのところを拡大しているだけである。これはこの結果を出しているだけである。
いえ違う。これはここのところを拡大しているだけである。これはこの結果を出しているだけである。
【B委員】
先生の今日のお話で線形モデルとの関係がよく分かって助かった。それとは関係ないが、真ん中のグラフを見たときに1点1点をみていくと有意なものが3個あるという感じか。
先生の今日のお話で線形モデルとの関係がよく分かって助かった。それとは関係ないが、真ん中のグラフを見たときに1点1点をみていくと有意なものが3個あるという感じか。
【A参考人】
そうだが、これはこの点というのはここからここまで、そのバンドに対する点であるので、そのバンドをどう設定するかによってかなり任意に変わってくる。従いまして、全体として傾向を示すためにこれを出しているが、ひとつひとつをそういう形で捉えるとちょっと全体を表せないと思う。
そうだが、これはこの点というのはここからここまで、そのバンドに対する点であるので、そのバンドをどう設定するかによってかなり任意に変わってくる。従いまして、全体として傾向を示すためにこれを出しているが、ひとつひとつをそういう形で捉えるとちょっと全体を表せないと思う。
【B委員】
ありがとうございました。いつも、この線を混乱してしまうので助かった。
ありがとうございました。いつも、この線を混乱してしまうので助かった。
【C委員】
14ページ。確認というか、一番下の全線量域でのERR/Gyがだいたい、いろんな推定でも0.4から0.5の間にという形でこれはもう一致していると思うが、ちょっと私自身がよく理解していないのが、よく100mSv当たりの発がん死亡リスクが0.5%といわれる。それとこの値との関係というのは。
14ページ。確認というか、一番下の全線量域でのERR/Gyがだいたい、いろんな推定でも0.4から0.5の間にという形でこれはもう一致していると思うが、ちょっと私自身がよく理解していないのが、よく100mSv当たりの発がん死亡リスクが0.5%といわれる。それとこの値との関係というのは。
【A参考人】
その100mSv当たりの0.5%というのは、全生涯でのということか。
その100mSv当たりの0.5%というのは、全生涯でのということか。
【C委員】
はい。
はい。
【A参考人】
これは30歳で被爆された場合の70歳時点において、同じ70歳の方と比べた場合にどれだけリスクがあるかということで、大きなそういう条件を無視しているが、いずれにしても、時点でどうかということで、生涯で何%を超えるかということになると、そういうものを年齢ごとに積み重ねていって、なお且つ当然亡くなられて少なくなっていくが、生命表法に基づいて積算していく結果になるので、これから次の段階になる。
これは30歳で被爆された場合の70歳時点において、同じ70歳の方と比べた場合にどれだけリスクがあるかということで、大きなそういう条件を無視しているが、いずれにしても、時点でどうかということで、生涯で何%を超えるかということになると、そういうものを年齢ごとに積み重ねていって、なお且つ当然亡くなられて少なくなっていくが、生命表法に基づいて積算していく結果になるので、これから次の段階になる。
【C委員】
もうひとつ。全体的なことだが最近の低線量域での疫学調査の論文を拝見すると、例えばINWORKS(※9)とかでも有意差は見えないが、傾向としてどうも増えているようであると、いうような論調で書かれているものが多いかなというふうに思うが、今なにかそういった傾向といいますか、あるのでしょうか。
もうひとつ。全体的なことだが最近の低線量域での疫学調査の論文を拝見すると、例えばINWORKS(※9)とかでも有意差は見えないが、傾向としてどうも増えているようであると、いうような論調で書かれているものが多いかなというふうに思うが、今なにかそういった傾向といいますか、あるのでしょうか。
【A参考人】
それは書き手がどういうふうにその解析結果をどう解釈されているか、ということにやはりよると思う。
それは書き手がどういうふうにその解析結果をどう解釈されているか、ということにやはりよると思う。
【D委員】
低線量のリスクの検出というのが非常に難しいというのが本当によく分かった。私の質問は、C委員の質問とほとんど同じなのだが、放影研のデータというのは線量の精度が極めて高く評価されているということと、それとその後のコホート(※10)調査が厳密に行われたということで、コホート自体が非常に正確にリスクを検出できるというように、世界中に理解されていると思うが、そのコホートをもってしてもなかなか200mSv以下のリスクは検出が難しいというお話だったと思う。そういう中で先程、C委員がご指摘になった最近、原子力施設の作業者のデータとか、或いはCTを受けた子供たちのデータでこれが、母集団を非常に大きくして検出力を出そうというような試みだと思うが、こういうデータの検出力というような観点で先生から今お話しになられたようなベースラインのばらつき、そういうものを考えた場合に、コホート集団を非常に大きくした場合、その検出がどれくらい可能性があるのでしょうか、ということを先生の疫学者としての感想でも教えていただけたらと思う。
低線量のリスクの検出というのが非常に難しいというのが本当によく分かった。私の質問は、C委員の質問とほとんど同じなのだが、放影研のデータというのは線量の精度が極めて高く評価されているということと、それとその後のコホート(※10)調査が厳密に行われたということで、コホート自体が非常に正確にリスクを検出できるというように、世界中に理解されていると思うが、そのコホートをもってしてもなかなか200mSv以下のリスクは検出が難しいというお話だったと思う。そういう中で先程、C委員がご指摘になった最近、原子力施設の作業者のデータとか、或いはCTを受けた子供たちのデータでこれが、母集団を非常に大きくして検出力を出そうというような試みだと思うが、こういうデータの検出力というような観点で先生から今お話しになられたようなベースラインのばらつき、そういうものを考えた場合に、コホート集団を非常に大きくした場合、その検出がどれくらい可能性があるのでしょうか、ということを先生の疫学者としての感想でも教えていただけたらと思う。
【A参考人】
当然、数というのは非常に問題になってくるけれども、疫学の場合には、数というものよりもその集団がどういう特性をもっているのかということのほうを重要視する。原爆被爆者の方の調査において、ほとんど放射線のことだけ考えていれば、結論が出てきたというようなことは、結局先程も申したように殆どが無差別に被爆されているので、たばこ吸っている人ほど線量を沢山あびたというような、そういう状況が全く考えなくてもいいと、そしてそのことを考えなくていいというのは、この領域においてほとんど考えなくいい、従ってこの領域で決まってくるものはほぼ確実であろうと、そういうところに寄っているわけである。それが1Gy当たり40%~50%増しになるリスクであるということで、そこはもう揺るがしようがないと思う。しかしながら、先程申し上げた問題がこういうところには沢山あるので、それがどうなのかというのは、この調査でもそういうところは非常に分からない部分である。同じようにCTの調査であるとか原子力作業者の方の調査であるとかその対象者がどういう特性をもっておられるのか、というところが結果にどのように影響しているのかというところをいかに考えるのか、というところが難しいと思う。だから、そこのところをいかに考えるかということで出てきている結果をどのように解釈するのかいうことになってくるかと思う。
当然、数というのは非常に問題になってくるけれども、疫学の場合には、数というものよりもその集団がどういう特性をもっているのかということのほうを重要視する。原爆被爆者の方の調査において、ほとんど放射線のことだけ考えていれば、結論が出てきたというようなことは、結局先程も申したように殆どが無差別に被爆されているので、たばこ吸っている人ほど線量を沢山あびたというような、そういう状況が全く考えなくてもいいと、そしてそのことを考えなくていいというのは、この領域においてほとんど考えなくいい、従ってこの領域で決まってくるものはほぼ確実であろうと、そういうところに寄っているわけである。それが1Gy当たり40%~50%増しになるリスクであるということで、そこはもう揺るがしようがないと思う。しかしながら、先程申し上げた問題がこういうところには沢山あるので、それがどうなのかというのは、この調査でもそういうところは非常に分からない部分である。同じようにCTの調査であるとか原子力作業者の方の調査であるとかその対象者がどういう特性をもっておられるのか、というところが結果にどのように影響しているのかというところをいかに考えるのか、というところが難しいと思う。だから、そこのところをいかに考えるかということで出てきている結果をどのように解釈するのかいうことになってくるかと思う。
【会長】
集団の特性ということで、被爆者は非常に割合、医学的には特性を持っていると考えられているだろうと思うが、例えば小児のCTを何十万人という単位でみた論文が結構沢山出ているが、そこで一番問題になっているのが、何十万と子どもさん達を集めると先天異常の子どもさんが相当含まれると、最初からである。その人達から出てくるがんとか白血病の発生が交絡しているのではないかという話が今一番ポイントで、そういうのも特性というふうに考えていいか。或いは、子供という特性でもっと別の特性を沢山考えないといけないのか。
集団の特性ということで、被爆者は非常に割合、医学的には特性を持っていると考えられているだろうと思うが、例えば小児のCTを何十万人という単位でみた論文が結構沢山出ているが、そこで一番問題になっているのが、何十万と子どもさん達を集めると先天異常の子どもさんが相当含まれると、最初からである。その人達から出てくるがんとか白血病の発生が交絡しているのではないかという話が今一番ポイントで、そういうのも特性というふうに考えていいか。或いは、子供という特性でもっと別の特性を沢山考えないといけないのか。
【A参考人】
CTの場合は、CTを受けられた方々が対象になっているので、そういう方々がどういう方々であったかということである。例えば、先天異常の方とか、CTを受けるという適応がどういうものであったのかとか、そういう問題が一番考えなければならない問題であると思う。
CTの場合は、CTを受けられた方々が対象になっているので、そういう方々がどういう方々であったかということである。例えば、先天異常の方とか、CTを受けるという適応がどういうものであったのかとか、そういう問題が一番考えなければならない問題であると思う。
【会長】
はい。分かりました。私の方からもうひとつ。閾値という言葉が少し分からないようになったのだが、この場合に使われている閾値の定義というか、ご説明いただきたい。閾値がゼロだというところがちょっと。
はい。分かりました。私の方からもうひとつ。閾値という言葉が少し分からないようになったのだが、この場合に使われている閾値の定義というか、ご説明いただきたい。閾値がゼロだというところがちょっと。
【A参考人】
閾値というのはその線量までリスクがないと考えられるという線量である。例えば、閾値が40mGyという結果がある。40mGy以下はリスクがゼロであるという、積極的にリスクがゼロである、ということができるという。
閾値というのはその線量までリスクがないと考えられるという線量である。例えば、閾値が40mGyという結果がある。40mGy以下はリスクがゼロであるという、積極的にリスクがゼロである、ということができるという。
【会長】
閾値がゼロという場合は、どのように解釈されるのか。
閾値がゼロという場合は、どのように解釈されるのか。
【A参考人】
閾値がゼロというと線量が上がれば、それに対してリスクも上がるであろうという、そういう関係を示す。
閾値がゼロというと線量が上がれば、それに対してリスクも上がるであろうという、そういう関係を示す。
【会長】
その場合100~0の間でも上がっていくというふうに解釈するのか。
その場合100~0の間でも上がっていくというふうに解釈するのか。
【A参考人】
それはここで申しているように、全線量における傾向を示しているわけである。ですからここで見ますようにここで点線が収束してきますけれども、全線量における傾向はそういうことを示しているが、明らかに点線が収束してくるということ事態が、ここでの現実を反映していないわけである。ですからこの線全体がここでどうなっているのかということは、やはり不確実であろうと。ですからこの直線をここにある意味伸ばすといいますか、ここを含めて考えるというか、それがゼロになるが、それがこういうところの曖昧さも含めて考えるとそこがまだ確実ではないと、そのこと自体が確実ではないというふうに考えている。
それはここで申しているように、全線量における傾向を示しているわけである。ですからここで見ますようにここで点線が収束してきますけれども、全線量における傾向はそういうことを示しているが、明らかに点線が収束してくるということ事態が、ここでの現実を反映していないわけである。ですからこの線全体がここでどうなっているのかということは、やはり不確実であろうと。ですからこの直線をここにある意味伸ばすといいますか、ここを含めて考えるというか、それがゼロになるが、それがこういうところの曖昧さも含めて考えるとそこがまだ確実ではないと、そのこと自体が確実ではないというふうに考えている。
【会長】
0.2以下から0の間は不確実だという言い方もできるか。
0.2以下から0の間は不確実だという言い方もできるか。
【A参考人】
不確実である。
不確実である。
【会長】
統計の言葉から離れて一般的な言い方をすると、0.2以上は確実だけど0.2から0までの低線量領域は不確実性もかなりあってポイントはばらついていると。ということは、そこに影響があるかないかは積極的には断定できないと。
統計の言葉から離れて一般的な言い方をすると、0.2以上は確実だけど0.2から0までの低線量領域は不確実性もかなりあってポイントはばらついていると。ということは、そこに影響があるかないかは積極的には断定できないと。
【A参考人】
はい。不確実であるということになる。
はい。不確実であるということになる。
【会長】
それを否定もできないと言い換えられるか。
それを否定もできないと言い換えられるか。
【A参考人】
どちらでもないという状況である。
どちらでもないという状況である。
【会長】
影響がありえるということも含めて不確実だと。
影響がありえるということも含めて不確実だと。
【A参考人】
不確実である。
不確実である。
【会長】
そういうふうな解釈でよろしいか。ありがとうございました。今日はここまでで、十分ご質問できたのではないか思うがよろしいか。委員の先生方よろしいか。どうも先生、お忙しい中を長崎までお越しいただき、懇切丁寧な、しかも分かり易いお話しで随分我々の理解も進んだと思う。本当にありがとうございました。
そういうふうな解釈でよろしいか。ありがとうございました。今日はここまでで、十分ご質問できたのではないか思うがよろしいか。委員の先生方よろしいか。どうも先生、お忙しい中を長崎までお越しいただき、懇切丁寧な、しかも分かり易いお話しで随分我々の理解も進んだと思う。本当にありがとうございました。
2 小児および胎児の放射線被曝による癌リスクの調査結果について
(1)小児および胎児の放射線被曝による癌リスク
【会長】
それでは、残された時間で今日は十分な時間がありませんので途中で終わることになると思うが、ふたつ目の議題で小児および胎児の放射線被曝による癌リスクの調査結果について、特に今日は胎児の放射線被曝ということで、私が調べたことをお話し申し上げたいと思う。それからE委員から追加の報告があり、それを連続でやりまして、それから今日はおそらくディスカッションする時間がないのではないかと思って、次回にディスカッションは持ち越してやると、結構重要なデータがまとめられているというふうに私自身は感じたので、先生方のご意見というのを次回にお聞きしていくという形で考えている。
それでは、残された時間で今日は十分な時間がありませんので途中で終わることになると思うが、ふたつ目の議題で小児および胎児の放射線被曝による癌リスクの調査結果について、特に今日は胎児の放射線被曝ということで、私が調べたことをお話し申し上げたいと思う。それからE委員から追加の報告があり、それを連続でやりまして、それから今日はおそらくディスカッションする時間がないのではないかと思って、次回にディスカッションは持ち越してやると、結構重要なデータがまとめられているというふうに私自身は感じたので、先生方のご意見というのを次回にお聞きしていくという形で考えている。
それでは用意した情報提供シートであるが、米国学士院(※11)のほうから「低線量被曝による健康リスクに関する委員会」が第7報2期の報告書を出している。これは、テーマは小児および胎児の放射線被曝による癌リスクというテーマで、みなさんに1枚ものの英文のものを出しており、172ページから173ページのところにexposure in uteroというのがあるが、これが胎児被曝の米国学士院のまとめである。
まず1番目にこの胎児被曝の前に原爆放射線による胎内被曝というところも151ページにあり、それは、今日はプリントしていない。シートの第1ページ目にまとめてみると、紹介されているのは、放影研(※12)からの第1報、これはkatoさんという方が発表しているが、胎児被曝の影響は検出できなかったという有名な論文がある。1,300人の胎内被曝の子供たちを24年間フォローアップして、どのくらい死亡があったか、その原因疾患を調査している。ここで重要なことは、母親の放射線被曝線量が増すとともに、死亡が増加している。特に出生後の第1年目に集中している。ただし死因が特定できていないことがあり、終戦後の非常に混乱した時期で死亡診断書がなかったとか、いろんなことである。その後の9年間には、この線量によって死亡の増加というのは見られていないが、さらにその後9年間で再び増加しており、そこで、3例の癌が発生して、白血病がその内の1例である。これは当時の日本の小児癌の発生数と大差がないという判断から、この時期での胎児被曝者の年齢が26歳の時であるが、結論が影響ありとはいえないということで、今後さらに長期の観察期間が必要ということになっている。外国からもこの論文に対していろんな評価、批判があって、観察症例が少なすぎるのではないかということである。そういうことで放影研も研究を続けられ、第2報とも言うべきYoshimotoらの報告が1991年にあり、観察期間を延ばして1984年まで症例追加がなされて症例数は18例となっている。小児科タイプの癌はわずかに2例で、その他全て成人型の癌であった。生後被曝した対照群の小児癌とほぼ同じ癌のパターンであった。その結果の解析では対照群に比べて、先程、A参考人が説明された相対リスクのRR=3.77/Gyとして、線量反応が放影研として確認したという報告である。それからさらに1997年、放影研の第3報的なものとしてDelongchampという人が原爆被爆者群と生後被曝した小児を対照群として比較をおこなって、さらにカバーされる期間が1992年までいっている。これは、1988年に同じYoshimotoさんたちの報告よりも、もっと観察が延ばされたわけである。10例の新たな癌が被爆者群で観察されて、ERR/Sv=2.1の有意の線量反応を認めている。特異点としては、この10例中9例が女性だった。そこで乳癌と子宮癌と卵巣癌の女性特有の癌を除いてみても、10例中9例でほとんど女性であり、どうしても性差がある。これはまだ解決できない問題でなぜそうなのか、というのがわからないから、さらに観察を続けなければならないという結論になっている。
以上が原爆のほうで、後でE委員からこの胎児被ばくの放影研のデータで線量との関係についてご報告がある。
それから次に小児(胎児を含む)における医学低放射線による被曝のリスクということで米国学士院の委員会は、一番上に脊柱湾曲症に対する放射線の治療、2番目に我々がかなり精力的に検討してきたCTスキャンのことがここに入るが、この報告書でのこういうデータは少し古いデータでEPI Study(※13)という100万人規模のレポートを今我々の委員会は待っている状況であるが、一昨日検索した段階ではMedline(※14)では、発表は上がっていない。ドイツ、フランスから個別に発表がその後あっているが、確かにCTを受けた子供では癌と白血病の患者数が増えている傾向にあるが、やっぱり先天異常の問題だとか、先程,A参考人がおっしゃったような特性の問題だとかが克服できていないので,このEPI Studyを待っているというような結論になっている。
それで、胎内被曝であるが,これは先程の172から173ページが本文の方は英語である。まず第1番目のオックスフォード大学の小児癌、これはイギリスのオックスフォード大学のSurveyでOSCCと略しているが、Alice Stewartという女性の教授がおられて、母親の骨盤をX線検査によって出生前被曝した子ども達について、その後の癌の発生増加の最初の報告である。これは、有名な報告で反論も大変多くて、私自身は疑問をもたれた研究だというふうにちょっと頭に入っていたが、今回この米国学士院の報告を読むとそうでもないな、ということでご紹介しているわけである。方法は英国全域の小児癌、これは終戦後まもなくの頃のイギリスの話である。X線が非常に広範に応用されて、お産の時の安産を確かめるために母親の骨盤のX線検査というのが非常に記録された。そこで英国全域の小児癌1416例とそのケースコントロール群間比較を行っている。ケースコントロールというのは、こういうX線検査を受けていないお母さんから生まれた子供を年齢とか性を合せて、大体同じ検出のグループにして観察するということで、要するに妊娠中及び出生後の放射線被曝のアンケート調査をやっている。アンケート調査に非難があったが、結果は被曝群において癌と白血病を併せて約40%、1.4倍に上がっているという驚くべき調査結果が初めて出された。この時の批判も思い出し調査、母親に後から子供さんが癌になった時に、あなたは骨盤の検査を受けていましたか、という調査は癌になった母親がよく覚えているという傾向を生むのではないかということである。バイアスというか、批判があった。
そこで2番目にMacMahonという人達が、米国の医者が1962年に追試確認の報告をしている。米国東北地方の小児734,000人の調査を行って、1954年まで小児癌584症例について、母親の病歴を病院記録をもとに行い、思い出しバイアスを排除したということである。結果はStewartらと同様、約40%の過剰を観察している。5-7歳のときにそういう癌とか白血病とか最大2倍になったということである。
3番目であるがOSCCは、オックスフォード大学はその後もずーっと全米の小児の癌の死亡について母親の妊娠中のX線被曝を調査し続けており、そこにいろいろ書いてあるが時間がないので簡単にいうと、この報告が出て以来、臨床の産婦人科の先生方も骨盤検査を自粛する方向にどんどんなっていって70年代、80年代となるにつれて母親の被曝線量が当然減ってくるから、小児の癌の発生も減ってきた、というまたユニークな観察がされている。それから、10)のところDoll/Wakeford、有名な研究がなされており、原爆被爆者のコホート研究を含めたメタアナリシスという、あらゆるこの種の研究をまとめて観察してみると、被爆者のコホート研究で第1報で差が観察できなかったというのを除けば、ほぼ全てものでRR(※15)が観察できたと、影響が観察できたということである。その時に、Doll先生が原爆の胎内被曝群の追跡年数が短くて、十分な症例数が集積されていないためと推定している。それから、国連の放射線専門家のUNSCEARという別の団体があるが、1972年にいろいろなドクターが観察したが,胎児の被曝線量がずっと下がっていくのである。それと共に小児癌が減っていったということをUNSCEARも認めている。それから11番目にUNSCEARの結論が照会されているが、これは1996年の結論である。これは原著を手に入れようと思っているが、まだ手に入っていない。ERR(※16)の上昇が認められているというのが、UNSCEARの結論で、それによれば10-20mGyで、これ非常に低い。そこで40%の過剰が認められているということになっている。その後も報告が続いて一番最近は2003年のWakeford/Littleという人が胎内被曝による小児癌のERR=50Gy-1、EAR=8%-1というようにして、結論としては胎児のX線被曝事例と原爆放射線被曝の事例におけるERRはほぼ一致しており、このふたつは線量が違うが低い線量のほうのデータとしては10mSvのオーダーで胎内被曝が小児癌リスクを押し上げる、という結論を出している。こういう米国学士院の報告が出ている。
私の意見としては、我々が今問題にしている100mSv以下のところの影響をこういうふうに報告してあるので、我々はこれを十分調査、分析しなければいけないということで、特に被爆地拡大の住民の方々のいろんなデータで140名ぐらいの方が原爆被爆者の胎内被曝と同じ状況で、お母さんが妊娠中に原爆を体験しておられる。そういうことも考慮するならば、この課題をしっかり検討しなければいけないと、そこでE委員に追加の論文をお願いする。
(2)胎児及び若年被爆者における固形がん
【E委員】
追加の論文であるが、先程、会長のほうから紹介があった原爆被爆者における胎内被曝と癌リスクいうことで1997年に第3報が出ているが、その後の一番新しいデータで2008年のデータを紹介したいと思う。これは1999年までであるから、被爆後54年間までのデータをまとめたものということになっている。この論文では長崎、広島の胎内被曝の方が2,452名、被爆当時6歳以下の方が15,388名であるがこの方々を対象にして、固形がんの頻度について調査を行っている。その結果、胎内被爆者群では94名、小児期被爆者群の中では649名で固形がんが診断されている。小児期被爆者群では、診断到達時年齢、診断時何歳だったのか、これが30歳~54歳の群では男性、女性とも0.2Gyであるから200mGy以上の被ばく線量群で固形がんの上昇を認めている。そして診断到達時年齢が12歳~29歳の群では女性のみ200mGy以上での被ばく線量群のみで有意な上昇を認めている。一方、胎内被爆者群では診断到達時年齢が12歳~29歳の群の女性のみで固形がんの有意な上昇を認めた。それをまとめたのが、下の表ということになる。左に胎内被爆者、右に小児期被爆者をみているが、これで相対リスクというところがある、数字の5.0と書いているところが相対リスク。かっこにふたつ数字がでている0.2-127、0.3-11とあるが、この範囲が1をまたがないものが有意な上昇を認めた群ということになる。そうするとみて分かるように男性の12歳~29歳の群では、0.005Gy未満、つまり5mGy未満、或いは5mGyから200mGyの間、いずれも有意な上昇を認めていないということが分かる。さらに、男性の診断到達時年齢30歳~54歳をみるとこれでは胎内被爆者ではいずれの線量群でも有意な上昇は認められない。ただし、小児期被爆者では0.2Gy以上、200mGy以上の被ばく群で相対リスクが1.7で95%信頼区間が1.2-2.4で1をまたぎませんので、ここは有意に上昇していることが分かる。さらに女性の診断到達時年齢30歳~54歳の群をみると、胎内被爆者で0.5mGy以下或いは0.5mGyから200mGyの間ではいずれも有意ではありませんし、200mGy以上でも有意には認められておりません。ただし、小児期被爆者の方では、0.2Gy以上、つまり200mGy以上の方では有意な上昇が認められているという事が分かる。
追加の論文であるが、先程、会長のほうから紹介があった原爆被爆者における胎内被曝と癌リスクいうことで1997年に第3報が出ているが、その後の一番新しいデータで2008年のデータを紹介したいと思う。これは1999年までであるから、被爆後54年間までのデータをまとめたものということになっている。この論文では長崎、広島の胎内被曝の方が2,452名、被爆当時6歳以下の方が15,388名であるがこの方々を対象にして、固形がんの頻度について調査を行っている。その結果、胎内被爆者群では94名、小児期被爆者群の中では649名で固形がんが診断されている。小児期被爆者群では、診断到達時年齢、診断時何歳だったのか、これが30歳~54歳の群では男性、女性とも0.2Gyであるから200mGy以上の被ばく線量群で固形がんの上昇を認めている。そして診断到達時年齢が12歳~29歳の群では女性のみ200mGy以上での被ばく線量群のみで有意な上昇を認めている。一方、胎内被爆者群では診断到達時年齢が12歳~29歳の群の女性のみで固形がんの有意な上昇を認めた。それをまとめたのが、下の表ということになる。左に胎内被爆者、右に小児期被爆者をみているが、これで相対リスクというところがある、数字の5.0と書いているところが相対リスク。かっこにふたつ数字がでている0.2-127、0.3-11とあるが、この範囲が1をまたがないものが有意な上昇を認めた群ということになる。そうするとみて分かるように男性の12歳~29歳の群では、0.005Gy未満、つまり5mGy未満、或いは5mGyから200mGyの間、いずれも有意な上昇を認めていないということが分かる。さらに、男性の診断到達時年齢30歳~54歳をみるとこれでは胎内被爆者ではいずれの線量群でも有意な上昇は認められない。ただし、小児期被爆者では0.2Gy以上、200mGy以上の被ばく群で相対リスクが1.7で95%信頼区間が1.2-2.4で1をまたぎませんので、ここは有意に上昇していることが分かる。さらに女性の診断到達時年齢30歳~54歳の群をみると、胎内被爆者で0.5mGy以下或いは0.5mGyから200mGyの間ではいずれも有意ではありませんし、200mGy以上でも有意には認められておりません。ただし、小児期被爆者の方では、0.2Gy以上、つまり200mGy以上の方では有意な上昇が認められているという事が分かる。
結果としては、先程、A参考人が説明された0.2Gyのところとほぼ一致するような結果ではないかというふうに思う。
【会長】
やはり女性が多い。それで、0.2Gyというのが再び出てきたが、それ以上は確実にみられる。だから、かなり母親の骨盤、X線検査のデータの10-20mSvと随分違うので、これは慎重に今後も検討していきたいと思っている。
やはり女性が多い。それで、0.2Gyというのが再び出てきたが、それ以上は確実にみられる。だから、かなり母親の骨盤、X線検査のデータの10-20mSvと随分違うので、これは慎重に今後も検討していきたいと思っている。
今日はここで終わらさせていただきたいと思うが、是非、原著論文を先生方読んでいただきたいと思う。今日は、我々の研究会も回を重ねて、そろそろ一定の結論を導かないといけないという時期になってきており、今年度末までにはその努力をしていこうということを思っているので、委員の先生方ひとつよろしくお願いする。ただ、EPI Studyという小児CTの結果がタイミングよく今年度、2016年内に発表されれば大変いいが、そこがちょっとまだ分からないということがある。それでも、論文はもう沢山出ているので、そういうものを総合的にまとめて、どういうふうに被爆地拡大における低線量被曝の人体影響というものを考えたらいいか、ということについて結論を導ければと思っている。
【事務局】
会長、そうしましたら、次回の開催は、だいだい来年の3月を目途にということでよろしいか。
会長、そうしましたら、次回の開催は、だいだい来年の3月を目途にということでよろしいか。
【会長】
3月であるので、それまで約半年あるが、これまでの研究会の全てのデータを先生方も振り返っていただいて、まだやり残している部分がないかどうか、ということの点検を含めてである。小児が少し大人よりも感受性が高い。大部分の被爆地拡大の体験者の方々は小児だったわけである。そういう意味で小児の感受性をどうみるか、という点も課題かなと思っている。そして、もうひとつ小児の部分のことを推定する、推定法がこれにあるので、これはE委員くらいに是非、検討していただければと思っているので、またこれは改めてお願いしたいと思う。今日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
3月であるので、それまで約半年あるが、これまでの研究会の全てのデータを先生方も振り返っていただいて、まだやり残している部分がないかどうか、ということの点検を含めてである。小児が少し大人よりも感受性が高い。大部分の被爆地拡大の体験者の方々は小児だったわけである。そういう意味で小児の感受性をどうみるか、という点も課題かなと思っている。そして、もうひとつ小児の部分のことを推定する、推定法がこれにあるので、これはE委員くらいに是非、検討していただければと思っているので、またこれは改めてお願いしたいと思う。今日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
第8回(平成28年度第2回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
1 研究論文等の調査結果について
(1) 前回(第7回)紹介された論文の意見交換
1. 小児および胎児の放射線被曝による癌リスク
2. 胎児及び若年被爆者における固形がん
【会長】小児というよりは、胎児について議論を進めていきたい。
そこで紹介している論文は報告書であり、米国学士院(※1)の「低線量被曝による健康リスクに関する委員会」第7項の第2期の報告書であり、いわゆるベアセブン、フェイズツーといわれるものである。胎児の放射線被曝によるこれまでのアリス・スチュワート以来の1955年の長い歴史のある胎児被曝のことがまとめられている。
まず、一番目に原爆放射線による胎内被曝とがんのリスクがあるかという問題についてはABCC(※2)以来、現在の放影研(※3)につながる一連の部分が5、6編出ており、それらを1ページ目に紹介している。最初の第1報では確認がされなかったということである。これは戦後24年間のものである。がんが一つ出ているが、はっきりしたものはなかった。第2報で吉本という方が1991年までのデータを調べて、今期初めて胎児被爆者でも小児がんが2例、成人型のがんが16例、合わせて18例出ており、これを母親の被曝線量で調べてみるとRR(※4)が3.77、1Gy当たりである。線量反応が初めて見られた。それから、1997年の放影研の第3報としてデロングシャンプによる論文が文献2で、再び線量反応を認めている。このときはERR(※5)は1Sv当たり2.1という数字が出ていた。ここで特異的な所見があり、がんになった人の10例中9例が女性である。普通はなかなか見られないデータである。
後ほど、最近のプレストンの報告をB委員にお願いする予定であったが、今お願いしたい。
【B委員】
お手元の資料5ページで、これは胎児及び若年被爆者における固形がんという2008年にプレストンが出した論文である。
胎内被曝によって小児がんのリスクが上昇するということであるが、その後成人になった時のがんリスクは実はよく分かっていないということで、この論文は広島・長崎で胎内被曝をされた2,452名と、被爆当時6歳以下だった方、当時既に生まれていた方が15,388名を対象にして、固形がんの頻度について調査を行ったものである。その結果のまとめを下の表に書いているが、小児期に被爆した方は、診断到達時年齢が30歳から54歳の年齢では、男性女性ともに0.2Gy以上被曝した群では有意な上昇を認めているということである。12歳から29歳では女性のみ0.2Gy以上の被曝線量群で有意な上昇をみせたというのが小児期の被爆者である。一方、胎内の被爆者群では、12歳から29歳の女性のみ、固形がんの有意な上昇を認めたということである。これは委員の意見に書いているが、原爆被爆者のうち胎内被爆者の調査の一番のポイントは、そもそも対象者が限られているということである。しかしながら、その一方で線量評価については他の調査に比べても信頼性が極めて高いと思う。今後も継続した調査が必要であるが、現時点で胎内被爆者では0.2Gy以下の低線量域における固形がんの有意な上昇は観察されていないということで、胎内被爆をされた方、あるいは小児期被爆の方の今後フォローアップ解析が必要ということになる。一方で、医療検査、医療被曝による胎児被曝についての健康影響についても多くの調査がされているが、大きな点として、線量の評価の妥当性についてバイアスがかかるということである。調査のスタイルとして、今紹介しているのはいわゆる前向き調査であるが、多くの場合がいわゆる後ろ向きの調査、ケースコントロールを含めた後ろ向きの調査があるため、どうしても信頼性の問題があるということで、これを慎重に考慮する必要があるのではないかというのが、委員の意見としてここに述べてある。
お手元の資料5ページで、これは胎児及び若年被爆者における固形がんという2008年にプレストンが出した論文である。
胎内被曝によって小児がんのリスクが上昇するということであるが、その後成人になった時のがんリスクは実はよく分かっていないということで、この論文は広島・長崎で胎内被曝をされた2,452名と、被爆当時6歳以下だった方、当時既に生まれていた方が15,388名を対象にして、固形がんの頻度について調査を行ったものである。その結果のまとめを下の表に書いているが、小児期に被爆した方は、診断到達時年齢が30歳から54歳の年齢では、男性女性ともに0.2Gy以上被曝した群では有意な上昇を認めているということである。12歳から29歳では女性のみ0.2Gy以上の被曝線量群で有意な上昇をみせたというのが小児期の被爆者である。一方、胎内の被爆者群では、12歳から29歳の女性のみ、固形がんの有意な上昇を認めたということである。これは委員の意見に書いているが、原爆被爆者のうち胎内被爆者の調査の一番のポイントは、そもそも対象者が限られているということである。しかしながら、その一方で線量評価については他の調査に比べても信頼性が極めて高いと思う。今後も継続した調査が必要であるが、現時点で胎内被爆者では0.2Gy以下の低線量域における固形がんの有意な上昇は観察されていないということで、胎内被爆をされた方、あるいは小児期被爆の方の今後フォローアップ解析が必要ということになる。一方で、医療検査、医療被曝による胎児被曝についての健康影響についても多くの調査がされているが、大きな点として、線量の評価の妥当性についてバイアスがかかるということである。調査のスタイルとして、今紹介しているのはいわゆる前向き調査であるが、多くの場合がいわゆる後ろ向きの調査、ケースコントロールを含めた後ろ向きの調査があるため、どうしても信頼性の問題があるということで、これを慎重に考慮する必要があるのではないかというのが、委員の意見としてここに述べてある。
【会長】
これはその前のデロングシャンプの研究と大きな相違点があるのか。
経過観察の年数が追加された。やはり継続性のある研究であるか。200mSv以上で観察されている。ただ、先ほどのように女性において偏りがあるということになっている。胎児被爆者には第1報であまり影響が出ていないのではないかと世界に伝わっていたが、その後、放影研の研究では胎児被爆でも、小児期の被爆と同じように、少し差はあるがリスクが高まることは同じだということである。ただし、200mSv以下では確認できていないということか。
これはその前のデロングシャンプの研究と大きな相違点があるのか。
経過観察の年数が追加された。やはり継続性のある研究であるか。200mSv以上で観察されている。ただ、先ほどのように女性において偏りがあるということになっている。胎児被爆者には第1報であまり影響が出ていないのではないかと世界に伝わっていたが、その後、放影研の研究では胎児被爆でも、小児期の被爆と同じように、少し差はあるがリスクが高まることは同じだということである。ただし、200mSv以下では確認できていないということか。
【E委員】
デロングシャンプの論文で行っているように、女性のがんを引くなど、そういうことは考慮して解析されているのか。前の論文では、10例中9例が女性だったから乳がん子宮がん卵巣がん等を除いて会議が行われたと書いてあったが、今回の論文ではそういうところまでやっていないのか。
デロングシャンプの論文で行っているように、女性のがんを引くなど、そういうことは考慮して解析されているのか。前の論文では、10例中9例が女性だったから乳がん子宮がん卵巣がん等を除いて会議が行われたと書いてあったが、今回の論文ではそういうところまでやっていないのか。
【B委員】
テーブルを見ていただけたら分かるが、今回のこれで見てみると小児被爆者をみても、男性女性差はトータルの数でそんなにない。胎内被爆者についても見てみると、男性女性でそんなに差があるわけではない。男女比が1対1であるので、特にそういう女性を引くなどしての解析はされていない。
テーブルを見ていただけたら分かるが、今回のこれで見てみると小児被爆者をみても、男性女性差はトータルの数でそんなにない。胎内被爆者についても見てみると、男性女性でそんなに差があるわけではない。男女比が1対1であるので、特にそういう女性を引くなどしての解析はされていない。
【会長】
婦人科がんも除いて、デロングシャンプは解析している。残りの婦人科がんを除いて、女性が多いという結論。9例だからそうなる。
婦人科がんも除いて、デロングシャンプは解析している。残りの婦人科がんを除いて、女性が多いという結論。9例だからそうなる。
【A委員】
胎内で被爆された方のリスクと、小児期で被爆された方のリスクの差という観点で、このデータからいえば、どのように評価されるのか。
胎内で被爆された方のリスクと、小児期で被爆された方のリスクの差という観点で、このデータからいえば、どのように評価されるのか。
【B委員】
小児期の方では、男性女性とも0.2Gy以上で有意な状況を認めている。一方で胎内被爆者の方では、12歳から29歳の群の0.2Gy以上で固形がんの有意な上昇を認めているということであるから、少なくとも胎内被爆群の方がいわゆる小児期被爆群よりもリスクが高いということは、このデータからは言えないと思う。ただし、小児数の問題もあると思う。胎児期のほうが高いということは、この結果からは至らないのではないかと思う。
小児期の方では、男性女性とも0.2Gy以上で有意な状況を認めている。一方で胎内被爆者の方では、12歳から29歳の群の0.2Gy以上で固形がんの有意な上昇を認めているということであるから、少なくとも胎内被爆群の方がいわゆる小児期被爆群よりもリスクが高いということは、このデータからは言えないと思う。ただし、小児数の問題もあると思う。胎児期のほうが高いということは、この結果からは至らないのではないかと思う。
【会長】
症例が、まだそんなに多くはない。この研究は、放影研は継続していたと記憶している。
2ページの2、医学的な検査による被曝というのが、あるいは医学的治療による被曝というのが脊柱湾曲(スコリオーシス)のデータや、CTスキャンに関することがある、これは後回しにして胎内被曝を続けている。
3番目が医療被曝についてであるが、検査で母親が妊娠中に骨盤の計測を正確にして、胎児の分娩の安全性を確保するということが1950年ごろから盛んに行われており、多くの母親たちが骨盤検査を受けていた。そのデータで、胎児が生まれた後にがんリスクや白血病リスクがあるという研究がなされている。それがオックスフォードの小児がん調査研究である。
これは以前に説明したため結論だけ言うと、ケースコントロールスタディという、後から思い出して、母親が検査を受けたと申告した人の子供たちが、がんと白血病を合わせると40%、1.4倍になっているという世界で始めての指摘があったものである。
その後、マクマホンが東北米地方の73万4千人の調査で、1.4倍くらいに増えているということを観察して報告している。オックスフォードのビテール/スチュワートの論文から1975年からのシリーズで観察が続けられており、いつも大体同じ傾向を確認して、なおかつ89年くらいのデータでは、知識が広まってドクターたちが婦人科の先生たちが骨盤計測をしなくなり、レントゲンの機械も改良されて1回の撮影で被曝する量も減ってきたことがあると推測されるが、1.4倍よりも下がっていた。ある意味では医療被曝を避けるということが徹底して、少し下がってきたということが観察されている。それと同じようにマクマホンのグループが1980年に米国でも同じように下がってきたということを言っている。
ビッテルは1989年と1990年にケースコントロール研究と、そのほかのコホート(※6)研究をまとめてメタアナリシスを行ってコホート研究でも確認されるという経過をとっている。それからドールとウェイクフォードで、ドールは脊柱湾曲症で、初めて白血病が増えていると言った人でイギリスの教授であるが、全ての論文を調査して、結論としては1.4倍だということを言っている。ボイッシーが1999年にケースコントロールスタディだけで有意な上昇が確認されているということを反論しているが、ドール、ウェイクフォードの1997年の解析では、コホート研究においてもやはり同等のRRが観察されているということを言っている。
それから、線量がどのくらいかということも、次のページ3番目、それから妊娠の第3期。トリメスターの時にピークがくるということである。エックス線の撮影枚数が増えるごとにRRが上昇していくということを言っている。このころUNSCEAR(※7)、国連の放射線委員会は、オックスフォードの調査と報告とその他の報告をまとめて、統計学的に有意なRRの上昇を15歳までの小児白血病と小児がんにおいて認めている。それによれば、10ないし20mGyで約40%の過剰が認められている。これはlow LET である。その他の報告を含めて、このベアセブンというあたりの報告書の結論は12となっているが、ドール/ウェイクフォード、ウェイクフォード/リトル、それらの論文も含めて、結論としては、胎児のエックス線被曝事例と原爆放射線被曝の事例におけるERRはほぼ一致しており、10mSvのオーダーで胎内被曝が小児がんのリスクを押し上げるということである。原爆の方は、先ほど言ったように200mSv以上での観察である。ところがこのオックスフォードシリーズは、10から20mSvというところで押し上げているという結論を出している。
私の意見は、オックスフォードシリーズでも原爆のシリーズでも、胎児被曝はがんリスクを上げるということは間違いないだろうということである。どのくらい低線量被曝の影響があるかということは、10ないし20mSvとここに出ているように推計されている。そういうことで、かなり低い線量であるが、胎児が被曝した場合は影響がありうるという一つの根拠になる状況にあると思う。
これは、なぜこのように調査を詳しくやったかというと、被爆地域拡大地域の住民の方々で、登録上、母親の胎内にあった方が140名くらいいる。そういうことで、これは考慮しなければいけないデータではないか。
胎児被曝についてのまとめをいたしたいが、どう解釈するか、先生方からご意見をお願いしたい。私の意見は今述べたようなことであるが、いかがか。
そこまでは言えないのではないか、など色々なご意見があるかとは思う。
症例が、まだそんなに多くはない。この研究は、放影研は継続していたと記憶している。
2ページの2、医学的な検査による被曝というのが、あるいは医学的治療による被曝というのが脊柱湾曲(スコリオーシス)のデータや、CTスキャンに関することがある、これは後回しにして胎内被曝を続けている。
3番目が医療被曝についてであるが、検査で母親が妊娠中に骨盤の計測を正確にして、胎児の分娩の安全性を確保するということが1950年ごろから盛んに行われており、多くの母親たちが骨盤検査を受けていた。そのデータで、胎児が生まれた後にがんリスクや白血病リスクがあるという研究がなされている。それがオックスフォードの小児がん調査研究である。
これは以前に説明したため結論だけ言うと、ケースコントロールスタディという、後から思い出して、母親が検査を受けたと申告した人の子供たちが、がんと白血病を合わせると40%、1.4倍になっているという世界で始めての指摘があったものである。
その後、マクマホンが東北米地方の73万4千人の調査で、1.4倍くらいに増えているということを観察して報告している。オックスフォードのビテール/スチュワートの論文から1975年からのシリーズで観察が続けられており、いつも大体同じ傾向を確認して、なおかつ89年くらいのデータでは、知識が広まってドクターたちが婦人科の先生たちが骨盤計測をしなくなり、レントゲンの機械も改良されて1回の撮影で被曝する量も減ってきたことがあると推測されるが、1.4倍よりも下がっていた。ある意味では医療被曝を避けるということが徹底して、少し下がってきたということが観察されている。それと同じようにマクマホンのグループが1980年に米国でも同じように下がってきたということを言っている。
ビッテルは1989年と1990年にケースコントロール研究と、そのほかのコホート(※6)研究をまとめてメタアナリシスを行ってコホート研究でも確認されるという経過をとっている。それからドールとウェイクフォードで、ドールは脊柱湾曲症で、初めて白血病が増えていると言った人でイギリスの教授であるが、全ての論文を調査して、結論としては1.4倍だということを言っている。ボイッシーが1999年にケースコントロールスタディだけで有意な上昇が確認されているということを反論しているが、ドール、ウェイクフォードの1997年の解析では、コホート研究においてもやはり同等のRRが観察されているということを言っている。
それから、線量がどのくらいかということも、次のページ3番目、それから妊娠の第3期。トリメスターの時にピークがくるということである。エックス線の撮影枚数が増えるごとにRRが上昇していくということを言っている。このころUNSCEAR(※7)、国連の放射線委員会は、オックスフォードの調査と報告とその他の報告をまとめて、統計学的に有意なRRの上昇を15歳までの小児白血病と小児がんにおいて認めている。それによれば、10ないし20mGyで約40%の過剰が認められている。これはlow LET である。その他の報告を含めて、このベアセブンというあたりの報告書の結論は12となっているが、ドール/ウェイクフォード、ウェイクフォード/リトル、それらの論文も含めて、結論としては、胎児のエックス線被曝事例と原爆放射線被曝の事例におけるERRはほぼ一致しており、10mSvのオーダーで胎内被曝が小児がんのリスクを押し上げるということである。原爆の方は、先ほど言ったように200mSv以上での観察である。ところがこのオックスフォードシリーズは、10から20mSvというところで押し上げているという結論を出している。
私の意見は、オックスフォードシリーズでも原爆のシリーズでも、胎児被曝はがんリスクを上げるということは間違いないだろうということである。どのくらい低線量被曝の影響があるかということは、10ないし20mSvとここに出ているように推計されている。そういうことで、かなり低い線量であるが、胎児が被曝した場合は影響がありうるという一つの根拠になる状況にあると思う。
これは、なぜこのように調査を詳しくやったかというと、被爆地域拡大地域の住民の方々で、登録上、母親の胎内にあった方が140名くらいいる。そういうことで、これは考慮しなければいけないデータではないか。
胎児被曝についてのまとめをいたしたいが、どう解釈するか、先生方からご意見をお願いしたい。私の意見は今述べたようなことであるが、いかがか。
そこまでは言えないのではないか、など色々なご意見があるかとは思う。
【B委員】
読ませていただいて、少し文献を調べてみたが、2003年にICRP(※8)が、このオックスフォード研究についてレビューを出していることについて、日本語訳はなかったが、そこにやはり問題点がいくつかあった、と指摘をしている。一つはまさに先生が言われたようにスタディデザインとして、多くはケースコントロール(※9)であるということ。同じような対象者をした前向き研究ではリスクが出てこないということをICRPは指摘している。もう一つのオックスフォード研究の特徴として、がんの発生場所のリスクにあまり差が無いということである。ただ、ほとんどの方は、まさに会長が言われたように第3トリメスター、妊娠後期に被曝をされたが多い。つまり器官形成期よりあとに被曝をしているわけであるから、普通に考えれば、放射線感受性によってがんの部位差が出ると考えられるが、にも関わらずオックスフォード研究では部位ごとに差が無いというのは矛盾しているのではないか、とICRPは指摘している。
そういった点から、ICRPはオックスフォード研究が小児がんに通じていて大規模であると認めながらも、明確にこれをもってオックスフォード研究が正当化されるとは書いていない。当然ながら、ご承知のとおりICRPは医療時の被曝について、100mGy以下の医療被曝については、その中絶を正当化すべきではないという勧告を出している。
その勧告を変えていないから、少なくともICRPはいくつかの問題点があるというのを認識しているのではないかと思う。
読ませていただいて、少し文献を調べてみたが、2003年にICRP(※8)が、このオックスフォード研究についてレビューを出していることについて、日本語訳はなかったが、そこにやはり問題点がいくつかあった、と指摘をしている。一つはまさに先生が言われたようにスタディデザインとして、多くはケースコントロール(※9)であるということ。同じような対象者をした前向き研究ではリスクが出てこないということをICRPは指摘している。もう一つのオックスフォード研究の特徴として、がんの発生場所のリスクにあまり差が無いということである。ただ、ほとんどの方は、まさに会長が言われたように第3トリメスター、妊娠後期に被曝をされたが多い。つまり器官形成期よりあとに被曝をしているわけであるから、普通に考えれば、放射線感受性によってがんの部位差が出ると考えられるが、にも関わらずオックスフォード研究では部位ごとに差が無いというのは矛盾しているのではないか、とICRPは指摘している。
そういった点から、ICRPはオックスフォード研究が小児がんに通じていて大規模であると認めながらも、明確にこれをもってオックスフォード研究が正当化されるとは書いていない。当然ながら、ご承知のとおりICRPは医療時の被曝について、100mGy以下の医療被曝については、その中絶を正当化すべきではないという勧告を出している。
その勧告を変えていないから、少なくともICRPはいくつかの問題点があるというのを認識しているのではないかと思う。
【C委員】
ERRを見ると例えば5年あたり50というところで出てきているが、線量的には10mSvのオーダーでもリスクが出ているというのは、これはもう、大体そうなのかなと思うが、線質が違っていて、11番のところにかっこでlow LETと書いているが、エックス線のところで骨盤検査で軟部組織、かなり低い。そのため60、70くらいの低い線質を使っているが、原爆被爆者の方の場合、おそらくもう少し線質が高い。中性子も含めて、あるいはガンマ線、そうするとおそらくRBE(※10)は下がってくると思う。LET(※11)というのは、どんどん低くなればなるほど吸収されやすくなる。逆にRBEは上がっていく、低い領域ではそういった傾向があるので、その辺の違いを考慮した総括が必要かと思う。
ERRを見ると例えば5年あたり50というところで出てきているが、線量的には10mSvのオーダーでもリスクが出ているというのは、これはもう、大体そうなのかなと思うが、線質が違っていて、11番のところにかっこでlow LETと書いているが、エックス線のところで骨盤検査で軟部組織、かなり低い。そのため60、70くらいの低い線質を使っているが、原爆被爆者の方の場合、おそらくもう少し線質が高い。中性子も含めて、あるいはガンマ線、そうするとおそらくRBE(※10)は下がってくると思う。LET(※11)というのは、どんどん低くなればなるほど吸収されやすくなる。逆にRBEは上がっていく、低い領域ではそういった傾向があるので、その辺の違いを考慮した総括が必要かと思う。
【会長】
ICRPは、そうするとがんリスクがある可能性はあるが、明確には言えないという見解か。ネガティブだということではないのか。
ICRPは、そうするとがんリスクがある可能性はあるが、明確には言えないという見解か。ネガティブだということではないのか。
【B委員】
これをもって、オックスフォード研究の結果を是認するということは書いていない。
これをもって、オックスフォード研究の結果を是認するということは書いていない。
【会長】
前向きの調査の時期の問題があるのではないかと思う。放射線の照射の線量のリスクが下がってきた時期と重なっているのではないか。
前向きの調査の時期の問題があるのではないかと思う。放射線の照射の線量のリスクが下がってきた時期と重なっているのではないか。
【B委員】
そのことについては、先ほどおっしゃったようにオックスフォード研究の場合は時期によってリスクが変わってきている。それについても、むしろそれは医療被曝を控えるようになってからではないか、潜伏期と合わないのではないか、むしろリスクがバラついているということも、このリスク評価自体、つまり線量評価等々がこのオックスフォード研究がしっかりしていないことの論拠となるのではないかとICRPは書いている。
そのことについては、先ほどおっしゃったようにオックスフォード研究の場合は時期によってリスクが変わってきている。それについても、むしろそれは医療被曝を控えるようになってからではないか、潜伏期と合わないのではないか、むしろリスクがバラついているということも、このリスク評価自体、つまり線量評価等々がこのオックスフォード研究がしっかりしていないことの論拠となるのではないかとICRPは書いている。
【会長】
ICRPとUNSCEARとBEIR(※12)報告で微妙な違いがあるわけであるが、この検討会として低線量での胎児被曝による健康影響はあり得ると、少なくとも否定はできないとの見解でよろしいか。そこまでいかないのか。
ICRPとUNSCEARとBEIR(※12)報告で微妙な違いがあるわけであるが、この検討会として低線量での胎児被曝による健康影響はあり得ると、少なくとも否定はできないとの見解でよろしいか。そこまでいかないのか。
【B委員】
現在のところICRPの見解とBEIRの見解と必ずしも一定していない状況ではないかと思う。明らかではないというか、そこについては一定の見解は得られていないということではないかと思う。明確にあるとは、言えないのではないかと思う。
現在のところICRPの見解とBEIRの見解と必ずしも一定していない状況ではないかと思う。明らかではないというか、そこについては一定の見解は得られていないということではないかと思う。明確にあるとは、言えないのではないかと思う。
【A委員】
一番、線量としてしっかりしているのは原爆被爆者のデータだと思っている。そのときのリスクが、条件があるが、リスクがあるということではあるが、その際の線量というのはオックスフォードで、オックスフォードサーベイで示されている線量よりはだいぶ高い値で、そういう値でリスクが認められるとういうことではあると思う。オックスフォードサーベイに関してB委員から指摘があったように、ほかの研究論文で、まだ議論が続いている段階だと思う。一方、UNSCEARはオックスフォードサーベイの結果を取り入れた評価をされているということであるので、今後さらに調査が進むのではないかと思っている。
一番、線量としてしっかりしているのは原爆被爆者のデータだと思っている。そのときのリスクが、条件があるが、リスクがあるということではあるが、その際の線量というのはオックスフォードで、オックスフォードサーベイで示されている線量よりはだいぶ高い値で、そういう値でリスクが認められるとういうことではあると思う。オックスフォードサーベイに関してB委員から指摘があったように、ほかの研究論文で、まだ議論が続いている段階だと思う。一方、UNSCEARはオックスフォードサーベイの結果を取り入れた評価をされているということであるので、今後さらに調査が進むのではないかと思っている。
【会長】
今後調査というのはできるのか。なかなか難しいのではないか。
今後調査というのはできるのか。なかなか難しいのではないか。
【A委員】
なかなか難しいと思う。
なかなか難しいと思う。
【会長】
現状ではかなり論理的な問題が生じる。意見が少し分離している状況を提出するということになるか。認めている放射線の委員会もあるというようなことでよろしいか。
これをもって断定していい、というわけにはいかないということである。
現状ではかなり論理的な問題が生じる。意見が少し分離している状況を提出するということになるか。認めている放射線の委員会もあるというようなことでよろしいか。
これをもって断定していい、というわけにはいかないということである。
審議事項
1 研究論文等の調査結果について
(2)2015~2016小児CTスキャン論文の紹介およびCT癌リスクの検討
【会長】
次は医療被曝の人、もう一つのカテゴリーである、小児のCTスキャン論文の、その後、いくつか論文が出ており、資料に論文1から6まであるが、それを簡単に説明する。
ピアースの論文や、オーストラリアでの60万人を対象とする論文で、小児期にCTスキャンされた子供たちが、その後10歳くらいまでの間に、がんや白血病が増えるという、かなりショッキングな論文が出た。その後、その論文についての批判が出て、結局、何十万人という子供たちの被曝を扱う場合、この子供たちの中にがんを起こしやすい、あるいは白血病になりやすい先天異常の病気が20くらいあるが、それがオリジナルのピアースの論文などでは解析されていないため、その影響ではないかという反論が、論文1のフランスの小児CT論文である。ジャーニーの論文で、これが2015年に出た。既に読んでいると思うが、先ほど申し上げた20ぐらいのがんや白血病を起こしやすい先天異常を持った子供たちの方の死亡が多く、やはりその影響が一番大きいということである。その方たちを除くと、残りの先天異常がない子供たちではCT検査の被曝によって、がんや白血病が増えているというデータではなかったということが、このジャーニーらが発表している。
これで決まりと思ったが、フランスのこの論文に対してミューアーヘッドというイギリスの教授だったと思うが、この論文を精査したところ、ジャーニーの解釈と異なる点があると述べている。
「ジャーニー論文のデータについて、がん発祥素因を有する患者を除くとCT被曝による有意ながんリスクの上昇は消えるというフランスの結論は、以下の点で疑問がある。すなわちこの論文は、表面的には発がん素因を有する症例の方がCT被曝でより高い線量を浴びているように見えるが、電子版のサプリメントテーブル6を詳細に見てみたところ、がん種別に見た場合、修正した場合もわずかに下がるのみで、さらに素因がない症例の15と素因がない7症例をがん種別に比較した場合、素因がある症例ではERRはほとんどゼロになっている、つまりカッコ内のデータに非常に近い。」と書いている。素因がない症例では、むしろERRは高くなっているといっている。CNS0.028、Leukemia0.187、Lymphoma0.025。したがって、素因があることによってERRが上昇したのではなく、死亡は先天異常がある人で多いから、データが修飾されたと考えるべきではないのかということである。がん種別のデータでは、明らかに素因のないグループでERRが高く、素因のあるグループではむしろERRが低くなっているため、ジャーニーらの解釈は誤っているというのではないか、というコメントを同じジャーナルに発表している。素因のない症例グループのERRが、全体解析のERRとほぼ同等であることも重要であると指摘している。ということは、ピアースやオーストラリアのマシューの論文も素因についての解析をしていない、先天異常の症例を特定していないわけである。だが、論文全体のERRのデータは近似するのではないかとコメントしている。
フランスのデータは、ひとつの国のデータであるから症例数が少なく、観察期間も4年と短いため、現在、ヨーロッパのグループが110万人の小児のデータを解析中ということであるから、その結果が重要になると考えている。
論文3のカルディスのコメントは、論文2と同じであるため省略している。
論文4はクリールというドイツの解析の論文であるが、フランスの論文1と近いデータで、先天異常が交絡因子(※13)として働いていることを否定し得ないという論文である。
論文5は、そういった状況を知りながら、Epi-Studyが現在進行しているが、そのデザインを公表している。研究計画と方法を、論文として既に報告している。その中で、フランスの論文1を紹介しており、その後出るフランスのプラクタルデータの論文2も紹介している。9ページ、フランスの対象症例の登録が110万人になって、現在データ解析をしている。これまでのこのグループから出た論文は、フランスの先ほどの論文1、PF(※14)が交絡因子になっているという論文。論文2は、ジャーニーがこれまで紹介したコメントに対する回答のような論文を書いている。この論文は、論文6として再掲している。
この論文6の結論は、先天異常の子供たちは非常に死亡が多いためデータに影響を与えたものの、あくまで修飾因子であって、この子供たちがCTにより放射線被曝したことによってがんを発症したかということをハザード比(※15)で分析したところ、それは上がっておらず、むしろ先天異常の子供たちを除いて解析した場合の方が、ハザード比は上がっているということである。
それから10ページ目だが、一番重要なこのデータは最後の結論の直前に記載されている、全小児において全原因による死亡とPFおよび被曝線量のハザード分析をした箇所である。有意に差が出てくるのは、先天異常の存在がハザードで9.89、これは突出して高い。しかし、赤色骨髄線量があるグループは1.12で、被曝していることで上がったというデータになっている。
結論としては、PFは交絡因子ではなく修飾因子ではないかということである。PFによるがん、白血病あるいは非がん疾患による死亡リスクが、CT被曝による死亡に影響を与えているデータではないかと。このコメントを発表したジャーニーの論文2は、先ほど紹介したカルディスも参加して分析した論文である。先天異常の子供たちは線量との関係は薄い、全小児例においては被曝線量のハザード比は、有意なp値を示すということで、この限られた症例数と観察期間が短いフランスのデータでは、ピアース論文の全体のERRは正しいとは言っていないものの、それでいいのではないかということを言っている。
そういったことで、PFは交絡因子ではなかったという可能性が出てきたということである。修飾因子であった可能性があると。私の意見は、結局同じであるが、7ヶ国での110万人のデータが解析されつつあるため、それでほぼ結論が出るのではないかなと考えている。そうすると、CTの被曝は100mSv未満であるから、それが20mSvや40mSvなども含めて、小児のCT被曝でがんのリスクがあるかどうかが分かるのではないかなと思う。
このEPI-CTの論文が、今年、ずっとサーチしているが、まだ出てきていない。あとはオランダのグループも同じように交絡因子ではなかったというようなことを言っているが、これは論文にはなっていない。
中間報告にはなるが、CT被曝による小児のがん発生リスクはこれまで述べたような状況にあるということである。これについて、委員からご質問やご意見があればお願いしたい。
次は医療被曝の人、もう一つのカテゴリーである、小児のCTスキャン論文の、その後、いくつか論文が出ており、資料に論文1から6まであるが、それを簡単に説明する。
ピアースの論文や、オーストラリアでの60万人を対象とする論文で、小児期にCTスキャンされた子供たちが、その後10歳くらいまでの間に、がんや白血病が増えるという、かなりショッキングな論文が出た。その後、その論文についての批判が出て、結局、何十万人という子供たちの被曝を扱う場合、この子供たちの中にがんを起こしやすい、あるいは白血病になりやすい先天異常の病気が20くらいあるが、それがオリジナルのピアースの論文などでは解析されていないため、その影響ではないかという反論が、論文1のフランスの小児CT論文である。ジャーニーの論文で、これが2015年に出た。既に読んでいると思うが、先ほど申し上げた20ぐらいのがんや白血病を起こしやすい先天異常を持った子供たちの方の死亡が多く、やはりその影響が一番大きいということである。その方たちを除くと、残りの先天異常がない子供たちではCT検査の被曝によって、がんや白血病が増えているというデータではなかったということが、このジャーニーらが発表している。
これで決まりと思ったが、フランスのこの論文に対してミューアーヘッドというイギリスの教授だったと思うが、この論文を精査したところ、ジャーニーの解釈と異なる点があると述べている。
「ジャーニー論文のデータについて、がん発祥素因を有する患者を除くとCT被曝による有意ながんリスクの上昇は消えるというフランスの結論は、以下の点で疑問がある。すなわちこの論文は、表面的には発がん素因を有する症例の方がCT被曝でより高い線量を浴びているように見えるが、電子版のサプリメントテーブル6を詳細に見てみたところ、がん種別に見た場合、修正した場合もわずかに下がるのみで、さらに素因がない症例の15と素因がない7症例をがん種別に比較した場合、素因がある症例ではERRはほとんどゼロになっている、つまりカッコ内のデータに非常に近い。」と書いている。素因がない症例では、むしろERRは高くなっているといっている。CNS0.028、Leukemia0.187、Lymphoma0.025。したがって、素因があることによってERRが上昇したのではなく、死亡は先天異常がある人で多いから、データが修飾されたと考えるべきではないのかということである。がん種別のデータでは、明らかに素因のないグループでERRが高く、素因のあるグループではむしろERRが低くなっているため、ジャーニーらの解釈は誤っているというのではないか、というコメントを同じジャーナルに発表している。素因のない症例グループのERRが、全体解析のERRとほぼ同等であることも重要であると指摘している。ということは、ピアースやオーストラリアのマシューの論文も素因についての解析をしていない、先天異常の症例を特定していないわけである。だが、論文全体のERRのデータは近似するのではないかとコメントしている。
フランスのデータは、ひとつの国のデータであるから症例数が少なく、観察期間も4年と短いため、現在、ヨーロッパのグループが110万人の小児のデータを解析中ということであるから、その結果が重要になると考えている。
論文3のカルディスのコメントは、論文2と同じであるため省略している。
論文4はクリールというドイツの解析の論文であるが、フランスの論文1と近いデータで、先天異常が交絡因子(※13)として働いていることを否定し得ないという論文である。
論文5は、そういった状況を知りながら、Epi-Studyが現在進行しているが、そのデザインを公表している。研究計画と方法を、論文として既に報告している。その中で、フランスの論文1を紹介しており、その後出るフランスのプラクタルデータの論文2も紹介している。9ページ、フランスの対象症例の登録が110万人になって、現在データ解析をしている。これまでのこのグループから出た論文は、フランスの先ほどの論文1、PF(※14)が交絡因子になっているという論文。論文2は、ジャーニーがこれまで紹介したコメントに対する回答のような論文を書いている。この論文は、論文6として再掲している。
この論文6の結論は、先天異常の子供たちは非常に死亡が多いためデータに影響を与えたものの、あくまで修飾因子であって、この子供たちがCTにより放射線被曝したことによってがんを発症したかということをハザード比(※15)で分析したところ、それは上がっておらず、むしろ先天異常の子供たちを除いて解析した場合の方が、ハザード比は上がっているということである。
それから10ページ目だが、一番重要なこのデータは最後の結論の直前に記載されている、全小児において全原因による死亡とPFおよび被曝線量のハザード分析をした箇所である。有意に差が出てくるのは、先天異常の存在がハザードで9.89、これは突出して高い。しかし、赤色骨髄線量があるグループは1.12で、被曝していることで上がったというデータになっている。
結論としては、PFは交絡因子ではなく修飾因子ではないかということである。PFによるがん、白血病あるいは非がん疾患による死亡リスクが、CT被曝による死亡に影響を与えているデータではないかと。このコメントを発表したジャーニーの論文2は、先ほど紹介したカルディスも参加して分析した論文である。先天異常の子供たちは線量との関係は薄い、全小児例においては被曝線量のハザード比は、有意なp値を示すということで、この限られた症例数と観察期間が短いフランスのデータでは、ピアース論文の全体のERRは正しいとは言っていないものの、それでいいのではないかということを言っている。
そういったことで、PFは交絡因子ではなかったという可能性が出てきたということである。修飾因子であった可能性があると。私の意見は、結局同じであるが、7ヶ国での110万人のデータが解析されつつあるため、それでほぼ結論が出るのではないかなと考えている。そうすると、CTの被曝は100mSv未満であるから、それが20mSvや40mSvなども含めて、小児のCT被曝でがんのリスクがあるかどうかが分かるのではないかなと思う。
このEPI-CTの論文が、今年、ずっとサーチしているが、まだ出てきていない。あとはオランダのグループも同じように交絡因子ではなかったというようなことを言っているが、これは論文にはなっていない。
中間報告にはなるが、CT被曝による小児のがん発生リスクはこれまで述べたような状況にあるということである。これについて、委員からご質問やご意見があればお願いしたい。
【D委員】
修飾因子と交絡因子の違いは難しいと思う。その前に論文6であるが、PFを有しない場合の腫瘍と白血病と、有する場合の腫瘍と白血病であるが、どちらも有意ではない。ハザード比で腫瘍はPFを有しない場合は1.07、PFを有する場合は0.80と、数字の上では有しない場合のほうが高そうに見えるが、どちらのハザード比も有意ではない。
先ほどの交絡因子について、これを参考にはできないが、一般的な定義としては、例えば飲酒とがんの影響を調べて、飲酒をする人ががんになりやすいというデータが出たとする。一般的に、飲酒をする方はタバコも吸っていることが多く、タバコもがんに影響があるということで、飲酒も喫煙もがんに影響があるというふたつの因子があって、この場合にタバコが交絡因子ということになる。
修飾因子はややこしくて、例えば放射線被曝で被曝時の年齢が若い方が発がんの可能性が高いというデータがある。この場合に、年齢が修飾因子であるという定義をするようである。交絡因子ではないと。うまく説明できないが。
修飾因子と交絡因子の違いは難しいと思う。その前に論文6であるが、PFを有しない場合の腫瘍と白血病と、有する場合の腫瘍と白血病であるが、どちらも有意ではない。ハザード比で腫瘍はPFを有しない場合は1.07、PFを有する場合は0.80と、数字の上では有しない場合のほうが高そうに見えるが、どちらのハザード比も有意ではない。
先ほどの交絡因子について、これを参考にはできないが、一般的な定義としては、例えば飲酒とがんの影響を調べて、飲酒をする人ががんになりやすいというデータが出たとする。一般的に、飲酒をする方はタバコも吸っていることが多く、タバコもがんに影響があるということで、飲酒も喫煙もがんに影響があるというふたつの因子があって、この場合にタバコが交絡因子ということになる。
修飾因子はややこしくて、例えば放射線被曝で被曝時の年齢が若い方が発がんの可能性が高いというデータがある。この場合に、年齢が修飾因子であるという定義をするようである。交絡因子ではないと。うまく説明できないが。
【会長】
若い方が、発がんリスクが高いから、死亡が多くなるということか。
若い方が、発がんリスクが高いから、死亡が多くなるということか。
【D委員】
そういうことになる。
そういうことになる。
【会長】
カルディスなどは、原子力発電所でも研究に携わっているような専門の方である。そういった方々がこのような論文を発表していて、やりとりがあっているということである。ピアース論文は、先天異常の疾患を排除していないから駄目かと一時期は思っていたが、まだ今後の研究に注目していく必要があるということでよろしいか。2017年度中に出る可能性があるということであるためそれを待つということでよいか。
カルディスなどは、原子力発電所でも研究に携わっているような専門の方である。そういった方々がこのような論文を発表していて、やりとりがあっているということである。ピアース論文は、先天異常の疾患を排除していないから駄目かと一時期は思っていたが、まだ今後の研究に注目していく必要があるということでよろしいか。2017年度中に出る可能性があるということであるためそれを待つということでよいか。
審議事項
1 研究論文等の調査結果について
(3)原発労働者研究におけるpooling dataの長所と短所
【会長】
前々回にかなり詳しく検討した、原子力発電所で働く方のデータ、これをプーリングデータとも言うが、この白血病に関する論文に対する長所と短所を、ドイツのマリオ・ブレットナーから意見が出ており、その紹介をいただきたい。
前々回にかなり詳しく検討した、原子力発電所で働く方のデータ、これをプーリングデータとも言うが、この白血病に関する論文に対する長所と短所を、ドイツのマリオ・ブレットナーから意見が出ており、その紹介をいただきたい。
【B委員】
マリオ・ブレットナーという方、先ほど会長からご紹介がありました論文4の共同論文執筆者の方であるが、私もよく存じ上げており、非常に優秀な研究者である。この方が、今言われたように、CTもそうであるが、多国籍、多施設でデータをプールして解析するという方法が採られており、解析する症例数が多くなるという長所もあるが、同時にいくつかの欠点があるのではないかということをコメントしている。
紹介するが、1970年代の単施設研究から現在の多施設・多国籍研究に発展してきたが、この問題、ひとつにはINWORKS(※16)では低線量被曝後の白血病リスクを大規模コホートにより解析しているが、このやり方に問題点があるのではないかということである。
ひとつは、国や人種ごとの多様性はどこまで解析されているのかということである。当然ながら人種によりがんの構成は違ってくるため、そういった多様性がどこまでカバーできるのか、そして、国によって死亡診断の信頼性がどこまでクリアになっているのかということも問題であると指摘している。当然、それ以外の社会経済的な要因であるとか、他の生活因子が十分に評価されていないのではないか、あるいはベンゼンなど発がん物質は他にもいろいろあるから、そういったものへの曝露も地域により全く異なるのではないか、あるいは医療被曝もそうである。日本の様に医療被曝は非常に高いというところもあれば、そうでないところもある。その違いをどこまで把握できているのかというところもある。
もうひとつ、一番大きな問題であると思うが、非常に低線量になってくると、自然放射線被曝による影響をどう考えるかということである。ヨーロッパの平均で年間3mSv程度と言われているが、5年間で15mSv、10年間で30mSvの被曝になる。そういった被曝をこの研究では考慮していないため、自然被曝の問題をどうするのかということも、大きな問題があるのではないかということを指摘している。低線量被曝の影響を正しく理解するのであれば、外部被曝と内部被曝の線量のデータを正確にする必要があるということである。それプラス、医療被曝のデータをきちんと考慮しなければならない。また、低い線量を評価しようとするのであれば、当然ながら自然放射線被曝といったものを含めた他の被曝線量のデータを考慮しなければならない。先ほども申し上げたが、タバコなども含めた生活因子、あるいは他の職業曝露による因子にも発がん物質はあるため、そういったものをきちんと把握した新しい集団においてデータを収集する必要がある。日本における原爆被爆者の方を対象としたような長期間の前向きな研究によって、きちんとした線量反応関係を明らかにするべきであると提言されている。
ここに書いているとおり、一般の方もそうであり、原発作業員の方を含めた労働者の方も、放射線防護の観点から被曝線量を最低限化することはもちろんであり、そのためにもこういったような前向きな研究が必要だとブレットナーは述べている。私の意見としても、これに関しては妥当な意見ではないかと思う。
ICRP等の勧告であるが、INWORKSのような大規模研究は言及されることはあっても、その結果によって従来の見解を変えていないため、こういった問題点を十分認識しているものと考えられる。これらの問題は、先ほど紹介があったようなCT検査も含めた医療被曝の問題を、解析においても言えることであるが、ここで得られた知見をそのまま他の集団、例えば原爆被爆者の方への影響にも該当しているとの判断は、慎重に行うべきではないかというのが私の意見である。
マリオ・ブレットナーという方、先ほど会長からご紹介がありました論文4の共同論文執筆者の方であるが、私もよく存じ上げており、非常に優秀な研究者である。この方が、今言われたように、CTもそうであるが、多国籍、多施設でデータをプールして解析するという方法が採られており、解析する症例数が多くなるという長所もあるが、同時にいくつかの欠点があるのではないかということをコメントしている。
紹介するが、1970年代の単施設研究から現在の多施設・多国籍研究に発展してきたが、この問題、ひとつにはINWORKS(※16)では低線量被曝後の白血病リスクを大規模コホートにより解析しているが、このやり方に問題点があるのではないかということである。
ひとつは、国や人種ごとの多様性はどこまで解析されているのかということである。当然ながら人種によりがんの構成は違ってくるため、そういった多様性がどこまでカバーできるのか、そして、国によって死亡診断の信頼性がどこまでクリアになっているのかということも問題であると指摘している。当然、それ以外の社会経済的な要因であるとか、他の生活因子が十分に評価されていないのではないか、あるいはベンゼンなど発がん物質は他にもいろいろあるから、そういったものへの曝露も地域により全く異なるのではないか、あるいは医療被曝もそうである。日本の様に医療被曝は非常に高いというところもあれば、そうでないところもある。その違いをどこまで把握できているのかというところもある。
もうひとつ、一番大きな問題であると思うが、非常に低線量になってくると、自然放射線被曝による影響をどう考えるかということである。ヨーロッパの平均で年間3mSv程度と言われているが、5年間で15mSv、10年間で30mSvの被曝になる。そういった被曝をこの研究では考慮していないため、自然被曝の問題をどうするのかということも、大きな問題があるのではないかということを指摘している。低線量被曝の影響を正しく理解するのであれば、外部被曝と内部被曝の線量のデータを正確にする必要があるということである。それプラス、医療被曝のデータをきちんと考慮しなければならない。また、低い線量を評価しようとするのであれば、当然ながら自然放射線被曝といったものを含めた他の被曝線量のデータを考慮しなければならない。先ほども申し上げたが、タバコなども含めた生活因子、あるいは他の職業曝露による因子にも発がん物質はあるため、そういったものをきちんと把握した新しい集団においてデータを収集する必要がある。日本における原爆被爆者の方を対象としたような長期間の前向きな研究によって、きちんとした線量反応関係を明らかにするべきであると提言されている。
ここに書いているとおり、一般の方もそうであり、原発作業員の方を含めた労働者の方も、放射線防護の観点から被曝線量を最低限化することはもちろんであり、そのためにもこういったような前向きな研究が必要だとブレットナーは述べている。私の意見としても、これに関しては妥当な意見ではないかと思う。
ICRP等の勧告であるが、INWORKSのような大規模研究は言及されることはあっても、その結果によって従来の見解を変えていないため、こういった問題点を十分認識しているものと考えられる。これらの問題は、先ほど紹介があったようなCT検査も含めた医療被曝の問題を、解析においても言えることであるが、ここで得られた知見をそのまま他の集団、例えば原爆被爆者の方への影響にも該当しているとの判断は、慎重に行うべきではないかというのが私の意見である。
【会長】
他の委員のご意見をお願いしたい。
他の委員のご意見をお願いしたい。
【C委員】
先ほどのB委員への意見へのコメントではないが、INWORKSそのものが約10年前に15ヶ国で同じようなモニタリング調査が実施された時に、ICRPのレスポンスとして、そういうポストスペクティブな集団を取り上げて、100mSv以下のリスク云々の是非について、要はLNT仮説に対して、そういった議論をするべきではないという強い批判がICRPからあった。それも、明確に添付文書に書かれている。
その後、そういったポストスペクティブなことではなく、さらに新しい調査ということで進めつつ、15ヶ国間での差が大きかったため、3ヶ国に絞ったということである。そういった状態でこの研究は成り立っており、目的とするところが今の放射線防護体系で言われている、例えば5年間で100mSvであったり、一般公衆の年間1mSvなどの妥当性というか、どの程度の線量ならば実際に影響があるのかといったことを示すための、一つの傍証として試験されているということである。
低いところでの影響の有無についての問題ではなく、今の放射線防護体系の線引きの妥当性の判断のために使われているものである。元々は、そのような成り立ちの研究だと認識している。
そういった意味では、今の原発労働者に関して、すなわち放射線業務従事者に対する防護策としては、今の状況の実効性の程度あたりで、この程度のリスクであればそもそも許容できるであろうといったものになるとINWORKSの研究については考えている。
その点に加えて、今回のE委員のおっしゃるとおり、解析の問題点についても指摘されたのかと思う。おそらく、ICRPはそのように解析しているのかと考える。
先ほどのB委員への意見へのコメントではないが、INWORKSそのものが約10年前に15ヶ国で同じようなモニタリング調査が実施された時に、ICRPのレスポンスとして、そういうポストスペクティブな集団を取り上げて、100mSv以下のリスク云々の是非について、要はLNT仮説に対して、そういった議論をするべきではないという強い批判がICRPからあった。それも、明確に添付文書に書かれている。
その後、そういったポストスペクティブなことではなく、さらに新しい調査ということで進めつつ、15ヶ国間での差が大きかったため、3ヶ国に絞ったということである。そういった状態でこの研究は成り立っており、目的とするところが今の放射線防護体系で言われている、例えば5年間で100mSvであったり、一般公衆の年間1mSvなどの妥当性というか、どの程度の線量ならば実際に影響があるのかといったことを示すための、一つの傍証として試験されているということである。
低いところでの影響の有無についての問題ではなく、今の放射線防護体系の線引きの妥当性の判断のために使われているものである。元々は、そのような成り立ちの研究だと認識している。
そういった意味では、今の原発労働者に関して、すなわち放射線業務従事者に対する防護策としては、今の状況の実効性の程度あたりで、この程度のリスクであればそもそも許容できるであろうといったものになるとINWORKSの研究については考えている。
その点に加えて、今回のE委員のおっしゃるとおり、解析の問題点についても指摘されたのかと思う。おそらく、ICRPはそのように解析しているのかと考える。
【会長】
D委員、ご意見はいかがか。
D委員、ご意見はいかがか。
【D委員】
様々な国で環境も違い、それぞれに測定された線量も違うと思われるため、それを一緒くたにまとめて論じることは問題があると考える。
様々な国で環境も違い、それぞれに測定された線量も違うと思われるため、それを一緒くたにまとめて論じることは問題があると考える。
【A委員】
100mSv以下の低線量放射線のリスクを疫学的に検出しようとするのであれば、どうしても母集団を大きくしなければ検出できないため、今行われているような多国籍のデータを集めたような解析をせざるを得ないわけであるが、一方でそういった解析方法だと、論文で指摘されているような、まさしくコンファウンディングファクター(交絡因子)が入ってきて、特に指摘があったような人種の問題やデータの信頼性、それからヨーロッパはラドンの線量が高いため、バックグラウンドが全く異なるものを全て一緒にして解析するのは、科学的にはなかなか難しいものがあるということだと思う。
他にいい方法がないからこういった手法による解析をせざるを得ないわけであるが、データの評価においてはコンファウンディングファクターがもっと複雑に絡んでくるということを考えなくてはならないということである。
がんのリスクは、生活習慣により大きく影響を受ける。例えば食事の内容によってもずいぶんと違ってくる。国が違えばリスクのバックグラウンドが大きく異なる。もっと細かい話いなると、日本においても県によってがんのリスクは全く異なる。その差は10%以上にもなる。例えば100mSvを被曝した時はがん死亡のリスクを約0.5%程度上げることになる。それと生活習慣を比較すると、生活習慣によるリスクの方が遥かに大きいため、そのあたりを含めて解析するのが非常に難しいということだと思う。
100mSv以下の低線量放射線のリスクを疫学的に検出しようとするのであれば、どうしても母集団を大きくしなければ検出できないため、今行われているような多国籍のデータを集めたような解析をせざるを得ないわけであるが、一方でそういった解析方法だと、論文で指摘されているような、まさしくコンファウンディングファクター(交絡因子)が入ってきて、特に指摘があったような人種の問題やデータの信頼性、それからヨーロッパはラドンの線量が高いため、バックグラウンドが全く異なるものを全て一緒にして解析するのは、科学的にはなかなか難しいものがあるということだと思う。
他にいい方法がないからこういった手法による解析をせざるを得ないわけであるが、データの評価においてはコンファウンディングファクターがもっと複雑に絡んでくるということを考えなくてはならないということである。
がんのリスクは、生活習慣により大きく影響を受ける。例えば食事の内容によってもずいぶんと違ってくる。国が違えばリスクのバックグラウンドが大きく異なる。もっと細かい話いなると、日本においても県によってがんのリスクは全く異なる。その差は10%以上にもなる。例えば100mSvを被曝した時はがん死亡のリスクを約0.5%程度上げることになる。それと生活習慣を比較すると、生活習慣によるリスクの方が遥かに大きいため、そのあたりを含めて解析するのが非常に難しいということだと思う。
【会長】
私の意見はA委員のご意見に近いが、多国にわたるデータ解析の危険性はあると思うが、ここでブレットナーが指摘している点を実際に実行できるのかという観点からすると、できない点ばかりではないかと思う。
例えば、25歳で就職して70歳まで原子力発電所で働いている人の25歳までの自然放射線の被曝線量のデータを取ることは不可能である。加えて原爆被爆者の研究でも、戦後70年以上を経過した被爆者の低線量被曝の影響について、問題点と言うか課題がいろいろとあるが、この方たちに対する、日本だと年間2mSvといわれている自然放射線の影響が実際はどうだったのかなど、これらを実際に考慮することは不可能である。
それから、生物学的なマテリアルについても書かれているが、これを福島のようにたくさんの人が被曝したところで前向き調査が得られているかというと、なかなか難しい。
これらのとおり、非常に難しいことが羅列されており、考慮はしないといけないが、人種差というのは米英仏3ヶ国の別々のデータを信頼しているから、人種差が本当にあるのであればそのあたりで出てくるのか、白人が中心だから出たのか出ていないのか分からない。例えば原爆被爆者は日本のデータを世界中で参考にしているが、人種のことについて日本人のデータのみでは偏っているのではないかという論文を見たことはない。がんの種類については人種差が強く影響すると思うが、がんになること自体に人種差があるという論文は存じ上げない。そういった意味では、このコメントは理論に偏りすぎているコメントだと思う。
実際は、疫学というのは社会生活を送っている方を対象として行っていく研究であるから、交絡因子に満ちており、その中でポジティブなデータが何かということを見ていく学問であり、こういうINWORKSのように多くの症例を集めることができない国においては、非常に重要な方法である。ここは、A委員のご意見と一致するところである。その際に、データの解釈を慎重に、例えば交絡因子のタバコのことで、タバコの影響が最も出現しやすいのは肺がんであるから、INWORKSは肺がんのことを非常に警戒している。それから、線量の測定のところも中性子線を浴びている人も含まれているのではないかということを批判があるが、そういった方たちは除いて解析している。そういう、自分たちの研究における弱点をINWORKSは考察している。
それから、データそのものについてもひとつのポイントにおける症例数が示されていくが、そこに95%信頼区間というものが各線量においてある。INWORKSでは90%を用いており、そのあたりはデータの信頼性が低下するということを自身で書いている。そういった中で研究していくということが、現実的な疫学研究のあり方であろうかと思う。そういう意味で、今後、前向きに長期間にわたって、かつ線量を正確に計測した集団で、例えば原爆被爆者のように30万人もの研究を行うことは、私としては不可能だと思う。こういったデータで判断するほかないというのが、私たちが置かれている現状だと思う。
そういう意味で、INWORKSの100mSV以下でもがんリスクがあるというデータを、可能性があるものとして解釈すべきではないかと思う。以上が私の意見であるが、いかがか。
特に、低線量の生物学的なところまで書いているため、A委員は専門であるためご意見を伺いたいが、低線量被曝で人体の組織や細胞で、あるいはDNAレベルで研究レベルに流用できるところまで到達していると判断できるものであるか。
私の意見はA委員のご意見に近いが、多国にわたるデータ解析の危険性はあると思うが、ここでブレットナーが指摘している点を実際に実行できるのかという観点からすると、できない点ばかりではないかと思う。
例えば、25歳で就職して70歳まで原子力発電所で働いている人の25歳までの自然放射線の被曝線量のデータを取ることは不可能である。加えて原爆被爆者の研究でも、戦後70年以上を経過した被爆者の低線量被曝の影響について、問題点と言うか課題がいろいろとあるが、この方たちに対する、日本だと年間2mSvといわれている自然放射線の影響が実際はどうだったのかなど、これらを実際に考慮することは不可能である。
それから、生物学的なマテリアルについても書かれているが、これを福島のようにたくさんの人が被曝したところで前向き調査が得られているかというと、なかなか難しい。
これらのとおり、非常に難しいことが羅列されており、考慮はしないといけないが、人種差というのは米英仏3ヶ国の別々のデータを信頼しているから、人種差が本当にあるのであればそのあたりで出てくるのか、白人が中心だから出たのか出ていないのか分からない。例えば原爆被爆者は日本のデータを世界中で参考にしているが、人種のことについて日本人のデータのみでは偏っているのではないかという論文を見たことはない。がんの種類については人種差が強く影響すると思うが、がんになること自体に人種差があるという論文は存じ上げない。そういった意味では、このコメントは理論に偏りすぎているコメントだと思う。
実際は、疫学というのは社会生活を送っている方を対象として行っていく研究であるから、交絡因子に満ちており、その中でポジティブなデータが何かということを見ていく学問であり、こういうINWORKSのように多くの症例を集めることができない国においては、非常に重要な方法である。ここは、A委員のご意見と一致するところである。その際に、データの解釈を慎重に、例えば交絡因子のタバコのことで、タバコの影響が最も出現しやすいのは肺がんであるから、INWORKSは肺がんのことを非常に警戒している。それから、線量の測定のところも中性子線を浴びている人も含まれているのではないかということを批判があるが、そういった方たちは除いて解析している。そういう、自分たちの研究における弱点をINWORKSは考察している。
それから、データそのものについてもひとつのポイントにおける症例数が示されていくが、そこに95%信頼区間というものが各線量においてある。INWORKSでは90%を用いており、そのあたりはデータの信頼性が低下するということを自身で書いている。そういった中で研究していくということが、現実的な疫学研究のあり方であろうかと思う。そういう意味で、今後、前向きに長期間にわたって、かつ線量を正確に計測した集団で、例えば原爆被爆者のように30万人もの研究を行うことは、私としては不可能だと思う。こういったデータで判断するほかないというのが、私たちが置かれている現状だと思う。
そういう意味で、INWORKSの100mSV以下でもがんリスクがあるというデータを、可能性があるものとして解釈すべきではないかと思う。以上が私の意見であるが、いかがか。
特に、低線量の生物学的なところまで書いているため、A委員は専門であるためご意見を伺いたいが、低線量被曝で人体の組織や細胞で、あるいはDNAレベルで研究レベルに流用できるところまで到達していると判断できるものであるか。
【A委員】
疫学調査だけで非常に低い線量のリスクを検出することは、限界があるのではないかという印象を持っている。どのようにして低い線量のリスクを検出するのかということになるかと思うが、その場合は生物学的な研究によって放射線がなぜがんを作るのかというメカニズムを明らかにすることによって、低線量でのリスクが解明されていくのではないかと考えている。疫学的な情報とメカニズムに関する情報を併せて低線量のリスクを解明していくということをやらないと、疫学情報だけでは先ほどご指摘があったとおり、低い線量になればなるほどコンファウンディングファクターが大きく関わってくるため、なかなかクリアな結論が得られずに、常に灰色の部分でリスクが議論されるということになるため、私自身はふたつのアプローチで解明していく必要があると考えている。
特に生物学的な解明に関しては、ゲノム解析が非常に高度化しており、人間のゲノム全体が網羅的に解析できる時代になっている。そうすると、放射線が当たってゲノムが変化するということが、がんの原因であると考えられているが、放射線が当たってゲノムに変化が起きたところを捉えることができる可能性があるということである。現時点ではバックグラウンドが高くて一塩基の変化までは捉えることができないが、将来的にはそういったことが可能になる時代がくるかと思う。そういったことができるようになれば、低線量でのリスクを検出できるのではないかというイメージを持っている。
疫学調査だけで非常に低い線量のリスクを検出することは、限界があるのではないかという印象を持っている。どのようにして低い線量のリスクを検出するのかということになるかと思うが、その場合は生物学的な研究によって放射線がなぜがんを作るのかというメカニズムを明らかにすることによって、低線量でのリスクが解明されていくのではないかと考えている。疫学的な情報とメカニズムに関する情報を併せて低線量のリスクを解明していくということをやらないと、疫学情報だけでは先ほどご指摘があったとおり、低い線量になればなるほどコンファウンディングファクターが大きく関わってくるため、なかなかクリアな結論が得られずに、常に灰色の部分でリスクが議論されるということになるため、私自身はふたつのアプローチで解明していく必要があると考えている。
特に生物学的な解明に関しては、ゲノム解析が非常に高度化しており、人間のゲノム全体が網羅的に解析できる時代になっている。そうすると、放射線が当たってゲノムが変化するということが、がんの原因であると考えられているが、放射線が当たってゲノムに変化が起きたところを捉えることができる可能性があるということである。現時点ではバックグラウンドが高くて一塩基の変化までは捉えることができないが、将来的にはそういったことが可能になる時代がくるかと思う。そういったことができるようになれば、低線量でのリスクを検出できるのではないかというイメージを持っている。
【会長】
例えば、低線量被曝をされた方がいたとして、その方の血液を採取してゲノム解析により低線量による影響を受けているか否かが分かるということか。
例えば、低線量被曝をされた方がいたとして、その方の血液を採取してゲノム解析により低線量による影響を受けているか否かが分かるということか。
【A委員】
そういう可能性があるということである。
そういう可能性があるということである。
【会長】
現時点では、それを何十万人のデータに応用できるというものではないということか。
現時点では、それを何十万人のデータに応用できるというものではないということか。
【A委員】
そうである。現在、研究者が行っている研究の一つが放射線のつめ跡を見つけようということで、放射線被曝して発生したがんのゲノム解析をして、その中で放射線のつめ跡を見つけようという研究をしている。それに近いような結果が出ているデータもあるが、まだ決定的にこういう放射線を浴びたらこういうつめ跡が残って、それがこういうがんになるというところまでは到達していない。
そうである。現在、研究者が行っている研究の一つが放射線のつめ跡を見つけようということで、放射線被曝して発生したがんのゲノム解析をして、その中で放射線のつめ跡を見つけようという研究をしている。それに近いような結果が出ているデータもあるが、まだ決定的にこういう放射線を浴びたらこういうつめ跡が残って、それがこういうがんになるというところまでは到達していない。
【会長】
動物実験でもいいが、個体レベルで20mSvやこの会でも問題になっているような低い線量領域でも遺伝子を確認できるのか。
動物実験でもいいが、個体レベルで20mSvやこの会でも問題になっているような低い線量領域でも遺伝子を確認できるのか。
【A委員】
現段階ではそこまではいかないが、理論的には将来的にそういったことができる可能性があるのではないかと思う。
もうひとつ注意しないといけないのが、遺伝子に傷がついてそれがすぐにがんになるわけではない。がんが発生するまでは、様々な段階がある。
現段階ではそこまではいかないが、理論的には将来的にそういったことができる可能性があるのではないかと思う。
もうひとつ注意しないといけないのが、遺伝子に傷がついてそれがすぐにがんになるわけではない。がんが発生するまでは、様々な段階がある。
【会長】
そこは、疫学研究で重要なところ。コンバインドする必要がある。
今、放射線被曝影響の最先端の、しかも最も線量が低いところで人体がどのような影響を受けているかという研究が進んでいるという話であったが、現実問題として放射線被曝をされている福島の人たち、非常に低い線量であるが、現段階でこの方たちの細胞を研究することにより影響が分かるというレベルではないと思う。疫学研究を多国間で実施して30万人という対象者のデータを無視することはできないため、最大限のコンファウンディングやあらゆる可能性を考慮しながら、現段階では低線量被曝による影響を判断していく以外に現実的な方法はとり得ないのではないかと思う。そういう意味で、低線量被曝の影響があるとする論文を参考にすべきかと思う。そこまでするべきではないという意見の方もいるかも知れないが、いかがか。
そこは、疫学研究で重要なところ。コンバインドする必要がある。
今、放射線被曝影響の最先端の、しかも最も線量が低いところで人体がどのような影響を受けているかという研究が進んでいるという話であったが、現実問題として放射線被曝をされている福島の人たち、非常に低い線量であるが、現段階でこの方たちの細胞を研究することにより影響が分かるというレベルではないと思う。疫学研究を多国間で実施して30万人という対象者のデータを無視することはできないため、最大限のコンファウンディングやあらゆる可能性を考慮しながら、現段階では低線量被曝による影響を判断していく以外に現実的な方法はとり得ないのではないかと思う。そういう意味で、低線量被曝の影響があるとする論文を参考にすべきかと思う。そこまでするべきではないという意見の方もいるかも知れないが、いかがか。
【C委員】
現時点では、疫学情報に頼るしか方法はないと思う。
現時点では、疫学情報に頼るしか方法はないと思う。
【会長】
そういう意味では、胎児被曝の具体的な数字が出てきている。20mSvというのがあるが、そういうものを本当に信頼できるものであるのかどうか、UNSCEARは影響があると一応判断しているが、ICRPはコンサバティブというか、そこまでの判断はしていない。
B委員にお伺いしたいが、先ほどICRPがINWORKSのことに言及しているが基準としては採用していないと言われたが、ICRPがINWORKSについて何らかの評価を発表したのか。
そういう意味では、胎児被曝の具体的な数字が出てきている。20mSvというのがあるが、そういうものを本当に信頼できるものであるのかどうか、UNSCEARは影響があると一応判断しているが、ICRPはコンサバティブというか、そこまでの判断はしていない。
B委員にお伺いしたいが、先ほどICRPがINWORKSのことに言及しているが基準としては採用していないと言われたが、ICRPがINWORKSについて何らかの評価を発表したのか。
【B委員】
評価ではなく、こういう研究を行っているということを、いわゆるリファレンスとして出すことはあるということである。
評価ではなく、こういう研究を行っているということを、いわゆるリファレンスとして出すことはあるということである。
【会長】
しかし、取り入れていないということか。
しかし、取り入れていないということか。
【B委員】
その結果として、低線量領域でがんが増えているということをICRPとして認めるということには繋がっていないということである。こういう研究が行われているということはICRPの報告にあるということである。ICRPは、様々な意見を総合的に判断して、ICRPとしてはこういう勧告を出すと判断するのが常である。そういったことを言及する中のひとつとして、こういった疫学研究も言及されているということである。
その結果として、低線量領域でがんが増えているということをICRPとして認めるということには繋がっていないということである。こういう研究が行われているということはICRPの報告にあるということである。ICRPは、様々な意見を総合的に判断して、ICRPとしてはこういう勧告を出すと判断するのが常である。そういったことを言及する中のひとつとして、こういった疫学研究も言及されているということである。
【会長】
まだ、INWORKSのデータを否定したわけではないということか。
まだ、INWORKSのデータを否定したわけではないということか。
【B委員】
この研究データにより、従来のICRPの勧告を変えることはしていない。
この研究データにより、従来のICRPの勧告を変えることはしていない。
【会長】
検討はするということか。
検討はするということか。
【B委員】
検討するかどうかは書いていない。
ここに書いているとおり、ICRPの勧告でもこういった研究があることを言及はしていると、要するに述べているということである。
検討するかどうかは書いていない。
ここに書いているとおり、ICRPの勧告でもこういった研究があることを言及はしていると、要するに述べているということである。
【C委員】
ICRPがプレシーメイキングといって、そのベースとなるものは、UNSCEARや、あるいはそれ以外のものを参考にしてポリシーだけ作っている。そのため、低線量域の健康影響に関して言えば、何のポリシーができるかというと、線量限度を変えるべきかどうかということに最終的にはなってくるかと思う。そこまでは全く至っていないということである。しかし、こういう論文が出ているということは十分承知されている。
2006年以降勧告は出ていないため、大きな勧告の中にはこの研究はまだ入っていないが、毎年出るレポートでは言及されているため、委員会で考慮されていることは間違いないという状況だと認識している。
ICRPがプレシーメイキングといって、そのベースとなるものは、UNSCEARや、あるいはそれ以外のものを参考にしてポリシーだけ作っている。そのため、低線量域の健康影響に関して言えば、何のポリシーができるかというと、線量限度を変えるべきかどうかということに最終的にはなってくるかと思う。そこまでは全く至っていないということである。しかし、こういう論文が出ているということは十分承知されている。
2006年以降勧告は出ていないため、大きな勧告の中にはこの研究はまだ入っていないが、毎年出るレポートでは言及されているため、委員会で考慮されていることは間違いないという状況だと認識している。
【会長】
その考慮は、どういった内容が考慮されたかまでは分からないということか。
その考慮は、どういった内容が考慮されたかまでは分からないということか。
【C委員】
そうである。
そうである。
【会長】
専門委員会がいくつもあって、なかなか意見が一致しない部分もあり、この検討会の中でもそういった部分はあるが、大変な問題と課題を含んでいる領域のことが、偶然であるが被爆地域拡大を求める人たちに被爆の影響があるかということを判断する際には、具体的にそういったことを考えていかないといけないと、実情はそういうところにあるということである。
専門委員会がいくつもあって、なかなか意見が一致しない部分もあり、この検討会の中でもそういった部分はあるが、大変な問題と課題を含んでいる領域のことが、偶然であるが被爆地域拡大を求める人たちに被爆の影響があるかということを判断する際には、具体的にそういったことを考えていかないといけないと、実情はそういうところにあるということである。
審議事項
2 「第8回研究会までの中間報告について」
【会長】
どういうふうにまとめるか、なかなか難しい問題であるが、先ほどの多国間研究での小児CTのデータが出るかと思う。被爆地拡大の人たちが原爆にあったときは、ほとんどが小児である。一部胎児の方もおられた。そういうところに直結する問題なのでしっかりみていくということである。
しかし、たくさん論文が出ている疫学の最近の論文を総合的に見てみると、色々問題を含みながらも、交絡因子や、100mSv以下でもがん、白血病のリスクがあるという方向になってきているように判断している。委員各位はそういう判断をすること自体は時期尚早との考えか。
あと、放影研から最近のデータが出て、これはプレストンから予告を受けていたが、今まで直線性で議論してきた。それを、ベジアムセオリーを取り入れて新しいモデルを開発し、それでいくと直線性よりも少し低くなってしまうが、100mSvから0mSvまでの間にも少し落ちていくようなリスクがあるということである。完全な直線ではなく、少しカーブを描いて落ちていくようなものである。そこで推定であるが、100mSv以下のレンジでも0.7%くらいがんリスクをみているというような論文が新しく出ている。これは新しい方法論として出ている。今後放影研はやっていかれるのではないかと思っている。放影研の専門家とディスカッションする際に、100mSv以下で、以前の開催で閾値がないという問題をいろんな角度からご説明いただいたが、この問題に放影研もチャレンジしてセミパラメトリック解析というのを提唱して、今からやっていくのではないかと思う。そういうふうに研究は少しずつ進んでいっているが、依然として100mSv以下のところがグレーゾーンとして常に問題を解決できない状況が続いている。
人体影響を、C委員に中心にやっていただいたところで、資料2の中間報告までに至るかどうかというところを考える場合に、これまでやってきた第7回研究会までの経緯を事務局にまとめてもらっているため、これを先生方は見てもらってはどうか。
健康影響がある程度はあることを示唆する論文が多い。その論文のクオリティなど、様々な問題を含んではいるが、1970年代の重松班のように100mSv以下は完全に健康影響はなしという状況とは少し異なって、考慮すべきとするデータも論文も少なくないということで、中間的なまとめをしておくということでいかがか。
どういうふうにまとめるか、なかなか難しい問題であるが、先ほどの多国間研究での小児CTのデータが出るかと思う。被爆地拡大の人たちが原爆にあったときは、ほとんどが小児である。一部胎児の方もおられた。そういうところに直結する問題なのでしっかりみていくということである。
しかし、たくさん論文が出ている疫学の最近の論文を総合的に見てみると、色々問題を含みながらも、交絡因子や、100mSv以下でもがん、白血病のリスクがあるという方向になってきているように判断している。委員各位はそういう判断をすること自体は時期尚早との考えか。
あと、放影研から最近のデータが出て、これはプレストンから予告を受けていたが、今まで直線性で議論してきた。それを、ベジアムセオリーを取り入れて新しいモデルを開発し、それでいくと直線性よりも少し低くなってしまうが、100mSvから0mSvまでの間にも少し落ちていくようなリスクがあるということである。完全な直線ではなく、少しカーブを描いて落ちていくようなものである。そこで推定であるが、100mSv以下のレンジでも0.7%くらいがんリスクをみているというような論文が新しく出ている。これは新しい方法論として出ている。今後放影研はやっていかれるのではないかと思っている。放影研の専門家とディスカッションする際に、100mSv以下で、以前の開催で閾値がないという問題をいろんな角度からご説明いただいたが、この問題に放影研もチャレンジしてセミパラメトリック解析というのを提唱して、今からやっていくのではないかと思う。そういうふうに研究は少しずつ進んでいっているが、依然として100mSv以下のところがグレーゾーンとして常に問題を解決できない状況が続いている。
人体影響を、C委員に中心にやっていただいたところで、資料2の中間報告までに至るかどうかというところを考える場合に、これまでやってきた第7回研究会までの経緯を事務局にまとめてもらっているため、これを先生方は見てもらってはどうか。
健康影響がある程度はあることを示唆する論文が多い。その論文のクオリティなど、様々な問題を含んではいるが、1970年代の重松班のように100mSv以下は完全に健康影響はなしという状況とは少し異なって、考慮すべきとするデータも論文も少なくないということで、中間的なまとめをしておくということでいかがか。
【B委員】
放影研からもうすぐ論文が出そうであるが、まだ論文の頭はまだ見られないが、おそらく昨年ここで講演していただいたときは、もうあの論文のことがあっての話だと思う。INWORKSの論文だったと思うが、かなり線量とRRがかなり低いところで相関があるということで、相関が、本当に意義があるのかという話で。その時点で参考人に来ていただいて、そのあたりの話をしてもらおう、ということだった。結局、100mSvや200mSv以下はなかなか難しいということであった。おそらく今度出る論文もそういうことだと思う。関係がリニアか、ちょっと違うというのは、何かあると思われる。
あくまでもこの前言われたように100mSvや200mSv以下はまだ言えないというのが、今の放影研のデータでもあると思う。そのため、CT等のデータで100mSvや200mSv以下で影響を示唆するようなものがあるということを、ここで積極的にいうのは尚早であると思う。
放影研からもうすぐ論文が出そうであるが、まだ論文の頭はまだ見られないが、おそらく昨年ここで講演していただいたときは、もうあの論文のことがあっての話だと思う。INWORKSの論文だったと思うが、かなり線量とRRがかなり低いところで相関があるということで、相関が、本当に意義があるのかという話で。その時点で参考人に来ていただいて、そのあたりの話をしてもらおう、ということだった。結局、100mSvや200mSv以下はなかなか難しいということであった。おそらく今度出る論文もそういうことだと思う。関係がリニアか、ちょっと違うというのは、何かあると思われる。
あくまでもこの前言われたように100mSvや200mSv以下はまだ言えないというのが、今の放影研のデータでもあると思う。そのため、CT等のデータで100mSvや200mSv以下で影響を示唆するようなものがあるということを、ここで積極的にいうのは尚早であると思う。
【会長】
他の委員はどうか。
他の委員はどうか。
【C委員】
今までのレビューという意味で考えると、放射線の線量と影響あるいはリスクの関係をひとまとめに論じてしまうのは危険だと考える。
例えば、今日の話は医療被曝の場合で、急性被曝かつ複数回あったかもしれない場合で、後半のINWORKSのディスカッションに関しては、長期の慢性的な低線量の被曝ということで、被曝の状況が全く異なる。
以前、参考人に来ていただいた際は、自然放射線、高自然放射線地域であり、これもまた長期の低線量の被曝ということ、そして原爆被爆者は急性被曝ということで、それぞれ被曝の状況は全く異なる。もちろん線質も違っており、ロジカルなレスポンスが違ってくる可能性は否定できないため、これらを全てまとめてひとつの意見に集約するということは無理があると思う。
あくまで、個別の事例としてということであれば、いくつかまとまったポイントはあるかと思う。
今までのレビューという意味で考えると、放射線の線量と影響あるいはリスクの関係をひとまとめに論じてしまうのは危険だと考える。
例えば、今日の話は医療被曝の場合で、急性被曝かつ複数回あったかもしれない場合で、後半のINWORKSのディスカッションに関しては、長期の慢性的な低線量の被曝ということで、被曝の状況が全く異なる。
以前、参考人に来ていただいた際は、自然放射線、高自然放射線地域であり、これもまた長期の低線量の被曝ということ、そして原爆被爆者は急性被曝ということで、それぞれ被曝の状況は全く異なる。もちろん線質も違っており、ロジカルなレスポンスが違ってくる可能性は否定できないため、これらを全てまとめてひとつの意見に集約するということは無理があると思う。
あくまで、個別の事例としてということであれば、いくつかまとまったポイントはあるかと思う。
【会長】
被曝の状況は違うが、個別の事例としては低線量被曝の影響はあるという論文はある、とのまとめ方ということでいかがか。
被曝の状況は違うが、個別の事例としては低線量被曝の影響はあるという論文はある、とのまとめ方ということでいかがか。
【C委員】
個別の事例であったとしても、先ほど話題に上がったような200mSvや100mSv以下で有意な差があるとの論文はなかったと思う。言及はされていたものの、有意な差があるとの論文ではなかったと思う。そういう傾向にある程度だった。
個別の事例であったとしても、先ほど話題に上がったような200mSvや100mSv以下で有意な差があるとの論文はなかったと思う。言及はされていたものの、有意な差があるとの論文ではなかったと思う。そういう傾向にある程度だった。
【会長】
A委員は、この件について意見はあるか。
A委員は、この件について意見はあるか。
【A委員】
特にない。
特にない。
【会長】
低線量被曝の影響について、積極的に健康影響があると断定できるデータはないということは、はっきりしている。しかし、示唆する論文はいくつかあり、それらの論文に問題点はあるものの、INWORKSも含めて、低線量被曝の影響を否定するものではない。最後に書いているのが、現在の放射線防護の考え、いわゆる基準をサポートすると書かれているが、結局のところ、低線量被曝の影響については執筆者も逃げており、そういうところが現状であると思う。中間報告としては、そのあたりをまとめていくという方向でよろしいか。
あと、ピアース論文のフォローアップとして、Epi-Studyという研究がヨーロッパから120万人のデータが出ると思うため、フランスの論文の2のようなことが確認されると思う。それらのことから、この問題についての次のステップに進んで結論を導きたいと思うが、よろしいか。
以上で、第8回研究会の議論を終了する。
低線量被曝の影響について、積極的に健康影響があると断定できるデータはないということは、はっきりしている。しかし、示唆する論文はいくつかあり、それらの論文に問題点はあるものの、INWORKSも含めて、低線量被曝の影響を否定するものではない。最後に書いているのが、現在の放射線防護の考え、いわゆる基準をサポートすると書かれているが、結局のところ、低線量被曝の影響については執筆者も逃げており、そういうところが現状であると思う。中間報告としては、そのあたりをまとめていくという方向でよろしいか。
あと、ピアース論文のフォローアップとして、Epi-Studyという研究がヨーロッパから120万人のデータが出ると思うため、フランスの論文の2のようなことが確認されると思う。それらのことから、この問題についての次のステップに進んで結論を導きたいと思うが、よろしいか。
以上で、第8回研究会の議論を終了する。
〈用語解説〉
※1 米国学士院
リンカーン大統領政権時代の1863年に設立された私的機関であり、米国政府の要請に応じて「科学および技術に関連したあらゆる問題に関する調査、検討、実験および報告」を行い、学術・技術分野における連邦政府のための独立した専門的助言機関の役割を果たしている。
リンカーン大統領政権時代の1863年に設立された私的機関であり、米国政府の要請に応じて「科学および技術に関連したあらゆる問題に関する調査、検討、実験および報告」を行い、学術・技術分野における連邦政府のための独立した専門的助言機関の役割を果たしている。
※2 ABCC
原爆傷害調査委員会。原子爆弾による傷害の実態を詳細に調査記録するために、広島市への原子爆弾投下の直後にアメリカ合衆国が設置した民間機関である。
原爆傷害調査委員会。原子爆弾による傷害の実態を詳細に調査記録するために、広島市への原子爆弾投下の直後にアメリカ合衆国が設置した民間機関である。
※3 放影研
公益財団法人放射線影響研究所。被爆者の健康調査及び被爆の病理的調査・研究を行う研究機関で、日本国政府とアメリカ合衆国政府により設立・運営されている。
公益財団法人放射線影響研究所。被爆者の健康調査及び被爆の病理的調査・研究を行う研究機関で、日本国政府とアメリカ合衆国政府により設立・運営されている。
※4 RR
相対リスク。暴露群と非暴露群における疾病の頻度を比で表現したもの。
相対リスク。暴露群と非暴露群における疾病の頻度を比で表現したもの。
※5 ERR
過剰相対リスク。相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
過剰相対リスク。相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
※6 コホート
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。
※7 UNSCEAR
原子放射線の影響に関する国連科学委員会。電離放射線による被曝の程度と影響を評価・報告するために国連によって設置された委員会である。
原子放射線の影響に関する国連科学委員会。電離放射線による被曝の程度と影響を評価・報告するために国連によって設置された委員会である。
※8 ICRP
国際放射線防護委員会。専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である。
国際放射線防護委員会。専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である。
※9 ケースコントロール
ある時点で特定の疾病の状態にある人と、年齢や性別等が同じ条件で疾病の状態にない人を集め、過去に遡り疾病との関連が疑われる要因について調査する研究方法である。
ある時点で特定の疾病の状態にある人と、年齢や性別等が同じ条件で疾病の状態にない人を集め、過去に遡り疾病との関連が疑われる要因について調査する研究方法である。
※10 RBE
生物学的効果比。放射線の種類により生物学的影響の強さが異なることを表すための指標である。
生物学的効果比。放射線の種類により生物学的影響の強さが異なることを表すための指標である。
※11 LET
線エネルギー付与。放射線の線質の違いを図る指標である。
線エネルギー付与。放射線の線質の違いを図る指標である。
※12 BEIR
電離放射線の影響に関する委員会。米国科学アカデミー研究審議会に設置された委員会である。
電離放射線の影響に関する委員会。米国科学アカデミー研究審議会に設置された委員会である。
※13 交絡因子
調査対象の因子以外の、病気の発生に影響を与える因子のこと。
調査対象の因子以外の、病気の発生に影響を与える因子のこと。
※14 PF
Predisposing factor。素因。
Predisposing factor。素因。
※15 ハザード比
追跡期間を考慮したリスクの比。追跡期間によりリスクが変化する場合に使用する。生存率を指数関数モデルで表した生存関数において、その時定数をハザードという。
追跡期間を考慮したリスクの比。追跡期間によりリスクが変化する場合に使用する。生存率を指数関数モデルで表した生存関数において、その時定数をハザードという。
※16 INWORKS
職業放射線被ばくの癌リスク:フランス、英国、米国の3カ国原子力施設労働者の後方視的(過去にさかのぼる)国際研究。被ばく線量をモニターした原子力施設労働者に関する研究である。
職業放射線被ばくの癌リスク:フランス、英国、米国の3カ国原子力施設労働者の後方視的(過去にさかのぼる)国際研究。被ばく線量をモニターした原子力施設労働者に関する研究である。
第9回(平成29年度第1回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会
1 爆心地近くで被ばくした被ばく者の子孫における新規一塩基変化(新規突然変異)の検出について
2 第8回研究会までの中間経過報告について
3 子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題について
2 第8回研究会までの中間経過報告について
3 子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題について
開会
審議事項
1 爆心地近くで被ばくした被ばく者の子孫における新規一塩基変化(新規突然変異)の検出について
【A参考人】
私は人類遺伝学、DNAの研究をずっと行っており、その方面から見た被ばくの影響というのを考えて見ようということで、研究を行った。この研究が、3月の日本人類伝学会の雑誌に掲載された。
被ばく二世の新規一塩基変化についてである。ここに突然変異という言葉も出てくる。変異と言うと驚くが、変化と変異は同じ意味である。変異と言うと、研究者の方でも病気にすぐなると考えがちだが、それは全く関係がない。変化が起こったか起こっていないかということを調べた。
まず論文の結論として、今まで被ばくの影響として白血病や固形腫瘍が増えると言われてきているが、二世の人、遺伝という言葉は難しいところがあり、父から子、子から孫というように世代を超えて影響するかということを調べた。遺伝子への影響、本人のDNAへの影響はあるというのは、おそらく間違いないとことだと思っているが、それが子供にどう伝わるかということを、今回調べた。一塩基変化の数を、二世のお子さんにその変化が増えているかを数えたが、増えていないということが出た。解析数が3組の親子なので、数は少ないが、一応、変化はあまりないという結論になっている。
どうしてこういうことを考えたかということを、研究者の方々にも少し分かりづらいところがあるので、少し説明をさせていただく。DNAの方から見ると、放射線の影響はすごく捉えにくいものである。これは、被ばくによってDNAが傷付く際にどのように傷が付くかというと、細胞ごとに違う。それを検出する、検査する際に、ほぼほぼ見つけられないということになる。今まで見つけられないということだったが、どうやれば検出できるようなシステムになるかということを考えた。
総論的になるが、どんな病気が出るか、どんな風に外から見える特徴が変わるかということを見るということが一つの方法である。それは、言ってみれば疫学の調査ということになる。白血病がどれぐらい増えたかなど、そういう調査をする。がん発症と書いてあるが、がん発症が集団でどれぐらい増えたかということを計測するという方法がある。
もう一つは、インヘリテッド(※1)である。親から子へどのような影響が伝わったかというのは、先天異常、先天性の疾患がどれぐらい増えるかということで計測するという方法も考えられる。ただこれは、この資料にも書いてあるが、先天性の異常というのはものすごく少ない。少ないうえに、少ないけれども数は多い。それを計算してみても、観察対象と言うか、二世の方々の数がそれほど多くないということになる。そのため、先天異常の頻度が増えるかどうかは、計測しづらい。よって、表現型から見るということは、なかなか難しいだろうと考えた。
人類遺伝学ということで、私はこれまでDNAの研究を行ってきたけれども、DNAの損傷はどのようにしたら検出できるかということを考えた。そうすると、先ほども申し上げたとおり、DNAの損傷の具合が細胞ごとに違うため、一つ可能性があるのは、一つの細胞を取ってきて、どのような変化が起きるかというのを調べれば分かるが、人の身体には60兆個の細胞があるので、どの細胞を取るかというのは問題である。ただし、この方法では身体の外に細胞を取り出して、培養する必要がある。その際に変異することがある。培養する際に、人工的な変異が入る。そのため、放射線により入った傷か、途中の細胞培養やDNAを増やすといった作業の結果、増えたDNA損傷かの区別ができない。
そのため、人類遺伝学、DNAの方から見ると、被ばくした本人の解析をするのは結構難しいと考えている。細胞を一個分けないと解析ができないということで、どのように細胞を一個分けるかということになると、子供を解析すれば細胞一個を解析したことになる。元々は、二世の方を解析するということが最初の目的ではなく、どうすれば起こったDNAの損傷を検出できるかということを考えていった時に、二世の方の細胞を調べれば、損傷が分かるという結論に達した。子供は、父親から一つの細胞を受け取り、母親から一つの細胞を受け取る。そのため、完全にクローンという呼び方は少し違うけれども、父親の一つの細胞と母親の一つの細胞から成り立って、そのまま自然に増えていく。人工的な増殖をさせないということなので、もしDNAの損傷が伝わっていれば、ここで見ることができると、二世の方を解析すればDNAの損傷が分かると考えて解析をスタートしている。
今、遺伝的影響と申し上げたが、遺伝的影響というのは親から子に伝わることを一般的に遺伝的影響と言っている。日本語で言うと少し混乱するが、必ず伝わるということを遺伝的影響と言う。遺伝子への影響というのとは全く意味が違うため、そこが少し混乱するところではある。この伝わるところの影響を調べた。モデル動物では、放射線による遺伝的影響があると示されている。それは、まずDNAに傷が付く。被ばくした人である。その際には、細胞の様々なところに損傷が入る。もちろん、精子にも卵子にも損傷が入る。それが、子供に伝わる、影響するというのは、動物実験では知られている。しかし、被ばく二世の調査では、今のところはそういう影響はないだろうと言われていると理解している。細胞が一つ一つの損傷の部位により違うのかということを説明する。
これが、被ばくした人の細胞である。約60兆個ある。45から60兆個あると言われている。これに放射線が当たり、DNAが損傷する。これは、60兆個あるうちの1個である。これは全く計測不可能である。DNA損傷が全て違う。これに、運悪くがん遺伝子やがんの抑制遺伝子に変異が、変化が入って、がんになった途端に、それはクローンである。この1個の細胞から増えたものなので、解析が可能である。ここのがんの解析をすることは、たくさん研究されているけれども、ここを調べたいというのが第一のインタレストというか興味である。この1個の細胞がもし精子や卵子であれば、これが受精して、父と母からもらった二つの遺伝子があるので、一つは傷が付いたもの、もう一つは傷が付いていないものというのが検出できるというのが最初の出発点である。二世の方の解析を目標にしたと言うよりは、どのようにすれば放射線からの影響が定量的に見られるかということを考えて、研究を始めたということがスタートになる。
今回の研究の一塩基変化だが、一塩基変化というのはDNAの塩基の配列があるが、ACGTという文字の並び、それがどのように変わったかということになる。今まで、染色体異常というのは大きなくくり、DNAがコンパクトになって細胞の中に入っているわけだが、大きなくくりで染色体の異常がどうなっているかを見ていた。今回は、DNAのところ、一番小さな単位のところで見ていった。
DNAの変化だが、どのような変化があるかということと、どれが見つけられるか、見ることができるかということを考えると、ゲノムDNAの変化がどのようなものがあるかということを区別すると、小さいところから言うと、一塩基、ACGTの文字がどのように変化したかという一番小さなくくりから、欠失・重複・挿入と資料に書いてあるが、まとまった分、何十文字、何千文字や何万文字が一気になくなるなど、そういうことを解析することも可能である。そして、最後に一番大きな染色体。染色体のくくりとしてなくなったり、多くなったりというところ、小さいところから大きなところまで見る範囲というか、何を見るかで区別できる。今回見たのは、この一番小さなDNAの損傷というところを見た。
これを分かりやすく説明すると、ACGTの文字の並びがあるが、例えば異常がない人はGとCが向かい合ってある。もし何かあって、例えば病気の方などを調べると、時々、元はGAと向かい合っていたものが、ATと置き換わっていることがある。これが、DNAの一塩基の変化、一つの文字の変化ということになる。今回、検出したのはこの部分である。変わっている部分、この文字の並びが変わっている部分が二世の方でどれぐらい多いかということを検出したのが、今回の論文で発表したことである。
欠失というのは、この文字の並びがそのままなくなると、何十ベースも何百ベースもなくなるということである。挿入というのは、文字が何百ベースの文字が入ってしまう異常というか、変化になる。本当は、放射線による損傷というのは、大きな単位でなくなるというのがおそらく一番多いだろうと考えられている。本当はこれを解析したいのだが、技術的な制限があるため現在は解析することはできない。この欠失する、なくなるということを見つけるのは、今の技術をもってしても困難である。そのため、現時点で解析可能な一塩基の変化を解析したものが、今回の研究である。もっと大きなくくりの話だが、染色体の異常についても今回の研究で見ているが、これについても影響がなかったというのが結論である。
この資料は他の研究者からいただいたものであるが、放射線影響研究所で実施された被ばく二世の遺伝的影響、親から受け取った遺伝子で子供に何らかの変化が起きるかということを解析している。調査項目と書いてあるのは、最初に説明したとおり、表現型というか特徴である。DNAを見ているわけではなく、どんなことが起こったかである。例えば出生時の異常が増えたかや、体重や性比がどうかなどを調べている。一応は、今のところ有意差はない、影響はないという結論になっていると言われている。
今回の研究の方法として、トリオ解析を行っている。これは、両親と子供、三人という意味である。今回の調査対象は、父親が近距離被ばくをした人、母親は被ばくしていないという人、そしてその子供である。その三人について、概ね一人60億塩基対と言われているが、その約70%を対象に解析している。約42億塩基対を調べている。測定項目については、新規の突然変異、新規の突然変化である。これは何かと言うと、親になくて子供に現れた変化である。DNAのACGTの文字の並びを検出することを、第一の大きな目標とした。他にも、構造異常、染色体異常等もシーケンサーで解析すると見ることができるので、それも見た。この新規の突然変異については、全て確認した。あることを確認した。後ほど他の研究者の論文を引用して説明するが、計算上これぐらいはあるのではないかとされている研究であるが、ここまで真面目にと言うか、精緻に新規の変異を検出したのは今回の論文が初めてのものである。
ここからが論文の内容になる。第1トリオ、第2トリオ、第3トリオと、対照として両親ともに非被ばく者のトリオである。被ばく者は父親で、爆心地からの距離がそれぞれ示されている。また、何歳の時に被ばくしたかということと、子供ができた時に何歳だったかということを調べている。この時に、近距離被ばく者である、放射線を浴びたということを担保するために、脱毛の症状があった人を対象に調べている。確認された新規の突然変異、被ばく二世の人だけに現れた突然変異、塩基の並びの変化が、第1トリオでは62個が新規突然変異である。第2トリオでは81個、第3トリオでは42個だった。非被ばく者の両親の子供は48個の新規の突然変異があった。これだけを見ると、増えているとも減っているとも言えない結果になる。次は大きな構造異常と記載しているが、染色体を見て分かるようなレベルの異常である。これは一応ないということになる。これはもう少し詳細に解析しないと、本当にないのかと言われると、微妙なところである。シークエンスの解析や塩基配列の解析をする中で、見ることができた構造異常はないという結果になっている。
次の資料が最初に参考にした論文で、2012年に発表されたものである。横軸は子供が生まれた時の父親の年齢で、縦軸が子供に起こった新生突然変化である。父親の年齢が上がると、子供にDNAの損傷、新規の突然変化が多くなる。大体、父親の年齢が10歳上がると2個増えると言われている。リニアと言うか、直線的な関係である。少しばらつくが、父親が30歳の時に子供が生まれたとすると、その子供は60個程度、多いところで80個、少ないところで40個ぐらいの幅で新生突然変異が起こる。父親の年齢が40歳ぐらいになると子供は80個ぐらいの突然変異が起こるということが、この論文で出ていた。先ほど説明したが、この論文では最後まで目で見て変異があったかということは確認していない。次世代シーケンサーでは機械で数字が出てくるが、それで確からしいというところを拾い上げると、父親が30歳の時に子供が生まれると60個の変異があるということである。私達の研究では、最後まで調べて40個から80個の変異があるということを確認している。この、数字だけで選び出した新生突然変異の数だが、そんなに間違っていないと思う。40個、60個、80個の変異というのは、このレンジの中に入る。これは、言わば一般集団の中の親子関係から生じる新生突然変化なので、この直線から大きくずれていることはないだろうと考えている。
結論としては、被ばく二世の方には新規の一塩基変化が増えているという証拠は、今のところないだろうという論文の結論になっている。今回の研究で、一塩基変化を確実に捉えることはできた。全ゲノムシーケンス法で全て数えた。被ばく者以外の一般のトリオで先ほどの論文のような直線が引ければ、被ばく二世がどの直線に乗るか、どれぐらい離れているかということで、ひょっとしたら個人の放射線によるリスクが定量化できる可能性があるのではないかと考えている。この研究では二世の方を調べているが、元はと言えば被ばく者の一つの細胞に、この場合は父親なので一個の精子に入っていた変異を数えているということになる。それは、被ばくしていない人とほとんど変わらないだろうという結論になる。後方視的に何を調べたかということを考えると、そういう結論になる。
研究の限界と書いてあるが、ゲノムの変化、今回、一塩基変化を見たけれども、欠失を捉えられていないということは最大の問題である。これは問題ではあるが、機械の限界なので仕方がない。ちなみに、CNVと書いてあるが、1,000個の文字がなくなっていたり、増えていたりということは、50組を調べたら1組あると言われている。ほとんどないということである。これは機械で現在は検出できていないので、機械が発達すれば調べられるだろうと思う。また、調査対象が3トリオだったので、統計学的にどうか、優位性があると結論づけることができる対象数かと考えると、解析対象が少ない。今回は、個別に3トリオの対象の方に個別に同意書をいただいているが、もし大規模に調査を行うとなると、システマティックに旗を振ってやるべきではないかと思う。私からの説明は以上である。
私は人類遺伝学、DNAの研究をずっと行っており、その方面から見た被ばくの影響というのを考えて見ようということで、研究を行った。この研究が、3月の日本人類伝学会の雑誌に掲載された。
被ばく二世の新規一塩基変化についてである。ここに突然変異という言葉も出てくる。変異と言うと驚くが、変化と変異は同じ意味である。変異と言うと、研究者の方でも病気にすぐなると考えがちだが、それは全く関係がない。変化が起こったか起こっていないかということを調べた。
まず論文の結論として、今まで被ばくの影響として白血病や固形腫瘍が増えると言われてきているが、二世の人、遺伝という言葉は難しいところがあり、父から子、子から孫というように世代を超えて影響するかということを調べた。遺伝子への影響、本人のDNAへの影響はあるというのは、おそらく間違いないとことだと思っているが、それが子供にどう伝わるかということを、今回調べた。一塩基変化の数を、二世のお子さんにその変化が増えているかを数えたが、増えていないということが出た。解析数が3組の親子なので、数は少ないが、一応、変化はあまりないという結論になっている。
どうしてこういうことを考えたかということを、研究者の方々にも少し分かりづらいところがあるので、少し説明をさせていただく。DNAの方から見ると、放射線の影響はすごく捉えにくいものである。これは、被ばくによってDNAが傷付く際にどのように傷が付くかというと、細胞ごとに違う。それを検出する、検査する際に、ほぼほぼ見つけられないということになる。今まで見つけられないということだったが、どうやれば検出できるようなシステムになるかということを考えた。
総論的になるが、どんな病気が出るか、どんな風に外から見える特徴が変わるかということを見るということが一つの方法である。それは、言ってみれば疫学の調査ということになる。白血病がどれぐらい増えたかなど、そういう調査をする。がん発症と書いてあるが、がん発症が集団でどれぐらい増えたかということを計測するという方法がある。
もう一つは、インヘリテッド(※1)である。親から子へどのような影響が伝わったかというのは、先天異常、先天性の疾患がどれぐらい増えるかということで計測するという方法も考えられる。ただこれは、この資料にも書いてあるが、先天性の異常というのはものすごく少ない。少ないうえに、少ないけれども数は多い。それを計算してみても、観察対象と言うか、二世の方々の数がそれほど多くないということになる。そのため、先天異常の頻度が増えるかどうかは、計測しづらい。よって、表現型から見るということは、なかなか難しいだろうと考えた。
人類遺伝学ということで、私はこれまでDNAの研究を行ってきたけれども、DNAの損傷はどのようにしたら検出できるかということを考えた。そうすると、先ほども申し上げたとおり、DNAの損傷の具合が細胞ごとに違うため、一つ可能性があるのは、一つの細胞を取ってきて、どのような変化が起きるかというのを調べれば分かるが、人の身体には60兆個の細胞があるので、どの細胞を取るかというのは問題である。ただし、この方法では身体の外に細胞を取り出して、培養する必要がある。その際に変異することがある。培養する際に、人工的な変異が入る。そのため、放射線により入った傷か、途中の細胞培養やDNAを増やすといった作業の結果、増えたDNA損傷かの区別ができない。
そのため、人類遺伝学、DNAの方から見ると、被ばくした本人の解析をするのは結構難しいと考えている。細胞を一個分けないと解析ができないということで、どのように細胞を一個分けるかということになると、子供を解析すれば細胞一個を解析したことになる。元々は、二世の方を解析するということが最初の目的ではなく、どうすれば起こったDNAの損傷を検出できるかということを考えていった時に、二世の方の細胞を調べれば、損傷が分かるという結論に達した。子供は、父親から一つの細胞を受け取り、母親から一つの細胞を受け取る。そのため、完全にクローンという呼び方は少し違うけれども、父親の一つの細胞と母親の一つの細胞から成り立って、そのまま自然に増えていく。人工的な増殖をさせないということなので、もしDNAの損傷が伝わっていれば、ここで見ることができると、二世の方を解析すればDNAの損傷が分かると考えて解析をスタートしている。
今、遺伝的影響と申し上げたが、遺伝的影響というのは親から子に伝わることを一般的に遺伝的影響と言っている。日本語で言うと少し混乱するが、必ず伝わるということを遺伝的影響と言う。遺伝子への影響というのとは全く意味が違うため、そこが少し混乱するところではある。この伝わるところの影響を調べた。モデル動物では、放射線による遺伝的影響があると示されている。それは、まずDNAに傷が付く。被ばくした人である。その際には、細胞の様々なところに損傷が入る。もちろん、精子にも卵子にも損傷が入る。それが、子供に伝わる、影響するというのは、動物実験では知られている。しかし、被ばく二世の調査では、今のところはそういう影響はないだろうと言われていると理解している。細胞が一つ一つの損傷の部位により違うのかということを説明する。
これが、被ばくした人の細胞である。約60兆個ある。45から60兆個あると言われている。これに放射線が当たり、DNAが損傷する。これは、60兆個あるうちの1個である。これは全く計測不可能である。DNA損傷が全て違う。これに、運悪くがん遺伝子やがんの抑制遺伝子に変異が、変化が入って、がんになった途端に、それはクローンである。この1個の細胞から増えたものなので、解析が可能である。ここのがんの解析をすることは、たくさん研究されているけれども、ここを調べたいというのが第一のインタレストというか興味である。この1個の細胞がもし精子や卵子であれば、これが受精して、父と母からもらった二つの遺伝子があるので、一つは傷が付いたもの、もう一つは傷が付いていないものというのが検出できるというのが最初の出発点である。二世の方の解析を目標にしたと言うよりは、どのようにすれば放射線からの影響が定量的に見られるかということを考えて、研究を始めたということがスタートになる。
今回の研究の一塩基変化だが、一塩基変化というのはDNAの塩基の配列があるが、ACGTという文字の並び、それがどのように変わったかということになる。今まで、染色体異常というのは大きなくくり、DNAがコンパクトになって細胞の中に入っているわけだが、大きなくくりで染色体の異常がどうなっているかを見ていた。今回は、DNAのところ、一番小さな単位のところで見ていった。
DNAの変化だが、どのような変化があるかということと、どれが見つけられるか、見ることができるかということを考えると、ゲノムDNAの変化がどのようなものがあるかということを区別すると、小さいところから言うと、一塩基、ACGTの文字がどのように変化したかという一番小さなくくりから、欠失・重複・挿入と資料に書いてあるが、まとまった分、何十文字、何千文字や何万文字が一気になくなるなど、そういうことを解析することも可能である。そして、最後に一番大きな染色体。染色体のくくりとしてなくなったり、多くなったりというところ、小さいところから大きなところまで見る範囲というか、何を見るかで区別できる。今回見たのは、この一番小さなDNAの損傷というところを見た。
これを分かりやすく説明すると、ACGTの文字の並びがあるが、例えば異常がない人はGとCが向かい合ってある。もし何かあって、例えば病気の方などを調べると、時々、元はGAと向かい合っていたものが、ATと置き換わっていることがある。これが、DNAの一塩基の変化、一つの文字の変化ということになる。今回、検出したのはこの部分である。変わっている部分、この文字の並びが変わっている部分が二世の方でどれぐらい多いかということを検出したのが、今回の論文で発表したことである。
欠失というのは、この文字の並びがそのままなくなると、何十ベースも何百ベースもなくなるということである。挿入というのは、文字が何百ベースの文字が入ってしまう異常というか、変化になる。本当は、放射線による損傷というのは、大きな単位でなくなるというのがおそらく一番多いだろうと考えられている。本当はこれを解析したいのだが、技術的な制限があるため現在は解析することはできない。この欠失する、なくなるということを見つけるのは、今の技術をもってしても困難である。そのため、現時点で解析可能な一塩基の変化を解析したものが、今回の研究である。もっと大きなくくりの話だが、染色体の異常についても今回の研究で見ているが、これについても影響がなかったというのが結論である。
この資料は他の研究者からいただいたものであるが、放射線影響研究所で実施された被ばく二世の遺伝的影響、親から受け取った遺伝子で子供に何らかの変化が起きるかということを解析している。調査項目と書いてあるのは、最初に説明したとおり、表現型というか特徴である。DNAを見ているわけではなく、どんなことが起こったかである。例えば出生時の異常が増えたかや、体重や性比がどうかなどを調べている。一応は、今のところ有意差はない、影響はないという結論になっていると言われている。
今回の研究の方法として、トリオ解析を行っている。これは、両親と子供、三人という意味である。今回の調査対象は、父親が近距離被ばくをした人、母親は被ばくしていないという人、そしてその子供である。その三人について、概ね一人60億塩基対と言われているが、その約70%を対象に解析している。約42億塩基対を調べている。測定項目については、新規の突然変異、新規の突然変化である。これは何かと言うと、親になくて子供に現れた変化である。DNAのACGTの文字の並びを検出することを、第一の大きな目標とした。他にも、構造異常、染色体異常等もシーケンサーで解析すると見ることができるので、それも見た。この新規の突然変異については、全て確認した。あることを確認した。後ほど他の研究者の論文を引用して説明するが、計算上これぐらいはあるのではないかとされている研究であるが、ここまで真面目にと言うか、精緻に新規の変異を検出したのは今回の論文が初めてのものである。
ここからが論文の内容になる。第1トリオ、第2トリオ、第3トリオと、対照として両親ともに非被ばく者のトリオである。被ばく者は父親で、爆心地からの距離がそれぞれ示されている。また、何歳の時に被ばくしたかということと、子供ができた時に何歳だったかということを調べている。この時に、近距離被ばく者である、放射線を浴びたということを担保するために、脱毛の症状があった人を対象に調べている。確認された新規の突然変異、被ばく二世の人だけに現れた突然変異、塩基の並びの変化が、第1トリオでは62個が新規突然変異である。第2トリオでは81個、第3トリオでは42個だった。非被ばく者の両親の子供は48個の新規の突然変異があった。これだけを見ると、増えているとも減っているとも言えない結果になる。次は大きな構造異常と記載しているが、染色体を見て分かるようなレベルの異常である。これは一応ないということになる。これはもう少し詳細に解析しないと、本当にないのかと言われると、微妙なところである。シークエンスの解析や塩基配列の解析をする中で、見ることができた構造異常はないという結果になっている。
次の資料が最初に参考にした論文で、2012年に発表されたものである。横軸は子供が生まれた時の父親の年齢で、縦軸が子供に起こった新生突然変化である。父親の年齢が上がると、子供にDNAの損傷、新規の突然変化が多くなる。大体、父親の年齢が10歳上がると2個増えると言われている。リニアと言うか、直線的な関係である。少しばらつくが、父親が30歳の時に子供が生まれたとすると、その子供は60個程度、多いところで80個、少ないところで40個ぐらいの幅で新生突然変異が起こる。父親の年齢が40歳ぐらいになると子供は80個ぐらいの突然変異が起こるということが、この論文で出ていた。先ほど説明したが、この論文では最後まで目で見て変異があったかということは確認していない。次世代シーケンサーでは機械で数字が出てくるが、それで確からしいというところを拾い上げると、父親が30歳の時に子供が生まれると60個の変異があるということである。私達の研究では、最後まで調べて40個から80個の変異があるということを確認している。この、数字だけで選び出した新生突然変異の数だが、そんなに間違っていないと思う。40個、60個、80個の変異というのは、このレンジの中に入る。これは、言わば一般集団の中の親子関係から生じる新生突然変化なので、この直線から大きくずれていることはないだろうと考えている。
結論としては、被ばく二世の方には新規の一塩基変化が増えているという証拠は、今のところないだろうという論文の結論になっている。今回の研究で、一塩基変化を確実に捉えることはできた。全ゲノムシーケンス法で全て数えた。被ばく者以外の一般のトリオで先ほどの論文のような直線が引ければ、被ばく二世がどの直線に乗るか、どれぐらい離れているかということで、ひょっとしたら個人の放射線によるリスクが定量化できる可能性があるのではないかと考えている。この研究では二世の方を調べているが、元はと言えば被ばく者の一つの細胞に、この場合は父親なので一個の精子に入っていた変異を数えているということになる。それは、被ばくしていない人とほとんど変わらないだろうという結論になる。後方視的に何を調べたかということを考えると、そういう結論になる。
研究の限界と書いてあるが、ゲノムの変化、今回、一塩基変化を見たけれども、欠失を捉えられていないということは最大の問題である。これは問題ではあるが、機械の限界なので仕方がない。ちなみに、CNVと書いてあるが、1,000個の文字がなくなっていたり、増えていたりということは、50組を調べたら1組あると言われている。ほとんどないということである。これは機械で現在は検出できていないので、機械が発達すれば調べられるだろうと思う。また、調査対象が3トリオだったので、統計学的にどうか、優位性があると結論づけることができる対象数かと考えると、解析対象が少ない。今回は、個別に3トリオの対象の方に個別に同意書をいただいているが、もし大規模に調査を行うとなると、システマティックに旗を振ってやるべきではないかと思う。私からの説明は以上である。
【会長】
私が知る限り、DNAレベルで一塩基の変化を追及したのは、事実上世界でこの論文だけである。方法が発達してきたということも背景にあるかと思うが、限界もあるということ。私がDNAの専門家ではないので理解できない部分もあったが、委員の皆様の多くはDNAの専門家であるので、質問があればぜひお願いしたい。
私が知る限り、DNAレベルで一塩基の変化を追及したのは、事実上世界でこの論文だけである。方法が発達してきたということも背景にあるかと思うが、限界もあるということ。私がDNAの専門家ではないので理解できない部分もあったが、委員の皆様の多くはDNAの専門家であるので、質問があればぜひお願いしたい。
【E委員】
急性症状が出ている父親を対象にしているが、その被ばく者の方の被ばく線量はどれぐらいか。
急性症状が出ている父親を対象にしているが、その被ばく者の方の被ばく線量はどれぐらいか。
【A参考人】
情報としてあったが、今お答えできる資料を準備できていない。今この場できちんとお答えすることができない。
情報としてあったが、今お答えできる資料を準備できていない。今この場できちんとお答えすることができない。
【会長】
被ばく距離が1.0キロメートルから1.2キロメートルなので、100mSvは超えて200mSVから300mSv程度だろう。
被ばく距離が1.0キロメートルから1.2キロメートルなので、100mSvは超えて200mSVから300mSv程度だろう。
【A委員】
研究費が高額なので、たくさんの方を対象にすることが困難な研究だと思う。まずは3トリオ、10人弱の方を対象に調査してみたというところで、比較的被ばく線量が多い方を選んだつもりではあるけれども、結果が出ていない。もちろん、動物実験ではマウスであるが、マウスやヒトの違いはあるかと思うが、今回の研究はデータとして意味があると考える。
研究費が高額なので、たくさんの方を対象にすることが困難な研究だと思う。まずは3トリオ、10人弱の方を対象に調査してみたというところで、比較的被ばく線量が多い方を選んだつもりではあるけれども、結果が出ていない。もちろん、動物実験ではマウスであるが、マウスやヒトの違いはあるかと思うが、今回の研究はデータとして意味があると考える。
【会長】
マウスでは影響があるとの報告があるのか。
マウスでは影響があるとの報告があるのか。
【A参考人】
マウスの精巣に高線量を照射して、その子孫に、その研究では表現型だったが、遺伝病や奇形などがどれだけ出たかを数えて、増えるというのがマウスでの報告である。
マウスの精巣に高線量を照射して、その子孫に、その研究では表現型だったが、遺伝病や奇形などがどれだけ出たかを数えて、増えるというのがマウスでの報告である。
【会長】
説明の序盤で、疫学調査についてご説明いただいたが、疫学ではポジティブというか、はっきり影響があるということは、今まで一度も検出されていない。今回、初めてDNAの研究がなされたが、結論としてはポジティブではなかったということである。しかし、方法としては新しい方法なので、今後、欠失等が検出されるようになれば、同じ方法で調べることができるということか。
説明の序盤で、疫学調査についてご説明いただいたが、疫学ではポジティブというか、はっきり影響があるということは、今まで一度も検出されていない。今回、初めてDNAの研究がなされたが、結論としてはポジティブではなかったということである。しかし、方法としては新しい方法なので、今後、欠失等が検出されるようになれば、同じ方法で調べることができるということか。
【A参考人】
方法論としては、これで確定だと思う。あとは、何を見るかである。欠失を正確に見ることができるのであれば、もちろんその方が良い。通常50組に1つあるとされている欠失が、例えば1組に1つあるとすればそれは大変なことになるので、きちんと調べられるのであれば、欠失を見るのが一番である。
方法論としては、これで確定だと思う。あとは、何を見るかである。欠失を正確に見ることができるのであれば、もちろんその方が良い。通常50組に1つあるとされている欠失が、例えば1組に1つあるとすればそれは大変なことになるので、きちんと調べられるのであれば、欠失を見るのが一番である。
【B委員】
技術的なことを教えていただきたい。これは次世代シーケンサーで解析されたと思うが、その時の一塩基のバックグラウンドと、実際の変化というのを、バックグラウンドのレベルはどれぐらいになるのか。
技術的なことを教えていただきたい。これは次世代シーケンサーで解析されたと思うが、その時の一塩基のバックグラウンドと、実際の変化というのを、バックグラウンドのレベルはどれぐらいになるのか。
【A参考人】
バックグラウンドというとなかなか難しいと思うが、次世代シーケンサーが吐き出してくる情報の中の確からしさというのは、一応、使っている。このスライドで、ここが一応、確からしさの基準である。このGQが90以上というのが一緒に吐き出されてくると、100なら調べると58個あるということになる。このGQというのが90を下回っていて、もう一つの値、クオールというので調べてみると、170あって本物は4つだけということになる。この数字のどこで切るかということでバックグラウンドは変わるが、大体40%ぐらいは本物というところを探せるぐらいの精度である。
バックグラウンドというとなかなか難しいと思うが、次世代シーケンサーが吐き出してくる情報の中の確からしさというのは、一応、使っている。このスライドで、ここが一応、確からしさの基準である。このGQが90以上というのが一緒に吐き出されてくると、100なら調べると58個あるということになる。このGQというのが90を下回っていて、もう一つの値、クオールというので調べてみると、170あって本物は4つだけということになる。この数字のどこで切るかということでバックグラウンドは変わるが、大体40%ぐらいは本物というところを探せるぐらいの精度である。
【B委員】
それは、今後の技術開発でバックグランドが広くなるという可能性はあるのか。
それは、今後の技術開発でバックグランドが広くなるという可能性はあるのか。
【A参考人】
このシーケンサーを使う限りは、このあたりがマキシマムではないかと思っている。百発百中当たるということにはならない。50%ぐらいがせいぜいだろうと思う。
このシーケンサーを使う限りは、このあたりがマキシマムではないかと思っている。百発百中当たるということにはならない。50%ぐらいがせいぜいだろうと思う。
【D委員】
大き目の構造異常のところで、これはPCRで、この三つのトリオとそれから対照群では数字があまり変わらないが、プライマーヘッドとの関係と言いうか、こんな遺伝子の場合にはどうなるといった関係が分かるのか。
大き目の構造異常のところで、これはPCRで、この三つのトリオとそれから対照群では数字があまり変わらないが、プライマーヘッドとの関係と言いうか、こんな遺伝子の場合にはどうなるといった関係が分かるのか。
【A参考人】
一塩基変化に関しては、中身は見ていない。それはアミノ酸が変わったり遺伝子が壊れるものもあるだろうし、全く関係ないものもあるだろうけれども、中身は全く見ていない。見てもしょうがないだろうと思って、研究をしている。
構造異常に関しては対象領域が70%と言ったが、30%はどうしてもプライマーが作れないので、70%と70%のところがつながった構造異常のところに関して調べて、ないという結論を出している。
一塩基変化に関しては、中身は見ていない。それはアミノ酸が変わったり遺伝子が壊れるものもあるだろうし、全く関係ないものもあるだろうけれども、中身は全く見ていない。見てもしょうがないだろうと思って、研究をしている。
構造異常に関しては対象領域が70%と言ったが、30%はどうしてもプライマーが作れないので、70%と70%のところがつながった構造異常のところに関して調べて、ないという結論を出している。
【C委員】
この三トリオは、親に脱毛があるいということだが、対象はどのようにして選定したのか。
この三トリオは、親に脱毛があるいということだが、対象はどのようにして選定したのか。
【A参考人】
血液内科の先生と、この論文の第一著者である先生が健診を行う中で、まずは被ばく者ご本人に説明し、次に配偶者、最後に二世の方に説明し、三人の承諾をいただいた上で調査を行った。
血液内科の先生と、この論文の第一著者である先生が健診を行う中で、まずは被ばく者ご本人に説明し、次に配偶者、最後に二世の方に説明し、三人の承諾をいただいた上で調査を行った。
【C委員】
解析を行うのに、どれぐらい時間がかかるのか。
解析を行うのに、どれぐらい時間がかかるのか。
【A参考人】
研究を始めた時点では、一人の解析を行うのに3~4ヶ月必要だった。今は機会も進歩したので、1ヶ月程度でデータは出る。その確認作業に1ヶ月程度必要である。
研究を始めた時点では、一人の解析を行うのに3~4ヶ月必要だった。今は機会も進歩したので、1ヶ月程度でデータは出る。その確認作業に1ヶ月程度必要である。
【会長】
この研究では、最終的にどれぐらい時間がかかったのか。
この研究では、最終的にどれぐらい時間がかかったのか。
【A参考人】
5年程度かかった。
5年程度かかった。
【会長】
大変な研究である。精子と卵子が放射線を受けて傷が付くのが100%ではなく、10%や20%とバラつきがあるのであれば、これを疫学調査として影響の有無を見極めるためには、相当な数の対象者を選定して研究する必要があるのか。
大変な研究である。精子と卵子が放射線を受けて傷が付くのが100%ではなく、10%や20%とバラつきがあるのであれば、これを疫学調査として影響の有無を見極めるためには、相当な数の対象者を選定して研究する必要があるのか。
【A参考人】
資料の最後のところで引いた直線が引けるかということになると思う。被ばく者の方々と一般集団の方々を比較して、線の傾きや分散がどうかということに、最終的には落ち着くことになるかと考えている。
資料の最後のところで引いた直線が引けるかということになると思う。被ばく者の方々と一般集団の方々を比較して、線の傾きや分散がどうかということに、最終的には落ち着くことになるかと考えている。
【会長】
もし、今回の調査で一例でも200や300の変異があった場合は、三トリオの調査であっても有意な差があると言えるようなものか。
もし、今回の調査で一例でも200や300の変異があった場合は、三トリオの調査であっても有意な差があると言えるようなものか。
【A参考人】
有意な差があるとまでは言えないと思うが、影響があると考え、一塩基変化についてより本格的な調査を行うのではないかと考える。
有意な差があるとまでは言えないと思うが、影響があると考え、一塩基変化についてより本格的な調査を行うのではないかと考える。
審議事項
2 第8回研究会までの中間経過報告について
【会長】
私から報告させていただく。厚生労働省の原爆被爆者援護対策室に行き、室長ほか数名の職員の方に資料に基づいて説明してきた。
この際に用いた資料は、今回の研究会の資料2の16ページまでで、第1回から第8回までの概要をまとめたものである。
第1パラグラフは、被爆未指定地域住民の推定被曝線量については、「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の間接的セシウム線量に基づく線量推定と、被爆後早期に測定された理化学研究所仁科研グループやマンハッタン調査団及び米国海軍医学研究所による空間線量測定(実測値)のデータ、島原半島まで測定したデータとも比較した。これらの推定線量データから、「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」と同程度の20mSv近傍の最大推定線量を得た。これらの結果から「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の空間線量を導き出す方法は確実なものであったとの結論に至った。また、広島大学の静間特任教授の被曝推定線量も「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の被曝線量の推定値はほぼ妥当であるとの評価が得られた。以上の結果より、被爆未指定地域の一部の地域において、20mSv近傍を超える低線量被曝があったことが推定されると結論した。
一方、100mSv以下の低線量被曝の人体影響については、鹿児島大学の秋葉教授の「低線量放射線の健康リスクについて」、放影研の小笹疫学部長による「原爆被爆者追跡調査(寿命調査:LSS)における低線量被曝リスクの評価」の研究について100mSv 以下の被曝線量では明瞭な癌、白血病のリスク上昇はないとの説明をいただいたほか、フランス、英国、米国の3カ国原子力施設労働者の後方視的国際研究(INWORKS)による癌と白血病のリスクありとする報告、米国学士院の「低線量被曝による健康リスクに関する委員会」の1997年の報告書に含まれる妊婦の骨盤X線検査による胎児被曝により癌及び白血病のリスクが上昇するとした英国オックスフォード大学スチュアート教授グループの研究などの国際的論文を収集し、研究会で種々の角度から検討を行った。
その結果、被爆未指定地域において推定された20mSv程度の低線量被曝の影響を示す論文として、スチュアート等の報告が米国学士院報告では挙げられている一方、このスチュアート論文も含め、当研究会委員の間でも判断が分かれるINWORKS論文なども存在する。したがって、現在のところ20mSvを含む低線量被曝の人体影響についてはなお不確実な状況であることを申し述べた。
この他にも、小児のCTスキャン被曝による癌及び白血病のリスク上昇ありとする英国、オーストラリアなどの報告について、現在Epi-StudyというヨーロッパEU11カ国から120万人の小児及び青年におけるCTスキャンの低線量被曝の癌及び白血病のリスクに関する追試研究が進行中であるが、昨年中には結果が出なかった。今後も引き続き最新の研究論文等の情報を収集し、検証していくことが必要であると考えている、ということが今回の報告の骨子である。
また、放射線影響研究所や原子爆弾後障害研究会における被爆二世における白血病の増加の論文を解析したが、科学的には十分な根拠を欠いているとの結論を得ている。
以上のように、20mSv程度の低線量の人体影響を確定できる確固たる疫学データ等はまだないものの、今後も引き続き最新の研究論文(Epi-Study)等の情報を収集し、検証していくことが必要であると報告してきた。
厚生労働省側から突っ込んだ質問はなかったが、よく分かりましたということで、中間経過報告を受け取っていただいた。
私から報告させていただく。厚生労働省の原爆被爆者援護対策室に行き、室長ほか数名の職員の方に資料に基づいて説明してきた。
この際に用いた資料は、今回の研究会の資料2の16ページまでで、第1回から第8回までの概要をまとめたものである。
第1パラグラフは、被爆未指定地域住民の推定被曝線量については、「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の間接的セシウム線量に基づく線量推定と、被爆後早期に測定された理化学研究所仁科研グループやマンハッタン調査団及び米国海軍医学研究所による空間線量測定(実測値)のデータ、島原半島まで測定したデータとも比較した。これらの推定線量データから、「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」と同程度の20mSv近傍の最大推定線量を得た。これらの結果から「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の空間線量を導き出す方法は確実なものであったとの結論に至った。また、広島大学の静間特任教授の被曝推定線量も「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告(岡島報告)」の被曝線量の推定値はほぼ妥当であるとの評価が得られた。以上の結果より、被爆未指定地域の一部の地域において、20mSv近傍を超える低線量被曝があったことが推定されると結論した。
一方、100mSv以下の低線量被曝の人体影響については、鹿児島大学の秋葉教授の「低線量放射線の健康リスクについて」、放影研の小笹疫学部長による「原爆被爆者追跡調査(寿命調査:LSS)における低線量被曝リスクの評価」の研究について100mSv 以下の被曝線量では明瞭な癌、白血病のリスク上昇はないとの説明をいただいたほか、フランス、英国、米国の3カ国原子力施設労働者の後方視的国際研究(INWORKS)による癌と白血病のリスクありとする報告、米国学士院の「低線量被曝による健康リスクに関する委員会」の1997年の報告書に含まれる妊婦の骨盤X線検査による胎児被曝により癌及び白血病のリスクが上昇するとした英国オックスフォード大学スチュアート教授グループの研究などの国際的論文を収集し、研究会で種々の角度から検討を行った。
その結果、被爆未指定地域において推定された20mSv程度の低線量被曝の影響を示す論文として、スチュアート等の報告が米国学士院報告では挙げられている一方、このスチュアート論文も含め、当研究会委員の間でも判断が分かれるINWORKS論文なども存在する。したがって、現在のところ20mSvを含む低線量被曝の人体影響についてはなお不確実な状況であることを申し述べた。
この他にも、小児のCTスキャン被曝による癌及び白血病のリスク上昇ありとする英国、オーストラリアなどの報告について、現在Epi-StudyというヨーロッパEU11カ国から120万人の小児及び青年におけるCTスキャンの低線量被曝の癌及び白血病のリスクに関する追試研究が進行中であるが、昨年中には結果が出なかった。今後も引き続き最新の研究論文等の情報を収集し、検証していくことが必要であると考えている、ということが今回の報告の骨子である。
また、放射線影響研究所や原子爆弾後障害研究会における被爆二世における白血病の増加の論文を解析したが、科学的には十分な根拠を欠いているとの結論を得ている。
以上のように、20mSv程度の低線量の人体影響を確定できる確固たる疫学データ等はまだないものの、今後も引き続き最新の研究論文(Epi-Study)等の情報を収集し、検証していくことが必要であると報告してきた。
厚生労働省側から突っ込んだ質問はなかったが、よく分かりましたということで、中間経過報告を受け取っていただいた。
審議事項
3 子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題について
【B委員】
それでは、日本学術会議が「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題について」ということで報告書をまとめているので、ご報告させていただく。これは、臨床医学委員会に放射線防護・リスクマネジメント分科会というものがあって、そこがまとめた報告書である。副題として、現在の科学的知見を福島で生かすためにということで報告書が出されている。
報告書の内容を説明したいと思うが、時間が限られているため、関心が高いと思われる放射線の健康への影響とリスク評価を中心に説明させていただく。また、福島での事故における実際に健康影響がどのように評価されているのかも説明する。
資料の1ページには、この報告書をまとめた背景が記載されてある。東京電力福島第一原子力発電所事故から既に6年が経過している。この間、災害弱者であり、放射線感受性が成人より高いと言われる「子ども」と「放射線」の問題については、数多くの、非常に様々な議論がなされた。福島原発事故を含む災害の影響から、子どもを守るとともに、被災地を復興するために何をすればよいのか、学術コミュニティではこれからも科学的知見と現状に立脚した議論を行うべきであるため、本分科会の責務として、こうした議論のベースとなる報告書を作成することとしたものである。
そして、先ほど説明したとおり、この報告書では、子どもを対象とした放射線の健康影響や線量評価に関する科学的知見を整理するというのが一つの目的である。それからもう一つが、福島原発事故後の数年間に明らかになった健康影響に関するデータとその社会の受け止め方について整理・分析を行うということである。なお、この報告書における「子ども」とは、胎児と0歳から18歳までを指している。
目次をご覧いただくと分かるが、このように非常に詳細な内容になっているので、先ほど申し上げたような内容について説明させていただく。具体的には、2の子どもの放射線被ばくの影響というところでは、(1)の子どもの放射線被ばくによる健康影響に関する科学的根拠、(2)の子どもの放射線防護における課題、(3)の福島原発事故による子どもの健康影響に関する社会の認識、そして(4)の放射線影響をめぐる様々な見解、これらについて説明する。それから、3の提言に向けた課題の整理だが、上記を踏まえた上での課題の整理を行っているが、時間の都合上、割愛させていただく。
2ページから、2の子どもの放射線被ばくによる影響ということで、(1)の子どもの放射線被ばくによる健康影響に関する科学的根拠ということで記載している。我々が放射線影響について考える際に、一番大きな参考資料とするのが、国際機関の評価になると思っている。特に、国連に附属している原子放射線の影響に関する国連科学院会、UNSCEAR(※2)と呼んでいるが、この報告書は世界中から放射線影響の専門家が集まって、今までに発表された放射線影響に関する論文を評価して、非常に中立的な、あるいは科学的な立場から評価をするため、客観性があるとして国際的には評価されている。その評価から始めている。ここでは、最初の導入として、福島原発事故に関する評価が記載されている。これによると、計画避難区域住民の事故後最初の1年間の実効線量は、成人だと4.8から9.3mSv、1歳児だと7.1から13mSvという評価になる。それから、同じ集団での甲状腺の等価線量については、成人で16から35mSv、1歳児では47から83mSvと推定されており、UNSCEARでは1歳時で最大83mSvという評価である。この評価を基に、将来の健康影響について評価しているが、将来のがん統計において事故による放射線被ばくに起因し得る有意な変化がみられるとは予測されない、また先天性異常や遺伝性影響はみられないとしている。一方、甲状腺がんについては、最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については、理論上ではあるが、リスクが増加する可能性があるとしている。こういう評価をした科学的根拠について、これから説明する。その根拠については、国際機関の見解に基づいて概説することとなっている。
それでは実際の国際機関の見解について説明する。1.が子どもの放射線被ばくの健康影響に関する国際機関の見解ということで、アとして確定的な影響、有害な組織反応について、子どもの影響がどのように評価されているかということが記載されている。子どもと成人とで感受性に相違がみられるということは広く知られている。例えば認知機能、白内障、甲状腺結節は子どものリスクが高く、肺機能不全、骨髄不全、卵巣不全は、子どもは比較的、抵抗力があるということである。神経内分泌機能や腎機能への影響は成人と変わらないというのが、確定的影響で子どもに関する評価ということになる。
それから、発がんに関する確率的影響だが、UNSCEAR2006年報告書では、幼少期に放射線被ばくした人々の生涯発がんリスク推定は不確かであるが、あらゆる年齢で被ばくした人々の発がんリスクに比べて2~3倍高いかもしれないと記載されている。さらに2013年の報告書では、子どもと成人の放射線影響やリスクの相違に注目した、より詳細な解析を行って報告をしている。その結果が、20ページの表1である。ここに記載されているとおり、成人と子どもを比較した場合、子どもの方が一般的には2、3倍感受性が高いということだが、詳細にみると臓器によって異なるということである。がんを部位ごとに記載してあるが、肺がんは成人と比較して低いということになっている。そして皮膚がんは、子どもの方が感受性が高く、乳がんも子どもの方が高い。膀胱は大人と差がない。脳や甲状腺については子どもの方が感受性が高く、慢性リンパ性以外の白血病と骨髄異形成症候群も子どもの方が大人よりも感受性が高いと記載されている。それ以外にも、十分なデータがないために比較ができない臓器もある。
これらをまとめると、白血病、甲状腺がん、乳がん、皮膚がん、脳腫瘍などおよそ25%の腫瘍の発生は子どもの放射線感受性の方が高いということになっている。膀胱がんなどおよそ15%の腫瘍では子どもと成人の放射線感受性は同じぐらいである。肺がんなどおよそ10%の腫瘍では外部被ばくへの感受性が子どもの方が低いという結果になっている。食道がんなどおよそ20%の腫瘍では発がんリスクと被ばく時年齢との関連を結論付ける十分なデータがない。ホジキンリンパ腫、前立腺がん、子宮がんなどを含む約30%の腫瘍では、全ての被ばく時年齢で、放射線被ばくとリスクの間の相関がほとんど観察されなかったということが報告されている。
それから、ウに記載しているのが遺伝性影響である。先ほど、非常に詳細な分子レベルでの遺伝的影響がA参考人から報告されたが、ここに取り上げているのは2001年にUNSCEARが遺伝的影響についてまとめたものである。この報告によると、原爆被爆者二世をはじめとして、多くの調査があるが、放射線被ばくに起因するヒトの遺伝性影響を示す証拠は報告されていないということになっている。具体的にどういう指標で測定したかということだが、放射線被ばくした両親から生まれた子どもに染色体の不安定性の増加、ミニサテライト遺伝子変異、経世代的遺伝子不安定性、性別比の変化、先天的異常の増加、発がんの増加等について調べた限りでは、変化が認められていないというのが2001年までのUNSCEARの報告である。
妊娠している母親が被ばくした時の子どもへの影響ということだが、まず確定的な影響としては、着床前の放射線被ばくによる胚の死亡は100mGy以下の被ばくでは極めて稀であると報告されている。それから、ここは非常に重要なところだが、主な臓器の形成期、器官形成期に被ばくすると、奇形発生のリスクが最大になるということが報告されている。その例として、妊娠8~15週の時期に胎児が被ばくすると、生後の重篤な精神発達遅滞が起こる可能性があるということである。そのしきい線量は低くても300mGyだろうと報告されている。定量的に表現すると、1GyあたりのIQの低下が25と推定されるという報告になっている。それから、広島・長崎の原爆被爆者の調査では、被爆妊婦の子どもに小頭症がみられたことが報告されている。
それから、胎内被ばくでの発がんリスクについてだが、胎児の生涯がんリスクは乳幼児と同程度であると報告されており、これによると全人口についての放射線誘発がんリスクは最大で3倍程度高いということになる。
次に、子どもを対象とした線量評価の特徴ということでまとめている。リスク評価をする上では線量評価の評価になるが、子どもを対象とした線量評価は特徴がある。次のページを見ていただくと、外部被ばく線量がアという項目に記載されている。子どもは成人に比べて臓器を遮蔽する役割をする周囲の組織が少ないので、同じ被ばく線量を受けても、成人より吸収線量が高くなる傾向がある。それから、身長が低いので、臓器が地面に近く位置することになり、地面からの被ばく線量が高くなる傾向がある。
それから、内部被ばくに関しては、子どもの成長に伴って代謝や生理機能、食事や呼吸量、あるいは身体活動などは非常に目まぐるしく変わり、同じ年齢でも個人差が大きいということがあり、正確な評価は難しいところがある。特に放射性核種のうち、子どもと大人で大きく違うものがある。その代表が、ヨウ素131である。これは、乳児が大人と同じ量のヨウ素131を摂取しても、甲状腺の吸収線量が大きく異なり、具体的には大人よりも8~9倍大きくなる可能性があるということである。一方、セシウム137に関しては子どもの生物学的半減期が成人より短いということだが、最終的には大人と子どもで差がないということである。それを図で示しているのが、21ページの図1である。青色で示しているのがヨウ素131で、橙色で示しているのがセシウム137である。セシウム137は年齢であまり差がないが、ヨウ素131は1歳や生後三ヶ月だと成人に比べて8倍から9倍程度、単位摂取量当たりの預託実効線量係数が大きいということになる。このように、大人と子どもでは同じ量の放射性物質が体内に入った場合でも、ヨウ素131の場合は非常に高い甲状腺の被ばくがあるということになる。
ご存知のとおり、チェルノブイリ原発事故後に小児甲状腺がんが増加し、6,000人が手術を受け、15人が死亡したと報告されている。これは、先ほどのデータからも明らかなように、同じ量のヨウ素131が体内に入った場合は子どもの方が大人よりも被ばく線量が高いことに加えて、チェルノブイリの場合は汚染したミルクの飲用により、より多くのヨウ素131を摂取したことによって内部被ばく線量が大きくなったものと考えられている。例として、チェルノブイリ事故後48時間以内に避難したプリピャチの居住者の場合、成人の甲状腺吸収線量が0.07Gyと推定されているのに対し、乳児は2Gyと推定されている。子どもの場合は、非常に高い線量の被ばくをしたということになる。
それから、3.に子どもの放射線防護における課題ということで記載されている。ここでは、我々が小児科学を大学で学ぶ際に最初に言われることでもあるが、子どもは「小さな大人」ではないということである。先ほども説明したとおり、子どもと大人は違うということだが、放射線防護体系を見ると、まだ子どもに特化した放射線防護体系というのはできていないため、現在、その基礎となるデータの蓄積が行われていて、子どもに特化した放射線防護体系の確立に向けて調査が行われている段階である。
放射線防護体系の中で、実際にどのように行われているかということだが、実際には実効線量の子どもへの適用がなされている。実効線量とは、標準男性と標準女性を平均して実効線量を求めていて、それを一般に適用している。この値は、実際にはこの実効線量の推定値として求めている実用量というものがあるが、これは体格の小さい子どもにとっても十分安全側の推定値となっていることが多い。こういったところで、子どもに対する放射線防護の安全性が確認されているということである。
今後の子どもの被ばく線量やリスクの評価における課題だが、今あるデータは基本的には、原爆被爆時の高線量率被ばくに基づくデータであるので、今後は低線量、低線量率被ばくでの年齢別・臓器別の感受性を明らかにするようなデータの精密化が必要であるということである。
次のページには、医療被ばくにおける子どもに関しての記載がある。(2)に子どもの放射線診断・治療と防護ということで記載がある。
1.が子どもの医療被ばく防護ということで、医療被ばくにおいても放射線防護の3原則、正当化、最適化、線量限度の適用の3原則があるわけだが、医療被ばくにおいては診断や治療の目的を阻害しないために、線量限度の適用は用いられていない。正当化に関しては、最終的には医師が放射線診断や治療が患者の利益になるということで用いられている。最適化に関しては、放射線診断に関しては診断参考レベルが採用されており、放射線治療に関しては正常組織への被ばくをできるだけ低くするということで治療が行われている。
現在は、子どもに対しても放射線診断や治療の機会が増えており、特に血管内治療、IVRが普及して、子どもにも適用されるようになっている。IVRの場合は、比較的被ばく線量が高くなる。これらに関して注意喚起されており、例えばICRP(※3)は、診断に当たっては、診断に支障のない範囲で重要臓器、特に精巣、卵巣、甲状腺に遮蔽処置をすべきだとしている。また、核医学では、子どもの年齢に応じた放射性医薬品の適正な投与量を決める必要があると指摘されている。
続いて、医療放射線による子どものがん罹患リスクについて説明する。この研究会でも論文を紹介していただいたが、医療被ばくに伴って子どものがんリスクが増えているのではないかと報告が出てきている。それを概説している。
アとして、小児患者の医療被ばくということで、これはこの研究会でも取り上げたが、1985年から2002年に初めてCT検査を受けた22歳未満の約18万人を対象に疫学調査が行われている。これは英国の調査である。この結果によると、CT検査で各臓器・組織が受けた放射線量と罹患率との関係が解析され、1mGy あたりの過剰相対リスク(※4)は、脳腫瘍で2.3%、白血病では3.6%と増えているとの報告である。しかし、絶対リスクそのものはそんなに大きくないということである。同じ様な調査がオーストラリアでも行われており、この場合はCT検査一回あたり全がんの罹患率が16%増加するという報告である。さらには台湾やドイツでも調査が行われているが、これらの調査でも脳腫瘍などのリスクが増加することを示唆する結果である。ここで注意しないといけないのは、普通はCT検査を受けないので、CT検査を受ける要因があるということである。CT検査を受ける必要があった子どもたちは、疾患特異的、あるいは何らかの病態を既に持っている可能性がある。そういう要因は、集団を解析する場合には、選んだ集団に偏りがある可能性があるので、そういうことも注意して解析する必要があるということが述べられている。
それから、小児がんの治療後に見られる放射線誘発二次がんについても記載されている。特に子どもの場合に注意しなければならないのは、大人よりも放射線感受性が高いということと、大人よりも長く生きることになるので、放射線の影響が出る可能性があるということである。そういったことから、放射線治療後の二次がんについても注意する必要があるということで、ここでは取り上げている。具体的には、小児の放射線治療で頻度が高い二次がんとして、骨軟部肉腫、甲状腺、脳と乳腺のがんで、二次がんの80%に相当するということが記載されている。
それから、子宮内での被ばくである。イの項目だが、有名なオックスフォードのサーベイである。これは、妊娠中にX線診断を受けた母親から生まれた子どもの小児がんのリスクが1.4倍程度高かったという報告である。この被ばく線量が約10mGy程度ということで、非常に低い線量であるが、リスクが高かったということで注目されている。このデータがシステマティックレビューというものが行われている。このシステマティックレビューというのは、データを体系的に評価・検証する作業であり、その作業を行った結果では、統計的有意なリスクの増加が認められなかったということになっている。その後、このデータに関して新しい情報が報告されている。どういう情報かと言うと、骨盤計測とは、胎児が非常に大きい場合に出産が非常に困難になる可能性があるということで、骨盤のX線診断を行うが、大きな胎児は特定のがんのリスクが高いという結果が出ている。そうすると、リスクが高い胎児の集団を見ているために、放射線の影響として捉えられた可能性がある、因果の逆転の可能性があるということが指摘されている。それについても結論が出たわけではないので、今後もこういった調査が必要であるいということになっている。
次に、福島原発事故による子どもの健康影響に関する社会の認識を説明する。これは冒頭の部分で説明したとおりUNSCEARの評価が基本となっている。UNSCEARの評価によると、甲状腺がんは最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については理論上のリスクが増加する可能性があるが、それ以外の影響、先天性異常や遺伝性影響、小児甲状腺がん以外のがんに関しては、有意な増加は認められないだろうと予測している。こういう国際機関の調査や予測があるが、一般の方まで情報が届いていないとうこともあって、子どもの健康影響に関する不安は根強いものがある。また、線量推定やリスク予測が困難ということがあり、様々な見解がある。そういったことが、不安の大きな要因になっていたものである。
事故後かなり時間が経過して、様々な影響評価に関する情報が集まってきているので、そういうものを踏まえて、ここでは健康影響の種類別、そしてその各健康影響に関して社会の認識についてまとめている。
最初に1.として、次世代への影響に関する社会の受け止め方ということで、先ほども遺伝性影響に関しての説明があったが、実際に社会にどのような受け止め方があるかということである。
遺伝性影響に関して、あるいは胎児への影響に関しては、日本産科婦人科学会等が胎児への影響は心配ないと言うメッセージを発信した。これは事故が起きてから、比較的早く発出された。そういうこともあって、福島では中絶が増えるということはなかった。チェルノブイリ事故に関しては、ギリシャなど欧州の国々で大変多くの中絶が行われた。その教訓が生かされて、日本では産婦人科学会や地元福島の産婦人科の先生方が非常に頑張って説明をし、母親らもそのことを理解してくれたということである。その後、福島県が実施した県民健康調査の結果が取りまとめられ、福島県の妊婦の流産や中絶は福島第1原発事故の前後で増減していないことが確認された。それに加えて、死産、早産、低出生時体重及び先天性異常の発生率においても、事故の影響が認められないことが証明されている。このように、上記のような実証的結果を得て、科学的には決着がついたとされているが、社会ではそう認識されていない。
ソーシャルメディアを介して、様々な情報が発信・拡散されており、次世代への影響に関する不安が増幅されている。具体的には、県民健康調査や長崎大学が川内村で実施したアンケート調査によると、回答者の半分ぐらいの方が「次世代への影響の可能性が高い」と答えている。それから、平成25年1月に福島県相馬市の医師が市内の中学校で行ったアンケート調査によると、女子生徒の約4割が「結婚の際、不利益な扱いを受ける」というような回答をしている。こういった、誤った先入観や偏見に基づく情報が流布されており、正確な情報を発信して改善していく必要性があるということである。
そして、2.が放射性ヨウ素と甲状腺がんに関する社会の受け止め方ということで、ここは情報が複雑になるので、資料で説明させていただく。まず、最初にあるのが国際機関の評価で、これまでWHO(※5)が最初に行って、その後UNSCEARとIAEA(※6)の報告書が出ている。次にUNSCEARの線量評価だが、甲状腺に関しては一歳児の吸収線量で83mSvという評価になっている。その下にあるのが、福島県が実施したホールボディカウンターによる内部被ばく検査の実施状況である。これは、平成23年6月から平成27年7月までの調査結果である。これによると、26万人以上の方に検査が行われているが、1mSv未満の方が99.99%ということで、最大値が初期の頃に3mSvであることを示した方が二人いたという結果である。
次のページには、現在行われている県民健康調査の概要が記載されている。この調査は、基本調査と詳細調査が行われており、基本調査は事故後4ヶ月の外部被ばく線量を推計するものである。詳細調査は健康状態を把握するための調査で、甲状腺のエコー検査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査や妊産婦に関する調査が行われている。その下の図は、外部被ばく線量を推計するための説明図である。行動記録を取ると、その時の空間線量の分布が分かるので、それから外部被ばく線量が推計できるという内容である。
次のページには、外部被ばく線量の概要が記載されている。これは、平成29年2月20日に開催された県民健康調査の検討委員会での報告である。この調査では47万人以上の方の結果が報告されている。記載されているとおり、99.8%が5mSv未満であるということである。これは県全体の調査で、最高値が25mSvである。その下は妊産婦に関する調査で、早産率・低出生体重児率、それから先天奇形・先天異常発生率は全国の平均と差がないという結果になっている。
次のページには、子どもの甲状腺検査についての資料がある。下の表だが、対象者が約37万人いて、そのうち約30万人の調査が行われている。結果のところに、A1、A2、B、Cと記載されているが、これはエコー所見の分類である。A1は所見が何もなかったということだが、A2は5ミリメートル以下の結節がある、あるいは20mm以下ののう胞があるという所見である。これが47.8%あったということで、この数値が高いのではないか、そしてそれは放射線の影響ではないかということで、最初は大変心配をされた。福島以外の県でも同様の調査が行われている。長崎県、山梨県、青森県で同じような調査が行われていた。その結果として、A2あるいはBと判定される頻度は、事故の影響がない3県と変わらないという結果が得られ、母親らの安心が得られたものである。しかし、この3県の調査は対象の年齢の分布が一致しているわけではなく、厳密に比較することはなかなか難しいものの、概要はこのように比較できるというものである。
その下には、最初の3年間に先行調査ということで、エコー検査が行われており、その結果がまとめられている。その結果、悪性ないし悪性疑いという子どもが116例見つかったということである。その下に年齢分布が記載されている。ここで注目されているのが、0歳から5歳までの子どもでは、悪性ないし悪性疑いは見つかっていないということである。
次のページには、これまでよりたくさんの甲状腺がんあるいはがんの疑いの子どもが見つかったということである。それは、今までの報告で見つかった、臨床的に見つかった甲状腺がんと比較すると、非常に高いということで、その比較を示している。女性だと26.6倍、男性だと40倍以上高いということである。この論文の趣旨は、過剰診断ではないかということを示唆するものである。ここで確認していただきたいのは、福島で行っている検査では、症状のない子ども達を検査して見つけているということで、それは臨床的に症状があって甲状腺がんだと診断されるケースとは随分状況が違うということである。臨床的な、症状が出て見つかる子どもあるいは大人では非常に頻度が低いが、エコー検査で詳細に見ればそういう異常が見つかるという内容である。その下にあるのが、地域ごとに悪性ないし悪性疑いの割合に差があるかを検討した結果、そういう差はなかったという報告である。こういったことから、最初の3年間に見つかった甲状腺がんが放射線によるものかどうかということの検討が行われている。それを行ったのが、県民健康調査検討委員会というところで、中間評価が行われている。これによると、被ばく線量はチェルノブイリ事故と比べて総じて小さい、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短い、事故当時5歳以下からの発見はない、そして地域別の発見率に大きな差がないということから、総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくいという評価がされている。これが、最初の3年間の調査で見つかった子ども達の甲状腺がんに対する影響評価ということになる。
その3年間が経過して、第2ラウンドの検査が行われており、一応、区切りがついている。その結果が記載してあるが、71例の子ども達に悪性ないし悪性疑いが見つかっている。次のページに、先行調査と本格調査のまとめが記載されており、その下に年齢分布が記載されている。最初の3年間に行った調査と、平成26年から平成27年の2年間で行った調査との比較である。この様に、たくさんの子ども達の甲状腺がんが見つかっているが、それは日本だけの現象ではなく、世界各国、特に先進国でそういった現象が見つかっている。それを紹介しているのが、次のページの論文である。これは韓国の例だが、1999年頃から甲状腺がんが非常にたくさん見つかってきている。しかも、その内容が甲状腺の乳頭がんということである。一方で、甲状腺がんが見つかるものの、死亡率は変わっていない。なぜ、このようにたくさんの甲状腺がんが見つかるのかというと、この論文で指摘しているのが、検査の頻度が増えると甲状腺がんの発見率が増えるということで、検査をすれば甲状腺がんがたくさん見つかってくるということである。その下はアメリカの例だが、アメリカでも同様にそういった結果が見つかっている。
次のページを見ていただくと、各国の、アメリカ、イタリアやフランスと書いてあるが、そういった先進国でも同様に、検査をすることによってたくさんの甲状腺がんが見つかってきているという報告がなされている。福島の1回目の検査では、検討委員会で放射線の影響は考えにくいという評価だが、現在、2回目の検査の評価が始まったというところである。
このように、甲状腺の検査を行えば甲状腺がんが見つかるということで、一方で過剰診断の可能性があるのではないかということが指摘されている。検査をすることが、果たして患者さんの利益になるのかどうかという様な、倫理的な観点でも今後検討する必要があるということが議論されている。それが、福島の現状ということである。
それから、放射線セシウムに関する社会の受け止め方ということで記載がある。放射線セシウムに関しては、今まで様々な報告があるが、放射線セシウムとがんのリスクを証明するようなデータはまだない。その結果を得るためには、非常に長期の観察が必要ということになる。
最後に、リスクの相対化ということで、チェルノブイリ事故との比較について説明する。リスク値を言われても、実感として捉え難いところもある。比較することでリスクを実感しやすいという利点があるので、それを行っている。外部被ばく線量に関しての比較では、比較的外部被ばく線量が高いと推定されている川俣町の住民の皆様の調査結果と、チェルノブイリの事故との比較がなされている。それが、22ページの図2である。先ほども紹介したが、99%の方がこういった比較的高い地域であっても5mSv未満であるということである。これに対して、ウクライナの避難者は平均で20mSvあり、ベラルーシでは30mSvである。チェルノブイリよりは、はるかに低い被ばく線量であるということが確認できている。
それから、放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく線量だが、チェルノブイリの場合は非常に高い線量が確認されている。20ページの表2にまとめられている。ベラルーシ、ロシア、ウクライナということで、非常に高い甲状腺の吸収線量が確認されている。これと福島の被ばく線量を比較したのが、表3である。左のカラムが福島の子ども達の被ばく線量で、30mSvに99%以上の人が入っている。これに対して、チェルノブイリの場合は100mSv以上に99%以上が入っており、福島とは大きく違う。今後、甲状腺の被ばく線量と健康影響に関して検討が進められるということだが、甲状腺への影響には様々な議論があり、国際的な評価以外にも、国際的な評価とは異なる観点から放射線の影響があるのではないかと評価する専門家もいる。今後も、科学的なエビデンスを積み上げて評価する必要があるということである。この報告書の内容についての説明は以上である。
それでは、日本学術会議が「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題について」ということで報告書をまとめているので、ご報告させていただく。これは、臨床医学委員会に放射線防護・リスクマネジメント分科会というものがあって、そこがまとめた報告書である。副題として、現在の科学的知見を福島で生かすためにということで報告書が出されている。
報告書の内容を説明したいと思うが、時間が限られているため、関心が高いと思われる放射線の健康への影響とリスク評価を中心に説明させていただく。また、福島での事故における実際に健康影響がどのように評価されているのかも説明する。
資料の1ページには、この報告書をまとめた背景が記載されてある。東京電力福島第一原子力発電所事故から既に6年が経過している。この間、災害弱者であり、放射線感受性が成人より高いと言われる「子ども」と「放射線」の問題については、数多くの、非常に様々な議論がなされた。福島原発事故を含む災害の影響から、子どもを守るとともに、被災地を復興するために何をすればよいのか、学術コミュニティではこれからも科学的知見と現状に立脚した議論を行うべきであるため、本分科会の責務として、こうした議論のベースとなる報告書を作成することとしたものである。
そして、先ほど説明したとおり、この報告書では、子どもを対象とした放射線の健康影響や線量評価に関する科学的知見を整理するというのが一つの目的である。それからもう一つが、福島原発事故後の数年間に明らかになった健康影響に関するデータとその社会の受け止め方について整理・分析を行うということである。なお、この報告書における「子ども」とは、胎児と0歳から18歳までを指している。
目次をご覧いただくと分かるが、このように非常に詳細な内容になっているので、先ほど申し上げたような内容について説明させていただく。具体的には、2の子どもの放射線被ばくの影響というところでは、(1)の子どもの放射線被ばくによる健康影響に関する科学的根拠、(2)の子どもの放射線防護における課題、(3)の福島原発事故による子どもの健康影響に関する社会の認識、そして(4)の放射線影響をめぐる様々な見解、これらについて説明する。それから、3の提言に向けた課題の整理だが、上記を踏まえた上での課題の整理を行っているが、時間の都合上、割愛させていただく。
2ページから、2の子どもの放射線被ばくによる影響ということで、(1)の子どもの放射線被ばくによる健康影響に関する科学的根拠ということで記載している。我々が放射線影響について考える際に、一番大きな参考資料とするのが、国際機関の評価になると思っている。特に、国連に附属している原子放射線の影響に関する国連科学院会、UNSCEAR(※2)と呼んでいるが、この報告書は世界中から放射線影響の専門家が集まって、今までに発表された放射線影響に関する論文を評価して、非常に中立的な、あるいは科学的な立場から評価をするため、客観性があるとして国際的には評価されている。その評価から始めている。ここでは、最初の導入として、福島原発事故に関する評価が記載されている。これによると、計画避難区域住民の事故後最初の1年間の実効線量は、成人だと4.8から9.3mSv、1歳児だと7.1から13mSvという評価になる。それから、同じ集団での甲状腺の等価線量については、成人で16から35mSv、1歳児では47から83mSvと推定されており、UNSCEARでは1歳時で最大83mSvという評価である。この評価を基に、将来の健康影響について評価しているが、将来のがん統計において事故による放射線被ばくに起因し得る有意な変化がみられるとは予測されない、また先天性異常や遺伝性影響はみられないとしている。一方、甲状腺がんについては、最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については、理論上ではあるが、リスクが増加する可能性があるとしている。こういう評価をした科学的根拠について、これから説明する。その根拠については、国際機関の見解に基づいて概説することとなっている。
それでは実際の国際機関の見解について説明する。1.が子どもの放射線被ばくの健康影響に関する国際機関の見解ということで、アとして確定的な影響、有害な組織反応について、子どもの影響がどのように評価されているかということが記載されている。子どもと成人とで感受性に相違がみられるということは広く知られている。例えば認知機能、白内障、甲状腺結節は子どものリスクが高く、肺機能不全、骨髄不全、卵巣不全は、子どもは比較的、抵抗力があるということである。神経内分泌機能や腎機能への影響は成人と変わらないというのが、確定的影響で子どもに関する評価ということになる。
それから、発がんに関する確率的影響だが、UNSCEAR2006年報告書では、幼少期に放射線被ばくした人々の生涯発がんリスク推定は不確かであるが、あらゆる年齢で被ばくした人々の発がんリスクに比べて2~3倍高いかもしれないと記載されている。さらに2013年の報告書では、子どもと成人の放射線影響やリスクの相違に注目した、より詳細な解析を行って報告をしている。その結果が、20ページの表1である。ここに記載されているとおり、成人と子どもを比較した場合、子どもの方が一般的には2、3倍感受性が高いということだが、詳細にみると臓器によって異なるということである。がんを部位ごとに記載してあるが、肺がんは成人と比較して低いということになっている。そして皮膚がんは、子どもの方が感受性が高く、乳がんも子どもの方が高い。膀胱は大人と差がない。脳や甲状腺については子どもの方が感受性が高く、慢性リンパ性以外の白血病と骨髄異形成症候群も子どもの方が大人よりも感受性が高いと記載されている。それ以外にも、十分なデータがないために比較ができない臓器もある。
これらをまとめると、白血病、甲状腺がん、乳がん、皮膚がん、脳腫瘍などおよそ25%の腫瘍の発生は子どもの放射線感受性の方が高いということになっている。膀胱がんなどおよそ15%の腫瘍では子どもと成人の放射線感受性は同じぐらいである。肺がんなどおよそ10%の腫瘍では外部被ばくへの感受性が子どもの方が低いという結果になっている。食道がんなどおよそ20%の腫瘍では発がんリスクと被ばく時年齢との関連を結論付ける十分なデータがない。ホジキンリンパ腫、前立腺がん、子宮がんなどを含む約30%の腫瘍では、全ての被ばく時年齢で、放射線被ばくとリスクの間の相関がほとんど観察されなかったということが報告されている。
それから、ウに記載しているのが遺伝性影響である。先ほど、非常に詳細な分子レベルでの遺伝的影響がA参考人から報告されたが、ここに取り上げているのは2001年にUNSCEARが遺伝的影響についてまとめたものである。この報告によると、原爆被爆者二世をはじめとして、多くの調査があるが、放射線被ばくに起因するヒトの遺伝性影響を示す証拠は報告されていないということになっている。具体的にどういう指標で測定したかということだが、放射線被ばくした両親から生まれた子どもに染色体の不安定性の増加、ミニサテライト遺伝子変異、経世代的遺伝子不安定性、性別比の変化、先天的異常の増加、発がんの増加等について調べた限りでは、変化が認められていないというのが2001年までのUNSCEARの報告である。
妊娠している母親が被ばくした時の子どもへの影響ということだが、まず確定的な影響としては、着床前の放射線被ばくによる胚の死亡は100mGy以下の被ばくでは極めて稀であると報告されている。それから、ここは非常に重要なところだが、主な臓器の形成期、器官形成期に被ばくすると、奇形発生のリスクが最大になるということが報告されている。その例として、妊娠8~15週の時期に胎児が被ばくすると、生後の重篤な精神発達遅滞が起こる可能性があるということである。そのしきい線量は低くても300mGyだろうと報告されている。定量的に表現すると、1GyあたりのIQの低下が25と推定されるという報告になっている。それから、広島・長崎の原爆被爆者の調査では、被爆妊婦の子どもに小頭症がみられたことが報告されている。
それから、胎内被ばくでの発がんリスクについてだが、胎児の生涯がんリスクは乳幼児と同程度であると報告されており、これによると全人口についての放射線誘発がんリスクは最大で3倍程度高いということになる。
次に、子どもを対象とした線量評価の特徴ということでまとめている。リスク評価をする上では線量評価の評価になるが、子どもを対象とした線量評価は特徴がある。次のページを見ていただくと、外部被ばく線量がアという項目に記載されている。子どもは成人に比べて臓器を遮蔽する役割をする周囲の組織が少ないので、同じ被ばく線量を受けても、成人より吸収線量が高くなる傾向がある。それから、身長が低いので、臓器が地面に近く位置することになり、地面からの被ばく線量が高くなる傾向がある。
それから、内部被ばくに関しては、子どもの成長に伴って代謝や生理機能、食事や呼吸量、あるいは身体活動などは非常に目まぐるしく変わり、同じ年齢でも個人差が大きいということがあり、正確な評価は難しいところがある。特に放射性核種のうち、子どもと大人で大きく違うものがある。その代表が、ヨウ素131である。これは、乳児が大人と同じ量のヨウ素131を摂取しても、甲状腺の吸収線量が大きく異なり、具体的には大人よりも8~9倍大きくなる可能性があるということである。一方、セシウム137に関しては子どもの生物学的半減期が成人より短いということだが、最終的には大人と子どもで差がないということである。それを図で示しているのが、21ページの図1である。青色で示しているのがヨウ素131で、橙色で示しているのがセシウム137である。セシウム137は年齢であまり差がないが、ヨウ素131は1歳や生後三ヶ月だと成人に比べて8倍から9倍程度、単位摂取量当たりの預託実効線量係数が大きいということになる。このように、大人と子どもでは同じ量の放射性物質が体内に入った場合でも、ヨウ素131の場合は非常に高い甲状腺の被ばくがあるということになる。
ご存知のとおり、チェルノブイリ原発事故後に小児甲状腺がんが増加し、6,000人が手術を受け、15人が死亡したと報告されている。これは、先ほどのデータからも明らかなように、同じ量のヨウ素131が体内に入った場合は子どもの方が大人よりも被ばく線量が高いことに加えて、チェルノブイリの場合は汚染したミルクの飲用により、より多くのヨウ素131を摂取したことによって内部被ばく線量が大きくなったものと考えられている。例として、チェルノブイリ事故後48時間以内に避難したプリピャチの居住者の場合、成人の甲状腺吸収線量が0.07Gyと推定されているのに対し、乳児は2Gyと推定されている。子どもの場合は、非常に高い線量の被ばくをしたということになる。
それから、3.に子どもの放射線防護における課題ということで記載されている。ここでは、我々が小児科学を大学で学ぶ際に最初に言われることでもあるが、子どもは「小さな大人」ではないということである。先ほども説明したとおり、子どもと大人は違うということだが、放射線防護体系を見ると、まだ子どもに特化した放射線防護体系というのはできていないため、現在、その基礎となるデータの蓄積が行われていて、子どもに特化した放射線防護体系の確立に向けて調査が行われている段階である。
放射線防護体系の中で、実際にどのように行われているかということだが、実際には実効線量の子どもへの適用がなされている。実効線量とは、標準男性と標準女性を平均して実効線量を求めていて、それを一般に適用している。この値は、実際にはこの実効線量の推定値として求めている実用量というものがあるが、これは体格の小さい子どもにとっても十分安全側の推定値となっていることが多い。こういったところで、子どもに対する放射線防護の安全性が確認されているということである。
今後の子どもの被ばく線量やリスクの評価における課題だが、今あるデータは基本的には、原爆被爆時の高線量率被ばくに基づくデータであるので、今後は低線量、低線量率被ばくでの年齢別・臓器別の感受性を明らかにするようなデータの精密化が必要であるということである。
次のページには、医療被ばくにおける子どもに関しての記載がある。(2)に子どもの放射線診断・治療と防護ということで記載がある。
1.が子どもの医療被ばく防護ということで、医療被ばくにおいても放射線防護の3原則、正当化、最適化、線量限度の適用の3原則があるわけだが、医療被ばくにおいては診断や治療の目的を阻害しないために、線量限度の適用は用いられていない。正当化に関しては、最終的には医師が放射線診断や治療が患者の利益になるということで用いられている。最適化に関しては、放射線診断に関しては診断参考レベルが採用されており、放射線治療に関しては正常組織への被ばくをできるだけ低くするということで治療が行われている。
現在は、子どもに対しても放射線診断や治療の機会が増えており、特に血管内治療、IVRが普及して、子どもにも適用されるようになっている。IVRの場合は、比較的被ばく線量が高くなる。これらに関して注意喚起されており、例えばICRP(※3)は、診断に当たっては、診断に支障のない範囲で重要臓器、特に精巣、卵巣、甲状腺に遮蔽処置をすべきだとしている。また、核医学では、子どもの年齢に応じた放射性医薬品の適正な投与量を決める必要があると指摘されている。
続いて、医療放射線による子どものがん罹患リスクについて説明する。この研究会でも論文を紹介していただいたが、医療被ばくに伴って子どものがんリスクが増えているのではないかと報告が出てきている。それを概説している。
アとして、小児患者の医療被ばくということで、これはこの研究会でも取り上げたが、1985年から2002年に初めてCT検査を受けた22歳未満の約18万人を対象に疫学調査が行われている。これは英国の調査である。この結果によると、CT検査で各臓器・組織が受けた放射線量と罹患率との関係が解析され、1mGy あたりの過剰相対リスク(※4)は、脳腫瘍で2.3%、白血病では3.6%と増えているとの報告である。しかし、絶対リスクそのものはそんなに大きくないということである。同じ様な調査がオーストラリアでも行われており、この場合はCT検査一回あたり全がんの罹患率が16%増加するという報告である。さらには台湾やドイツでも調査が行われているが、これらの調査でも脳腫瘍などのリスクが増加することを示唆する結果である。ここで注意しないといけないのは、普通はCT検査を受けないので、CT検査を受ける要因があるということである。CT検査を受ける必要があった子どもたちは、疾患特異的、あるいは何らかの病態を既に持っている可能性がある。そういう要因は、集団を解析する場合には、選んだ集団に偏りがある可能性があるので、そういうことも注意して解析する必要があるということが述べられている。
それから、小児がんの治療後に見られる放射線誘発二次がんについても記載されている。特に子どもの場合に注意しなければならないのは、大人よりも放射線感受性が高いということと、大人よりも長く生きることになるので、放射線の影響が出る可能性があるということである。そういったことから、放射線治療後の二次がんについても注意する必要があるということで、ここでは取り上げている。具体的には、小児の放射線治療で頻度が高い二次がんとして、骨軟部肉腫、甲状腺、脳と乳腺のがんで、二次がんの80%に相当するということが記載されている。
それから、子宮内での被ばくである。イの項目だが、有名なオックスフォードのサーベイである。これは、妊娠中にX線診断を受けた母親から生まれた子どもの小児がんのリスクが1.4倍程度高かったという報告である。この被ばく線量が約10mGy程度ということで、非常に低い線量であるが、リスクが高かったということで注目されている。このデータがシステマティックレビューというものが行われている。このシステマティックレビューというのは、データを体系的に評価・検証する作業であり、その作業を行った結果では、統計的有意なリスクの増加が認められなかったということになっている。その後、このデータに関して新しい情報が報告されている。どういう情報かと言うと、骨盤計測とは、胎児が非常に大きい場合に出産が非常に困難になる可能性があるということで、骨盤のX線診断を行うが、大きな胎児は特定のがんのリスクが高いという結果が出ている。そうすると、リスクが高い胎児の集団を見ているために、放射線の影響として捉えられた可能性がある、因果の逆転の可能性があるということが指摘されている。それについても結論が出たわけではないので、今後もこういった調査が必要であるいということになっている。
次に、福島原発事故による子どもの健康影響に関する社会の認識を説明する。これは冒頭の部分で説明したとおりUNSCEARの評価が基本となっている。UNSCEARの評価によると、甲状腺がんは最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については理論上のリスクが増加する可能性があるが、それ以外の影響、先天性異常や遺伝性影響、小児甲状腺がん以外のがんに関しては、有意な増加は認められないだろうと予測している。こういう国際機関の調査や予測があるが、一般の方まで情報が届いていないとうこともあって、子どもの健康影響に関する不安は根強いものがある。また、線量推定やリスク予測が困難ということがあり、様々な見解がある。そういったことが、不安の大きな要因になっていたものである。
事故後かなり時間が経過して、様々な影響評価に関する情報が集まってきているので、そういうものを踏まえて、ここでは健康影響の種類別、そしてその各健康影響に関して社会の認識についてまとめている。
最初に1.として、次世代への影響に関する社会の受け止め方ということで、先ほども遺伝性影響に関しての説明があったが、実際に社会にどのような受け止め方があるかということである。
遺伝性影響に関して、あるいは胎児への影響に関しては、日本産科婦人科学会等が胎児への影響は心配ないと言うメッセージを発信した。これは事故が起きてから、比較的早く発出された。そういうこともあって、福島では中絶が増えるということはなかった。チェルノブイリ事故に関しては、ギリシャなど欧州の国々で大変多くの中絶が行われた。その教訓が生かされて、日本では産婦人科学会や地元福島の産婦人科の先生方が非常に頑張って説明をし、母親らもそのことを理解してくれたということである。その後、福島県が実施した県民健康調査の結果が取りまとめられ、福島県の妊婦の流産や中絶は福島第1原発事故の前後で増減していないことが確認された。それに加えて、死産、早産、低出生時体重及び先天性異常の発生率においても、事故の影響が認められないことが証明されている。このように、上記のような実証的結果を得て、科学的には決着がついたとされているが、社会ではそう認識されていない。
ソーシャルメディアを介して、様々な情報が発信・拡散されており、次世代への影響に関する不安が増幅されている。具体的には、県民健康調査や長崎大学が川内村で実施したアンケート調査によると、回答者の半分ぐらいの方が「次世代への影響の可能性が高い」と答えている。それから、平成25年1月に福島県相馬市の医師が市内の中学校で行ったアンケート調査によると、女子生徒の約4割が「結婚の際、不利益な扱いを受ける」というような回答をしている。こういった、誤った先入観や偏見に基づく情報が流布されており、正確な情報を発信して改善していく必要性があるということである。
そして、2.が放射性ヨウ素と甲状腺がんに関する社会の受け止め方ということで、ここは情報が複雑になるので、資料で説明させていただく。まず、最初にあるのが国際機関の評価で、これまでWHO(※5)が最初に行って、その後UNSCEARとIAEA(※6)の報告書が出ている。次にUNSCEARの線量評価だが、甲状腺に関しては一歳児の吸収線量で83mSvという評価になっている。その下にあるのが、福島県が実施したホールボディカウンターによる内部被ばく検査の実施状況である。これは、平成23年6月から平成27年7月までの調査結果である。これによると、26万人以上の方に検査が行われているが、1mSv未満の方が99.99%ということで、最大値が初期の頃に3mSvであることを示した方が二人いたという結果である。
次のページには、現在行われている県民健康調査の概要が記載されている。この調査は、基本調査と詳細調査が行われており、基本調査は事故後4ヶ月の外部被ばく線量を推計するものである。詳細調査は健康状態を把握するための調査で、甲状腺のエコー検査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査や妊産婦に関する調査が行われている。その下の図は、外部被ばく線量を推計するための説明図である。行動記録を取ると、その時の空間線量の分布が分かるので、それから外部被ばく線量が推計できるという内容である。
次のページには、外部被ばく線量の概要が記載されている。これは、平成29年2月20日に開催された県民健康調査の検討委員会での報告である。この調査では47万人以上の方の結果が報告されている。記載されているとおり、99.8%が5mSv未満であるということである。これは県全体の調査で、最高値が25mSvである。その下は妊産婦に関する調査で、早産率・低出生体重児率、それから先天奇形・先天異常発生率は全国の平均と差がないという結果になっている。
次のページには、子どもの甲状腺検査についての資料がある。下の表だが、対象者が約37万人いて、そのうち約30万人の調査が行われている。結果のところに、A1、A2、B、Cと記載されているが、これはエコー所見の分類である。A1は所見が何もなかったということだが、A2は5ミリメートル以下の結節がある、あるいは20mm以下ののう胞があるという所見である。これが47.8%あったということで、この数値が高いのではないか、そしてそれは放射線の影響ではないかということで、最初は大変心配をされた。福島以外の県でも同様の調査が行われている。長崎県、山梨県、青森県で同じような調査が行われていた。その結果として、A2あるいはBと判定される頻度は、事故の影響がない3県と変わらないという結果が得られ、母親らの安心が得られたものである。しかし、この3県の調査は対象の年齢の分布が一致しているわけではなく、厳密に比較することはなかなか難しいものの、概要はこのように比較できるというものである。
その下には、最初の3年間に先行調査ということで、エコー検査が行われており、その結果がまとめられている。その結果、悪性ないし悪性疑いという子どもが116例見つかったということである。その下に年齢分布が記載されている。ここで注目されているのが、0歳から5歳までの子どもでは、悪性ないし悪性疑いは見つかっていないということである。
次のページには、これまでよりたくさんの甲状腺がんあるいはがんの疑いの子どもが見つかったということである。それは、今までの報告で見つかった、臨床的に見つかった甲状腺がんと比較すると、非常に高いということで、その比較を示している。女性だと26.6倍、男性だと40倍以上高いということである。この論文の趣旨は、過剰診断ではないかということを示唆するものである。ここで確認していただきたいのは、福島で行っている検査では、症状のない子ども達を検査して見つけているということで、それは臨床的に症状があって甲状腺がんだと診断されるケースとは随分状況が違うということである。臨床的な、症状が出て見つかる子どもあるいは大人では非常に頻度が低いが、エコー検査で詳細に見ればそういう異常が見つかるという内容である。その下にあるのが、地域ごとに悪性ないし悪性疑いの割合に差があるかを検討した結果、そういう差はなかったという報告である。こういったことから、最初の3年間に見つかった甲状腺がんが放射線によるものかどうかということの検討が行われている。それを行ったのが、県民健康調査検討委員会というところで、中間評価が行われている。これによると、被ばく線量はチェルノブイリ事故と比べて総じて小さい、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短い、事故当時5歳以下からの発見はない、そして地域別の発見率に大きな差がないということから、総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくいという評価がされている。これが、最初の3年間の調査で見つかった子ども達の甲状腺がんに対する影響評価ということになる。
その3年間が経過して、第2ラウンドの検査が行われており、一応、区切りがついている。その結果が記載してあるが、71例の子ども達に悪性ないし悪性疑いが見つかっている。次のページに、先行調査と本格調査のまとめが記載されており、その下に年齢分布が記載されている。最初の3年間に行った調査と、平成26年から平成27年の2年間で行った調査との比較である。この様に、たくさんの子ども達の甲状腺がんが見つかっているが、それは日本だけの現象ではなく、世界各国、特に先進国でそういった現象が見つかっている。それを紹介しているのが、次のページの論文である。これは韓国の例だが、1999年頃から甲状腺がんが非常にたくさん見つかってきている。しかも、その内容が甲状腺の乳頭がんということである。一方で、甲状腺がんが見つかるものの、死亡率は変わっていない。なぜ、このようにたくさんの甲状腺がんが見つかるのかというと、この論文で指摘しているのが、検査の頻度が増えると甲状腺がんの発見率が増えるということで、検査をすれば甲状腺がんがたくさん見つかってくるということである。その下はアメリカの例だが、アメリカでも同様にそういった結果が見つかっている。
次のページを見ていただくと、各国の、アメリカ、イタリアやフランスと書いてあるが、そういった先進国でも同様に、検査をすることによってたくさんの甲状腺がんが見つかってきているという報告がなされている。福島の1回目の検査では、検討委員会で放射線の影響は考えにくいという評価だが、現在、2回目の検査の評価が始まったというところである。
このように、甲状腺の検査を行えば甲状腺がんが見つかるということで、一方で過剰診断の可能性があるのではないかということが指摘されている。検査をすることが、果たして患者さんの利益になるのかどうかという様な、倫理的な観点でも今後検討する必要があるということが議論されている。それが、福島の現状ということである。
それから、放射線セシウムに関する社会の受け止め方ということで記載がある。放射線セシウムに関しては、今まで様々な報告があるが、放射線セシウムとがんのリスクを証明するようなデータはまだない。その結果を得るためには、非常に長期の観察が必要ということになる。
最後に、リスクの相対化ということで、チェルノブイリ事故との比較について説明する。リスク値を言われても、実感として捉え難いところもある。比較することでリスクを実感しやすいという利点があるので、それを行っている。外部被ばく線量に関しての比較では、比較的外部被ばく線量が高いと推定されている川俣町の住民の皆様の調査結果と、チェルノブイリの事故との比較がなされている。それが、22ページの図2である。先ほども紹介したが、99%の方がこういった比較的高い地域であっても5mSv未満であるということである。これに対して、ウクライナの避難者は平均で20mSvあり、ベラルーシでは30mSvである。チェルノブイリよりは、はるかに低い被ばく線量であるということが確認できている。
それから、放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく線量だが、チェルノブイリの場合は非常に高い線量が確認されている。20ページの表2にまとめられている。ベラルーシ、ロシア、ウクライナということで、非常に高い甲状腺の吸収線量が確認されている。これと福島の被ばく線量を比較したのが、表3である。左のカラムが福島の子ども達の被ばく線量で、30mSvに99%以上の人が入っている。これに対して、チェルノブイリの場合は100mSv以上に99%以上が入っており、福島とは大きく違う。今後、甲状腺の被ばく線量と健康影響に関して検討が進められるということだが、甲状腺への影響には様々な議論があり、国際的な評価以外にも、国際的な評価とは異なる観点から放射線の影響があるのではないかと評価する専門家もいる。今後も、科学的なエビデンスを積み上げて評価する必要があるということである。この報告書の内容についての説明は以上である。
【会長】
私から質問させていただきたい。福島のことはよく分かったのだが、前半の部分で日本のデータがあまり出てきていない。外国のデータが多いが、日本人の子どもの論文はあまりないのか。
私から質問させていただきたい。福島のことはよく分かったのだが、前半の部分で日本のデータがあまり出てきていない。外国のデータが多いが、日本人の子どもの論文はあまりないのか。
【B委員】
子どもだけの論文はあまりない。情報となるのは、原爆被爆者のデータである。
子どもだけの論文はあまりない。情報となるのは、原爆被爆者のデータである。
【会長】
承知した。少し気になったのが、我々は現在、CT検査を注目しているわけだが、イギリスやオーストラリアのデータはあったが、日本ではそういった研究はされていないのか。どこかで発表などを聞いたこともないか。
承知した。少し気になったのが、我々は現在、CT検査を注目しているわけだが、イギリスやオーストラリアのデータはあったが、日本ではそういった研究はされていないのか。どこかで発表などを聞いたこともないか。
【E委員】
日本で、小児の放射線検査を受けた方の調査が出てこないのは、ひとつは、がん登録が全国規模であるかどうかということである。これは、小児がんは症例数が多いわけではないので、ある程度プールされたデータでないと、きちんとした判断ができないということが一番大きい理由ではないかと思われる。
日本で、小児の放射線検査を受けた方の調査が出てこないのは、ひとつは、がん登録が全国規模であるかどうかということである。これは、小児がんは症例数が多いわけではないので、ある程度プールされたデータでないと、きちんとした判断ができないということが一番大きい理由ではないかと思われる。
【会長】
日本でもCT検査を受けた子どもは、結構いるのではないかと思っているが。
日本でもCT検査を受けた子どもは、結構いるのではないかと思っているが。
【B委員】
一応、放医研が中心となって、そういうデータは集めている。
一応、放医研が中心となって、そういうデータは集めている。
【会長】
承知した。欧米で結論が出れば、もちろん出ない可能性もあるが、結論が出た場合に日本はどうなのかということになるかと思ったので、質問した。
それから、書きぶりが不明瞭な部分があるように感じる。オックスフォードの小児のがん研究のところだが、この委員会がどのように判断しているのかが伝わりづらいと感じる。例えば、10mSvという非常に低い線量でリスクが1.4倍になると書いているが、これについては何も評価していないのか。
承知した。欧米で結論が出れば、もちろん出ない可能性もあるが、結論が出た場合に日本はどうなのかということになるかと思ったので、質問した。
それから、書きぶりが不明瞭な部分があるように感じる。オックスフォードの小児のがん研究のところだが、この委員会がどのように判断しているのかが伝わりづらいと感じる。例えば、10mSvという非常に低い線量でリスクが1.4倍になると書いているが、これについては何も評価していないのか。
【B委員】
それについては、システマティックレビューで統計的な有意差が確認されていないということが記載されている。
それについては、システマティックレビューで統計的な有意差が確認されていないということが記載されている。
【会長】
この委員会では否定されているということか。
この委員会では否定されているということか。
【B委員】
そのとおり。
そのとおり。
【会長】
そういったところが分かりづらく感じた。論文の引用・説明でつないであって、委員会として、日本学術会議としてどう判断しているかが伝わりづらい。
そういったところが分かりづらく感じた。論文の引用・説明でつないであって、委員会として、日本学術会議としてどう判断しているかが伝わりづらい。
【B委員】
ご指摘のとおり、そこで完全に否定しているという表現にはなっていない。
ご指摘のとおり、そこで完全に否定しているという表現にはなっていない。
【会長】
技術の進歩によって被ばく線量が低下しているためではないかという記載があったが、これは最初のオックスフォードスタディーの線量と追試の線量は比較できるはずである。アメリカの学術会議ではそれを比較しているし、オックスフォードスタディーも線量が時代とともに低くなっているというデータを出しているし、そういった検討が少し不足しているのではないかと思う。
この会議は、それぞれの委員の方が、自分が論文を読んでの判断や、CT検査でのリスク等を表明するような会議ではなかったのか。
技術の進歩によって被ばく線量が低下しているためではないかという記載があったが、これは最初のオックスフォードスタディーの線量と追試の線量は比較できるはずである。アメリカの学術会議ではそれを比較しているし、オックスフォードスタディーも線量が時代とともに低くなっているというデータを出しているし、そういった検討が少し不足しているのではないかと思う。
この会議は、それぞれの委員の方が、自分が論文を読んでの判断や、CT検査でのリスク等を表明するような会議ではなかったのか。
【B委員】
文章をまとめる仮定で議論は行うが、例えばCT検査に関してもそれで結論が得られるようなデータが、現時点では得られていない。そのため、こういった事実があるということを記載するにとどまるということである。
オックスフォードの件についても、10mSvという非常に低い線量でオックスフォード調査ではリスクがあるということだが、一方でシステマティックレビューをすると、リスクは検出されなかったということである。それは、それで決まったということではなく、診断被ばく線量が低減しているということもあるのでそれも説明しないといけないし、一方で別の情報としては計測をするような大きい胎児は別のリスクを持っている集団だということも分かってきたので、そういうことからすると因果の逆転の可能性もあるということである。それについても、因果の逆転が証明できたということではないので、決定的な結論には至らないということである。
文章をまとめる仮定で議論は行うが、例えばCT検査に関してもそれで結論が得られるようなデータが、現時点では得られていない。そのため、こういった事実があるということを記載するにとどまるということである。
オックスフォードの件についても、10mSvという非常に低い線量でオックスフォード調査ではリスクがあるということだが、一方でシステマティックレビューをすると、リスクは検出されなかったということである。それは、それで決まったということではなく、診断被ばく線量が低減しているということもあるのでそれも説明しないといけないし、一方で別の情報としては計測をするような大きい胎児は別のリスクを持っている集団だということも分かってきたので、そういうことからすると因果の逆転の可能性もあるということである。それについても、因果の逆転が証明できたということではないので、決定的な結論には至らないということである。
【会長】
承知した。以上で、第9回研究会の議論を終了する。
承知した。以上で、第9回研究会の議論を終了する。
〈用語解説〉
※1 インヘリテッド
遺伝性の、遺伝した。ここでは、遺伝を指す。
遺伝性の、遺伝した。ここでは、遺伝を指す。
※2 UNSCEAR
原子放射線の影響に関する国連科学委員会。電離放射線による被曝の程度と影響を評価・報告するために国連によって設置された委員会である。
原子放射線の影響に関する国連科学委員会。電離放射線による被曝の程度と影響を評価・報告するために国連によって設置された委員会である。
※3 ICRP
国際放射線防護委員会。専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である。
国際放射線防護委員会。専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である。
※4 過剰相対リスク
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
相対リスクから1を引いたもので、相対リスクのうち、調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分をいう。
※5 WHO
世界保健機関。人間の健康を基本的人権の一つと捉え、その達成を目的として設立された国際連合の専門機関である。
世界保健機関。人間の健康を基本的人権の一つと捉え、その達成を目的として設立された国際連合の専門機関である。
※6 IAEA
国際原子力機関。国際連合傘下の自治機関であり、原子力の平和的利用の促進を目的としている。
国際原子力機関。国際連合傘下の自治機関であり、原子力の平和的利用の促進を目的としている。